レビュー
「ヴァルキリーエリュシオン」レビュー。英霊たちが駆ける黄昏の世界で,ド派手な攻撃とコンボを決めて強力な敵を片っ端から葬り去ろう
4Gamerではすでに,先行して公開された体験版のインプレッションを公開しているが,このたび製品版と同等のバージョンを事前にプレイする機会も得たので,改めてレビューをお届けしよう。プラットフォームは体験版と同じくPS5版で,掲載しているスクリーンショットもPS5の本体機能で撮影している。
なお今回もなるべく記述には配慮しているが,記事内に本編のネタバレが含まれる可能性がある点に注意していただきたい。
滅亡を前に,幾多の敵と味方に出会いながら世界の謎に迫る
遙かな昔,神界,地上界,冥界と3つに分かれていた世界は,いずれも滅亡の危機に瀕していた。神族の頂点であり,世界を統べる主神オーディンに神狼フェンリルが戦いを挑み,神界戦争と呼ばれる破滅的な戦いが始まってしまったからだ。この戦争により神を含む数多くの生命が死に絶え,地上界は天変地異により大部分が消滅,神界ではオーディンの居城であるヴァルハラ周辺のみが残るという,黄昏の時代が始まっていた。
フェンリルとの対決が相打ちという形で終わったオーディンは,その時に瀕死の重傷を負い,主神でありながらヴァルハラから動けない状態となっていた。そこで世界の崩壊を食い止めるべく,手足となって世界を動き回れる自身のしもべ「ヴァルキリー」を生み出し,世界の救済のために戦えと命令する。
オーディンの命によりただ粛々とアンデッドの掃討に邁進するヴァルキリーだったが,かつては人間であった英霊のエインフェリアとの出会い,そして謎の黒いヴァルキリーとの戦いなどを経て,徐々に今までになかった感情と疑問が生まれつつあった。神族にとって人間はどのような存在なのか,そして敵の本当の目的は何なのか,葛藤と疑問を抱えながら,ヴァルキリーは地上界での戦いを繰り広げていくことになる。
さて,ヴァルキリーシリーズ最新作となるエリュシオンだが,従来作とは異なりジャンルがほぼ純粋なアクションゲームになっているのが大きな特徴だ。エリアは大まかに,拠点でありエリア移動のポータルとなるヴァルハラと,フィールドが広がり戦闘やクエストをこなす地上界に分かれており,物語(メインクエスト)を進めると徐々に移動可能なエリアが増えていく。クエストの受注とエリアの移動はセットになっており,道中にあるセーブエリアからヴァルハラに戻ることもできるが,その時点で報酬はすべて没収される(事実上リタイヤに近い)ので,一度引き受けたら最後までクリアを目指すのが基本だ。
メインクエストはオーディンから直接下知され,地上界やヴァルハラなどでの会話によりサブクエストが追加される。各クエストには,新たな武器やライフの最大値アップなどの重要な報酬が用意されているほか,敵や宝箱から強化用の素材が多数手に入るので,ヴァルキリーの能力を高めたいならクエストのクリアは必須だ。メインクエストのクリアのみでも物語は進められるが,順次サブクエストもこなしておくと,戦闘を有利に進められるだろう。
フィールドは城塞都市や水の都,山岳地帯などバラエティ豊かだ。基本的には一本道だがエリア自体は広めで,各所に横道や開けた場所が用意されており,宝箱やアイテムが入ったオブジェクトが隠されているため,細かく探索すると実入りも大きい。エリアによっては,「ソウルチェイン」と呼ばれるフックのようなものを使って高所に登るなど,立体的な移動と捜索が必要とされる。鍵や障害物による足止めなどパズル要素も少しだけあるが,多少気をつけていれば詰まるようなことはないはずだ。
活動できるエリアは,街や聖堂など,本来は人間の営みを感じられるはずの場所が多いが,前述のように滅亡の危機にあるため,ほとんどが廃墟や遺跡となっている。生きた人間を見ること自体がまれで,地上界は敵であり浄化されていない魂であるアンデッドが徘徊している。その中では,欠魂花(けっこんか)と呼ばれる花は唯一と言っていい清涼剤だ。これはかつて生きていた生命が残した魂の名残りで,人間はもちろん,一部には神族や妖精までが生前の記憶や特別なできごとを残している。
基本的にはその場にいた名もなき人間が残したものが多いのだが,一部は名前が共通した連作にとなっていて,過ぎ去ってしまった過去の物語が浮き上がってくるのが面白い。基本は探索要素であり,メインの物語そのものにはほぼ関係ないのだが,激しい戦闘の合間に一読するのには丁度いい息抜きで,ついつい探したくなってしまう。
本作はRPG的な成長要素もあるのだがヴァルキリーに経験値やレベルはなく,強化は前述した消耗品を素材に,武器の強化やスキルの取得を行ってアップグレードするようになっている。
武器は片手剣やレイピア,両手持ちの槍などアクションや攻撃能力が異なるものが複数用意されており,さらに武器それぞれを個別に強化する必要があるため,素材の手持ちが少ない間は何を優先するかで迷う。敵には個別に弱点となる武器が設定されているため,うまく切り替えて有効なもので狙って行く方が基本的にはよい。
だが,例えばレイピアは攻撃範囲が狭い反面,出だしが早く,コンボの数も稼ぎやすい。逆に槍は発動は遅いが複数の敵を巻き込みやすいなど特性がかなり違うので,プレイヤーの好みの差が出やすい部分だ。なので使用するにせよ強化するにせよ,あえて特殊な効果などは考えず,好きな武器を使い込んでもいいだろう。
なお,スキル強化については戦闘のシステムにも大きく絡んでくるので,次で詳しく説明する。
ディバインアーツとエインフェリアを駆使し,強力な敵の群れに立ち向かおう
冒頭でも触れたが,本作はキャラの成長要素こそあるものの,戦闘システムは純粋なアクションゲームだ。プレイヤーは道中に立ちふさがる敵の攻撃を避け,攻撃を叩き込み,味方と協力しながら殲滅して先に進んでいく。メインクエストでは大概,画面を覆うような巨大なボスに立ち向かうことになるが,サブクエストでもドラゴンやクラーケンといった中ボスクラスが複数待ち受けるのはザラで,ほぼ終始激しい戦いが繰り広げられる。
ヴァルキリーの基本の攻撃は,手持ちの武器を利用したコンボアタックだ。威力も速度も癖がない通常技(□ボタン),高威力の攻撃や踏み込みが発生する変化技(△ボタン),空中のターゲットが狙えるジャンプ(×ボタン)を組み合わせていく。
前述のように,装備する武器によってモーションや発動速度,攻撃の範囲も大きく異なるのだが,コンボのコマンドそのものは共通のものが多く,武器ごとに苦労して覚え直す必要はないのが嬉しい。武器はショートカットに2種類が登録可能で,さらにメニューからいつでも変更することが可能なので,見るからに強力な敵が現れたら弱点武器への切り替えを検討しよう。慣れない間は,通常技を連打するだけで最低限のコンボは繰り出せるので,初心者でも安心だ。
本作に登場する敵は,真っ正面から普通に戦うと厄介な相手が多い。純粋に敵の数が多いというのもあるのだが,正面から攻撃するとガードでほぼすべてを防がれたり,吹き飛ばしや長時間のスタンを伴う攻撃を繰り返したり,ガード不可や広範囲の攻撃を多用してきたりと,攻撃一辺倒の動きではどうにもならない場面が少なくないからだ。
中ボスクラスはもちろん,小型の敵でも油断すると掴みから結構なダメージを与えてくるタイプもいて,気がつけば半分以上ライフが失われていた,なんてこともある。
こういった敵の弱点を効率的に突く方法が,「ディバインアーツ」と「エインフェリア」だ。ディバインアーツは魔法,エインフェリアは召喚キャラであり,戦闘中にゲージを消費する形でいつでも発動できる。どちらも雷や炎といった属性が設定されており,ディバインアーツは発動後すぐに効果が現れ,エインフェリアは一定時間戦場にとどまって攻撃を続けてくれる。
どちらの技も(種類にもよるが)派手なエフェクトがガンガン発生し,さらにコンボ数も稼いでくれるので非常にありがたい。画面内に複数のエインフェリアとディバインアーツ,そして敵の攻撃が激しい攻撃が一斉に発動することも珍しくなく,見応えは抜群。一瞬わけが分からなくなるときもあるが,一段落した後,敵が消滅しているときは,実に爽快だ。
これらの技が強力なのは,敵に直接ダメージを与えるだけでなく,長時間足止めしたり,無力化してくれたりする点にある。敵にはそれぞれ弱点属性が設定されていて,その属性で攻撃を与えるとゲージが増加し,満タンになるとブレイク状態になって長時間スタンし続ける。敵の攻撃がいくら強力でも,固まっていればそもそも繰り出してくることはない。その間に倒してもいいし,もっと厄介な敵に集中してもいいだろう。
敵の頭上には弱点属性とそのゲージが常に表示されているので,その属性にあわせたディバインアーツとエインフェリアを活用してくれと言わんばかり。特にエインフェリアは弱点を突かなくても十分な活躍をしてくれるし,何より召喚すると自分の武器に属性の付与ができるという点で,特に優秀なのだ。
以上のように,普通に利用しても強力なヴァルキリーの技だが,さらにもう一段ギアを上げる方法がある。これが前述した,スキルの強化だ。
ヴァルキリーのスキルツリーは,強化する種類によって「攻撃」「防御」「補助」に分かれており,純粋に攻撃力や防御力を高めたり,ライフやディバインアーツのゲージを増やしたりといったシンプルなものも多い。だが,一部のスキルはジャストガード時に強力なカウンターを放ったり,特殊な攻撃でゲージを回復するソウルを落下させたりと攻撃を拡張するだけでなく,特定のアクション時に低コストで,エインフェリアを自動で呼び出すことができるようになったりする。
このエインフェリアの自動呼び出しは,前半こそピンチの時の非常手段という印象が強いが,ゲームが進んで強化が進んでくると,通常コンボを決めたり,敵から連続して攻撃を食らったりするだけでも発動できるようになってくる。こうなるとほぼ常時,何も意識しなくても何かしらのエインフェリアは出ていることになるし,そうなれば純粋に攻撃力が上がり,コンボもどんどんつながっていく。さらに,ディバインアーツのゲージはコンボがつながった量に応じて回復するので,消費コストをほぼ気にすることなく使えてしまうのだ。
本作のバトルはこういった「スキルによるエインフェリアと,ディバインアーツの惜しげもない連発」が非常に気持ちいい。前半はコストを気にして控えめに使っていた技が,戦闘中にガンガン回転させられるようになるからだ。中盤以降は中ボスクラスの強敵がお供を連れて次々出てくるが,この戦法がうまく回っていればカモにすることも可能で,弱点を適切に突いていけば各種の消費ゲージを回復させるソウルの塊に見えてくるほど。回復アイテムを使う必要も,あまりなくなってくる。
ゲーム序盤は敵も弱いが,ヴァルキリーの技の選択肢も少なく,弱点やエインフェリアの召喚を十分に利用することができない。そのため,本作のバトルの楽しさが本当に実感できるのは,スキルが揃ってくる中盤以降になってくるだろう。
“しもべ”というより“仲間”のエインフェリアとのやり取りを楽しもう
ストーリー面では細かいことはあまり書けないのだが,個人的にはヴァルキリーとエインフェリアとのやり取りが印象に残った。エインフェリアは英霊とも呼ばれる「強い魂」の持ち主だけあって,生前の時代や境遇,経歴はバラバラで,最初はヴァルキリーに協力的かどうかも異なる。だが一度迎え入れることができれば,“しもべ”というより“仲間”と呼べるような関係になっていく。
エインフェリアを強化する方法も,ヴァルキリーのようなアイテムを消費するのではなく,その過去にちなんだサブクエストをクリアしていく仕組みになっており,より手間をかけた方が実力を発揮できるようになるという形が面白い。
またそれに引きずられるような形で,最初はまるでロボットのようにオーディンの命令に従うだけだったヴァルキリーが,まるで人間のような感情や葛藤を徐々に見せるようになっていく。死んで魂になっただけの人間の頼みすら「どうせ救済のためだから」と理由をつけて実行していくようになるのは,相互に影響を受けているようで,ちょっと微笑ましくなってしまった。
本作は世界が崩壊しかけている関係か,登場する人物そのものは決して多くないのだが,エインフェリアとのやり取りはイベント中はもちろん,クエスト中でも一定頻度で発生する。なので世界は危機に瀕しているが,孤独で悲壮感に満ちた戦いといった空気になっていないのも印象的だ。
システム面は前述のとおり,前半は攻撃の選択肢が少ない関係で戦闘が地味になりがちなのと,カメラが変なところで固定されて,周囲が見えなくなる事態がたまに発生したりするのが気になった。また武器やディバインアーツは入手できる種類が多い反面,ショートカットに登録できる数が少なかったので,可能ならばさらに(切り替え式などの)ショートカットを用意してくれれば嬉しいところだ。
本作は前半こそコンボ主体のスタンダードなアクションゲームという感じなのだが,中盤以降はタガが外れたように派手で技を連発できるバランスになっていき,それがさらなるコンボを生むという爽快感を生み出している。かといって敵も黙ってやられるだけでなく,耐久力は高めだし,嫌らしい攻撃を高頻度で放ってくるので,決して楽勝というわけではない。プレイフィールこそ進行に応じて若干変わるものの,冷静に弱点を突いて動きを止めたり,きちんと動きを見て攻撃を避けたりといった基本はずっと通用する。
何より苦労して解放したエインフェリアたちが,シナリオ面ではヴァルキリーに人間らしさを芽生えさせ距離を詰めていき,戦闘ではそれに呼応するように強力な味方として大暴れしてくれる姿は,力強いと同時に嬉しく感じてしまう。ヴァルキリーたちの旅の果てに何があるのか,ぜひその目で確かめてほしい。
「ヴァルキリーエリュシオン」公式サイト
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