連載
孤独のボドゲ 第2回:ヴァイキング達の生活にスポットを当てたワーカープレイスメントゲーム「オーディンの祝祭」
ボードゲームと聞くと複数人でプレイするものと思われがちだが,実は1人でも遊べる作品は多く存在する。月間連載の「孤独のボドゲ」では,そんな1人でも遊べるボードゲームを紹介しよう。ポイントとなるのは1人“でも”というところで,1人で遊んでみて面白ければ,友達を誘って一緒に遊べるというわけだ。
オーディンの祝祭
「孤独のボドゲ」第2回は,「アグリコラ」で有名なドイツのゲームクリエイター,ウヴェ・ローゼンベルク氏が手がける「オーディンの祝祭」を紹介しよう。国内では,テンデイズゲームズが翻訳と販売を行っている本作は,ヴァイキング達の生活にスポットを当てたワーカープレイスメントゲームだ。家畜の繁殖や狩猟といった生活系アクションから,略奪や恐喝といったヴァイキングらしいアクションまであり,戦略の幅広さがポイントになっている。
【ワーカープレイスメント】
しれっとワーカープレイスメントと書いてみたものの,普段ボードゲームに触れない人にとってはなじみのないワードだろう。ワーカープレイスメントとは,手駒の労働者(ワーカー)を働かせる場所に置いて(プレイスメント),アクションを実行させ,そこで物品や収入などを得て,働いてくれたワーカーに対価を払うというメカニクスを採用しているボードーゲームを指すジャンルの1つだ。
「オーディンの祝祭」の場合は,労働者であるヴァイキングを,狩猟や略奪といったアクションマスの上に置いて,食料やお宝を手に入れていくことになる。
本作は最大4人で対戦できるが,ぼっちボードゲーマーのために,1人用のルールもしっかりと用意されている。複数人で遊ぶ場合でも,誰か1人はルールを把握しておいた方がスムーズに進むので,ボドゲ会などでこれを出すのであれば,1人用ルールである程度流れを把握しておいたほうが良いだろう。
コンポーネントをチェック
デジタルゲームにはないボードゲームの魅力といえば,やはりコンポーネントである。作品によっては凝ったギミックを持つコンポーネントもあり,それを触ったり動かしたりするのが,これまた面白いのである。そんなわけで,ボードゲームの華ともいえるコンポーネントを見ていこう。
○プレイヤーボード
プレイヤーごとに1枚ずつ配られる専用のボード。ヴァイキング達の拠点であり,「中央広場」「宴会場」「物品置き場」「家畜小屋」「船着き場」が描かれている。このボードを見るだけでなんだかワクワクしてしまうのは,筆者だけだろうか。
【物品置き場について】
このゲームでとても重要なのが物品置き場だ。よく見ると「−1」と描かれたマスがたくさんあるのが分かると思うが,このマスを物品タイルや銀貨で隠さないと,最終獲得点から見えている「−1」マスの分だけ,点数を引かれてしまう。
○アクションボード
オーディンの祝祭には,「狩猟をして皮と肉を手に入れる」「採掘で鉱石と石を入手する」「銀貨を払って食料を手に入れる」「家畜を買う」「家畜を妊娠させる」などなど,アクションが60種類以上もある。アクションボードには,それらのアクションを示す絵柄が描かれており,その上にヴァイキングを配置することで,そこに示された仕事が実行できるわけだ。
本作を初めてプレイする人にこのボードを見せると,「うわっ難しそう!」と言われることが多いが,実際のところ,どのアクションで何ができるのかは絵を見ただけで分かるので,すぐに飲み込めるだろう。
○サマリータイル
本作の1ラウンドは12フェーズで構成されており,各フェーズでやるべきことはサマリータイルで確認できる。
○物品タイル
ゲーム中に獲得できる物品タイルは,干し魚や乳などが描かれた「食料タイル」,牛や羊が描かれた「家畜タイル」,毛皮や衣服などが描かれた「製品タイル」の3種類。これらを種類ごとに収納できるボックスも,コンポーネントの1つとして付いてくるところが太っ腹だ。
○特殊タイル / 特殊タイル用サプライボード
「王冠」や「聖杯」「アミュレット」など,通常の物品よりも価値の高いアイテムは特殊タイルとしてまとめられている。これらを獲得するには,商船を手に入れて銀貨を支払うか,ドラゴン船を手に入れて略奪しなければならない。例外として,「やっとこ」が描かれたエリアにある特殊タイルは,工芸アクションで入手できる。
○ヴァイキング駒
ヴァイキング駒は4色あり,2人以上で遊ぶ場合はそれぞれの担当色を決めてからゲームをスタートする。
○資源駒
木材,石材,鉱石を示す木製駒。こういった駒を実際にやり取りするのが,ボードゲームの醍醐味だ。
○スタートプレイヤー駒
そのラウンドの1番手を示すスタートプレイヤー駒(ヘラジカ)。かわいい。
○銀貨
物品の購入などに使う通貨。1枚ずつバラバラに用意されている1銀のほか,2枚つながった2銀,4枚つながった4銀,10枚つながった10銀もある。10銀をもらったときの嬉しさは,なかなかのもの。
○職業カード/武器カード
コンポーネントとして用意されているカードは,特殊なアクションが実行できる職業カードと,狩猟や捕鯨時にボーナスを与える武器カードの2種類だけだ。とくに職業カードは,何を引いたかで戦略の方向性が変わることもあるので,効果はしっかりと確認しておこう。
○ダイス
狩猟や捕鯨,略奪といったアクションで使用し,出目によって成功に必要な数の木材や武器カードの数が決まる。ちなみに略奪といっても,プレイヤーの資源を直接奪うわけではない。
○シングの罰則タイル
ラウンドごとに行われる宴で十分な食料を提供できなかった場合,罰としてこれを受け取ることに。これ1枚で−3点となる。
○船用タイル
全プレイヤー共有の船着き場。船はここで購入して,自分のボードの船着き場に配置する。船は,「捕鯨船」「商船」「ドラゴン船」の3種類あり,左から順に3銀,5銀,8銀と値段が上がっていく。ちなみに,タイルの右上にある数字は得点数である。これはほかのタイルにもあるので,ここを見て何点もらえるのか確認しよう
○探検ボード
孤島を表すボードで,船を持っていれば専用のアクションで獲得できる。持っているだけで点数になるが,物品置き場と同じく,島にある「−1」マスを埋めないと結果的に点数を損することに。
○建物タイル
建物タイルは,「倉庫」「石造家屋」「ロングハウス」の3種類で,こちらも専用のアクションで獲得できる。探検ボードと同じく,持っているだけで点数になるが,「−1」を埋められなければ意味がない。
○山岳タイル
「木材」や「石材」といった自然物資を管理するタイル。絵柄と同じ物資の駒を置くことができる。
◯セットアップ完了図
ぼっちプレイの流れ
1人プレイの場合はスコアアタックが目的となる。うまいプレイヤーだと100点以上も狙えるそうだが,初プレイだとなかなか難しいと思うので,まずは50点を目指してみよう。ということで,今回のぼっちプレイでは50点を目指して遊んでみる。
ちなみにこのゲームを1人でプレイする場合は,2色のヴァイキング駒をラウンドごとに交互で使うことになる。こうすると,手前のラウンドで使ったアクション上にヴァイキング駒が乗ったままになるので,強いアクションを2ラウンド連続で行えなくなるわけだ。よく考えられている。
リプレイに入る前に点数についても整理しておこう。実際にオーディンの祝祭で点数になるものは以下のとおりだ。
・船:捕鯨船3点,商船5点,ドラゴン船8点
・移住:船を放棄する代わりに裏返すと,商船が18点,ドラゴン船が21点
・探検:探検ボードの右上に描かれたぶんの点数
・建物:建物タイルの右上に描かれたぶんの点数
・羊と牛:羊は2点(妊娠していると3点),牛は3点(妊娠していると4点)
・職業:使用した職業カードに点数があればそれを加算
ゲーム開始時点では,プレイヤーボードの物品置き場には何も置かれていない。となると,86マス分の「−1」が見えている状態なので,すなわち−86点からのスタートとなる。50点を目指すとなると,単純計算で136点分の動きが必要になるわけだ。
今回筆者が狙うのは,家畜戦法だ。羊と牛をたくさん購入して,乳や毛皮などの副産物をアップグレードし,上位の物品でマイナスのマスを埋めていくというもの。捕鯨や狩猟,略奪と違ってダイス運に左右されない安定感がポイントだ。
■フェーズ1:新たなヴァイキング駒を1つ獲得
ラウンドの始まりであるフェーズ1では,宴会場の一番左にいるヴァイキングを中央広場に呼び出す。中央広場にはすでに5人のヴァイキングが待機しているので,初期手駒5個に1つを加えた6駒が,最初のラウンドで働いてくれるヴァイキングの数だ。これ以降,ラウンドを重ねるたびに働き手が増えることになる。
■フェーズ2:収穫
収穫は,ラウンドによってあったりなかったりする。そのラウンドで収穫があるかどうかは,宴会場の下にある収穫トラックで確認可能だ。1ラウンド目は,番号1の作物(エンドウ豆,亜麻,豆)が1ずつもらえるので,ありがたく頂いておく。
■フェーズ3:探検ボードの反転と銀貨の配置
特定のラウンドでは,指定された探検ボードを裏返して,そのほかの探検ボードに銀貨2枚を配置する(すでに所持している探検ボードには影響なし)。探検ボードが裏返ると,より点数の高い島が現れるので,対戦プレイではひっくり返るまで待つか,そのまえに取ってしまうかという読み合いも発生したりするわけだ。ともあれ,1ラウンド目には何も指示がないので,ここはスルー。
■フェーズ4:武器カードの獲得
ここで武器カードの山札から1枚引く。武器は狩猟や捕鯨に使うが,今回は家畜戦法なので,出番はないかも。
■フェーズ5:アクション
いよいよメインフェーズだ。まずは牛の購入アクションがある家畜市場を見ていこう。牛の購入手段は,「ヴァイキング2人を使い,3銀を払って牛1頭と乳1杯」「ヴァイキング3人を使い,1銀を払って牛1頭」「ヴァイキング4人を使い,3銀払って羊と牛1頭ずつ」の3パターンがあることが分かった。
ここで狙いたいのは「ヴァイキング2人を使い,3銀を払って牛1頭と乳1杯」である。そうなると,残り4人のヴァイキングで3銀を手に入れる方法を考えなければならない。
アクションボードとにらめっこしていたところ,ヴァイキング1人を週市に派遣すると,エンドウ豆と1銀がもらえるようだ。加えて,2人に生産アクションをさせると,2つの蜂蜜酒と2銀が手に入ることも確認。よし,これで行こう。
残るヴァイキング1駒は,山岳と交易アクションの1つめにある「資源獲得とアップグレード」に配置する。これで,好きな山岳タイルを選び,左から数えて1つめの資源をもらいつつ,先ほど手に入れた乳を羊毛にアップグレードした。
この羊毛はさっそく物品置き場に配置する。問題はどこに置くかだ。ここで,配置のルールとボーナスについてをざっくりと紹介しておこう。
・物品を配置するタイミングは自由。一度配置する場所を決めたら,動かせない
・物品置き場に配置できるのは,緑色と青色の物品タイルのみ。要するに,橙と赤タイルである食料は配置できない。
・緑色のタイル同士は隣接して置けない。青色タイルは関係なく配置可能
・物品の代わりに鉱石や銀貨を配置できる(空いた1マスを埋めるときに便利)。
・物品置き場で見えている一番少ない銀貨マスが,毎ターンの収入になる。
・銀貨マスを埋めたいときは,その銀貨マスを頂点とした正方形内にある,すべてのマスを埋めなければならない。
・物品が描かれているマスの周りを埋めることで,その物品が毎ラウンドボーナスとしてもらえる。なお,物品マスはすでに埋まっているマスとして扱うが,物品タイルで埋めることは可能である。
羊毛は緑タイルなので隣接制限を気にする必要があるが,今回のケースだと物品置き場には何もないので,好きな場所に配置できる。マイナスのマスは,最終ラウンドの終了時までに埋まっていればいいので,まずは毎ラウンドの収入を増やすために銀貨マスを埋めていくことにした。
■フェーズ6:スタートプレイヤーの決定
このフェーズでは,最後にヴァイキング駒を置いたプレイヤーにヘラジカちゃんを渡す。そのプレイヤーが次のラウンドの1番手になるわけだ。無論,ぼっちプレイでは関係ないので,このフェーズはスキップして良い。
■フェーズ7:収入
ここでは,プレイヤーボードの物品置き場に見える,一番少ない銀貨マスと同じ銀貨がもらえる。筆者は先ほどのフェーズで羊毛を使い,0銀と1銀のマスを埋めたので,ここでは2銀が収入となるわけだ。
■フェーズ8:家畜の増殖
家畜戦略において一番楽しいフェーズである。ここでは家畜小屋にいる家畜の数によって妊娠と出産の処理が行われる。家畜が妊娠するには同じ種類の家畜が2頭必要で,条件が揃っている場合はどちらか1頭の家畜タイルを裏返す。
また,すでに妊娠している家畜がいた場合は新しい家畜を増やすことができる。これが出産の処理である。ちなみに出産したフェーズでは,妊娠が発生しない(牛と羊は別々に処理)。また残念なことに,同じ家畜が4頭いても妊娠できるのは一頭だけだ。いずれにせよ,現段階で1頭しかいない筆者には関係のない話である。本番は次のラウンドからだ。
■フェーズ9:饗宴
やってきました饗宴フェーズ。ここでは宴会場にあるマスに食料タイルを配置して,ヴァイキング達を労うことになる。ここでも,橙色のタイルは隣接して置けないという配置ルールがあるので,食料は十分だぜと油断していると痛い目を見ることに。今回はアクションフェーズで蜂蜜酒を手に入れていたので,余裕でクリアできた。
■フェーズ10:ボーナス
物品置き場にある物品マスの周囲が埋まっていれば,その物品がもらえる。今のところ筆者には関係なし。
■フェーズ11:山岳タイルの追加と更新
各山岳タイルの一番左にある資源を取り除いて,新しい山岳タイル1枚を追加する。このタイルに駒を並べる作業が地味に面倒だったりする。
■フェーズ12:アクションボードからヴァイキングを回収
通常ならばここで,アクションボードに配置した駒をすべて回収するのだが,ぼっちプレイの場合は一番始めに説明したとおりそのままにしておく。次のラウンドでは,もう1つの色のヴァイキング駒を使うわけだ。
さて1ラウンドの流れを長々と書いて見たが,慣れれば1ラウンドの処理に5分もかからなくなる。この点は安心してほしい。あとはこれを6ラウンド繰り返すだけだ。すべてのラウンドをフェーズごとに書いていると,4Gamer史上最大のスクロール量になりかねないので,ここからはアクションフェーズのリプレイのみを書いていく。
■ラウンド2
新たにヴァイキングが加わり,このラウンドでは7人のヴァイキングを配置できる。牛を増やすにはもう1頭いれば十分なので,まずは家畜市場に3人を派遣して1銀で牛1頭を獲得。
次にヴァイキング1人に生産アクション「牛1につき乳1杯」を実行させ,乳を2杯手に入れる。そうしたら,交易アクションにある「2つの物品をアップグレード」に1人のヴァイキングを配置し,手持ちの乳2杯を羊毛2枚にチェンジ。羊毛の配置は一旦保留して,残りの1人に狩猟を命じる。筆者は現在,弓カードが1枚と木材1つを持っているので,ダイスで2以下が出れば狩猟成功だ。
■ラウンド3
このラウンドで使えるヴァイキングは8駒。まずは交易アクション「3つの物品をアップグレード」に2人のヴァイキングを配置し,羊毛2を収納箱2つに,妊娠していないほうの牛を衣服にアップグレードした。この3つの物品は以下のように配置。
次に家畜市場の「1銀で羊1頭」に2人を配置して,羊も獲得。順調に家畜を増やしていく。
■ラウンド4
3ラウンド目の繁殖フェーズで牛が1頭増えたので,ここで「牛1につき乳1杯」を再度実行。「4つの物品をアップグレード」にヴァイキングを派遣し,手に入れた3つの乳と牛1頭を羊毛3つと衣服にアップグレード。さらに「2つの物品をアップグレード」で,先ほどの羊毛1つを収納箱,衣服を埋蔵銀に。このラウンドで入手した物品は以下のように配置した。
■ラウンド5
なんやかんやで少しずつ溜まっていた木材を使い「商船」と「ドラゴン船」を入手。そろそろマイナスマスを埋め始めたいので,アップグレードアクションで牛と羊を物品に変え,これを配置していく。
■ラウンド6
「ここらで一発豪快なアクションを」と思い,ヴァイキングが4人も必要なアクション「香辛料と1銀を獲得。牛がいれば乳2つ,羊が入れば羊毛1」を実行。今まで配置しないでいた物品も合わせてすべてアップグレード。物品置き場のマイナスタイルを一気に埋めていく。
■ラウンド7
ついに迎える最終ラウンド。ここで得点を一気に伸ばしていきたいところ。船着き場で腐らせているドラゴン船は,移住アクションでひっくり返すと21点にもなるので,まずは移住アクションと行きたいところだが,せっかくのドラゴン船なので略奪をしてみることに。
あとはアップグレードアクションで,家畜達を物品に。これらを配置することで,物品置き場のマスがすべて埋まった。
7ラウンド目の饗宴を終えるとゲーム終了となる。今回の獲得点数は,移住で21点,商船で5点,最終ラウンドでの収入を含めた銀で21点,牛で6点の合計53点となった。なんとか目標の50点を超えられたが,ちょっとギリギリすぎたか。今回は職業カードなどを一切使っていなかったので,もっとうまくやれば80点以上を狙えるかもしれない。
以上が1人プレイの流れになる。アクションボードを見ても分かるとおり,本作は得点につながる行動が多岐にわたるので,プレイを終えた段階ですぐに別の戦略をいちから試してみたくなる。ワーカープレイスメント系のゲームにはそういった中毒性を秘めた作品が多く,筆者の周りでも,普段は戦略シムなどをプレイしない人がハマったりしているので,興味のある人はぜひ一度遊んでみてほしい。なお,孤独のボドゲ 第3回は3月7日掲載予定なのでお楽しみに。
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