プレイレポート
辺境の宇宙でコロニーを股にかけるキャプテンになろう!“Falloutライク”なアクションRPG「アウター・ワールド」プレイレポート
本作はBethesda Softworksによって3D化される前の元祖「Fallout」や,「Fallout 3」のスピンアウト作品「Fallout: New Vegas」(以下,New Vegas)の開発をおこなったObsidian Entertainment(以下,Obsidian)が手がける3D RPGの最新作。“らしさ”を感じるレトロフューチャーな世界観をベースにしつつも,その舞台は地球から遙か離れた宇宙の果てのコロニー群となっており,まさに「直球のSF作品」となっているのが特徴だ。
筆者のように「宇宙を股にかけるアウトサイダーとその仲間たち」なんて言葉を聞くと,心がときめく人は多いのではないだろうか。
今回,そんなObsidianの新作をプレイしたので,そのレポートをお届けする。プラットフォームはPS4版で,使用したハードはPS4 Proとなっている。なお,本作のストーリーラインにも多少触れているので,ネタバレを気にする人はご注意を。
「アウター・ワールド」公式サイト
コールドスリープから目覚めた先は,未来の遙か宇宙の果て
プレイヤーの分身となる主人公は,地球から遙か離れた“最後のフロンティア”であるコロニー群「ハルシオン」に向かう植民船「ホープ」に乗り込んだ人間のひとりだ。巧みな宣伝に乗せられ船に乗り込んだ開拓者たちは,約10年の長い航海に備え,コールドスリープ(冷凍睡眠)状態で目的地に向かう。
しかし,何らかの事情により正常に航行を続けることが不可能になったホープは,大勢の人々を乗せたままハルシオンの片隅に放棄されることになってしまう。
それから約70年後に事態は急転する。ハルシオンの人々からホープという船も,地球から来た開拓者たちも忘れ去られた頃,フィニアス・ウェルズと名乗る自称科学者が無理矢理ホープに乗り込み,目についた主人公をコールドスリープから解凍する。「ホープに残る数十万人の開拓者たちを救うため,手を貸せ」と語るウェルズは,主人公を強制的にハルシオンの惑星の1つ「テラ2」に降下させてしまう。
こうして主人公は眠い目をこする時間もなく,「70年前から来た植民船ホープの生き残り」として,ハルシオンを股にかけた冒険を始めることになってしまったのだった。
本作は,開発元のObsidianとも縁が深い(3D化後の)Falloutを彷彿とさせる,3Dタイプのアクション性が高いRPGだ。ゲームを始めると,上で触れた簡単な導入ストーリーが語られた後,すぐにキャラクターメイキングが始まる。設定できるものは性別や顔のルックス,名前といったゲームの進行には直接関係ないものと,身体的な能力や特徴を表す「特性」,武器の取り扱いやハッキングの能力などを定める「スキル」,固有の小さなステータスボーナスを設定できる「適性」に分かれており,これらを組み合わせてお気に入りのキャラを作成する。
なおスキルや後述の特殊技能はお金を使うことで簡単にリセットできるが,それ以外の特製や適性などは“気楽に振り直し”なんてことはできないので,じっくり考えてから決めていきたい。
Falloutシリーズ経験者向けにステータスを整理しておくと,「特性」はS.P.E.C.I.A.L.で,「適性」は(New Vegasの)Traitsに近い存在だ。適性はTraitsと違い,設定してもデメリットはないので安心して選べるようになっている。またレベルが一定の値に上がるたびに,体力を大幅に上昇させたり,移動速度を上げたりといった能力を大きく底上げする「特殊技能」を取得できるようになるが,これはPERKだと思えばわかりやすいだろう。
経験値は敵を倒す,ロケーションを発見する,鍵開けに成功するといったさまざまな行為で得られるが,メインとなるのはクエストのクリアだ。クエストは大きな街に限らず,人がいれば大小さまざまなものを各地で引き受けられるが,ほとんどのものに複数の解決方法が用意されている。
例えば「ある情報を入手する必要がある」といったときは,関係者を説得したり騙したりして直接聞き出すのはもちろんのこと,ステルスで情報が眠る場所に忍び込んで端末をハックしてもいいし,金があるなら賄賂で解決できる場合もある。
特に会話では特性やスキルによってアンロックされる選択肢が非常に多く,知覚やエンジニアリングの知識で機械の不具合を見抜いたり,医療の知識があれば治療や診断で恩を売る,といったシチュエーションも珍しくない。魅力やトーク力で報酬を上乗せする……という定番の展開ももちろん多いが,それ以外にも色々な能力が思わぬ機会で役立つことがあり,戦闘能力以外のスキルを上げる楽しみも多いのが嬉しいところ。
また,会話系のスキルで敵に恐怖を与えて逃走するチャンスを得たりと,直接戦闘に役立つ仕組みになっているのも珍しい。
能力の強化はレベルアップ時に付与されるポイントを使うのだが,たまにイベントや戦闘中の立ち回りなどで,何かを犠牲にして特殊技能を得られる機会がある。これはサルへの恐怖症や,(頭にダメージを受けすぎたことによる)慢性的な脳震とうなど,ユニークなものが多い。
とはいえ,これを利用するかは任意なので,デメリットの方が多いと感じたら却下することもできる。こういった「弱点」は一度取得すると永続的に効果が出続けるようなので,よく考えてから判断したいところだ。
さまざまな派閥が暗躍するハルシオンで,自由気ままなキャプテン生活を送ろう
主人公はわけもわからない状態で“新たな生活”を始めることになるのだが,ある事情から,序盤ですぐに小型の宇宙船を手に入れられる。この宇宙船は,最初は動作不良に陥っているが,チュートリアル的な序盤のクエストをクリアすると「キャプテン」になって自由に乗り回せるようになり,主人公と仲間たちの拠点としても使用できる。
本作のマップは大まかに惑星単位で区切られ,その中の発着場(ドック)を経由してフィールドを切り替えるようになっているので,まさに“足”として多用するわけだ。一つのフィールドはそこまで広大ではないので,さまざまなエリアを船で移動して回ることになる。
船内はコンピュータ制御された操舵室,キャプテンや仲間たちの個室,武具の改造などができる貨物室などが用意されており,広めのダイニングでは仲間たちがよく語り合っている姿が確認できる。組み合わせによって掛け合いの内容も異なり,何となく相性の良し悪しがわかって面白い。
仲間は主に各地のコロニーで勧誘する形で6人まで増やすことが可能で,冒険には最大2人までコンパニオンとして連れて行ける。彼らは装備こそこちらで用意してやる必要があるが,戦闘中はきっちりと働いてサポートしてくれるほか,連れているだけで特徴に応じたスキルのボーナスが加算されるし,会話にも頻繁に絡んでくるので楽しい。また,それぞれに専用のクエストが用意されており,一緒に冒険を続けていくと,最初はよくわからなかった人となりが徐々に理解できる。
もちろん彼らを連れて行くかどうかは自由なので,気ままなひとり旅で進めていくのも悪くない。だが未知のコロニーでひとりぼっちというのもなかなか寂しいし,シビアな目で見ても戦闘の囮にはなるので,仲間の力を借りた方がスムーズに冒険も進むだろう。本作のコンパニオンはかなり細かく動作を設定できるほか,キャラごとにプレイヤーの任意のタイミングで発動できる必殺技のようなスキルが存在するので,そういう点でも見どころが多い。
ただ,仲間のおかげで戦闘や探索が楽になったとしても,クエストはそうはいかない。物語に絡む長めのものをはじめ,道中では数多くのクエスト引き受けることになるが,本作はとにかく「選択」を迫られる機会が多く,そつなく立ち回ろうとしても“全部が丸く収まる”といったことは決して多くない。誰か(あるいはどこか)の賞賛を得るには,別の誰かに泥をかぶってもらうしかないこともあり,否応なく派閥の戦いに巻き込まれるからだ。
前述のとおり,本作の舞台はハルシオンと呼ばれるコロニー群だ。ここは実質的にあらゆる権力を企業体が支配しており,そこに住む人はごく一部の“企業に属さない”組織や個人を除き,生存権を企業に握られている。例えばプレイヤーが最初に訪れるエッジウォーターという街では,何をするにも社則が優先されて怪我の治療すら自由に受けられず,伝染病が蔓延しているのに薬を支給されるのは,業務成績が良い者だけという有様だ。
つまり本作の世界観はまさに「ブラック企業が支配する世界」となっていて,登場する企業はVaultとかTecとかそんな名前の会社を思い出すような実態のところばかりなのだが,少なくともハルシオンのコロニー社会ではこれが当たり前となっている。
もちろんそんな状態に耐えられる人間ばかりではないので,一部は街を飛び出して脱走者のコミュニティを作ったり,略奪者のレイダーとなっていたりする。レイダーは話が通じず戦うだけの存在だが,脱走者は街から離れた場所に慎ましく小さな村を作っている。会話すればすぐにわかるが,明らかに“人間らしい”のは脱走者たちの方だ。
だがそんな状態はプレイヤーの登場によって,大きな変化を迎える。進行上必要なアイテムを入手するために,「どちらかの電力を断ち切る」というクエストを進める必要があるからだ。当然だが未来の世界においても,電気がなければまともな生活はできない。
つまり「強者で罪のない多数派を含む組織」を選ぶか,「弱者で少数派のドロップアウトした人々」を選ぶか,という選択を迫られることになる。当然だが,電力を遮断された方は激怒して,プレイヤーに対する評価は大幅に下がってしまう。
人道的には,邪悪な支配者の企業につばを吐き,弱者で少数派の脱走者たちに肩入れした方がいいように見える。だが実際は,そのエリアの食料を大量生産していたのは企業が運営する街で,そこの工場が停止することによって飢餓が発生し「人口が大幅に減少した」なんてことを後で知ることとなる。
こうなるとそもそも「何が人道的だったのか?」と考えてしまうし,純粋にゲーム視点で見ても規模が大きい街の方が店や施設も充実しているので“強者に肩入れ”した方が得だったのでは……などと考えてしまった。もちろん,それは弱者を踏みつけることによって得た利益かもしれない,といった後味の悪さはあるのだが。
といったように,本作は複数のクエストを引き受けても成果物を渡せるのはひとりだけで,その時点で他の派閥のクエストが失敗するなど,とにかく“選ぶ”機会が多い。前述のように力関係が明白なシチュエーションもあれば,裏の顔がある連中ばっかりが関わっているなんてこともあり,基本的に「絶対の正解はない」といった感じだ。なので自分の第一印象や価値観にしたがって,クエストを進めていくと後悔が少なくていいのではないかと思う。
オープンワールドではないが,自由度が高い。地球を飛び出し,イカれたコロニーで自分の選択を信じた冒険をしよう
本作の特徴的なシステムとしては,「タクティカル・タイム・ディレーション」と「緊急医療吸入器」,そして「ホログラフィック・マント」が挙げられるだろう。それぞれを簡単に説明しておきたい。
まずタクティカル・タイム・ディレーションは,戦闘中に(限らないが)ボタンを押して「時間の進みを遅くする」能力だ。冷凍睡眠の副作用という設定で,時間制限やクールダウン(チャージ)タイムはあるが,ゲージがあればいつでも発動して,敵の弱点や周囲の爆発オブジェクトなどを狙うことができる。スキルが上がると部位攻撃が可能になり,足を狙って敵の移動を遅くする,といったことも狙える。
時間をスローにできるシステム自体は決して珍しいものではないが,序盤から本当に気楽かつ頻繁に使用できるので,筆者のような射撃の下手なプレイヤーには嬉しい能力と感じた。
緊急医療吸入器も主に戦闘中に使うもので,具体的には「複数の回復や強化のアイテムを瞬時に使用する呼吸マスク」といったものだ。これは体力が減ったときに回復のために使うのはもちろんのこと,さまざまな消費アイテムをセットしておくと,同時に効果が発生する。例えば「回復薬 + 自然回復速度上昇 + 防御力上昇」といったセットにしておけば,強力な敵にも対処しやすくなる。感覚としては“即席調合装置”といった感じで,消耗品が道中で大量に手に入ることもあり,使い勝手はなかなか良好だ。
最後のホログラフィック・マントは,ステルスに使うアイテムの1つで,「関係者のIDを手に入れれば,立ち入り禁止区域で自動的に変装する」という機能を発揮する。ステルスというとどうしても逃げたり隠れたり,といった動きになりがちだが,このマントを利用するとコンパニオンも含め“全自動”で変装してくれるため,かなり気楽に下見や進入ができるのが嬉しいところ。バッテリー駆動なので長時間の利用は不可能だし,絶対バレないというものではないが,ホログラムで間抜けな連中を出し抜くのはなかなか痛快だ。
本作は,さまざまな要素がどんどん追加されていったFalloutシリーズに比べると,シンプルな方向に舵を切った印象だ。例えば「使用した装備は劣化する」という要素はあるが,クラフト要素はなく,装備の強化は使い捨てのパーツを取り付けるか,お金を払って数値を上げるだけ。ジャンク品も数多くあるが換金以外の使い道はないし,回復やバフ用のアイテムも,前述の緊急医療吸入器にとりあえず突っ込んで使えば何とかなる……といった感じだ。さらにロックピックやハッキングもミニゲームになっておらず,純粋に解錠アイテムの有無とスキル値のチェックのみとなっている。
また細かいところだが,武器の種類は複数あるものの弾薬は「軽量」「重」「エネルギー」の3種類しかなく,管理が比較的簡単だったのが個人的には嬉しかった。
冒頭でも書いたように,アウター・ワールドはObsidianの開発だけあって,Falloutシリーズ(特にNew Vegas)を彷彿とさせるところが少なくない。全体的な狂った世界観,メカニックを中心とした20世紀的なデザイン,伸ばすスキルによって選択肢が増えるクエスト,派閥による評価システム,コンパニオンへの力の入れようなど,“らしさ”を感じる部分は十分といった感じだ。
だが,視点は一人称に固定され三人称への切り替えはなく,巨大な1つのフィールドでプレイするオープンワールドを採用していないし,クラフトといった要素はばっさりと省かれているなど,異なる部分も目立つ。この辺りは好みが分かれるだろうが,個人的には十分にアリだ。
本作はボイスの吹き替えがおこなわれていないが,完全日本語版として海外版の発売と同時にリリースされている。一部のテキストに違和感を覚えることがあったが,進行に問題が出るようなものではない。また筆者がプレイした範囲に限られるが,特に大きな不具合にあうことなく,全体的に安定してプレイできたのも好印象だ。グラフィックス面では,ハルシオンのコロニーが想像以上に美しく幻想的で,印象に残る場所も多かった。
世界観や登場人物のアクが強く,万人向けの作品とは言いがたいが,FalloutシリーズやObsidianのファンはもちろんのこと,「宇宙を股にかけるSF・RPG」や「企業連合体が支配する宇宙コロニー」といったフレーズにピンとくるゲーマーには,秋の夜長を利用してぜひプレイしてもらいたい。
「アウター・ワールド」公式サイト
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