アニプレックスが2022年3月10日にリリースした“手作りノートアドベンチャー”こと
「RPGタイム!~ライトの伝説~」(
PC /
Xbox Series X /
Xbox One)のプレイレポートをお届けする。
本作は,小学校の放課後の時間に,ゲームクリエイターを目指す男の子,
ケンタくんによる手作りのノートRPGを遊ばせてもらう……という体のゲームだ。東京ゲームショウ メディアアワードの
4Gamer部門大賞など,発売前からさまざまな賞に輝くといった,話題性の高い作品だったので,タイトル名は聞いたことがあるという人も多いことだろう。と同時に,どういうゲームなのかはよく分からないという人も多いはず。
そんな本作をプレイする機会を得たので,RPGが好きで,小学生の頃にゲームブックを作ったりもしていて,おまけに名前までケンタくんとちょっと似ている筆者のレポートを読んでもらいたい。なお,今回プレイしたのはXbox Series X版だ。
怒涛のケンタくん劇場,開幕!
ノートと鉛筆が織りなす,無限の可能性に震えろ
ある日の,小学校の放課後。友人のケンタくんに,彼が作ったというノートRPG「ライトの伝説」で遊ばないかと誘われる。
サッカー,RPG,バスケという選択肢に「バスケ!」と即答すると,「バスケね オッケー! じゃあ体育館に出発! レイアップシュート練習しよっか! って ちがう ちが~う!」と小学生とは思えないノリツッコミを決めるケンタくん
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光の城に侵攻してきた魔王デスゴッドと,その軍勢。勇者ライトはその危機を救うべく,光の城を見渡せる崖の上に降り立った……というところから物語は始まる。プレイヤー=勇者ライトがすべきことや操作方法は,ゲームマスターであるケンタくんが細かく解説してくれる。
ライトは画面中央にいるのだが,分かるだろうか。ライトが颯爽と飛び降りた後,城門前に走って行くまでをプレイヤーが操作することになる
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 マンガで進行するシーンも。読みやすい手書きの文字と温かみのある絵柄は,かつて流行した,マンガが描かれた文房具「エスパークス」シリーズを彷彿とさせる |
ここでいう「ゲームマスター」というのは,テーブルトークRPGなどでおなじみの進行管理役だ。本作はケンタくんが作った壮大なゲームブックを体験するような内容であり,画面から得られる情報だけでは足りない部分はすべてケンタくんが都度解説してくれる。
姫様のセリフもケンタくんが言っている。頭には,学芸会で付ける役のお面のようなものを付けており,芸が細かい
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魔王の圧倒的な力により,姫はさらわれ,勇者ライトは遠くの洞窟に飛ばされてしまう。このプロローグは,マンガと人形劇スタイルで展開され,とにかくよく動く。人形は紙とストローをホチキスで留めて作られており,魔王の人形をクルッと回して勇者を吹っ飛ばすと,魔王の人形の裏側に「勇者の身を案ずる姫」のコマが描いてあるという手の込みようだ。
右上のケンタくんをよく見ると,手に勇者の人形を持っている。すべてケンタくんが操作しているのだろう
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魔王にさらわれた姫と,それを追おうとするも,一旦遠くに離されてしまう勇者という構図は非常にベタで,小学生らしさを感じさせる内容だ。飛ばされた先の洞窟からが本当の冒険の始まりで,ケンタくんがゲームマスターとして本格的に参戦してくる。
消しゴムで道を消したり,宝箱を描き足したり……
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プレイヤーに選択を迫ってくることも。カワイイ登り方って何だ……と選んでみると,想像の斜め上をいく
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実際の石をノートの上に乗せるというスタイルで突然の隕石落下を表すケンタくん。ライトのHPが尽きるとゲームオーバーページに飛ぶが,何度でも復活できる
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RPGらしく,バトルシーンもある。左スティックで攻撃位置を,右スティックを倒す方向で「剣で斬る」という行動を行う。周りにはいろいろな物があり,プレイヤーの観察力と遊び心を試される
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本作のお遊び要素のひとつ,「ミニニン探し」。ページ内のどこかに隠れている小さい忍者「ミニニン」を探し当てるというもので,ほぼすべてのページに存在する。あくまでおまけ要素なので探さなくてもいいのだが,新しいページに進むごとに,ついつい探してしまう
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で,出た~,たぬき暗号。小学生の頃,誰もが一度は作ったはず……
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怒涛のスクショラッシュをお届けしたが,本作はこんな感じで進み,次から次へといろんなものが飛び出してきて飽きさせない。ほぼ喋りっぱなしでプレイヤーをガイドする
ケンタくんのエンターテイナーっぷりに圧倒されながら,ノートに描かれた洞窟世界に没入していく。
洞窟内なのに隕石が落下してゲームオーバーになったりするあたりからその片鱗を見せていたが,その後も小学生特有の「絶対に予想がつかない超展開」の連続。ファンタジーRPGの世界観かと思いきや,唐突に戦車が出てきて,しかも戦車ごとゲーム内の電脳世界に飛ばされて,ゲーム内ゲームが始まったりする。こうやって説明していても,「お前は何を言っているんだ」と思われそうだ。
なぜかモグラと野球勝負。エスカレートした結果,モグラは戦車を持ち出して……
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モグラが作ったゲーム「TANK TIME」の世界へ。ちゃんとドットで描かれている風のグラフィックスになっている
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戦車に乗ったままミミズを100匹集め,モグラのお店でアイテムと交換してもらうシーンがあるのだが,このお店では,ミミズを1000匹集めると交換できるアイテムも存在する。ストーリー的には100匹で交換できる物さえあれば先へ進めるのだが,「1000匹集めたらどうなるんだ……?」と好奇心が刺激される。このように,あえて順路に逆らった寄り道要素も用意されているので,1回のプレイですべてを知り尽くすのは難しいかもしれない。
気になる1000ミミズの品。プレイヤーが「どうなる?」と思ってとる行動の先が,しっかりと作り込まれている
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この世界のモンスターたちの間で流通している新聞……らしい。当然のように,この世界オリジナルの文字で書かれている。ケンタくん……キミは何者なんだい……?
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そんなこんなで洞窟を抜けると,「旅立ちの町」に到着する。この町ではライトの仲間となる者たちや,クセのある住人たちとの出会いがあり,「いかにもRPG!」な雰囲気に満ちあふれている。ケンタくんお手製のクエストリストもあるので,次に何をやるべきなのか迷うことなく進めるはずだ。
町は横にページをめくっていき,数ページに渡って行き来できる。「冒険学校」なるものも
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通称「○×ゲーム」,いわゆる「三目並べ」。小学生のとき,誰もがやっただろう
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旅立ちの町からは2章となり,これでプロローグと1章が終わったことになる。ここまではプレイ時間にすると1時間半~2時間ほどだと思うが,体感では3時間くらいのボリュームに感じられた。
シーンの密度が濃いため,思わず画面に見入り,没入感が高い。
ゲームマスターであるケンタくんのガイドを常に受けながらの進行という,既存のゲームにはない体験のため,最初は休憩を入れようにも,どこで一旦中断すればいいのか分からない。
時折,自動でセーブはされているようなので,「メニューにタイトル画面に戻るコマンドとかあるかな……」と思ってメニューボタンを押したら,ケンタくんが超ノリノリでメニュー画面の解説をし始める。メニュー画面の凝りっぷりもスゴいため,「い,いや,あの,ケンタくん。俺は今,中断する方法を探していただけで……」と狼狽してしまう。
タイトル画面に説明書があることに気付き,読もうとすると,壮大な「説明書ダンジョン」の紹介が始まる。ケ,ケンタくん,ちょっと待って……
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キャラクター紹介のページでは,唐突に「ライトを探せ!」が始まったりもする。さぁ,キミはライトを見つけられるかなっ!?(児童誌口調)
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ケンタくんが黙っている時間がほとんどないと言ってもいいくらいなので,プレイヤーが「ケンタくんのメッセージ送り」に費やす時間は結構なものになる。メッセージ送りが完了しないとライトが操作できないため,プレイヤーが動きながらケンタくんの発言にも目をやれる……という感じだったら,よりスムーズにプレイできるのではとも思った。
ケンタくんとゲームを進めていると「小学生男子の無尽蔵とも思えるエネルギーに付き合う大人の疲労感」のようなものを感じる。自分が歳をとったという,あまり嬉しくないことに気付くのだが,「そうか,子供だった頃の自分の行動に付き合ってくれていた親や教師はこんな気持ちだったのか」というある種のノスタルジーを感じ,これもまた,本作がもたらす貴重な体験のひとつだと気付くのだ。
次々と襲い来る,小学生男子の大好物
加速度的に楽しくなっていくライトの冒険
中盤に入ってくると,「巨大迷路」「忍者の里」「魔女の館」といった,小学生男子が好きそうな要素が次々と出てくる。とくに巨大迷路を見たときは,このみ ひかる先生の「ぴょこたんのめいろあそび」シリーズを読んで育った世代として「興奮してきたな……」という思いが抑え切れなかった。
迷路が嫌いな男子なんていません!
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子供のころに迷路を描いて作ってみたことがある人なら分かってもらえると思うのだが,迷路作りというものは高いセンスを要する。こんな見開きページの大迷路ともなると,相当うまく作らないと,ゴールまでの過程で行かなくて済んでしまうエリアが出てくるのだ。全エリアをまんべんなくウロウロさせつつ,ほどよく迷わせてゴールへ導く迷路作りは本当に難しい。
迷いの森の迷路は,各所でイベントが発生。ホント,あの手この手でプレイヤーを楽しませようとしてくるやん……?
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「魔女の館」のボス,魔女ミザリー。こわ~い魔女……という設定のはずだが,ひたすら可愛い。「~だぁい?」という喋り方がちょっと,にしおかすみこさんっぽくもあるが,そこも含めて可愛い
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「魔女の館」は,本作のなかでも筆者が最も好きなステージだ。このステージはホラー仕立てになっており,ライトは館の入口で武器を奪われてしまう。そして魔女の手下である,恐ろしい怪人・フライマンが登場し,ことあるごとにライトに襲いかかる。つまり,戦う手段を持たないライトはフライマンから逃げ回るしかなく,ホラーゲームあるあると言ってもいい「隠れてやり過ごす」ことを主軸に進んで行くことになる。
このページのどこかに隠れなければ!
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隠れる場所にシャワールームを指定すると,なぜかライトがシャワーを浴び始める。いや,たしかにそこを指定したけど,そんなシルエットありありでシャワーを浴びたら……! そしてフライマンがそれを見逃してくれるはずもなく……
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画面手前にいるミザリーが時々振り向くので,見られていないときだけ進む,「だるまさんがころんだ」方式のエリア。ミザリーが振り向くときを見計らって,コマンド入力で何かに擬態してしのぐのだ
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ライトがフライマンに連れ去られてしまい,懐中電灯で照らしながら痕跡を追うシーン。ホラーのおもしろさ・ワクワク感を完全に理解している小学生,ケンタくん……おそろしい子……!
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ボス敵の「ゾンビーフ」。「シャトーブリアン」「肩ロース」「ブリスケ」の3部位を攻撃することで倒せるのだが,どこだか分かるかなっ!? 筆者は……もちろん! 分かりませんでした!
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ステージが進むごとに実感するのが,ノートに描かれたRPGというアナログ表現手法の多彩さと,キャラクターの完成度の高さだ。敵キャラでさえも,どこか憎めず,脇役キャラたちがいちいち可愛い。もしも魔女ミザリーのミニフィギュアとか発売されたら,筆者は間違いなく買ってしまう。
飛空船ステージで,足場がなくてどうやって先へ進もうか……という場面。上から可愛いペンギンが落ちてきて,「透明な床があって助かった」と喋る。よく見ると,たしかに鉛筆で薄く床のような物が書かれているように見える。この後の展開が,飲んでいた飲み物を吹きそうになるほどおもしろかったので,ぜひ,プレイして自分の目で確認してほしい
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ボスバトル勝利後には毎回「YOU WIN」と表示されるのだが,少し遅れて「G」とか「E」の文字が飛んできて,あまりにも小学生的なダジャレに,クスリとしてしまう
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“見せ方”のアイデアが洪水のように押し寄せる怪作
クリアまでのプレイ時間は約8~10時間程度で,隅々まで探索し尽くしながら進むと,15時間前後になるのではないだろうか。決して長くはないが,先に書いたように,密度の高さから体感時間が長く感じるため,プレイ時間に対する満足感は高い。
ただ,基本的な進行がリニアな点は少々気になった。本作は,次のエリアのページへ進んでしまうと,前のページには戻れないことが多い。移動可能範囲は決して広くなく,その範囲内でできることも限られている。どうすればいいかプレイヤーが迷うことは少ないだろうが,自由度は低いとも言える。
また,ゲームオーバー後,再開する前に任意で「ヒント」を見ることができるが,これが,「ヒントというよりは,ほぼ答えそのもの」なのも少し気になったところだ。
先へ進むと戻れないときは,こんな感じでケンタくんが事前に警告してくれる。「ミニニン探し」を忘れて進んでしまうとツラいので,警告が出たときは気を付けておこう
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「RPGタイム!」というタイトル名ではあるが,本作はコンピュータゲームにおける一般的な意味での“RPG”ではなく,ゲームブック全盛時代の“RPG”の意味合いが強いような気がする。レベルアップ等の成長要素にしても,ほぼ,ボスを倒したときにレベルが上がるという「決まった位置」での成長であり,プレイヤーが意図的にモンスターと何度も戦って経験値を稼いだりすることはできない。ライトの武器も,ゲーム進行に応じて自動的に持ち替えていくので,お金を貯めて買い換えたりといった,プレイヤーの意志が介入する余地はない。“小学生の手作りRPG”として見れば,そういった面までフォローしていないのは当然かもしれないが……。
ライトの仲間は4人登場するが,魔王城に到達するまで,個々の活躍はそれほど多くない。メガネのポットくんとは魔女の館で共闘することになるが,それ以外は終盤で一気に集結する印象だ
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「旅立ちの町」は横に4ページスクロールするほど広く、ストーリーを進めるためにいろんな場所を行ったり来たりする必要があるのだが,ダッシュ移動ができず、ライトの歩行速度がかなり遅いため,もどかしい。ここはダッシュできても良かったのではと感じた
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以上のように不満点もないわけではないが,それでも総合的には
「スゴいものを見た」という衝撃が遥かに上回る。本作を作るのにどれだけの手間がかかっているか,その凄まじさ・恐ろしさが画面から伝わってくるのだ。敵も味方もステージも,
愛情がなければ,ここまで作り込めない。
紙粘土で作った人形を使って,実際に外で撮影したと思われる画像。“手作り感”の再現に一切の妥協がない
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鉛筆をダイス代わりにするスゴロクも。「小学生のころにやった遊びの集大成」と言わんばかりの攻勢が嬉しい
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繰り返しになるが,本作の徹底された手描き風グラフィックスには,ただただ圧倒される。加えて,ゲームが進んでも決してワンパターンにならず,新たな展開,楽しみ方が洪水のように押し寄せてくるところは,間違いなくプレイヤーに突き刺さるだろう。学校が舞台であるからか,ゾンビーフの攻撃部位のように,「知っていると得をする」「知らなくても,このゲームによって学べる」という,タメになる要素も多い。開発陣が「もっと面白い見せ方はないか」と貪欲に模索しただろう努力と情熱が伝わってくる。
「算数」に相当するタイプの問題も。円の部分を回転させて正解を導くのだが,大人でも,思わず「うっ……ちょっと待てよ,えーっと……」と焦る
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旅立ちの町で,ニワトリの親方に橋を修理してもらう場面がある。必要な材料を渡すと,ニワトリの親方が隣のページに移動を始め,それを追いかけるのだが,主人公のライトの移動速度のほうが若干速い。「おっ,親方より先に行けそうだな」と思って追い越そうとすると,親方の背中にライトが当たった途端,ボヨンと跳ね返され,ライトが尻餅をついた。
ここ以外に,この町でライトが尻餅をつくシーンはない。つまり,プレイヤーが親方を追いかけてぶつかったときのみ表示されるアクションをわざわざ作っているということになる。筆者が本作の作り込みに戦慄した瞬間だった。
本作では,自由に似顔絵を描いたり,ケンタくんが作ったノートのステージ内に自由に「ラクガキ」ができる……のだが,さすがにコントローラで描くのは難しかった。しかし,そのおかげで期せずして小学生が描いた感が出て味わい深い……気もする
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「ノートに描かれた大作RPG」という部分以外にも,誰もが大人になる過程で失いがちな何かが,この作品にはある。好感の持てるNPCであったり,ストーリーの本筋には関係ない背景のオブジェクトを調べたときの反応であったり,魔王の配下でありながら,そんなに悪い奴でもないよなと感じる悪役のキャラクター性であったり。共通しているのは,人を選ばず,老若男女問わず楽しめることだ。殺伐とした雰囲気などなく,子供はもちろん,子を持つ親も一緒に遊べる安心感を追求しているようにも見える。
この丁寧な作風,このアナログ表現の手法は十数年に一度,いや,もしかすると二度と現れないかもしれない。とにかく
一見の価値アリな作品だ。