プレイレポート
[プレイレポ]萩原一至氏が原案とキャラデザを担当する「QUESTER」は,1980年代のPCゲームを思い出させる“ハクスラRPG”だ
ゲームデザイナーは,「DARK SOULS TRPG」や「モンスター・コレクションTCG」を手掛けた加藤ヒロノリ氏で,プロデューサーは,「蒼穹のスカイガレオン」や「フライハイトクラウディア」などを代表作に持つ桑原敏道氏が務めている。
本作の舞台は,人体に害のあるウィルスが蔓延し,さらに天変地異によって文明を維持できなくなった“退廃未来”だ。大気は穢れ,水は淀み,人が生きることすら困難になってしまったこの世界は,地下から這い出ててくる不気味なクリーチャーによって,多くの人間を失っている。
そんな廃世界の中,探索者である“クエスター”たちは,文明跡であるダンジョンに潜っていくことになる。世界の謎を解くため,そして生き延びるために。
ゲームシステムはシンプルで,ダンジョン内に設けられた拠点から探索に出発し,道中にある金庫や特定のポイントからアイテムを入手したり,クリーチャーと戦って経験値を稼いだりしながら,全域の踏破を目指していくもの。
ただ,移動や戦闘をすることで消費する“浄化燃料”や,期限内に集めなければならない“食料”といった要素があり,プレイに緊張感がある。
戦闘はシンボルエンカウントのコマンド形式になっている。決められたリソースの中であれば,1ターン中に複数回の行動も可能。キャラクターだけでなく装備が持つスキルも使用できるため,キャラクターの育成や装備の組み合わせを考える楽しみも味わえる。
発売からすでに1週間ほど経つが,本日(3月24日)にはDLsiteでの配信も開始されているので,これからプレイを考えている人に向けてのプレイレポートをお届けしよう。
「QUESTER」公式サイト
旧世界の遺物を求め
ダンジョン「トーキョーメトロ跡」を探索
本作で探索するダンジョンは,人類未踏の「トーキョーメトロ跡」だ。クエスターたちは,生活の場でもある改造キャンピングカーでこの地を訪れ,そこを拠点に探索を進めることになる。
街やショップといったものは存在しないため,パーティーの編成やキャラクターの育成を行う拠点と,探索や戦闘,さまざまなアイテムの入手が行えるダンジョンの2か所を行き来するのが,基本的なプレイとなっている。
画面の左端にパーティーメンバー,その右にアイテム入手などの行動ログ,右側にダンジョンのマップや実行できるコマンドが配置されている |
探索は,方向キーの上下左右などでキャラクターを移動することで行う。プレイスタート直後のマップはほぼ何も表示されていないが,移動することで自分の周囲8マスが記録されていく。
ダンジョン内には,アイテムなどが入っている金庫や,後述する“食料”や“資源”を入手できる各スポット,戦闘が発生するエネミーアイコンなどがある。
初期の拠点から離れるほど敵は強くなるので,まずは近場でアイテム収集やキャラクターの育成を進め,ある程度強くなったら,遠方の探索を進めるといった流れになるだろう。
金庫や各スポットは,拠点に戻ることで復活する |
●さまざまな行動に必要な“浄化燃料”について
大気が汚染されているダンジョンの探索は,有害物質を中和する“浄化燃料”を消費する。初期値は255で,移動や壊せる壁の破壊,戦闘など,さまざまな行動をすることで減少し,これが0になると自動的に拠点に戻ってしまう。
拠点から遠い場所の探索を目指している時には,戦闘を避けたり最短ルートで進むなど,道中での消費を控えたほうがよさそうだ。
拠点に戻れば,“浄化燃料”は自動で全回復。その際,ゲーム内で1日が経過する |
なおダンジョン内には,“拠点候補地”がある。発見すると,一定の食料を消費することで拠点を移すことが可能だ。現在の拠点周辺の探索が終わっているのであれば,新たな拠点に移動したほうが“浄化燃料”の消費も抑えられて探索の効率があがるだろう。
●期限内に指定された量の“食料”を確保
クエスターたちが生きるために必要な“食料”も,ダンジョンで入手する必要がある。仕組みは少し変わっていて,一定の期間内に指定された数を集めなければならない。プレイ序盤であれば,10日が経過する前に食料を100集めることがノルマになる。
指定期間内に集められなかった場合は,一部の装備や全ての資源を失うといったペナルティが発生する。キャラクターのレベルや探索状況はそのままだが,かなり手痛いので注意したい。
“食料”は,ダンジョン内にある食料スポットを調べたり,敵を倒したりすることで手に入る。指定期間の前半は食料の入手に集中し,必要数を達成できそうになってからほかの探索を進めると安心だろう。
多彩なスキルを持つ仲間たち
探索中に新たな出会いも
ダンジョンを探索するパーティーは,5人のクエスターで編成されている。初期メンバーは,ハルカ(乱暴者),ドブロク(和尚),リサ(博士),エッジ(泥棒),ゴッツ(機動隊)で,かなりバランスがいい感じだ。
前衛系物理アタッカーのハルカ |
前衛系回復薬のドブロク |
後衛系アタッカーのリサ。攻撃系魔法職と思っていい |
宝箱を開けたり,敵への弱体バフが得意のエッジ |
パーティーの盾役として活躍してくれるゴッツ |
クエスターたちは,2つの武器と1つのアクセサリーを装備できる。装備には,攻撃や各種スキルのコマンドが付与されており,戦闘時にはそこから選んで戦うことになる。
例えば「木刀」の場合,“攻撃”が付与されているため攻撃のコマンドが使用可能に,「キックミット」には“攻撃”と“鉄壁”があるため,攻撃だけでなく,守りを固めるスキル鉄壁も使用できる。
数値的な能力だけでなく,戦闘でどんな立ち回りをさせるのかを考えた装備選びが必要になってくるだろう。
クエスターは,クラス専用のスキルを持っている。こちらは装備に関係なく使用できる |
育成は,敵と戦ってレベルアップに必要な経験値を得た後,拠点に戻ってから行う。レベルアップ時には,レベルに応じた資材も消費するが,レベル10までは必要ないので安心だ。初期のレベル上限は20だが,プレイを進めることで上限が開放されていく。
また一定レベルに達すると,新たなスキルを習得することもある。
なお初期の5人以外は,“拠点候補地”などを訪れることで仲間にできる。新たな職業であったり,同じ職業であっても別のスキルと持っていたりするので,必要に応じて育成をしておきたい。
リソース管理が重要な戦闘
強敵からは逃げる勇気も
ダンジョン内を動いている敵のアイコンに触れると,クリーチャーとの戦闘が発生する。アイコンの色は,青や赤,紫などがあり,青→赤→紫といった順で強い敵が現れる。ただし,パーティーの強さと相対的な能力で色が変わることはないようだ。現在の編成で,どの色のクリーチャーまで倒せるかは,挑みながら学んでいくしかない。
攻撃はターン制で,各ターンの初めにクエスターごとに行動(コマンド)を選んでおく。選べるコマンドは,先に述べたように「装備に付与されているもの」と「固有のスキル」だ。
各コマンドには,■の数で表されたAPが設定されている。1ターンで1人のキャラクターが使用できるAPは5となっており,その値内であれば複数のコマンドを選べる。
例えば,先に触れた「キックミット」は,AP2の“攻撃”と,AP1の“鉄壁”が使用できるので,1ターン内に両方のコマンドを使用できるといった具合だ。
基本的に,1つのコマンドを複数回選ぶことはできないが,装備に同じコマンドが複数付与されているのであれば,その回数分使用できる |
またコマンドによっては,バトルリソースである「薬品」や「電池」「爆薬」などを消費するものもある。戦闘開始時には最大値だが,戦いの最中に回復したいのであれば,専用のコマンドを使用する必要がある。
キャラクターによっては,バトルリソースを回復してくれるスキルを持つものも |
戦闘に勝利すれば,経験値やアイテム,食料などが手に入る。また,戦いで減ったHPなどは全快するので,すぐに次の戦闘に入っても安心だ。
なお戦闘中に,パーティーが全滅すると強制的に拠点に戻される。現在所持している食料と資材が半分になり,クエスターの経験値も,現在のレベル上がりたて状態まで戻されるので,注意が必要だ。食料確保の失敗と同様に,避けたい状況である。
勝てそうもない相手との戦闘は,逃げることも重要 |
探索と戦闘の繰り返しでキャラクターを育成し,ダンジョンの奥地を目指していく「QUESTER」。先へ先へと進むプレイスタイルではなく,拠点を中心に戦闘による経験値稼ぎと高性能の装備入手と強化をじっくりと根気よく行うことが重要だ。
また,登場するクエスターは全部で24人。効率のいい戦いができるメンバーで構成したり,強さを気にせず好みのキャラクターのみでパーティーを組むといった楽しみ方もできる。
ゲーム全体のデザインは1980年代のPCタイトルをイメージしているそうで,黒バックに緑を基調とした画面,あえて粗めに表示しているであろうキャラクタービジュアル,そして色数の少ないマップなどから,懐かしい気持ちになる人も多そうだ。
ただし,若いころに,PC-8801MkIIMRでゲームをプレイしていた筆者としては,文字フォントの解像度が高くて読みやすかったり,スクロールが滑らかだったり,マウスとキーボードが使える快適な操作だったり,FDを読み込む“ガッチャンガッチャン”とした音がなかったりするので,少し寂しくもある。まあ,そこまで昔のタイトルを再現されても困るのだが……。
なお,昔のゲームをイメージしているということで,操作方法が記載されたマニュアルが別途販売されている。本作は昨今のゲームのようにチュートリアルがあり,プレイを進めていくだけでシステムを理解できるのだが,もっとノスタルジーに浸りたい人は,購入するのもいいだろう。
こちらも今どきのデジタルデータ(PDF)ではあるが,昔のゲームガイドを意識した作りで,操作マニュアルのほか,初期キャラクタークラス解説,クリーチャーマニュアル・データ,メインクリエイター鼎談,BGMの楽譜などが掲載されており,読み物としても十分に面白い。
アニメイトゲームスとDLsiteにて,2200円(税込)で配信されている本作。ボリューム自体は決して大きくはないが,とことん戦闘や育成を楽しめる「NEW GAME+」もあるので,価格以上の満足感は得られるはず。昨今に多い,超絶美麗なグラフィックスと壮大な物語のRPGもいいが,設定を脳内で補完しつつ,じっくりと戦いを楽しめる本作も,ぜひプレイしてみてほしい。
「QUESTER」公式サイト
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QUESTER
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(C)萩原一至氏・加藤ヒロノリ・ Thousand Games