［GDC 2023］「Vampire Survivors」の口コミはどのように広がっていったのか。コミュニティ・マネージャーがSNS活用で学んだ“シンプルだけど大事なこと”

　アーリーアクセス中のゲームの成功には，コミュニティ管理とオーディエンスからのフィードバックが欠かせない。一貫した姿勢と信頼性，速度，そしてやりとりの楽しさなどを維持し，多くのプレイヤーを獲得することが重要だ。


　開催中のGDC 2023の初日，2022年10月にリリースされ，大ヒットしたインディーゲーム「Vampire Survivors」（PC / Android / iOS）が，数百万人というコミュニティをどのように管理したかを紹介する「COMMUNITY MANAGEMENT SUMMIT: SURVIVING 'VAMPIRE SURVIVORS': AGILE COMMUNITY MANAGEMENT 」というセッションが行われていた。


　登壇者のBeth Molloy氏は，Vampire Survivorsを手がけるイギリスの開発会社poncleでコミュニティ・マネージャーを務めている。大学でビジネスを学び，カスタマーサービスとセールスの仕事を経験，自身で子供向けのエンターテイメント会社を経営するなど，さまざまな経験をしてきた。そんなBeth氏が，ゲーム会社でのコミュニティ・マネージャーを務めるのは今回が初めて。いまは14人のチームだが，2022年2月のスタート時点では1人だったという。

　どのようにソーシャル上で顧客となるゲームファンの声を見つけて拾い上げ，コミュニティを広げていくか。最初に行ったことが，ソーシャルメディアからほしいハンドルネームを取り，ドメインを購入し，そのすべてをセットアップすることだった。さらに，もともとあったDiscordに加えて，自身のオーディエンスが利用しそうなSNSとしてTwitterをセッティング。TikTokのアカウントも取得した。


　どれも使い方をよく知らないまま始めることになったため，各プラットフォームの特徴を知り，どのように使うのがベストなのかを学び，解決していく必要があった。Twitterは，投稿の認知度を高めるためにトレンドのハッシュタグを使い，機敏に行動する。プレイヤーに刺さるネタ投稿をハッシュタグ付きでツイートし，好きなことを聞き，投票企画を行うといった「コール トゥ アクション」でエンゲージメントを上げた。どのような口調がいいのかを考え，効果的な時間を模索して投稿する。プレゼント企画も行ったという。


　TikTokのユーモアあるショート動画で共に盛り上がり，Discordはプレイヤーのための主要な場所として貴重な声に耳を傾ける。これを行ったことで2022年2月に1万1000人だったDiscordユーザーはおよそ5万8000人に。また，ネット広告は使わず，ハッシュタグの拡散性とプレイヤーの口コミというオープンな形をとった影響もあってか，14万5000件だったSteamのレビューが178万件という数字を記録した。話題性が上がったところでプレスリリースなどの展開も行い，それによってメディアのレビュー本数も格段に上がったという。


　大事なことはとてもシンプルだ。それは，楽しい投稿を行うこと。明るくて新しい，フレンドリーな投稿を始めた途端，よりシェアされ，より良いエンゲージメントを得られるようになったという。
　暗い気持ちだと投稿内容も引きずられる。自分自身の精神的な健康にも気を配る必要性を説き，SNS上での人付き合いは境界線をしっかりもち，また全部を一人でやらず，プラットフォームごとに委任することも重要だとも語った。


　投稿や動画を見て学び，講座や業界向けの講演への参加でさらなるスキルを得て，ショーケースの開催やストリーマーの動向を追いかける。メンタルヘルス・トレーニングコースを受講する。他業種からきたからこそ，ゲーム業界に慣れるためのさまざまな挑戦や勉強をしているBeth氏の姿勢には学ぶことが多い。

　コミュニティ管理はゲームの成功に欠かせないものであり，投資する価値は間違いなくあると語るBeth氏。強い声のトーンやブランディングが企業イメージの構築に役立ち，一貫性をもってユーザーの声に耳を傾け，信頼に足る“本物”の企業を目指すことが長続きにつながるとまとめた。こういったことを知るうえでもアジャイルコミュニティマネジメントの意識と学習は重要なもののようだ。

「Vampire Survivors」ダウンロードページ

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