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「プロセカ」のコネクトライブはどのようにして作られているのか。アニメーションディレクターとエフェクトアーティストが語る舞台裏
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新たな挑戦をしつつ,体験の質も落とさない。進化し続けるコネクトライブ
プロセカのコネクトライブでは,コールやメッセージを送ると舞台上のミクたちがリアルタイムで反応するという,仮想と現実が入り交じった,ファンにとって夢のような空間が実現されている。
バーチャルとリアル,2つのいいとこ取りという感もあるコンテンツだが,2023年3月から10月にかけて5回のライブが行われており,そのペースにも驚かされる。
配信では,スタジオでキャラクターたちがリアルタイムでパフォーマンスを行う。講演を行った藤本氏らColorful Paletteのスタッフもスタジオ入りし,楽曲のON/OFF,照明やシーンの操作などを行っているという。
コネクトライブでは,「新しい体験の提供」と「エラーで体験を落とさない」の2点が重視されている。
「新しい体験の提供」については,ライブ企画チームが中心となってライブのセットリストや演出を考え,エンジニアが技術的なサポートを行う体制を構築した。実現が難しいアイデアについては,何を優先すべきかが議論されるという。
「エラーで体験を落とさない」点は,オンラインコンテンツとして重要だ。企画と実装の段階でどれだけ頑張っても,本番でエラー(ここで言うエラーとは,接続エラーやサーバーダウンなどではなく,ライブを演出するうえでのミスといったニュアンス)が起きれば,プレイヤーは現実に引き戻され,体験のクオリティが落ちてしまう。つまり,企画としての面白さと新しさと,これを提供する安定性という2つの要素を追求しなければならない。これは大変な事業だ。
コネクトライブでは,Unityの「タイムライン」(時間軸に沿ってアニメーションや楽曲を再生する)機能が使われている。楽曲とMC,2つのタイムラインが用意されており,スタジオ入りしたスタッフがライブの進行に合わせてコントロールする。
普通のライブ映像ならこれだけでいいが,MCパートでは尺が読めないところがある。そのためMCパートのタイムラインは,細かい設定を変えたものを複数用意し,進行に合わせて切り替えていくという。
具体的な事例として,各公演について以下のような事柄が語られている。
●「MORE MORE JUMP! 1st」
・楽曲中にキャラクターを登場させる
バーチャルライブといっても,キャラクターを亜空間から登場させては違和感が生じる。そのため,新たなキャラクターを登場させる際は必ず暗転を挟んでいた。しかし,この公演では楽曲中に暗転なしでキャラクターを登場させることが試みられた。舞台中央にディスプレイを配してキャラクターを隠し,曲が最高潮に達した瞬間に表示を切り替え,エフェクトと共にディスプレイを消すことで,まるでディスプレイからキャラクターが出てきたような効果を実現した。
・曲のつなぎをシームレスに
これまでのコネクトライブでは,楽曲の前後にも暗転を挟んでいたが,この公演では,MCタイムラインに楽曲前後の状態を設定しておくことで,シームレスなつなぎを実現している。
●「Leo/need 1st」
・楽器を使ったパフォーマンス
キャラクターに楽器を持たせるシステムが実装され,現実のライブのように,楽器を使った自己紹介が行われた。楽器を演奏するモーションキャプチャを行ったほか,「スタンドにギターを置く」というアクションのため,バーチャル空間にスタンドのモデルを配置し,スタジオには実物のスタンドを置いた。
・楽曲当てクイズ
キャラクターが演奏している曲を当てるという趣向だ。楽曲のタイミングを合わせるのは難しいため,楽器を演奏する瞬間だけ,MCタイムラインから楽曲タイムラインに切り替えた。
●「25時、ナイトコードで。 1st」
・物語に合わせたステージ変化
物語の展開に合わせて,感情の起伏をステージの鮮やかさで表現した。遷移アニメーションを入れたMCタイムラインを切り替えることで,ステージの鮮やかさをシームレスに変化させている。
・空間を活かしたライブ演出
空間に文字が浮かび上がるという,現実のライブでは難しい演出で印象的なカットを作り出した。
●「ワンダーランズ×ショウタイム 1st」
・物語に合わせたステージ変化
背景の遊園地が復興していくという演出は,シナリオの進行に合わせてMCタイムラインを切り替えて,遊園地の3Dモデルを変化させていくことで実現している。
・ネネロボ
可愛いネネロボは,当初ライブに出す予定はなかったのだが,熱心なスタッフたちがモデルやアニメーションを作ることで出演が叶ったという。ほかのキャラクターにモーションキャプチャが用いられているのとは異なり,ネネロボは楽曲タイムラインに組み込まれて,モデルの呼出やアニメーション制御が行われた。ネネロボと共演するため,リハーサル時にはキャラクターの振り付けも調整されたという。
●「3rd ANNIVERSARY」
・ステージ設計を大幅に変更
この公演では,ステージのサイズが2倍ほどに拡張された。360°どこからでも見られるわけではなくなったものの,観客が正面から見ることを前提にしたライトやエフェクトを使い,「正面からだからこそできる表現」を多く実現したという。2階席も配置され,キャラクターは会場後方の階段を登って2階席にアクセスする。「遊び心」で実装された2階席だが,リアルライブのような臨場感を演出できるようになったそうだ。
・コール&レスポンス
コールを入れてほしいタイミングで,「コーレスボタン」を配置した。MCでも,声援を送りたくなるタイミングを用意し,専用MCタイムラインでコーレスボタンを出現させている。
・メドレー楽曲
長いメドレーを実現するには,タイムラインの負荷対策が必要だが,制限がある中でも,通常曲と見劣りしない演出を求めた。キャラクターが何度も入れ替わることから,本公演ではタイムコード機能が実装され,より高い精度の切り替えを実現した。
・キャラクターモニター
キャラクターを大写しにするディスプレイは,実装が容易な割に見た目を豪華にできる。映像を別途制作する必要もないため,制作コストの削減にも役立った。
このように,コネクトライブでは既存機能を活用したさまざまな工夫が施されているが,その一方,データが複雑になり,制作側で配慮しなければならない要件も増えていると,伊東氏は取り組みをまとめた。
以上のような工夫をこらしても,エラーが起きると体験の質が低下する。
一例を挙げると,楽曲タイムラインとMCタイムラインを切り替える際に暗転を挟まないようにするという取り組みは上記のとおりだが,切り替えの前後でステージの明るさやオブジェクトの状態に齟齬があり,いきなりステージの色合いなどが変化すると,ユーザーは「切り替え」という舞台裏を見てしまう。それを避けるため,前後の状況をしっかり把握したうえで,つなぎ目それ自体を作り込んでいかなければならない。
作り込むといっても,コネクトライブはリアルタイムで進行するため,現場で対処できる程度にシンプルで分かりやすいものにしなければならず,過度の複雑さは禁物だ。実際,公演での問題はつきものだそうで,スタジオ入りするスタッフには,実装内容やデータの流れ,配信器材の理解,タイムラインやキャラクターの管理などが求められる。そのため,進行台本とは別にアニメーションスタッフ用の「オペレーション台本」が用意され,それぞれの作業に集中できるようになっているという。こうした取り組みの甲斐あって,最近のコネクトライブは,毎回新しい挑戦をしているのにもかかわらず,無事故で完走できているという。
最後に伊東氏は「新しい体験の提供」「エラーで体験を起こさない」「コスパ良く,良いものを作れるかを考える」と本講演のポイントを要約し,「コネクトライブはまだまだこれからも進化を続けていきますので,今後の発展にもご期待ください」と述べて講演を締めくくった。
夢のような時間を作り出すためには,スタッフたちの創造性と職人芸が必須だ。限られたコストの中,優先順位を付けつつ新たな挑戦を続け,エラーを起こさないような細心の注意も必要になるコネクトライブ。制作の苦労と,パワフルな現場の様子がうかがえる講演だった。
(C)SEGA/(C)CP/(C)CFM
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