プレイレポート
「As Dusk Falls」先行プレイレポート。綺麗事では済まない濃密な家族の物語と息詰まるクライムサスペンスは,きっと誰かとプレイしたくなる
※国内のSteam,Microsoft Storeでは7月20日と表記。それぞれ予約購入は3490円,3200円。また,リリース初日からXbox Game Pass,PC Game Passに対応予定
ローンチに先がけて,本作のチャプター1とチャプター2をプレイする機会を得たので,なるべくネタバレに配慮しつつ,本作の魅力をお伝えしたい。
「As Dusk Falls」公式サイト
物語は1998年5月29日,アリゾナ州,ルート66(西海岸へ向かって急速に拡大,発展していったアメリカ近代史を象徴する旧国道)沿いのとある町から始まる。
主人公の1人,ヴィンスは航空機の整備士だったが,ある理由から職を追われ,それまで暮らしていたサクラメントから妻の実家があるセントルイスへと車を走らせている。かつて彼の先祖が西を目指したであろう,ルート66を遡るように……。
彼と一緒に旅をしているのは娘のゾーイ,妻のミシェル,父親のジム。ミシェルとジムは折り合いが悪く,ヴィンスは何かと板ばさみになりがちだ。
もう1人の主人公ジェイは,ホルト家の三人兄弟の末っ子。彼はバードウォッチングが好きで,暇さえあれば森に出かけている青年だ。
そんな彼は,兄のタイラーとデールの「計画」に巻きこまれ,留守宅に侵入しようとしていた……。
チャプター1とチャプター2では,主にヴィンスとジェイの視点で偶然,交わることになった2つの家族の運命が描かれていく。
本作のビジュアルは実写映像をベースにして,グラフィックノベル調に加工している独特のなもの。静止画とアニメーションの中間のような雰囲気があり,リアルだが生々しくなりすぎない新鮮な表現と言える。
ローカライズのクオリティは十分だ。ボイスはすべて日本語吹き替えになっている。字幕の文言と音声が異なる部分はあるが,翻訳によるニュアンスの違いといったところ。それほど気にはならないはずだ。
プレイヤーは映画やドラマのように進んでいく物語を楽しみつつ,要所で主人公の意思決定を行うことになる。いわゆるシネマティックアドベンチャーと呼ばれることもあるスタイルだ。
場面によっては,スティック操作(スワイプ)やボタン連打(タップ)などの操作を求められることもある。前述の「HEAVY RAIN 心の軋むとき」「BEYOND: Two Souls」をプレイしたことがある人には,おなじみの要素だろう。実際に操作して介入することで,自分がその人物の立場で行動しているような臨場感が生まれる。
操作はそれほど難しいものではないが,急に発生する場合もあり,油断していると失敗することもあるだろう。また,ボタンを1回だけ押すべき場面なのに,思わず連打してしまうといったケアレスミスも起こる。もちろん,操作の成否はその後の展開にも影響する。
とはいえ,失敗した場合もそれはそれでひとつのルート。大切なことはその後,どう決断し,行動するかだ。
そして各チャプターが終わると,それまでの選択や行動によって,プレイヤーの価値観や性格,特性が判定される。自分でも「なるほど」と思えたり,逆に意外な指摘があったりして,なかなか楽しめる要素だ。
さらに,各チャプターのフローチャートと,プレイヤーがたどったルートがオープンになる。分岐の位置と選択内容が分かるため,リプレイ時にさまざまな展開をたどることが容易になる。
また,他のプレイヤーがたどったルートの割合も確認できる。自分が「当然だ」と思った選択が,実はかなり少数派だったりして,なかなかに興味深い。
本作の大きな特徴として,ゲーム展開をTwitchのチャットと連動できる「ブロードキャスト モード」が挙げられる。このモードでは配信の視聴者がチャットでゲーム内の選択に投票することができ,ストリーマーとリスナーが一緒に物語を作り上げていく。
今回は発売前だったため,筆者は試せなかったが,最大8人の協力プレイにも対応している。アドベンチャーゲームをフレンドやリスナーと「ああだ,こうだ」と相談しながら遊ぶのは,1人のときとはまた別の楽しさがある。もちろん,オフラインでパートナーや友人と一緒に遊ぶのもオススメだ。
なお,iOSやAndroidに対応するコンパニオン アプリを使えば,指先ひとつで簡単にゲームプレイが可能になるとのこと。スマートフォンやタブレットを活用して,選択肢を選んだり,友人に反対したりできるというわけだ。
本作には,プレイヤー自身がその場で選択を迫られているようなゲーム体験と,周囲の人々とのコミュニケーションを促す仕掛けが用意されている。ゲームプレイ中はもちろん,その後に感想を語り合うのも楽しい時間になるだろう。
さて,ここからはストーリーに関する所感や,プレイ中に気づいたことをお伝えしたい。
多くの読者は「ヴィンスやジェイの立場でトラブルを乗り越えていくゲーム」であると想像していると思う。間違いではないが,本作にはそれでは語り尽くせない,複雑な味わいがある。
ヴィンスとジェイは多くの人にとって,ごく自然に感情移入ができる温厚な性格の人物だ。また彼らが突きつけられる選択やその結果は,誰にでも起こりうるものであり,かつ身につまされるものである。
筆者もいい年なので,ヴィンスの置かれた切実な状況は他人事とは思えず,彼の立場に寄り沿うようにゲームを進めていた。それは確かだ。
ただ,ジェイの立場でもいろいろな事情を知っているため,ホルト家の兄弟にもどこか感情移入をしてしまう。偶然にも,筆者は三人兄弟の長男であり,ホルト兄弟の互いを頼り,気づかいあう関係性を見ているうちに,弟や妹のことをふと思い出した。
もちろん,ホルト兄弟は許しがたい犯罪に手を染めるのだが,その動機は「家族を守ること」。その一点ではヴィンスとも通じる部分があり,「家族の安全を脅かす犯罪者」として単純に見られない。
このあたりはプレイヤーによって見え方が変わってくる部分であり,プレイヤー同士が集まれば大いに盛り上がるポイントだろう。
その一方で,ヴィンスの父や妻も独立した1人の人間である。家族とはいえ,やはりヴィンスとは別の人格として,それぞれに思惑や秘密を抱え,そこに濃密な葛藤が生まれる。
さらに,事態を収拾しようと動くシェリフ(保安官)のダンテ・ロメロは高圧的な人物で,周囲の評判もあまり良くはないようだ。
本作の登場人物は,単なる「身内」「敵」「味方」として描かれるのではなく,それぞれに深い背景を持つ「人間」として描かれている。プレイヤーの選択によって変化する展開のなかで,いろいろな事実が徐々に明らかになっていく面白さも味わえる。
綺麗事では済まない濃密なファミリードラマと,息詰まるクライムサスペンスの面白さを合わせ持つ「As Dusk Falls」。今回はチャプター2までしかプレイできなかったが,その後の時代が描かれるというチャプター3以降がとても楽しみだ。この手のシネマティックなアドベンチャーのファンはもちろん,映画やドラマが好きな人にもオススメしたい。
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