プレイレポート
PS4用日本語版「セインツロウ:ザ・サード リマスタード」プレイレポート。あの最高にクレイジーなギャング生活がPS4で楽しめるときが来た
オリジナルとなる「セインツロウ:ザ・サード」(PC / PS3 / Xbox360)は,2011年にTHQが発売したオープンワールドクライムアクションゲーム。ライバル作品が多いクライムアクションというジャンルの中,セインツロウが“飛び抜けたバカゲー”として独自の地位を築くきっかけとなったシリーズ第3弾である。
現行機向けリマスター版となる本作は,登場キャラクターや車両といったモデリングのブラッシュアップ,照明や爆発といった表現などの刷新が行われ,さらにこれまでリリースされたダウンロードコンテンツをすべて収録。“最新かつ全部入りのセインツロウ:ザ・サード”として仕上がっている。
2020年5月の海外版発売から5か月。いよいよリリースされる日本語版を先行してプレイする機会を得たので,その魅力をお届けしよう。
「セインツロウ:ザ・サード リマスタード」公式サイト
ギャング団・セインツの新たなるド派手な戦いが始まる
前作となる「セインツロウ2」で描かれた数年前の活躍により,スティルウォーターを手に入れたギャング団「サード・ストリート・セインツ」(以下,セインツ)は,まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで勢力を伸ばしていた。
抗争の過程で手を組むことになった巨大企業を活用し,通常の“シノギ”にとどまらないビジネスとイメージ戦略を推進。メディアの力もあって,今やセインツブランドはファッションや飲料,映画などさまざまなジャンルに広がり,まさにカルチャーを代表する存在にまでなっていた。
古参の幹部で武闘派のジョニー・ギャットのように今の路線を好まない者もいたが,ボス(プレイヤー)はまんざらでもなく,高い知名度を利用したビジネスに邁進していた。
ある日ボスは,「自分たちをテーマにした映画の主演俳優に協力する」という形で,幹部のジョニーやショーンディと共に,“銀行強盗の実演”を行う。途中までは作戦どおりにいっていたものの,あり得ないような重装備の敵から妨害を受け,計画は失敗。囚われの身となってしまった。
これを仕掛けてきたのが,犯罪組織「シンジケート」のボスであるフィリップ・ローレン。命だけは助けてやるから,多額の上納金をシンジケートに納めろ――そう脅迫してくるフィリップだが,もちろんセインツのボスがそのような脅しに屈するわけがない。暴れに暴れ,自身を監禁していた航空機を破壊し,脱出に成功する。
しかし,その代償は大きかった。銀行口座はハッキングを受け,幹部のジョニーは行方不明。さらに主人公が落下したのは,敵の本拠地となっている街・スティールポートだったのだ。
絶体絶命のピンチとなったセインツだが,ボスはあえてこの状況を利用することを決意する。奴らのビジネスを乗っ取り,スティールポートをも我が手に収め,シンジケートに報復しようというのだ。こうしてギャング対ギャングの抗争が生まれ,それに“強力すぎる治安部隊”が加わり,壮絶な三つ巴の戦いが始まるのである。
本作の基本システムは,三人称視点のアクションゲームだ。プレイヤーは分身となるセインツのボスを操り,ニューヨークなどをモチーフに制作された架空の都市・スティールポートを我がものとするため,自由に暴れ回りながら街をシンジケートの支配から解き放っていく。
オープンワールドで描き出されたスティールポートは,ハイテクハッカー集団の「デッカーズ」,悪のレスラー集団「ルチャドールズ」,武器販売などの裏ビジネスを牛耳る「モーニングスター」が各エリアを分割統治している。この,個性豊かなシンジケートの傘下組織を壊滅させていくことがメインの目標となる。セインツが街の支配を広げるほど,マップ上にセインツのチームカラーである紫の地域が増えていく。ゲームを進めるごとにシンジケートが弱っていくさまをマップで眺めるのがたまらない時間となるのだ。
支配地域を広げる方法は大きく分けて3種類。具体的には物件の購入,アクティビティ(ミニゲーム)のクリア,そして直接的な抗争で相手を排除することだ。
物件の購入は定期収入(キャッシュ)の増加やショップの割引,中に入ると手配度が消えるなどメリットが大きいが,資金が必要なので急激に進めるのは難しい。そのため,まずは地道に抗争スポットで相手を潰したり,アクティビティに挑戦することになるだろう。
個人的にオススメしたい手段は,そのほとんどが本作の作風にあわせたハチャメチャなものばかりのアクティビティだ。
制限時間内に車にはねられまくって金を稼ぐ「保険金詐欺」。戦車で街とNPCを攻撃して回る「タンクメイヘム」。火だるまのバギーで人や車を破壊しまくる「ファイヤーレース」など,頭のネジが何本か飛んだようなミニゲームばかり。武器や乗り物は開始時に用意されるので,まずは気軽にEASYのものから始めて,お気に入りのアクティビティを探してみよう。
保険金詐欺は要するに「当たり屋」なのだが,実際にはね飛ばされまくる必要があるのが最高にバカ(褒め言葉)。アドレナリンゲージがMAXになり,まるでお手玉ように人間(ボス)がポンポンと飛ぶところは笑えること間違いなし |
メイヘム系アクティビティの目標はただ一つ,目標時間内に指定の被害金額を発生させること。どれだけ破壊のコンボをつなげられるかがクリアのコツ |
メインとなるストーリーを進めるには,携帯電話からミッションを受けよう。直接的にシンジケートを叩く作戦が実行されるもので,序盤はアクティビティのチュートリアルも兼ねている。
こちらは本来“ギャングの縄張り争い”のはずなのだが,その展開はアクティビティよりさらにぶっ飛んでいる。例えば初っぱなのミッションの「敵の大型輸送機を乗っ取り,その“ついで”として軍事基地から兵器を奪い取る」なんてものから,「敵の輸送船を襲ってミニガンやロケットランチャーでボートやヘリを破壊しまくる」「輸送トラックに積載されているのは精密機械のであるコンピューターサーバーなのに,なぜか戦車を使って奪おうとする」「敵の拠点から逃げる手段が半裸男の人力馬車」など,どれもバカバカしさと派手さを兼ね備えているのが特徴だ。
おまけにストーリーの中盤からは,警察に代わり空中戦艦を運用する特殊部隊がハイテク兵器を駆使して襲って来るなど,ますます現実離れした物語が展開していく。セインツの暴走だけがヤバいわけではなく,抗争相手もそれ相応にクレイジーというわけだ。こうしたケレン味溢れる展開や演出こそ,本作の大きな魅力の一つと言えるだろう。
キャッシュとリスペクトでボスとセインツを強化
全部入りのリマスター版で追加コンテンツも遊び倒そう
シューターとしては,カバーアクションのない比較的シンプルな作りとなっている。一部の武器を除きロックオンシステムがないため,基本的にはフリーエイムで敵を狙い,敵の攻撃は障害物に隠れて避けなければいけない。……“基本的には”だが。
というのも本作はパワーアップシステムが非常に強力で,スタンダードな体力アップや仲間のセインツのステータスアップはもちろんこと,銃弾や爆発でもダメージを受けないようにしたり,武器を強化して炎上や爆発効果を付与したり,ハンドガンやライフルなどの所持弾薬数を無限にできたりと,裏技やチートかのようなアップグレードが普通に可能なのだ。アクションゲームでここまで思い切った強化が出来る作品は,そこまで多くないように思う。
もちろん,最初からそのような無敵状態になれるわけではない。無敵のボスとなるには,「キャッシュ」と「リスペクト」という二つのリソースを集める必要がある。前者は文字通りそのままお金を指し,後者はPRGでいう経験値やレベルのようなものと考えればいいだろう。
キャッシュは武器強化以外にアップグレードのアンロックにも使えるが,それにはまずリスペクトのレベルを規定の値に上げる必要がある。周囲に認められた本当のカリスマ性を持つ人間ほど,より強い力を入手できるというわけだ。キャッシュとリスペクトは,ミッションやアクティビティのクリアである程度まとまった量が入手できるが,長い目で見るとキャッシュは前述の物件などから定期的に入手できるものがメインとなるだろう。
逆にリスペクトは定期的に自動で入手するという手段はないが,プレイ中のさまざまな行動が入手機会につながっている。敵を一撃でまとめて始末する「マルチキル」や,車で走行中に対抗車両ギリギリをすり抜けるように走る「ニアミス」など,周りの人間を圧倒するような,まさにリスペクトを得られる振る舞いをすることで増えていくのだ。
変わったところでは,下着だけで街を走り回って通行人を驚かせまくる「ストリーキング」や,暴走する車の上でひたすらバランスをとり続ける「カーサーフィン」といった,「デバージョン」と呼ばれるミニゲームがある。それらが称賛される行動かどうか,考えるのは無意味だろう。これもまた,セインツロウの世界ならではのリスペクトを得られる行動で,“本作ならでは”の味付けになっているのだ。
なおボスの服装はスティールポート内のショップで購入したり,アジト内のクローゼットでいつでも変更できるが,そもそもキャラクターの見た目や声や性別すら,美容外科で簡単に再設定できたりする。つまり最初のキャラメイクで悩む必要は何もないので,抗争やアクティビティはとりあえず放置して,自分のお気に入りのボスを目指して散財しまくるのもアリだ。
服装といえば,本作では最初から複数のコスチュームや変わった乗り物がガレージに保管されている。これは冒頭でも触れたように,これはかつてリリースされたDLCが最初から全部適用されているからだ。
このDLCにはミッションパックも含まれているため,エイリアンの侵略から地球を守る(映画の)主人公になる「スペースギャングスタ」,作中のTVショー兼アクティビティでもある「天才ゲンキ博士の超絶有頂天倫理委員会」を拡張する「ゲンキボウル VII」,そして物語冒頭に姿を消してしまうジョニーが意外な形で再登場する「クローンの災難」をゲーム開始直後からプレイ可能となっている。
個人的なお気に入りは,ある意味本編以上に滅茶苦茶な映画撮影に協力するスペースギャングスタと,続編となる「セインツロウ IV」にも登場するスーパーパワー(超能力)が現実世界で発動できるクローンの災難だ。どれもこれもバカバカしさMAXなので,折を見てプレイしてみて欲しい。
オリジナル版クリア済みの筆者は,今回久しぶりにプレイしてみて,あらためて今でも十分すぎるほど楽しめる作品であると感じた。バカバカしくもド派手なストーリーと演出,多彩でイカれたアクティビティ,そして過剰火力気味なシューティング要素……その突き抜けた世界感とゲーム性は,もともと高い完成度を誇っていたこともあり,月日を重ねても色あせることはないのだろう。
グラフィックスについては,リマスターされているとはいえ元が10年近く前の作品なだけに,とくに街並みやモデリングの面で若干時代を感じるのは否めない。しかし場面によっては十分に美しいグラフィックスが楽しめる。
とくにキャラクターのアップや影の主役と言ってもいい乗り物(車両)などは,ディテールが鮮明になったことでその魅力が増したように感じた。照明や影の処理といった光学系のエフェクトが一新されたことがその理由の一つかと思う。
ゲームの内容自体はオリジナル版と変わらないので,当時ガッツリやり込んだプレイヤーには目新しさはないかもしれないが,まだプレイしたことがない人には手にとってもらいたい作品だ。「大好きな作品だったが,ハードの世代交代でプレイできなくなった」という人にとっても,思い出深いスティールポートに再度足を運ぶいいきっかけのはず。
重厚なストーリーや感動の展開はないが,最高にバカバカしく突き抜けたセインツたちの物語を「セインツロウ:ザ・サード リマスタード」で体験しよう。
「セインツロウ:ザ・サード リマスタード」公式サイト
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セインツロウ:ザ・サード リマスタード
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