俺のコラボカフェ：Menu 001 「ファイナルファンタジーVI」でセリスがシドに食べさせた魚料理

　はじめまして。新連載「俺のコラボカフェ」を担当する，クッキングエンターテイナーの大西哲也と申します。東京都西調布にある「料理うまいBAR COCOCORO」でシェフをしたり，「COCOCOROチャンネル」というYouTubeチャンネルでYouTuberのようなことをやったりしています。

　私は北海道出身の36歳，小中高校生時代はゲーム大好きっ子でした。人口7400人の田舎町で“歩くゲーム情報局”と呼ばれ，知らない先輩が攻略情報を求めて電話をかけてくる，なんてこともよくありましたね。

　小学校2年生のときにゲームボーイ版「魔界塔士Sa・Ga」をプレイしてからというもの，すっかりスクウェア大好きっ子となりました。プレイしたスクウェアのゲームは，Sa・Gaシリーズはもちろん，「聖剣伝説」，「半熟英雄」，「ライブ・ア・ライブ」，「フロントミッション」，「ガンハザード」，「クロノ・トリガー」，「バハムートラグーン」と，挙げればキリがありません。私の青春はスクウェアのゲームとともにあったといっても過言ではないでしょう。そんな数あるスクウェア作品の中でも，スーパーファミコン版「ファイナルファンタジーVI」（以下，FF6）の思い出は特別です。

スーパーファミコン用「ファイナルファンタジーVI」1994年4月2日発売

　登場するキャラクターの魅力，スピーディで爽快な戦闘，魔石などによる成長の自由度の高さにプレイした当時は驚きました。そして最大4人のパーティメンバーを自由に変更できたのも新鮮でしたね。印象深いエピソードも多いですが，私がお届けするこの連載は料理がテーマです。そこで，今回はFF6から連想した料理を作っていきましょう。

　とはいえ，FF6のストーリーを思い返してみても，料理が出てくるシーンはそれほど多くないです。私の印象に残っているのはセリスがシドに魚を食べさせて看病するイベントです。このイベントはセリスが捕ってくる魚の種類によって，シドの体調が変化するというものでした。覚えてます？

「おじいちゃん，魚よ。食べて」
「ありがとう。むしゃ，むしゃ。ゴホッ，ゴホッ。なかなか治らんのう」

　この流れだけ見ると，セリスは魚をそのまま食べさせているような気もしますが，衰弱している人に魚をそのまま食べさせているとは考えづらいです。彼女は英才教育を受けた元帝国軍将軍，オペラ女優の代役すらやってのける才女です。シドの体調を考慮して手早く調理していたに違いありません。そしてシドは相当な魚好きで，うまい魚を食べれば元気になり，まずい魚を食べると気持ちが沈んで病気への抵抗力が弱ってしまう体質だったのでしょう。うん，きっとそうだ。

　陸から近い位置でわりと簡単に手に入り，抜群においしく，食べ方が多い魚といえば，「アジ」が近いのではないでしょうか。アジは価格も安く，刺身，焼き魚，フライと何にしてもおいしい万能選手。物理攻撃だけでなく魔法も使えて美しいという，まるでセリスのような存在ではありませんか。これはもうアジでいくしかない！　

　魚料理はハードルが高いと思っている人が多いかもしれませんが，意外なほど簡単で抜群においしいです。また，青魚に多く含まれる，必須脂肪酸の一種であるDHAやEPAは，脳細胞を活性化するなんてこともいわれていますので，頭を酷使するゲーマーにも最適。魚をさばいて料理できる人は男女問わずかっこいいですし，魚をさばくのがきっかけで料理好きになる人は多いです。さあ，一緒にレッツトライ！

　と，なにを作るかを言っていませんでしたね。いろいろな料理が思いつきますが，今回は，手早くシンプルにいきましょう。モタモタしているとシドの容態が悪化してしまいますからね。というわけで，今回は一匹のアジを使って，「なめろう」と「あら汁」を作ります。ちなみに私はゲーム内で，“まずいさかな”ばかりを食べさせてしまい，シドは帰らぬ人に……，ごめんよシド。今回は俺の料理で全快させてやるぜ！

材料

■アジ（手のひらサイズかもう少し大きいもの）1匹
A：なめろう用
アジの身の部分，味噌大さじ1，しょうゆ小さじ1，ねぎ10グラム，あれば大葉1枚とみょうが1/4個，ごま油少々

B：あら汁用
下処理したアジの頭と骨部分，水500cc，塩5グラムくらい（味見しながら調整），大根20グラム，にんじん20グラム

調理開始！

（1）まずアジは包丁で表面を尾から頭の方向に撫でてウロコを落とします。その後に水で洗い，キッチンペーパーなどで水気を取りましょう


（2）頭を胸ビレごとズバッと落とします。必殺剣 牙！


（3）肛門から頭方向に腹を割いて内蔵を取り，腹の中をよく洗い水気を取ります。頭についた赤いギザギザした部分「エラ」も取っておきましょう（魚の下処理は，血や内蔵を取るときに水気をよく拭き取るのが，臭みを出さずに味も鮮度も保つコツです）


（4）身を切り取ります。まな板にアジを水平に置き，包丁も水平に。頭のほうから背骨のちょいと上を骨ごとズバッとざんてつけん。裏側も同じように真ざんてつけん。これが三枚おろしです。中骨は二等分くらいに切っておきましょう


（5）腹骨部分を大胆にすき取ります。身の間に残った小骨は取ったほうがよいですが，ミンチにすればそれほど気にならなくなるので，面倒ならそのままでも問題ないです


（6）次は皮を取りましょう。皮を裏・身を表に。頭側のほうにちょいと切れ目を入れて皮を抑えながら包丁の背中を下にして身を押して皮を剥がしていきます。ちょっと難しいけどもう少しだから頑張って


（7）頭と背骨は臭みを取るため，塩をまぶして10分くらい冷蔵庫へ。こうすることで余分な水分とともに臭みが抜けます。その間になめろうを作ります


（8）アジの身を包丁で叩くように細かくミンチにします，「にとうりゅう×みだれうち！」……もちろん，包丁は1本でもいですよ


（9）ある程度細かくなったら味噌，醤油，ごま油，刻んだネギ，生姜，大葉，みょうがを入れ，さらに混ぜながら刻んで完成！

なめろうの盛り付け例。余った大葉や大根の千切り，海藻などを添えるとGoodです

（10）アラは水で塩をきれいに流し，水500ccくらいと一緒に鍋に入れて中火にかけます。沸騰したらあくを取り，いちょう切りにした大根と人参を入れて弱火で10分程度煮込み，塩で味を整えればできあがり

実食

　さあ食べてみましょう。これは，「ごきげんうまい！！！」

　アラ汁はやさしい味です。お好みで昆布やだしの素を追加しても良いでしょう。めんつゆを入れてみるのもいいかもしれません。
　なめろうもうまいですね。アジの強い旨味と和の調味料，薬味が相乗効果で「夢幻闘舞」しています。弱ったシドも「メシだ！　メシだ！　やまほどもってこい」と言ってしまうこと請け合いです。大人だったら日本酒も欠かせません。乾杯はもちろん「故郷に」で。


　魚をさばくのが初めての人にとっては難しいかもしれませんが，回数を重ねるたびにどんどん上達するはずです。そして他の料理も作ってみたくなったり，より良い剣，ではなくて包丁がほしくなったりするでしょう。

　さあ，張り切ってスタートした新連載「俺のコラボカフェ」はいかがでしたでしょうか？　実際に作った人は「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」といったハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれると嬉しいです。あわせて，感想や作って欲しいメニューなどの意見もどうぞ。

　また，今回のメニューを作ってみた動画は「COCOCOROチャンネル」でも公開予定ですのでそちらもご覧ください。それでは，記事を読んでくださり，ありがとうございました。またお会いしましょう。したっけ！

やっぱり白飯があいます。これでシドも全快するでしょう

■■大西哲也（クッキングエンターテイナー）■■
　あるときは，東京都，西調布にある「料理うまいBARCOCOCORO」のシェフ，またあるときは，「COCOCOROチャンネル」のYouTuber，しかしてその実体は……，料理を通じて多くの人を喜ばせたいと日々奮闘する，クッキングエンターテイナーだ！　そんな（どんな？）大西氏は魚料理の研究がマイブーム。活魚を仕入れて魚の〆の段階からやっているそう。（お店はBARなのに）　

※次回の掲載は2019年3月23日を予定しています