プレイレポート
「Fallout 76」のβテストをレポート。オンライン専用のウェイストランドでは“懐かしくて新しい”生活が,Vault居住者を待っている
テストの目的は,ストレスチェックと最終調整とされているが,時差の関係で日本からはかなりアクセスしにくい時間であり,かつ1日の稼働時間が短めの日も多かったので,参加できなかったプレイヤーも多かったのではないだろうか。
今回筆者は,この「B.E.T.A.」に短時間ながら参加できたので,そのプレイレポートをお届けしよう。プラットフォームはPlayStation 4で,ハードとしてはPS4 Proを使用しており,画面写真も本体のシェア機能で撮影したものだ。
タイトルの発表時から話題になっている「オンライン専用のFallout」とは,いったいどんな作品になっているのだろうか。
目を覚ますと例によってVaultの中。「再生の日」といえば聞こえはいいが,外に出ないと待っているのは死あるのみ
まずは本作の概要をざっと紹介しておこう。
時代はFallout 4の冒頭でも描かれた,2077年の最終戦争から25年後の2102年。物語は,アメリカ合衆国のウェストバージニア州アパラチアにある「Vault 76」から始まる。
アメリカの建国300周年を記念して作られたこのVaultは,ほかのVaultで見られるような“非人道的な実験”こそ行われなかったが,その代わりに「アメリカ中の優秀な頭脳や技術者を集め,核戦争から25年後にアメリカの再生を担う」という役割を与えられることになった。Vault 76内ではこの日のことを「再生の日」と呼び,多くの人々はこの日を心待ちにして,前日には盛大なパーティーが開かれていたようだ。
ゲームシステム自体はFallout 4とほぼ同じ,オープンワールドを採用したアクション性が高いRPGだ。ログインすると,20人強のプレイヤーが同居するサーバに割り当てられ,ほかのプレイヤーと協力,あるいは敵対しながらゲームを進めていく。ちなみに,サーバーはログインするたびに変わる仕組みだ。
システムとしては,一人称視点と三人称視点をプレイヤーの好きなタイミングで切り替えながら,あるときは斧やマチェットといった近接武器で,またあるときはハンドガンやレーザーライフルといった遠距離武器で敵をなぎ倒し,自分の行きたい方角や場所に進み,気が向いたら戦前のロケーションなどを探索してクエストをこなしていく……といういつものパターンとなる。
なお,今作では生きている人間のNPCがおらず,ロボットや稼働しているコンソール,あるいは残された手紙やログで物語やクエストを追うことになるので,人間に馴れ馴れしく仕事を頼まれたり,高圧的に何かを押しつけられることはない。
この辺りは,シリーズおなじみの奇人変人が拝めないということで寂しさもあるが,当然「ほかのプレイヤー」というこれ以上ない生身の存在がいるので,こちらに注目してほしいということなのだろう。
さて,プレイヤーの分身となるキャラクターは,前述のVault 76の住人のひとりとなる。オンラインゲームのプレイヤーキャラなので,Fallout 4の主人公と違いバックグランドはまったく設定されておらず,自ら話すこともないが,とにかくどんちゃん騒ぎが終わった後のVault内で目を覚ます。ここですぐに,恒例のキャラクターメイキングが始まり,性別,人種,体型など,自分の好みのキャラクターを作りだし,ゲームを始めることになる。
Falloutシリーズに限らず,Bethesda Softworksのゲームキャラクター(とくにデフォルトキャラ)は「あまり日本人向きの造形でない」と言われることも多いのだが,筆者が見た限りは「結構整ってるのが多いな」という印象だった。アニメ的なキャラは難しいかもしれないが,我々も見慣れた海外ドラマやハリウッド映画的なイケメンや美女ならちょっといじれば普通にいける……かもしれない。
キャラクター作成が終われば,ロボットを除きもぬけの殻となったVaultの中で簡単なチュートリアルを受け,初歩的なアイテムを受け取りつつ,外を目指すことになる。
「水も食料も寝床もありそうな,このVaultを拠点にすればいいのでは?」と思う人も多そうだが,実はこのVault 76は,設計段階から「再生の日」までしか使用できないように建造されており,すぐに空気や水といった生命維持機能が停止するという。つまり否が応でも,外に出ないといけないのだ。うーん,さすがのVault-Tec製。
新たな地アパラチアでは,新たなクリーチャーとロボット,そして飢えと渇きがプレイヤーを襲う
例によってかっこよすぎるVaultの扉の開放を見学したら,さっそく外の世界に飛び出すことになる。核戦争から25年しか経っておらず,防護服もなしに外に出て大丈夫か?……と思いきや,意外と外は普通の風景で拍子抜けだ。晴れてさえいれば,高所にあるVaultの入り口から,結構遠くまで美しい自然が見渡せるし,「立っているだけでRAD汚染」なんてこともない。「これなら意外とアメリカの再生もいけるのでは」とか考えながら,とりあえずPip-Boyと地図を見て次の目的地を決めることに。
本作はFallout 4と同じように,大小さまざまなクエストが随時追加されるのだが,ストーリーのメインとなるのは「先にVault 76を後にした,監督官の足跡をたどる」というもの。
彼女のログはVaultを始め,いろいろな場所に落ちているのだが,これを拾っていくことはチュートリアルも兼ねており,武器や防具の作成やレシピの入手など,ごく基本的な要素を学べる。本作はFallout 4と共通する部分が目立つが,違う部分も数多いので,とくにこだわりがなければ慣れるまで,素直に足跡を追っていくことをおすすめしたい。
筆者も監督官の後を追うことにしたが,ここは勝手知ったるワシントンD.C.や連邦とは違う場所。崩壊後の世界には慣れてるつもりで気軽に道を外れて歩いていたら,急に中国語を発するわけのわからないロボットにレーザーで焼かれ,ジャンクを漁ろうと無人っぽい家に入ったら,フェラルグールっぽいけど武器を使う「スコーチ」に襲われ,今度はロボットもスコーチもいないと思われる廃工場に入ったら,巨大なダニような虫に後ろから急襲される……と踏んだり蹴ったり。開始早々,ウェイストランド流のおもてなしを満喫するハメになってしまった。
さて,ウェイストランドで危険なのはクリーチャーだけではない。彼らが「外から来る敵」とすれば,もうひとつは「内から来る敵」,要するに自分の体である。本作ではFallout 4の「サバイバルモード」と同じように,「空腹」や「のどの渇き」「病気」といった状態変化が存在し,体調に大きな影響を与える。
具体的には,立っているだけでものどが渇いてお腹がすき,腐ったものを食べたり地べたに直接寝たりすると,病気になってしまうことがある。これらは症状が進むとステータスに大きな影響を与えるため,放置しておくことはできない。とくに脱水症状と空腹は,「どんな状態でも常に時間が流れる」というオンラインゲームの特性上,常に頭の隅に入れておかないといけないだろう。
のどの渇きを潤し空腹を満たすには,現実と同じように飲んだり食べたりすればいい。とはいえインフラは壊滅しているので,基本的には自分か仲間が調達するしかない。具体的には,水辺で水をくみ,クッキングステーションに持ち込んで木材を燃やせば,「沸騰させた水」になる。またバラモンやラッドスタッグの肉を持っているなら,これを焼けばステーキとして食べられる。
もっと軽いもので良ければ,キノコや野菜でスープを作るのもいいだろう。これは空腹とのどの渇きを両方回復できるという点で,結構使い勝手がいい。
とはいえ,これらは素材の時点で放射能に汚染されており,食べると体内が少しずつ汚染されてしまう。背に腹は代えられないし,生で食うよりもずっとマシだが,体に蓄積された放射能は最大体力値を削るため,あまり放置しておくわけにもいかない。
本来ならばRADアウェイなどを使って,定期的に放射能汚染を除去する必要があるのだが,序盤は入手しにくいので中々厳しい。おまけに食料は一定時間で「腐って」しまうようで,せっかく入手しても長期間携行していくことは不可能だ。
全体的な印象としては空腹はともかく,脱水症状は結構早い感覚でやってくる。水は腐らないので助かるが,簡単に手に入る沸騰させた水は,どうしても汚染が残ってしまい,飲むとHPの最大値を容赦なく削ってくる。戦後200年経ったFallout 4の時代は,比較的きれいな水や汚染のない食料を入手しやすかったが,四半世紀しか経ってないこの時代は,やはりいろいろと厳しい感じだ。
「C.A.M.P.」を持ち出し,荒野に旅立とう。ほかの生存者とは,協力するもよし,敵対するもよし
近場をうろつくだけでクリーチャーに遭遇し,遠出をすれば飢えと渇きに苦しむVault 76の生存者(プレイヤー達)だが,今回は大きな味方を懐に忍ばせている。それは「C.A.M.P.」と呼ばれる,文字通りのポータブルキャンプマシンだ。
C.A.M.P.はPip-Boyの画面からボタン1発で設置可能で,各地のロケーションや特殊な地形の場所を除けば,基本的にどこにでも展開できる。そして一度展開すれば,その周囲でクラフトが可能になり,Fallout 4の「入植地」と同じく,ジャンクなどの材料を使って建物やベッド,あるいはクラフトステーションなどを設置できるのだ。
C.A.M.P.は「携帯型入植地」といったものだと思ってもらえればよく,必要なときにはごく僅かなキャップを払って,どこへでも再設置可能だ。一度設置したオブジェクトは「図面」に保存可能で,移動先で簡単に復元できる。実際は展開場所の地形の問題で,設置範囲が広いオブジェクトは図面から置けないことも多かったりするのだが,そういうときはなるべく引っ越し前と近い地形を選びたい。
C.A.M.P.の有効範囲は,前作のFallout 4の入植地と比べるとかなり狭いが,NPC入植者はおらず,使うとしても自分かフレンドのみだと思うので,すぐに問題になることはないだろう。
使い方としては,新たな地域に来たら手近なところに設置し,活動拠点としてそこを中心にロケーションを探索して回る,というのがスタンダードになりそうだ。また,C.A.M.P.はファストトラベルの移動場所としても活用できるので,あえて既存のロケーションから離して,一種の隠れ家的に使うのもいいかもしれない。
なお同じ「クラフト要素」なのでここで触れておくと,今作ではFallout 3などであった「武器や防具の耐久力」が復活しており,使えば使うほど劣化し性能も落ちていく。修理するにはクラフトステーションに赴き,素材(ジャンク)を使って直さなければならない。Fallout 3のような,現地でのニコイチ修理は無理なようなので,重量に余裕があれば予備の装備を持ち歩くと安心だろう。
繰り返しになるが,本作はオンライン専用の作品であり,自分以外にも数多くのプレイヤーがさまざまな場所で活動している。ほかのプレイヤーとはチームを組んだり,トレードをおこなったりと,ごく一般的なオンラインゲームと同じやりとりもできるが,やはり「PvP要素」があることに触れないわけにはいかない。
前作のFallout 4などと同じく,(素手も鈍器もあるが)銃の引き金を引けば基本的に誰でも攻撃でき,また「セーフゾーン」といったものは存在しないようなので,言ってみれば「すべてが戦場」になってしまうのだ。
メインクエストを追っていくと早々に町にたどり着き,そこには補給物資が落ちていたりベンダーロボットもいたりするのだが,エリアが区切られているわけではないし,ガードや警察と言った治安組織も当然存在しないので,一度プレイヤー同士の戦闘が始まれば,止める者はいない。
実際に筆者も攻撃を受けたのはプレイヤーが多い町中が多く,「Pip-Boyを見ながらアイテムチェック」といったタイミングで仕掛けられて,慌てて逃げ出したり体勢を整えたり,といったことも何度かあった。クリーチャーは発生ポイントに近づかないと出てこないが,ほかのプレイヤーは当然向こうから容赦なく近づいてくるので,油断はできない。
とはいえ,PvPが解禁されるのはレベル5からで,それまではほかのプレイヤーの攻撃は一切当たらないようになっているらしく,「Vaultを出た直後に襲われる」といったことはない。
また,明確に反撃するまでは攻撃側に強烈なデバフ(弱体化)が発生するようで,「出会い頭に殺される」「意味も分からないまま死んでる」といったこともなかった。それにレベルアップのタイミングも任意なので,「慣れるまではあえてレベル4で止めておく」という手もあるだろう。それなりに対応する状況は用意されている,という感じだろうか。
ただ,「明らかにレベルも装備も上のプレイヤー」に狙われた場合,当然ながら反撃しても勝てる可能性は非常に低いため,基本的に逃げるしか手がないのが少々気になった。確かにやられるまでは(デバフがあるので)相当の時間的な余裕はあるのだが,だからといって相手を倒せるわけでもないので,「手も足も出せないまま追い回される」という状況が発生する。
無抵抗のプレイヤーを殺した場合は,「アイテムは入手出来ず,PKしたプレイヤーは賞金付きの指名手配犯になり,しかも賞金は犯人の所持金から払う」という強烈なデメリットが発生するのだが,物理的には倒せてしまうため,そういった場面を見かけたり,それに巻き込まれることもあった。
本作のオプションには「平和主義者モード」という項目があり,ONにすると「こちらからは他のプレイヤーに一切攻撃ができず,他のプレイヤーからの攻撃はさらに軽減される」という状態になる。殺伐としたウェイストランドの空気とPvPの相性が抜群なのは確かだが,個人的にはこれを用意するなら,いっそONにした時点で同時に相手の攻撃もすべてシャットアウトする……といった挙動の方が,よりシンプルでいいのではと感じた。
シリーズ恒例の「S.P.E.C.I.A.L.」と「V.A.T.S.」には大きな変更点あり。製品版では広大なアパラチアが,隅々まで探索できる
最後にシリーズ恒例の要素ながら大きな変更があった,「S.P.E.C.I.A.L.」と「PERK」,そして「V.A.T.S.」についても触れておきたい。
「S.P.E.C.I.A.L.」はStrength(筋力)やIntelligence(知性)といったステータスの頭文字で,これらが高いほど近接武器の攻撃力が上がったり,より強力なPERKを取得できたりする。従来作では最初にボーナスポイントが与えられ,それを好きな形で割り振るのが定番だったが,今作では初期値はすべて「1」で,レベルアップごとに与えられるポイントを任意のS.P.E.C.I.A.L.に割り振るという形だ。
とくに扱いが変わったのがスキルのPERKだ。Fallout 4では「S.P.E.C.I.A.L.の段階ごとに個別のPERKが用意されている」という形式だったが,本作ではカード形式になっており,レベルアップ時に任意のものを選んだり,「PERKパック」というランダムで複数枚のPERKカードが入ったアイテムを開封すると,入手できるという仕組みになっている。
入手したPERKカードは手元にプールされ,S.P.E.C.I.A.L.の数値内でカードのコストを超えないように,任意のPERKを装備できる。例えばStrengthが5なら,StrengthのPERKはカードのコストに応じて「3コスト1枚と2コスト1枚」とか「2コスト1枚と1コスト3枚」といった感じで組み合わせられるわけだ。
なお本作のPERKにもランクがあり,同じカードを合成することによってより効力を高められるが,当然ながらそのぶんコストは高くなってしまう。また,PERKはメニューを開けばいつでも変更可能だが,前述のように時間は常に流れているため,危険な場所だとその間に攻撃される……なんてこともあるかもしれない。
「V.A.T.S.」は,従来作では「敵をターゲットすると時間が止まるか急激に遅くなり,攻撃すると命中率に応じて敵に当たる」というシステムだったが,本作ではスローモーション演出がオミットされ,「敵をターゲットして手動で攻撃する」といった仕組みに変更されている。
感覚的にはごく普通のロックオンシステムに近いが,命中の判定は画面に表示されているとおりの確率で,確実に当たるといったものではなく,また障害物などに阻まれれば,もちろん敵に弾丸が届くことはない。
「使用するとAP(アクションポイント)を消費する」「クリティカルゲージがたまれば,任意でクリティカルが発動可能」といった基本的なルールに変更はないが,発動しても戦闘速度は変わらないないこともあり,使用感は従来作に比べて大幅に異なる印象だ。
とはいえ相変わらず(V.A.T.S.ボタン連打が)索敵にも使えたりするので,筆者のような射撃が苦手なプレイヤーは,結構お世話になるのではなろうか。
本稿冒頭でも触れたように,今回のβテストは日本に住んでいるプレイヤーには参加しにくい時間に開始された日が多く,筆者も比較的短時間しか作品に触れられなかった。したがってプレイできた範囲はごく限られており,実際にパワーアーマーの入手や,核兵器の確保といった要素には触れることができず,全体の様相はまだ,全然つかめていない。
ただそんな状況でも,Fallout 4からの変化や,ほかのプレイヤーが数多く同じマップで活動することによる「不確実性」はかなり楽しむことができた。今回はPKプレイヤーの話をしたが,実際はチームを組まずとも自然と共闘になる場合も多く,ピンチを救ってもらったことも何度かあり,「外で動く奴はレイダーかミュータントかクリーチャー」といったFallout 4とは,雰囲気はやっぱり異なる。
また突発的に各地で始まるイベントは,特定の敵NPCを倒したり,敵の襲撃を一定時間防いだりと,多くが協力コンテンツとして開催されていた。このときはPvPもオフとなり,またクリアすれば報酬を得られるので,手が空いているプレイヤーは気が向いたら参加する,という状況で進んでいく。こういう「気軽な共闘」は肩肘を張らずに参加できるので,個人的には楽しく参加させてもらった感じだ。
前述のとおり,Fallout 76のすべては発売日の11月15日に解禁される。テストに参加してみた筆者の率直な感想は,記事のタイトルにも書いたが「懐かしいけど,新しい」だ。少なくとも「Fallout 4のフィールドに複数のプレイヤーがいるだけ」といったものを予想してるなら,かなりの確率で面食らうだろう。
製品版では広大なアパラチアでどんな冒険が待っているのか,いちFalloutファンとしても楽しみだ。
「Fallout 76」公式サイト
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