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剣戟対戦格闘ゲームの元祖「サムライスピリッツ」シリーズがもたらしたもの。最新作「SAMURAI SPIRITS」の発売前に足跡を振り返る
そんな対戦格闘ゲームの歴史を振り返るとき,SNKが誇る「SAMURAI SPIRITS / サムライスピリッツ」(以下,サムスピ)シリーズの存在は外せない。「剣戟対戦格闘」という新しいスタイルを生み出し,1つのスタンダードにまで昇華させた立役者だからだ。
格闘ゲームというジャンルでは,2008年にアーケードで稼働した「サムライスピリッツ閃」を最後に動きがなかったサムスピシリーズだが,ご存じのとおり,2019年6月27日に待望の最新作「SAMURAI SPIRITS」(PlayStation 4 / Xbox One※)が発売される。すでに対戦格闘ゲームの祭典「EVO 2019」のメイントーナメント種目に選出されており(関連記事),今最も注目すべき対戦格闘ゲームと言っていいだろう。
※PC / Nintendo Switch版は2019年冬発売予定。アーケード版は2019年夏稼働予定。
「SAMURAI SPIRITS」公式サイト
そこで,この機会にサムスピシリーズの歴代作品を紹介しつつ,対戦格闘ゲームシーンに残した足跡を振り返りたい。サムスピシリーズを愛する者として,より多くの人に魅力を知ってもらえたら,こんなに嬉しいことはない。というわけで……いざ尋常に,勝負!
初代「SAMURAI SPIRITS」とは
シリーズ第1作「SAMURAI SPIRITS」(以下,初代サムスピ)は1993年に登場した。覇王丸やナコルル,橘右京,ガルフォードら総勢12人のプレイアブルキャラクターはそれぞれに日本刀や片手剣,鎖鎌といった武器を手にして戦う。当時の対戦格闘ゲームは素手での戦いが主流だったため,その存在はまさに新風であり,現在では「剣戟対戦格闘ゲーム」の元祖と位置づけられている。
「剣戟」とは,刀と刀で斬り合う果たし合い。刀で斬られれば血が流れ,敗北は死につながる。敗北時に血しぶきが舞い,身体が真っ二つになるなど,直接的に「死」を連想させる描写はゲーマーに衝撃を与えた。勝敗が決まるラウンドでは,体力ゲージに「死」の文字が踊り,まさに生死を分ける真剣勝負。初代サムスピ以前の対戦格闘ゲームとは雰囲気が決定的に違っていた。
そして,サムスピシリーズを象徴する要素として「怒りゲージ」の存在がある。ダメージを受けるたびにゲージが溜まり,MAXになると攻撃力が上昇するシステムだ。さらに,体力ゲージが残り少なくなると攻撃力が上昇するシステムもあり,死が近づいたときにだけ,普段は抑えられていた能力が発露する。これらはまさしく,死の匂いが漂うサムスピらしいシステムと言えるだろう。
サムスピシリーズの攻撃は,「弱斬り」「中斬り」「大斬り(強斬り)」「蹴り」に大きく分けられる。もちろん,すべての攻撃に役割があるのだが,サムスピの醍醐味と言えば大斬りだ。筆者の印象を語るのであれば,野球におけるホームラン,バスケットボールであればダンクシュートといったド派手な一撃と言えば分かりやすいだろうか。
こと,怒りゲージMAX時の大斬りは,文字通り一撃必殺の破壊力を秘めており,相手の体力を半分近く奪った上で気絶状態に追い込み,そのまま反撃の機会を与えぬまま倒しきることも少なくない。近年の格闘ゲームから考えると,極端なゲームバランスに思えるが,この侍らしさを感じられる一撃必殺こそがサムスピの魅力であり,強烈な個性なのだ。
また,試合中に飛脚が回復アイテム(肉)やダメージを受ける爆弾を投げてくるのも珍しい要素と言える。「真剣勝負の最中に何すんねん!」という声もあるだろうが,これらをいかに活用するのかもサムスピならではの戦略として確立している。爆弾はステージに落ちてきてから爆発するまでに少し時間がかかるので,その間に相手をおびき寄せるといった立ち回りも必要だ。
しかし,試合に介入する飛脚の存在には賛否両論があったのだろう。以降のシリーズでは,数作品のみの登場に留まっている
サムスピシリーズの軌跡
初代サムスピ以降のシリーズ作品は,それぞれが独自のカラーを持っている。
初代サムスピの稼働開始から間髪を入れず,翌1994年に登場したのが「真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変」(以下,真サム)である。プレイアブルキャラクターに牙神幻十郎,チャムチャム,ナインハルト・ズィーガー,花諷院和狆という新顔を迎え,戦いはさらに混沌の様相を呈した。
初代サムスピに登場したタムタムと入れ替わるように参戦したのが,妹のチャムチャムだ。タムタムとはキャラ性能が異なるものの,共通する必殺技などを有しており,兄の代わりに妹を使うプレイヤーも少なくなかったと記憶している。
さらに主人公・覇王丸の同門であり,ライバル格でもある幻十郎の存在感も大きかった。幻十郎は真サム以降,ほとんどの作品に参戦しており,シリーズを代表する人気キャラクターだ。渋いビジュアル,誰とも群れない孤高の存在,花札を操る必殺技のセンス。あらゆる所作が無性にカッコよく,当時の筆者は幻十郎を操っているだけで幸せだった。
真サムでは相手の武器を破壊する必殺技である「武器破壊技」が追加された。武器破壊技は怒りゲージMAX時のみに使用でき,武器が破壊された相手は一定時間,素手で戦うことを強いられる。絶対的不利な状況をひっくり返すことも可能となり,プレイヤー同士の駆け引きはより熱いものとなった。
初代サムスピがスマッシュヒットを飛ばし,続く真サムのブレイクによって,サムスピシリーズは存在を確立させた。ちなみに両作品の間には「餓狼伝説SPECIAL」「THE KING OF FIGHTERS '94」がリリースされており,ネオジオの全盛期と言える時期だった。
シリーズ3作目にして“異端”とも言えるのが,1995年の「サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣」だ。プレイアブルキャラクターが大幅に入れ替わり,新たに緋雨閑丸,リムルル,花諷院骸羅,首斬り破沙羅,そして初代サムスピのボス・天草四郎時貞が参戦を果たしている。
斬紅郎無双剣では,「剣質」と呼ばれるシステムが登場している。これはキャラクターごとに用意された「修羅・羅刹」の属性を選択できるシステムで,選んだ剣質により,性能やグラフィックス,性格などが変化するというものだ。
例えば,ナコルルの修羅と羅刹では別キャラクターと言ってもいいほどに性能が変化する。ナコルルと言えば,相棒の鷹・ママハハと共に戦うバトルスタイルが特徴的だが,羅刹ナコルルにはママハハが帯同せず,代わりに狼・シクルゥが共闘する。必殺技などが大きく変化しているため,戦略も大きく異なるわけだ。
余談だが,羅刹ナコルルの原点は初代サムスピや真サムの“2Pカラー版”と言われている。修羅と羅刹ほどの明確な差異ではないが,1Pと2Pのナコルルはカラーだけでなく表情も異なり,2Pカラー版のほうがキツめの印象だ。
この2Pカラー版は「紫ナコルル」と呼ばれ,ファンの間で密かな人気を博していたのだが,2001年に発売されたスピンオフ作品「ナコルル〜あのひとからのおくりもの」では,この紫ナコルルをベースとした新キャラクターのレラが登場している。なお,レラは「サムライスピリッツ零」(2003年)より,格闘ゲームシリーズにも参戦を果たしている。
羅刹ナコルルから独立する形で誕生した「レラ」(スクリーンショットは「サムライスピリッツ零」より)。性格や口調は紫ナコルルとは別物となっているため,「ナコルル」「紫ナコルル」「レラ」は,それぞれ異なるキャラクターとして愛されている
また,レラは「羅刹ナコルルから独立したキャラクター」だが,こういったケースはほかにも存在する。サムライスピリッツ零から参戦している「羅刹丸」は覇王丸(羅刹),「炎邪」は炎邪火月(羅刹),「水邪」は水邪蒼月(羅刹)から独立した形だ。なお,これらのキャラクターはあくまでも羅刹キャラをベースにしただけで,ストーリーや設定上は完全に別のキャラクターとして扱われている。
閑話休題。
斬紅郎無双剣では,怒りゲージを自ら溜められたり,空中ガードや投げの回避が追加されたりと,対戦における戦略性が高くなった。一方,ゲームバランスはキャラクターの性能差が顕著であったり,永久コンボが存在していたりと,なかなかにエッジが効いた調整になっているのは否めない。そのため,作品の評価は二分されているのだが,尖ったゲーム性ゆえに熱狂的なファンが多いのも事実である。
続くシリーズ4作目は「サムライスピリッツ 天草降臨」(1996年)。タイトルどおり,天草四郎時貞を軸にストーリーが展開していく。また,主人公格のキャラクターとして風間火月,風間蒼月という兄弟が新たに参戦し,斬紅郎無双剣には登場しなかったタムタム,シャルロット,柳生十兵衛が復活を果たした。
天草降臨はストーリーに重きを置いた作品だ。ストーリーモードには制限時間が設けられ,タイムアップまでに6人のCPUキャラクターを倒さないとバッドエンドになるという格闘ゲームとしては珍しいシステムが採用されている。また,本作は真サムの前日譚であり,エンディングでは真サムにつながる展開が用意されている点も面白い。
システム面のポイントは「連斬」の追加だろう。特定のボタンを連続して入力する操作は慣れが必要だが,連斬を最後まで決めると怒りゲージがMAXとなるので恩恵は大きい。初期2Dサムスピの集大成と言える作品だ。
3Dサムスピの誕生
2D格闘ゲームとしてのサムスピシリーズは天草降臨の登場によって,一つの区切りを迎えた。ここから3D展開が始まり,SNKの新基板・ハイパーネオジオ64を使用した初の3Dサムスピ「SAMURAI SPIRITS 〜侍魂〜」(1997年)と続編「SAMURAI SPIRITS 2 〜アスラ斬魔伝〜」(1998年)がアーケード向けにリリースされている。
新たな試みとなった“3Dサムスピ”だが,残念ながら2Dサムスピほどの評価は得られなかった。とはいえ,3Dサムスピ発の新キャラクターである色とアスラは非常に人気が高く,ゲーム系のイベント会場では,それぞれの衣装に身を包んだコスプレイヤーがよく見られた。
その後,2003年にリリースされた「SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS」には色が,2005年の「ネオジオバトルコロシアム」には色とアスラが参戦しており,コアなサムスピファンを大いに喜ばせている。
3Dサムスピの流れは,PlayStation用ソフト「剣客異聞録 甦りし蒼紅の刃 サムライスピリッツ新章」(1999年),そして「サムライスピリッツ閃」(2008年)へと続いた。とくに前者は“新章”にふさわしく,アスラ斬魔伝の20年後という設定で,覇王丸以外のプレイアブルキャラクターが全員新顔※だった。
※服部半蔵が登場するが,シリーズ作品とは同名の別人である。
サムスピシリーズと言えば,対戦格闘ゲームの印象が強いが,実はジャンルの異なるスピンオフ作品もあるのでいくつか紹介したい。
セガサターンやPlayStation,ネオジオCDでリリースされた「真説サムライスピリッツ 武士道烈伝」は,シリーズ初の王道RPGとして大きな話題を呼んだ作品だ。覇王丸,牙神幻十郎,ナコルル,ガルフォード,橘右京,チャムチャムの6人から主人公を選択でき,初代サムスピをベースとした「邪天降臨之章」と真サムをベースとした「妖花慟哭之章」の2つの物語が収録されている。
また,上記のカコミで名前が登場した「ナコルル〜あのひとからのおくりもの」は,ナコルルが主役を務めるアドベンチャーゲーム。本作では,ミニゲームを交えつつ,全8章構成の物語が楽しめる。
2Dサムスピへの回帰
アスラ斬魔伝の登場から5年,2Dサムスピが帰ってきた。それが「サムライスピリッツ零」(2003年)である。当時,稼働に至るまでのファン(筆者含む)の期待値は相当に高かったが,シリーズの原点を彷彿とさせる雰囲気や駆け引きは上々の評価を得ることとなる。
紛うことなき2Dサムスピの復活ということで,多くの古参プレイヤーが戦場に戻ってきたことを筆者も覚えている。
ちなみに,当時の筆者はレラをメインキャラクターとして大会に参加していた。なぜレラだったのか? 彼女のビジュアル,口調,バックボーン,そのすべてがストライクゾーンのド真ん中。さらに,肌の露出がまったくない点もポイントが高かった。シクルゥと共に仕掛ける攻撃はスピーディで爽快感があり,勝っても負けても楽しいキャラクターだったのだ。
2004年には「サムライスピリッツ零SPECIAL」が登場。その名のとおり,サムスピ零をベースにしたバージョンアップ版だが,歴代ボスがプレイアブルキャラクターとして追加されている。
そして,現時点でプレイ可能な2Dサムスピの最終作となるのが「サムライスピリッツ 天下一剣客伝」だ。筆者が最もハマったサムスピでもある。天下一剣客伝の特徴は“お祭感”だろう。2Dサムスピの歴代キャラクターが総登場しており,プレイアブルキャラクター数は圧巻の41人(※アーケード版)。また,シリーズ作品のシステムが選択可能となっており,戦略の幅は無限大と言えるほどだった。
しかし,出血表現をはじめとするサムスピらしい過激さは薄まっており,明るい雰囲気になった点には賛否が分かれた(個人的には残念)。とはいえ,そのボリュームは魅力的であり,シリーズの集大成であることは間違いないだろう。
「勝負」の時は近い
サムスピシリーズは「剣戟対戦格闘ゲーム」というジャンルを“斬り”開いた先駆者だ。今でこそキャラクターが武器を交える対戦格闘ゲームはスタンダードになっているが,サムスピが対戦格闘ゲームの発展に多大な貢献をもたらし,重要な存在であったという意見に異論は出ないだろう。
また,徹底した「和」のテイストは海外での人気にもつながり,ほかに類を見ない世界観を貫き通してきたことも,ここまで支持されている理由だと感じる。
しかし,2008年にアーケードで稼働した「サムライスピリッツ閃」以降,グッズ展開などは行われていたものの,新作格闘ゲームとしてのサムスピシリーズが登場していなかったことは事実で,やきもきしていたファンも多かったと思う。そんな中での今回の最新作「SAMURAI SPIRITS」が発表されたことは,サムスピシリーズのファンにとって何物にも代えがたい喜びだ。
2019年6月27日の発売が発表された本作。発売日が近づくにつれて,さまざまな最新情報が公開されると共に,イベントなどでの出展も増えていくだろう。そう,「勝負」の時はすぐそこまで迫っている。
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