2021年5月11日,NVIDIAは,ノートPC向けの新型GPU「
GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU」(以下,
RTX
3050
Ti)と「
GeForce RTX 3050 Laptop GPU」
(以下,
RTX
3050)を発表した。両製品とも,Ampereアーキテクチャを採用するエントリー市場向けGPUで,1000ドル(約10万9000円)以下のゲーマー向けノートPCでも,リアルタイムレイトレーシングを有効にしたゲームを60fps前後のフレームレートでプレイ可能にする性能を有するとNVIDIAはアピールしている。
RTX 3050 Ti/3050搭載PCは,2021年後半から市場に登場する予定だ。
デスクトップPC向けGPUよりも先に登場したノートPC向けRTX 3050 TiおよびRTX 3050の主な仕様は
表1のとおり。
上位モデルとなった「GeForce
RTX
3060
Ti
Laptop
GPU」(
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RTX
3060)に比べると,シェーダコアである「CUDA Core」数や,レイトレーシングユニットである「RT Core」の数は相応に縮小されているのが分かる。グラフィックスメモリ容量も4GBと,こちらも少なめだ。
前世代に当たるTuringアーキテクチャのノートPC向けGPUでは,リアルタイムレイトレーシング機能や,推論アクセラレータ「Tensor Core」を備えたエントリー市場向け製品が登場しなかった。それに対してRTX 3050 Ti/3050は,
Ampere世代のポイントである第3世代の推論アクセラレータ「Tensor Core」の搭載や,第3世代Max-Qへの対応といった特徴をすべて備えているので,エントリー市場向けノートPCのグラフィックス性能が大きく向上するのは確実だ。
とくに,低解像度でレンダリングした映像の品質を損なわずに拡大できる「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)は,上位モデルに比べれば性能が低めのRTX 3050 Ti/3050でも,高品質な映像でゲームをプレイするのに有用であろう。
NVIDIAによると,前世代のエントリー市場向けGPUであるノートPC向け「GeForce
GTX
1650
Ti」(以下,
GTX
1650
Ti)を搭載するPCでは,「Call of Duty: Warzone」の解像度1920×1080ドットにおけるフレームレートが50fps強であったところ,RTX 3050 TiでDLSSを有効にした状態では,90fps台後半まで向上するという。
さらに,GTX
1650
Tiではリアルタイムレイトレーシングでの表示ができなかった「CONTROL」や「Watch Dogs Legion」なども,レイトレーシングを使いながら60fps以上のフレームレートでゲームをプレイできるそうだ。
NVIDIAが公開したRTX 3050 TiとGTX 1650 Ti搭載ノートPCでのゲームにおけるフレームレート比較グラフ
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DLSSはレイトレーシングの有効/無効にかかわらず,ゲームのフレームレートを上げるのに有効な手段である。対応するゲームタイトルもかなり増えてきたので,RTX 3050 Ti/3050搭載ノートPCのゲームにおける実用性を大いに高めてくれるだろう。
DLSS対応タイトルの例。高いフレームレートでの表示を可能にするDLSSは,とくにバトルロイヤル系のタイトルで効果を期待できそうだ
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RTX 3050 Ti/3050は,表示遅延低減機能「NVIDIA Reflex」にも対応しており,eスポーツ系タイトルでの遅延低減を行えるというスライド
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NVIDIA Broadcastを使ってプレイヤーの背景を除去したゲーム実況の例
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そのほかにもRTX 3050 Ti/3050では,Tensor CoreによるAI処理を使った実況配信やビデオ会議向けのソフトウェアプラグイン「
NVIDIA Broadcast」を利用できる。実況配信ソフトではメジャーな「OBS Studio」でも利用できるので,ゲーム映像に背景を除去した自分の姿を重ねて配信するといったことが,エントリー市場向けゲームノートPCでも可能になるのは魅力的なポイントだ。
RTX 3050 Ti/3050は,比較的低価格なゲーマー向けノートPCでもゲームを快適にプレイ可能にする可能性を有しているので,「ゲーマー向けノートPCが欲しいけれど,予算が厳しい」という人に歓迎されるGPUとなりそうである。