インタビュー
「DNF Duel」開発インタビュー。アラド戦記へのリスペクトから生まれた本作の魅力やこだわりのポイント,今後の展開を聞いた
今回話を伺ったのは,本作の運営を務めるネクソンコリアのイ・サンミン氏と,アークシステムワークスの制作ディレクター,古谷亮輔氏。開発にまつわる苦労話やこだわりのポイント,今後の展開などを聞いたので,ぜひ読み進めてほしい。
イ・サンミン氏 |
古谷亮輔氏 |
「DNF Duel」公式サイト
格闘ゲームプレイヤーだけでなく,原作ファンのことを考えたゲームデザインに
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。いよいよ発売を迎えますが,現在の心境はいかがですか。
※インタビューは6月24日に実施
イ・サンミン氏(以下,イ氏):
想像よりも開発に時間がかかったこともあり,一時期は本当に発売できるのかな? と思うこともあったので,無事に発売できそうでホッとしています。ゲームの出来には満足していますし,プレイヤーの皆さんが楽しみにしてくれている声も多く聞こえて,すごくうれしく感じています。
古谷亮輔氏(以下,古谷氏):
私も無事に発売を迎えられそうでまずはホッとしています(笑)。いまはプレイヤーの皆さんがどういった反応をしてくれるか,期待と不安が入り交じった気持ちです。みなさんにたくさん遊んでもらって,多くの感想が聞きたいですね。
4Gamer:
プレイヤーの視線で見ていると,βテストから発売までスムーズな印象でしたが,開発期間は長かったんですよね。
イ氏:
バーサーカーとストライカーのキャラクターから開発が始まったんですが,この2人が完成するまでにかなりの時間を要しました。ただ,2人が完成してからはベースができたのもあって,ある程度スムーズに進行していきましたね。もともとは「アラド戦記」に実装されているPvPモードの「決闘」をそのまま移植するイメージだったんですが,アークさんが本格的な2D格闘ゲームを作る方向で進めてくれたんです。
4Gamer:
本作の「格闘ゲームとしてのコンセプト」はどのようなものになっていますか。
古谷氏:
最初にネクソンさんと話をしたときに,メインターゲットは原作である「アラド戦記」のファンが中心になるだろうということだったので,分かりやすくシンプルな格闘ゲームにしたいと考えました。ワンボタンで簡単に必殺技が繰り出せる,アラド戦記らしいド派手な必殺技,といった要素はそこからきています。
4Gamer:
実際にプレイヤーからも,見た目の派手さの割にプレイフィールはシンプルという言葉も聞こえていますよね。アラド戦記が原作ということで,考慮したポイントもあると思います。そのあたりのポイントについて聞かせてください。
イ氏:
我々はアラド戦記のキャラクターをすごく大事に思っていて,本作に落とし込まれたときに,キャラクターの雰囲気,グラフィックス,アニメーションなどが,しっかり表現されていることがもっとも大切だと考えています。このあたりは見てわかるように,文句の付けようがありません。すごく満足していますね。
古谷氏:
キャラクターを大切にするという考えは我々も一致していました。コンセプトに掲げたアラド戦記らしいド派手な必殺技という部分も,パッと見で分かるよう格闘ゲームにうまく落とし込めました。本当に見た目に派手な技が多いので,ほかの格闘ゲームにはない爽快感を感じられる仕上がりになっていると思っています。
4Gamer:
本作は1vs.1の格闘ゲームですが,2on2や3on3のチーム戦,アシストキャラクターの選択など,さまざまな形式が格闘ゲームにはあります。1vs.1の形式はすんなり決まったのでしょうか。
古谷氏:
格闘ゲームを遊んだことがない原作ファンがターゲットではあったので,分かりやすく触りやすい1vs.1にするというのは,早い段階で決まりました。このあたりはとくに複雑なやりとりもなく,あっさり決まりましたね。アラド戦記の決闘も1vs.1ですし,この形式がいいだろうと。
4Gamer:
お話を聞くと,原作ファンにまず楽しんでほしいという思いが伝わってきます。
古谷氏:
複雑なコマンドを入力するゲームにしないという方向性もその一環ですね。原作ファンなら,本作もキーボードで遊ぶというケースが多いと思われますので。PCのキーボードでも違和感なく遊べる。これも最初に掲げたコンセプトの1つになります。
4Gamer:
キーボード操作の最適化は,これまでの格闘ゲーム開発ではあまり想定してこなかったことだと思います。どういったところを気にかけて開発を進めましたか。
古谷氏:
これも先ほどの,初心者が遊びやすいという部分につながるんですが,やはりシンプルな操作をメインにしたところになります。それと操作だけでなく,システム面でも複雑になるものは少なくしてありますね。空中ダッシュがないのもそれが1つの理由です。
イ氏:
シンプルな操作,分かりやすいシステムの中で,強烈な印象を残す楽しいゲーム体験を提供できていると考えています。
4Gamer:
プレイヤーが遊びやすい間口の広さも大切ですが,一方でどこまでもやり込める奥深さも格闘ゲームの良さだと思います。そのあたりは盛り込めているのでしょうか。
古谷氏:
もちろんです。本作にはMPゲージというリソースがあり,MPを使って強力な技を繰り出すことができます。MPスキルとMPゲージの管理は,上級者同士の対戦で勝敗を分ける重要な要素になるはずです。このゲージ運用の妙も,アラド戦記のシステムをうまく再現できたポイントの1つだと思います。
アラド戦記“らしさ”の追求から生まれた,個性際立つキャラクター
4Gamer:
プレイアブルキャラクターですが,基本職でも覚醒職でもなく,1度目の転職で選べる職業で統一されています。選定基準はどういったものだったのでしょう。
イ氏:
原作ファンの間では,覚醒職になっても最初の転職時の名前で呼ぶのが普通なんです。例えばグラップラーであれば,覚醒してジャイアント,2次覚醒してグランドマスターとなってからも,グラップラーと呼びます。そんな習慣もあって本作のキャラクターは,最初の転職時の職業に統一しています。
古谷氏:
まず考えたのはアラド戦記を代表するキャラクターは入れようというところでした。そこから,格闘ゲームに入れて面白くなりそうなキャラクター,開発しやすそうなキャラクターなどを天秤に掛けつつ,ゲーム全体のバランスを見て選びました。
それで最初に制作したのがバーサーカーとストライカーだったんですが,この2人は何も基準がない状態で制作を進めたのですごく苦労しましたね。ゲームのシステムや全体のバランスもこの2人で調節していったので,より慎重に時間を掛けました。
4Gamer:
最後に発表された道に迷った戦士は,結構意外なキャラクターのように思いました。
古谷氏:
道に迷った戦士は,いわゆるボスキャラクター的なポジションですね。本作のストーリーに絡ませていこうという考えから決まりました。また,エンチャントレスと剣鬼の2人は,開発の時点でまだ日本サーバーのアラド戦記にいませんでした。ネクソンさんから「DNF Duelにどうですか?」とご提案いただき,格闘ゲームに落とし込んだら面白そうなキャラクターだなと思い,選ばせていただきました。
4Gamer:
16キャラのなかでとくに制作に苦労したキャラはだれになりますか。
古谷氏:
苦労したのはクルセイダーですかね。最初は原作のイメージのままバトル担当も作っていたんですけど,あまりにも強く作ってしまって……(笑)。製品版の状態にまで収束させていくのにかなり苦労しました。
4Gamer:
原作の性能を基準に格闘ゲーム化したら強くなりすぎてしまったと。
古谷氏:
はい。格闘ゲームのキャラクターとしては強すぎました(笑)。逆にグラップラーやストライカーは,もともと格闘ゲームにマッチしたキャラクターだったので,そこまで苦労することなく完成させられました。苦労したけどうまく調整できたのは,バーサーカーでしょうか。原作のイメージを踏襲しつつ,格闘ゲームのキャラとしても綺麗に成り立っている。アラド戦記と格闘ゲームをうまく融合できたと思っています。
イ氏:
個人的な感想になりますが,バーサーカーは,原作で自分の体力を削って強くなるといった特徴があるんですが,それが本作でもフレンジというMPスキルで表現されていて,よくできていると感心しました。
アラド戦記らしい個性を生かしたバトルデザイン
4Gamer:
昨年と今年で2回,オープンβテストが実施されました。プレイヤーからの反応はいかがでしたか。
イ氏:
韓国のユーザーからのリアクションは主に2つでした。1つは,もともと格闘ゲームを遊んでいる人からで,「アークさんらしいすばらしい格闘ゲーム」という高評価でした。そしてもう1つが,アラド戦記のファンからで,「アクションゲームになると聞いてそこまで期待していなかったが,想像以上にすごいものが出たな」といった驚きの声でした。
4Gamer:
日本プレイヤーからの反応はいかがでしたか。
古谷氏:
日本の方は以前にアラド戦記を遊んでいたという人も多く,「懐かしい」という感想が多かったですね。格闘ゲーム部分については,かなりやんちゃな技が多かったこともあり,それらの技に対してのポジティブな意見が多くありました。
4Gamer:
自分の周りでも,「これはちょっとやりすぎじゃないの(笑)」って意見が多くありましたが,それでもポジティブにとらえた人が多かったように思います。ちなみにそういった強力な技は製品版でもそのままなのでしょうか。
古谷氏:
βテストの1回目から2回目には,そこそこ調整を入れましたが,2回目から製品版ではほとんどそのままですね。大きく手を入れたのは,ドラゴンナイトの飛行くらいでしょうか。あれは長い時間空を飛べてしまって,見た目がよくなかったので調整を加えました。
4Gamer:
なるほど。そうなると尖った部分はわりとそのままに残っていると。
古谷氏:
そうですね。βテストで使えなかったキャラクターもいましたし,基本的にはそのままにしています。
4Gamer:
少し気が早い話ですが,キャラクターの追加やバランス調整を実施する予定はありますか。
イ氏:
まだ確定的なことは言えませんが,キャラクター追加などを含んだアップデートを検討しています。
古谷氏:
個性的なキャラクターを操作して遊べるのがアラド戦記の大きな魅力なので,本作でもその個性を消す気はありません。尖った部分を残しつつ調整していくことになると考えています。本作には普通の格闘ゲームであれば存在しないような性能のキャラクターがたくさんいるので,キャラクター間の相性が出やすい作りにはなっていると思います。尖った部分を全員が持っていて,そこを相手に押しつけて楽しんでいってほしいですね。
4Gamer:
キャラ相性が出てしまうのは格闘ゲームの常ではある気がします。
古谷氏:
ある程度仕方ない部分はありますね。このゲームの場合は,その振れ幅が普通より大きくなってるかもしれません。すでにアークワールドツアーの種目にも本作が選ばれていますが,上級者同士の対戦になると,いわゆるカウンターピック※と呼ばれる戦略が流行するかもしれません。
※カウンターピック:相手のキャラクターに対し,有利なキャラクターをぶつけること。複数回,試合を行う大会形式で生きてくる戦術の1つ
持続性の高い運営やユーザーサポートで発売後も「DNF Duel」を育てていく
4Gamer:
オンライン対戦が主流になった今,一番気になるのはどの程度快適にオンラインで対戦できるかという部分だと思います。1回目のβテスト時はトラブルもありましたが,そのあたりは改善されたのでしょうか。
古谷氏:
はい。2回目のPlayStation版βテスト時にはかなり改善されていたと思います。そのあたりの挙動チェックも含めて,βテストは実施してよかったと考えています。
※7月11日現在,Steam版でのネットワーク対戦時,キーボードを使用すると切断が発生する不具合が発生しているとのこと(ゲームパッド・アーケードコントローラは問題なく動作)。こちらは現在調査中で,パッチによる修正が予定されている
4Gamer:
トラブルはともかく,ロールバック方式によるオンライン対戦自体の評判はそんなに悪くなかったように思います。実際のところ,プレイヤーからの声はいかがでしたか。
古谷氏:
対戦周りについてはとても好評でしたね。国内プレイヤーだけでなく,異なる国同士でも対戦が成立しているという声をいただきました。ただ,βテスト時にはプレイヤーマッチしかなかったので,知らない人との対戦がやりにくい,ちょっと緊張するといった意見をいただきました。製品版にはランクマッチで部屋に入らなくても対戦できる機能があるのでご安心ください。
4Gamer:
ところで先ほどアップデートの話もありましたが,その頻度はどのくらいのペースを予定していますか。今後の展開も含めて,話せる部分を聞かせてください。
イ氏:
ある程度,長期間にわたって運営していく予定ではあるんですが,どれくらいの頻度でアップデートをするかはまだ考えている段階です。致命的な要素があれば,すぐに修正するべきではあると思いますが,ゲームシステムやキャラクターの強み,弱みを理解するにはある程度の時間が必要なのは確かです。
積極的にアップデートを行い,バランスを取っていくか,十分なプレイタイムを持たせるか,どちらがいいのかの判断はとても難しく感じています。ただ,プレイヤーがより楽しめる着地点を見つけたいとは考えています。
4Gamer:
運営の一つに大会開催もあるとは思いますが,現在すでにアークワールドツアーの正式種目として本作が選ばれています。そのほかに何か予定しているイベントや展開などはありますか。
イ氏:
ひとまず今年はアークワールドツアーに重点を置いて運営していくつもりですが,ほかにも,プレイヤー同士が気軽に参加できる小規模大会もサポートしていきたいですね。格闘ゲーム,とくに新規タイトルは規模以上に持続性が大事だと考えています。いろいろな方が参加しやすい中小規模大会が維持されて,そのような大会が育って新しい大規模の大会になればいいなと思っています。
4Gamer:
韓国はeスポーツ先進国であり,そのあたりのノウハウは日本以上にありそうです。うまく日韓で連携できれば,より多くの人が楽しめるイベントも開催できそうですね。
イ氏:
ひと昔前までは,国際的な大会やイベントは同じ会場で行われるのが普通でしたが,今はロールバックコードの進化のおかげで,オンラインでもアジア大会などを開けるようになりました。本作でもぜひ実現したいと考えています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。最後に本作に期待しているアラド戦記や格闘ゲームファンに対して,メッセージをお願いします。
イ氏:
アラド戦記の開発スタッフがびっくりするぐらいすてきな作品に仕上がりました。アラド戦記のファン,格闘ゲーム初心者が遊びやすい,とても親切なゲームになっています。ぜひこの機会に1度遊んでみてください。
古谷氏:
このインタビューの時点ではまだ発売されていないんですが,βテストの段階ではみなさん楽しんでいただけたようなので,製品版でも引き続き楽しんでいただければと思います。発売後もさまざまな展開を予定していますので,一緒に本作を盛り上げていきましょう。
「DNF Duel」公式サイト
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(C)ARC SYSTEM WORKS
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(C)ARC SYSTEM WORKS
(C)NEXON KOREA Corp & NEOPLE Corp ALL Rights Reserved.
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