セガは2022年6月23日,メガドライブの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズ4タイトルを収録した
「ソニックオリジンズ」 (
PC /
PS5 /
Xbox Series X /
PS4 /
Xbox One /
Nintendo Switch )を発売した。
本作は,現在も新作がリリースされているソニックシリーズの原点である,1991年に発売された
「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」 (以下,ソニック1)を第1弾とし,
「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」 (1992年。以下,ソニック2),
「ソニックCD」 (1993年),
「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3&ナックルズ」 (1994年。以下,ソニック3&ナックルズ)をリマスター化し,現代のフォーマットに合わせた画質の向上やゲームシステムの改良などを施して,多くの新要素を追加した豪華な内容となっている。
本稿では本作のゲーム内容や,PlayStation 4版のプレイフィールなどをお伝えしていく。なおゲームは同時配信となる別売りの追加コンテンツを反映させた状態でプレイを行っている。
収録したタイトルのストーリーに準じたオープニングアニメも収録
本作は,昨年に迎えた
ソニック生誕30周年 の一環として発表されたタイトルだ。30周年のコラボイベントや映画「ソニック・ザ・ムービー」のヒットなどにより,これまで以上に知名度がアップしたソニックの原点を,広く知ってもらうことを意図に企画されたものだ。
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2022/06/23 17:39
メガドライブ版ソニックのコンピレーションタイトルは過去にもいくつか発売例があるが,海外では13年ぶり,国内では18年ぶりで,とくにソニックCDやソニック3&ナックルズは,「SEGA AGES」シリーズなどでも発売されておらず,初めてプレイする人もいるだろう。
しかも収録された作品群は単純な移植作品ではなく,16:9画面への対応や一部のルール変更が行われ,
幅広いプレイヤーが遊びやすいように改善 されている。
新規収録の
アニメーション がなかなか新鮮で,各タイトルにはその内容に準じたオープニングとエンディングが用意されているので,ぜひ見てほしい。
ゲームセレクト画面も凝っていて,各タイトルの舞台となる島をモチーフとした3Dモデルが配置されている。デジタルデラックス版や追加コンテンツを購入すれば,ここにソニック達が登場する演出も追加され,見ているだけで楽しいものとなる。
島をモチーフとしたゲームセレクト画面。個別にズームも可能だ
追加コンテンツを反映させると,ここにキャラクターが登場する
タイトルごとに流れるオープニングアニメ。BGMが楽曲のアレンジ版になっている点も嬉しいところ
本編では,タイトルごとに
「アニバーサリーモード」「クラシックモード」「ボスラッシュ」 を選ぶことができる。
メインとなるアニバーサリーモードは,各タイトルのゲーム画面を16:9の画面に拡大,広い画面でプレイできることに加え,タイムオーバーと残機の要素がなくなり,
何度ミスをしてもチェックポイントからやり直しが可能 になったモードだ。
2Dのソニックシリーズのステージは,チェックポイントが複数用意されており,そこを通りながら進んでいけば,いずれはゴールにたどり着ける。本作ではゲームオーバーにならないので,苦手な箇所を反復練習したり,複数用意された別のルートを探したりすることもできるだろう。
16:9のワイドな画面でプレイできる
ステージ中のチェックポイントが再開地点で,オートセーブのポイントでもある。ゲームを中断したときも,ここから再開できる
各タイトルには通常ステージとは別に,特定の条件を満たすと行ける「スペシャルステージ」が存在する。これをクリアすると「カオスエメラルド」など,特別なアイテムが手に入り,それを規定数集めてゲームを終えると,トゥルーエンドを迎えられる。
スペシャルステージはタイトルごとに違ったゲームシステムになっている
メガドライブ版でのスペシャルステージは,挑戦できるチャンスが限られているうえ,ミスをするとやり直しが利かないため,ある意味鬼門な存在だったのだが,アニバーサリーモードには
「コイン」 という要素が追加されており,これを消費することで,
スペシャルステージをやり直せる ようになっている。
コインは,従来の残機が増える条件(1upアイテムを取る,リングを100個集める,スコアで50000点取る等)を満たしたり,特定のモードをプレイしたりすることで増えていく。後述の「ミュージアム」内の要素のアンロックにも使用できるので,積極的に集めよう。
コインがあればスペシャルステージのやり直しができる
規定条件の下でステージに挑む「ミッションモード」でも,報酬としてコインが得られる
アニバーサリーモードではその他にプレイヤーキャラクターを選べたり,「ソニックマニア」で追加された
「ドロップダッシュ」 (ジャンプ中にもう一度ジャンプボタンを押して押しっぱなしのまま着地するとダッシュする)ができたりと,アクション部分も改良されていて,とくに後者は上り坂などでスピードを落とさずに加速でき,意識して使うとゲームの手触りが大きく変わるので,ぜひ試してみてほしい。なお,テイルスやナックルズは,別のアクション(テイルスは飛行,ナックルズは滑空)となるため,ドロップダッシュは使えない。
アニバーサリーモードではキャラクター選択が可能。メガドライブ版ではストーリー上いなかったキャラも選べる
スピンダッシュと違い,止まらずにダッシュできるのがドロップダッシュの利点だ
「クラシックモード」は,
オリジナルのメガドライブ版を踏襲した内容 で,4:3のレターボックス画面で残機制,ドロップダッシュもできず,当時の感触でプレイができる。とはいえ,オープニングアニメはアニバーサリーモードと同じように流れ,ソニック2で改良されたスペシャルステージ(後述)もそのまま登場している。あくまでプレイフィールを楽しむものと考えるのがよさそうだ。
レターボックス画面でのプレイとなるクラシックモード。左右の壁紙はオプションで変更可能
「ボスラッシュ」はその名の通り,各タイトルのボスに連続して挑むというもの。残機制でソニック3以外はリングを持たずに挑まなければならないため,難度は高めだ。ゲームオーバーになった後リトライすると最初からやり直しとなるが,一度モードを抜けて「続きから」を選ぶと,途中から再開できるようだ。
連続で出現するボスに挑む。ソニック3以外はリング0の状態で挑むこととなる
さらに,本作ならではのモード
「ミラーリングモード」 が追加されている。これはゲームをクリアすることでアンロックされるモードで,ゲームプレイの画面を左右反転するというもの。単純にアニバーサリーモードの左右反転版なのだが,これが意外に
新鮮で面白いプレイフィール を味わえ,おまけ要素ながら,十分に楽しめるようになっている。コインも集まるのでぜひ楽しんでみてほしい。
左右反転した画面でプレイするだけなのだが,新鮮な感覚で楽しめる
ここからは本作に収録された4タイトルの内容と手触りについて簡単に紹介していきたい。
ソニック1は記念すべきシリーズ最初のタイトルだ。ソニックの走りに合わせて高速スクロールするステージはそれまで体験したことのないスピード感で,画面全体がグルグル回るスペシャルステージも本当にワクワクした。
BGMをソニック2とともに,ドリームズ・カム・トゥルーの中村正人氏が手がけており,ステージ1「GREEN HILL ZONE」のBGMは2021年にドリカムによるアレンジ曲「次のせ〜の!で - ON THE GREEN HILL」として発表され,今年8月公開「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」の主題歌にも採用されている。
今回収録されたソニック1は,ワイド画面でプレイできるのも大きいが,
テイルスやナックルズを選べる というのも大きなポイントだろう。一定時間飛行できるテイルスと,滑空と壁登りができるナックルズは,ソニックでは行けないところに行くことができるので,新たな攻略ルートを開拓できるのではないだろうか。
セーブファイルはキャラクターごとに用意される仕組みだ
タイトルが各キャラクター専用のものに変わる演出も凝っている
ソニックCDは,発売順では3番目の作品となるが,ストーリー上は2番目のため,本作では2番目に設定されている。ソニック1の発売後,北米で開発中だったソニック2と並行して国内のチームによって開発されたタイトルだ。外伝的な扱いをされることもあり,これまで他機種に移植される機会があまりなかったが,2022年10月発売の
「メガドライブミニ2」にも収録 されることが発表されている。
「タイムワープ」 システムが最大の特徴で,ステージ上に「Past」と「Future」のマーカーが点在していて,それを通過した後に一定速度以上で走り続けると,同じステージの過去や未来にタイムワープできる。過去と未来では敵の配置などが変わっていて,とくに過去での行動はゲームの攻略にもつながっている。
キャラクターは“ロージー・ザ・ラスカル”ことエミー・ローズと,エッグマンに作られたメタルソニックが登場 。エミーはソニックのガールフレンドとして,メタルソニックはライバルとして,後の作品でも登場する。
本作におけるソニックCDは,まず
オープニングアニメーションの高精細化 に驚かされるはず。オリジナルは解像度が低く,画面の2/3程度しか映像が表示されていなかったのだが,本作では4:3の比率ながら,ハード依存の解像度に対応した映像が流れるようになっている。
もちろん,プレイヤーキャラクターにソニックとテイルスを選ぶことができる。HD環境下で遊べるのは久しぶりのことなのでぜひ楽しんでみてほしい。
また,ソニックCDにはゲームを3分間操作をせずに放置していると,ソニックが画面外に去っていきゲームオーバーになるという仕様があったが,それも再現されている(ただしボイスは出ない模様)。
今回収録されたアニメにも影響を与えたと思われるスピード感のあるオープニングムービー
ソニックCD独自のタイムワープシステム
ソニック2は,相棒のマイルス・テイルス・パウアーが初めて登場した作品だ。ゲーム中は常にソニックの後ろをついて歩き,2P側のコントローラで操作して,協力プレイをすることが可能となった。ステージのアクト数が2つに減っているが,ステージ自体は大幅に増えてアクトも広くなり,完成度が高まっている。
本作に収録のソニック2は,
スペシャルステージがイチから作り直され ていて,見た目も動きも滑らかになり遊びやすくなっている。当時を知っているなら,その滑らかさには驚かされるはず。これはクラシックモードでも同じ仕様で,オリジナルのスペシャルステージは本作には登場しない。
アニバーサリーモードでは,ソニック,テイルス,ナックルズの単独プレイを選べる他,ナックルズ&テイルスという変わったコンビでのプレイも可能。ナックルズ単体でのプレイは,メガドライブ版のソニック&ナックルズにソニック2をロックオンさせてプレイできるものを再現している。
ジャンプ後に滑空し,壁にぶつかると壁登りができるナックルズ。テイルスとのコンビも組める
ソニック3&ナックルズは,メガドライブ最後のソニックシリーズだ。元々は「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」としてまったく別の内容で開発されていたが,それがボツとなり,急遽従来のシリーズのスタイルで開発されることとなったが,タイアップの関係で発売日をずらすことができず,ステージ6までを収録した未完の状態での発売を余儀なくされた。
「ソニック&ナックルズ」はその後半を収録した続編で,ソニック3のロムカートリッジを合体させて1本のタイトルとして遊べる「ロックオン」という特殊な仕様で,約8カ月後に発売となった。ゲームのタイトルにもあるように,当時はナックルズが初登場したタイトルで,ソニック&ナックルズでプレイヤーキャラクターとしても使えるようになった。
本作に収録のソニック3&ナックルズは2タイトルを合体させたもので,単体のプレイはできなくなっている。またこのタイトルのみ,メニューからスペシャルステージの
「BULE SPHERES(ブルースフィア)」 を直接遊ぶことができる。メガドライブ版のソニック&ナックルズで,ソニック1や他のカートリッジをロックオンしたときにプレイできるモードの再現で,オリジナル版の他,ボールの種類が増えてプレイフィールが変わった
「ニューモード」 もプレイできる。
専用のタイトルも作られたBULE SPHERESのニューモード。タイトル画面でボタンを押すとプレイヤーキャラも選べる
駆け足で収録タイトルを紹介してきたが,単純計算でシリーズ5タイトル分のゲームが詰まっていて,プレイフィールの異なるモードもあり,実にボリューミーな内容であった。さらに
「ミュージアム」 では,これまで未公開だった資料などを含め,サウンド・イラスト・ムービーを閲覧でき,資料的な価値も高い。
ミュージアムには3カテゴリーがあり,アンロックしたものはいつでも見られる
ショートアニメや30周年コンサートなど,貴重な映像も収録
追加コンテンツを購入すると,サウンドの再生シーンで,画面に登場するキャラクターを選べる
ロックされているものを選ぶと,アンロックの条件が表示される親切設計だ
一つ気になったのは,
各タイトルに用意されていた裏技的なコマンド が,当時とはコントローラのボタンの仕様の違いなどから,試しても入力できなかったという点。その旨をセガに問い合わせてみたところ,タイトルごとに別の仕様で入っているそうだ。具体的な内容については非公開だが,当時からのファンの間で語り継がれたあの裏技(どの裏技かはご想像にお任せする)も健在とのことで,ホッと一安心。何らかの形で公開されることにも期待がかかる。
全タイトルを通しでプレイする
「ストーリーモード」 など,ボリュームがたっぷりな一方,いつでも始められていつでも終われる手軽さがあるのもいいところだ。とくにソニックCDやソニック3&ナックルズは,初めて遊ぶ,あるいは久しぶりに遊ぶ人も多いと思われ,この機会にぜひプレイしてほしい。