インタビュー
「ゲームマーケット2021秋」で見かけた新作マーダーミステリーを紹介。集英社やノーミーツも参戦し,広がり続けるブームの最先端に迫る
本稿ではそんなマーダーミステリージャンルの中から,ゲームマーケット2021秋で発表された注目タイトルを紹介していこう。
5人の吸血鬼が綴るマーダーミステリー「RED LINE」のスタッフインタビュー。「POLARIS」レーベルを立ち上げた物語作り集団ノーミーツとは?
「NO密で濃密なひとときを」をテーマに,フルリモートを前提に立ち上げられた「劇団ノーミーツ」へ。形にとらわれず“物語”に向き合うため,「ノーミーツ」と名を改めた彼らは,新レーベル「POLARIS」でマーダーミステリー「RED LINE」を12月中旬にリリースする。今回,本作の体験会に参加し,ノーミーツの中心人物である広屋佑規氏と林 健太郎氏にインタビューしたので掲載しよう。
「POLARIS-01: RED LINE」公式サイト
漫画で初心者にアピールする「集英社マーダーミステリーエクスプレス」
11月15日に発表されたばかりの新ブランド「集英社マーダーミステリーエクスプレス」が出展されていた集英社ブースでは,ローンチタイトルの2作品「ゲッコウ島サバイバル」(会場価格:税込3000円)と「君のいないリライト」(会場価格:税込4000円)が販売され,人気を集めていた。
同レーベルの作品の特徴は,なんといっても物語の導入部分が漫画形式になっているところだろう。このためほかのマーダーミステリー作品に比べ,世界観の理解がより簡単に,より気軽に楽しめるところが新しい。漫画に強い集英社ならではの試みといえる。またゲームデザインの部分は「探偵シド・アップダイク」シリーズで知られるRAMCLEARの監修しており,スマートフォンとの連動で証拠品を管理できるなど,ギミックの部分にも工夫が凝らされている。
「ゲッコウ島サバイバル」は,無人島に取り残されたメンバーの中に殺人犯が紛れ込んでいるシチュエーションで展開される4人用のGMレス作品だ。居合わせた集英社デジタル事業部の漆原正貴氏の話によれば,かなりカジュアルでオーソドックスな内容とのことだった。
殺人犯を見つけるというミステリー要素に,無人島でのサバイバルという要素を加えたことで謎を解くモチベーションが明確になり,さらに迫るタイムリミットによる緊迫感が味わえるなど,とくに初心者がワイワイ遊ぶのに適しているという。マーダーミステリー経験の浅い人を誘うのにはベストなタイトルと言えるかもしれない。
一方の「君のいないリライト」は,タイムリープをテーマにした6人用のGMレス作品だ。パッケージのイラストからも分かるように,青春時代に起こった不思議な事件を登場人物の視点で体験することに主軸が置かれていて,内容的にもかなりボリュームがあるものとなっている。「ゲッコウ島サバイバル」とは対照的に,こちらはマーダーミステリーをやり込んでいる人向けとのことだ。
なお集英社マーダーミステリーエクスプレスでは,マーダミステリーをもっと広めていくために,さまざまな展開を考えているという。ローンチではパッケージ販売形式を選択したが,ほかにも公演型であったり,はたまたオンライン用であったりなど,形式に囚われることなく,展開していきたいとのことだった。
またプロジェクトに賛同し,コラボレーションしてくれる店舗やクリエイターも探しているそうなので,業界関係者は連絡を取ってみてもいいかもしれない。
「集英社マーダーミステリーエクスプレス」公式サイト
「マダミス666」に注目が集まるマーダーミステリーブース
前回に引き続きStudio OZONが展開していたマーダーミステリーブースは,会場全体を見わたしても,一際賑わいをみせていたエリアだった。RabbitholeやDEAR SPIELEなどの専門店の作品から,グループSNE/cosaicなどが展開するパッケージ製品,はたまたインディーズタイトルまで,数多くの新作が所狭しと陳列され,開場直後から多くの来場者達が買い求めていた。
なかでも目を引いていたのが,StudioOZON自らが企画する新プロジェクト「マダミス666」(各税込3600円/送料別)だ。共通する6人のキャラクターを使い,6人のマダミス作家が6つの作品を作るというこのプロジェクトだが,受注生産方式が取られており,その受付も現時点ではゲームマーケット2021秋の2日間,会場でのみ可能と,入手のハードルはかなり高い状態だった。
加えて参加している作家陣もグループSNEの秋口ぎぐる氏,「魔女の聖餐式」の中村 誠氏,「償いのベストセラー」のかとうゆうか氏などと,マーダーミステリーファンなら誰もが知る布陣ということもあり,発売時期は2022年1月〜2月上旬であるにも関わらず,多くの人が予約の用紙を手にしていた。
「マダミス666」公式サイト
その狙いをStudio OZONの代表でプロジェクトの発起人の一人でもある久保よしや氏に話を聞いたところ,マーダーミステリーの販売形態を広げたいことや,元よりマーダーミステリーのパッケージ製品はパッケージに記載の情報でしか判断しえないため,受注生産方式でも購入意欲は変わらないだろうという読みを語ってくれた。
また登場キャラクターを6人にした理由としては,プレイヤーを集めやすい人数と,密談したときに3つのグループができるという,プレイ上の利便性のバランスをとった結果だったそうだ。
感染症対策が求められる逆風のなか,それでも拡大を続けるマーダーミステリージャンル。同ブースの来客数や購買者数も前回の2〜2.5倍に増えたそうで,アナログゲームの中でも今,最も勢いのあるジャンルであることは疑うべくもない。
久保氏によれば,今回のゲームマーケットでもさまざまなタイトルがリリースされ,初心者でも遊びやすい環境が揃ってきているという。まだ遊んだことがないという人も,ぜひチャレンジしてほしいとのことだった。
「探偵シド・アップダイク」シリーズ第3弾をリリースしたRAMCLEAR
マーダーミステリーブームの黎明期より作品を発表し続け,「探偵シド・アップダイク」シリーズで知られるRAMCLEARは,シリーズ3作目にあたる新作「探偵シド・アップダイク LETHAL CA$H」(会場価格:税込3000円)をリリースしていた。
「探偵シド・アップダイク」シリーズは,小説家でシナリオライターの各務都心氏がシナリオを手がけるマーダーミステリーシリーズだ。パッケージデザインからも分かるように,アートワークにも力が入っており,人気を集めている。
代表のツムキキョウ氏によると,具体的なスケジュールは定まっていないものの,「探偵シド・アップダイク」シリーズはシナリオのストックがかなりあるので,今後も継続して展開していくとのことだった。また芥川賞作家の高山羽根子氏との共作による新規タイトルも予定されている。続報に期待しよう。
RAMCLEAR公式サイト
このほかインディーズエリアで見かけた新作マーダーミステリーを写真で紹介。「古の姫君とショゴスの囚獄」は,小説家・鳥村居子氏によるクトゥルー神話をモチーフとした2人用マーダーミステリー。既刊の「真田幸村は幽世の宿で空ろな夢を呟く」は,4人用と5人用で異なる展開が楽しめるのが面白い |
現在準備中の新作「江戸川乱歩風マーダーミステリー 人形奇譚」を展示していた色鳥のブース。ゾクッとするアートワークが目を引く。BOOTHではクッションやステッカーなどのオリジナルグッズも展開中だ |
ゲームマーケット公式サイト
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