インタビュー
テーマは「気持ち良く死んでいただく」こと。“戦国妖怪死にゲー”「仁王2」インタビュー
「仁王2」のテーマは「気持ち良く死んでいただく」ことにあり
4Gamer:
よろしくお願いします。今回はついに発売される「仁王2」についてうかがえればと思います。まずは「仁王2」の見どころ,そしてプレイがどのように変化しているのかを教えてください。
「仁王」のコンセプトは歯ごたえのある敵に試行錯誤しつつ攻略法を探していく“戦国死にゲー”でしたが,そこに妖怪の力を加えた“戦国妖怪死にゲー”にパワーアップしています。
主人公は妖怪と人間の間に生まれた半妖であり,刀や槍を振るう侍のアクションに加え,さまざまな妖怪の能力を使えます。これによって,見た目が派手になったのに加え,難敵に対してプレイヤーさんが取り得る選択肢の幅も広がりました。
4Gamer:
と言うと,プレイのハードルは低くなっているのでしょうか。「『仁王』の名前は聞いたことがあるけれど,アクションゲームは苦手」とか「床に穴が空いた場所で巨大スライムと戦うところで挫折した」という声を聞くこともありますが。
安田氏:
今作はさまざまな妖怪の能力もありますし,オンライン要素も拡充しましたので,遊びやすいと思います。特にオンラインプレイについては,プレイ人数が2人から3人に増え,自力でクリアしていないミッションも一緒に遊べるようになっています。どうしても難しければ,手伝ってもらえるのでご安心ください。
もちろん,レベルを上げたり,良い装備を整えて戦力アップするハックアンドスラッシュの側面もより強いものになっています。
4Gamer:
そこで単純にイージーモードを用意するといった方向性でハードルを下げないあたりは,さすがの“死にゲー”ですね。
安田氏:
難度設定も検討はしたのですが,もしそれを入れるとゲームクリアしたときに「それ,イージーなの?ノーマルなの?」となり,プレイヤー間で体験や価値が共有できない状況になりますから,見送ることにしました。
「仁王2」のテーマは「気持ち良く死んでいただく」ことにあります。プレイヤーさんが思った通りに動かせる良好な操作性を持ち,レベルデザインは死んでも納得がいくようなものにして,再度チャレンジしたいと思えるものを目指しました。
4Gamer:
では,主人公はどのようにして妖怪の力を使うのでしょうか。
安田氏:
主人公が一時的に妖怪の姿になって敵の大技をカウンターする「特技」。一定時間,妖怪に変身してパワフルな戦いができる「妖怪化」。そして,倒した妖怪から手に入れた「魂代」というアイテムでアクションを使える「妖怪技」と,さまざまです。
4Gamer:
それらによって,バトルはどのように変化しているのでしょう?
安田氏:
前作の“攻撃や回避で消費する「気力」を管理しつつ,敵の動きを見切る”という戦いに,妖怪化や特技,妖怪技という新たな軸が加わるといったところでしょうか。例えば「仁王」だと,気力が尽きるとじり貧になり,打つ手もなくやられるのを待つばかりになってしまいました。そんな状況でも「仁王2」では新たな道筋が開けるんです。
4Gamer:
これまでの配信で何度かプレイしましたが,中でも特技が印象的でした。気力が切れて動けなくなっても特技を使えばその場をしのげますし,敵の大技がチャンスになるので,惜しまず使っていいと理解した後はボス戦が楽しくなりますよね。
安田氏:
特技は危険な大技にあえて踏み込むことで,一発逆転できる要素ですから。ぜひ積極的に使っていってください。
4Gamer:
妖怪化は前作の「九十九武器」にバリエーションが加わった感じで,選ぶのが面白かったです。
安田氏:
妖怪化は攻撃されても怯まない「猛」,回避と連続技を得意とする「迅」,武器を投げた場所にワープ移動できる「幻」の3タイプがありますので,好みで選んでください。攻撃されても体力が減らないので,一気に攻めることができます。
4Gamer:
妖怪技を使えるようになる魂代は,コレクション要素としてもハマってしまいそうです。装備すると,これまで苦労させられた技でやり返せるというのが気持ち良いですよね。中ボスやボスと戦ったときには,魂代を落とすようにと,思わずお祈りしてしまいました。
安田氏:
ボスの場合は初討伐の際に確定ドロップするものが多いのですが,付与されるオプションがランダムですので,より良い魂代を探して周回したくなると思います。
敵を倒した際のドロップで戦力アップしていくのがハックアンドスラッシュですが,ここで妖怪ならではのドロップ品とは何だろうと考えた時に,魂代のアイデアが出てきました。最初はただの装備品でしたが,やはりアクションにも変化を及ぼすものにしたいということで現在の形になったんです。魂代にはコストが設定されていて,何でも好きに装備できるわけではありません。そうした意味ではビルドを構成する一要素とも言えます。
4Gamer:
安田さんオススメの妖怪技はありますか?
安田氏:
ボスではないんですが,トリッキーなのは「河童」の妖怪技ですね。背中に河童の甲羅があらわれて,背面からの攻撃を受け止められるようになるんです。魂代の妖怪技は攻撃だけではないので,いろいろと探してみてください。
4Gamer:
妖怪ではなく人間のボスを倒した場合も,魂代のドロップは狙えたりするんですか?
安田氏:
いえ,妖怪ではないので落としません。その代わり,自身が使う「武技」(スキル)の「秘伝書」を落とします。秘伝書があれば主人公もその武技を使えるようになるのですが,こちらはドロップ率が低いので,オンラインで協力し合いつつ,どんどん倒しまくってください。
4Gamer:
雑魚妖怪とボスのどちらからも価値あるドロップを狙えると。ハクスラ好きにはたまらない内容となりそうですね。
歴史の謎に「仁王」流の解釈を加え,戦国時代を描く
4Gamer:
ストーリー部分のこともうかがえればと思います。今回は関ヶ原の戦いの前を舞台に,織田信長や,後の豊臣秀吉となる藤吉郎,そして本能寺の変を起こす明智光秀といったそうそうたる顔ぶれが登場しますが,特に注目してほしいキャラクターは誰ですか?
安田氏:
やはり重要なのは主人公と藤吉郎の関係性ですね。前作は実在する三浦按針をモチーフにしたウィリアムを中心にしていたんですが,今回も史実に基づきつつ,歴史の謎に仁王的な解釈を加える部分は大事にしたいと思ったんです。
4Gamer:
では,「仁王2」における歴史の謎とは?
安田氏:
藤吉郎が豊臣秀吉になった成り上がりです。「なぜ身分のない農民だった藤吉郎が,天下人の秀吉になれたのか?」という部分にロマンを感じ,それを「仁王2」で描けたら楽しいんじゃないか……と思ったのが起点ですね。そのほかにも,歴史の表舞台に立つ人から裏で暗躍する人まで,いろいろな人物が出てきます。
4Gamer:
藤吉郎は俳優の竹中直人さんが演じられていますが,竹中さんの人となりが藤吉郎に影響を与えたところはありますか?
安田氏:
ご本人と会った時の第一声が「オレ,秀吉詳しいよ!」でしたからね(笑)。とてもエネルギッシュな方で,セリフについてご提案をいただいたりもしました。普通は役者さんに役柄を説明させていただくんですが,このステップが必要なかったのは竹中さんが初めてです。実際に演じていただいても,「あっ,秀吉だ!」というリアリティと,ある種のキャッチーさがあって,「仁王2」に私たちだけでは作れない価値を与えていただいたと思っています。
4Gamer:
主人公と藤吉郎がコンビで秀吉になるという発想が面白いと思いました。
安田氏:
主人公=秀吉だと据わりが悪いんです。半分妖怪なうえ,キャラクタークリエイトで見た目が自由に設定できる主人公なので,「この人こそが豊臣秀吉です!」と据えても説得力が伴いません。
4Gamer:
肖像画が教科書に載っているような有名人ですからね。
安田氏:
でも,竹中さんのルックスで「オレとお前で秀吉なんだ!」と言われると,それが一気にアリだと思えてしまうんです(笑)。そもそも,“秀吉”という名前の由来もハッキリしていないんです。なぜ“藤吉郎”から“秀吉”になったのか。“秀“の字はどこから来たのか……と考えた時,「“秀”は半妖の主人公の名前」という,「仁王」流の解釈を加えたら面白いんじゃないかと思い付きました。
4Gamer:
β体験版で「鎌鼬」と戦う前に,藤吉郎が主人公に丸投げするシーンが飄々としていて面白かったんですが,この辺りも竹中さんのキャラクターだからこそですよね。
無明役の波瑠さんについてはどうでしょうか。
安田氏:
波瑠さんはけっこうゲームを遊ばれるそうで,「仁王」も近畿編までプレイされていたんです。Instagramでも「まれびとがいない!」って書かれていたそうで,公式アカウントで急遽まれびとを募集したりもしましたね。そのせいか,気合の入ったアクションシーンもスムーズに収録できました。
4Gamer:
前作でプレイヤーとして妖怪を狩っていた人が,「仁王2」では妖怪狩りの無明になるわけですね(笑)。
「仁王」は全世界での累計販売本数が300万本を突破したと発表されていますが,つまり8〜9割は海外で売れているゲームということになります。そうしたゲームで,日本人の俳優を起用することには,どういった狙いがあるのでしょうか。コーエーテクモゲームスさんは,数多くの個性的な戦国キャラクターを表現されてきた会社ですから,その技術もあると思うのですが。
安田氏:
俳優さんによる演技は,やはり見た目の情報量や密度が違うんです。おっしゃるとおり,我々はたくさんのCGキャラクターを作っていますが,それとはレベルの違う存在感や魅力,神秘性が宿ると思っています。俳優さんの演技が我々の想像を超えてくれますから。
アクションゲームは,ムービーを見るよりプレイしたいジャンルですから,キャラクターを描くのに長々とムービーを流すようなことはしたくありませんし,そこで俳優さんの力を借りられるというのは大きいです。
4Gamer:
ゲームの収録だからこそ大変な部分はありますか?
安田氏:
収録はCGが完成していない状態で行ううえ,演じていただく状況も,お城から飛び降りたり妖怪をまとめて斬ったりと,リアルでは起こり得ないものだったりします。そのため,収録の前に丁寧に説明させていただく必要がありますね。収録の際には,実写よりは派手な感じで演技をしていただいています。
顔のモーションなどは声を収録した後に制作していくので,声の演技に会わせた表情を作っていく感じです。
プレイヤーの声を活かし,より良い作品を作り上げていく
4Gamer:
「仁王2」は,β体験版などでプレイヤーが触れる機会を多く用意しているという印象ですが,反響はいかがですか?
安田氏:
キャラクタークリエイトについて,予想以上の好評をいただきました。いろいろな項目をカスタマイズでき,質も高いという評価をいただけて嬉しかったですね。また,難度については「過剰に難しいのではないか?」という声もありましたので,そこは原因を分析してその後のビルドに反映しています。
4Gamer:
キャラクタークリエイトコンテストの受賞作に,「FINAL FANTASY XIV」のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏をモデルにしたものもあって驚きました(関連リンク)。しかも本人公認で。
安田氏:
吉田さんにご連絡させていただいた際「他社の人間をモデルにしたキャラクターを受賞させるのは,御社的に大丈夫なんですか?」と,逆に心配されてしまいました。とはいえ,あくまで吉田さんご本人ではなく,外見をモチーフにしたキャラクターです。そうでないと,吉田さんがゲーム内で何度も“落命”されることになってしまいますから(笑)。
4Gamer:
それにしても,実在の人物に似せて作れてしまうあたり,本作のキャラクタークリエイトはよくできていますよね。
安田氏:
老若男女幅広い外見を作れますので,ぜひこだわってもらいたいです。同じ装備でも男女で見た目が変わるようなものもありますし,性別はいつでも変えられます。また,前作同様に装備の性能はそのままに,見た目を変えることもできますから,オンラインプレイなどのときにこだわりを見せびらかしてください。
4Gamer:
β体験版から製品版に向けて,調整で苦労された部分があれば教えてください。
安田氏:
妖怪関連のアクション全般ですね。特技や妖怪化,魂代で使える妖怪技と,シチュエーションが幅広い上に数も多いですから。そうした部分の手応えを保ちつつ調整するのが大変でした。
4Gamer:
調整の方針はどういったものだったのでしょう。
安田氏:
「同じ技だけを出し続けて攻略できる」とか「能力の使い道がない」といった事態は避けつつ,プレイヤーさんが構築するであろうたくさんのビルドを想定した上で調整していきました。
4Gamer:
制作の時点でプレイヤーが構築するであろうビルドは想定しているんですね。
安田氏:
「簡単にビルドが完成した上に強すぎる」とか,「苦労して構築したのに弱すぎる」といったことがないように調整しています。「仁王」の時には簡単に入手できて強い装備や,簡単に完成するビルドがありましたが,そうしたものがないようにしています。
ただ,プレイヤーさんには好きに遊んでいただきたいので,幅広いビルドを楽しんでいただける自由度は大事に考えていますし,調整によって“正解”の幅を狭めるようなことはしたくないと思っています。
4Gamer:
スキルポイントを割り振る要素のあるゲームでは,ネットで出る“正解”に右往左往する人も多いと思います。ある程度幅広いビルドを許容するということは,思ったままに進めてしまっても大丈夫でしょうか。
安田氏:
そうですね。スキルを振り直せるようになるアイテムもゲーム内で入手できますし,まずは好きに進めてみてください。
4Gamer:
β体験版などでは,どういった方法でプレイヤーの声を拾っていたのでしょう。プレイ後のアンケートですか?
安田氏:
もちろんアンケートは見ますし,SNSでの反響も確認しています。ただ,前作から大きく変わったのが,実況プレイされる方が増えたことです。どこで詰まってしまうのか,その後にどうしているのかなど,アンケートやSNSでテキスト化されないところを実際に見られるので,ものすごく参考になるんです。
4Gamer:
確かに,生の初見プレイは興味深いですよね。
前作をやり込まれた方のプレイはもちろん,本作が初めてという方もいらっしゃいますから実況はめちゃめちゃありがたいですね。すごくアドバイスしたくなりますが,絶対にやらないようにしています(笑)。
4Gamer:
体験版などの実況プレイは,開発陣がウォッチしている可能性が高いんですね(笑)。
“死にゲー”ブームのハシリである「Demon's Souls」からは10年以上が経ち,今やジャンルの1つとして定着しました。これまで,このジャンルのいろいろなゲームをプレイしてきましたが,殺し方や難度の上げ方には,タイトルによって作り手のクセみたいなものがあると感じます。
これは個人的な印象なんですが,「Demon's Souls」などが状況などへの“気付き”で殺してくるのに対して,「仁王」はけっこうストレートに殺してくる気がします。
安田氏:
なるほど。そこはTeam NINJAが「アクション性」を軸にしたゲーム作りをしているからかもしれません。
4Gamer:
と言いますと?
安田氏:
“死にゲー”ですから,当然敵にはしっかりと殺しに来るAIを持たせ,試行錯誤したうえで乗り越えて行けるものにしています。
このとき,乗り越えるための手段は,RPG的なパラメータの強化でも,マルチプレイによる協力でも,いろいろなやり方があっていいですし,用意もします。それでも軸にしているのはアクションの部分なんです。探索や気付きで難関を超えるよりも,反射神経とアクション性で勝負する作りと言いますか。
そのためには,「キャラクターの操作感や手ざわりは常にフェア」でなければならないので,入力の取りこぼしがあって思い通りに動かないとか,見た目と当たり判定が違っていて避けたはずの攻撃を食らった,なんてことがないよう注力しています。
4Gamer:
そういえば,妖怪化,特技,妖怪技といった新要素は,どれもアクションの幅を広げるためのものですね。
安田氏:
もともと,「α体験版」には妖怪の大技と,これに対抗する「特技」は入っていなかったんです。しかし,「『仁王』の続編として変化が足りない」という声を多くいただいたことから,アクション性を変化させるものが必要だろうとなって取り入れたという経緯があります。
プレイヤーさんも,「仁王」シリーズにはアクションを求めているということだと思いますね。
4Gamer:
「仁王」の「厳島」マップなんかは,落ちると死ぬ床の穴や,踏み外すと死ぬ細い丸木橋といった仕掛けが満載で,完全に殺しにきていましたよね。
安田氏:
評価が分かれたマップですね(笑)。実は「仁王」の開発において,最初に作ったのが厳島マップだったので,ここだけは「死んでもらおう」という意識が強すぎたのかもしれません。あれでも,だいぶ床の穴を埋めたり,攻撃アクションの最中は落ちないようにしたりと調整したのですが,今と思うとやり過ぎだったかも……とは思います。
「仁王2」ではこうしたマップは無いのでご安心ください。「気持ち良く死んでいただく」のがテーマですから。
4Gamer:
気持ち良く死ねるときとそうでない時の違いは,どこにあるとお考えですか?
安田氏:
死んだのが自分のせいだと感じられるかどうか,そしてもう1回チャレンジしようと思えるかどうかだと思います。良い“死にゲー”では,そうした部分がケアされているものではないでしょうか。
4Gamer:
死んだあとのケアまでひっくるめて“死にゲー”であるわけですね。
では,最後に発売を楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。
安田氏:
アクションが得意な方はもちろん,そうでない方もRPG的な成長要素やマルチプレイで楽しんでいただけるので,ぜひいろんな死に方と,いろんな攻略をして楽しんでいただければと思います。個人的には,3月12日の発売日には,みなさんの死に方を動画で拝見したいと思っています(笑)。
4Gamer:
ありがとうございました。
「仁王2」公式サイト
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