プレイレポート
[プレイレポ]OSチューニングでさらなる成長を。「ARMORED CORE VI」は,手強さと遊びやすさを兼ね備えた魅力的なメカアクションだ
「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」公式サイト
あらゆる戦術を駆使した立体的なアクションが,プレイヤーを魅了する
「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(以下,AC6)」は,同社が1997年から展開する「ARMORED CORE(以下,AC)」シリーズの10年ぶりとなる新作であり,発表と同時にメカゲー好きの大きな注目を集めた話題のタイトルだ。
本作の主人公は,フリーランスの傭兵である強化人間の「C4-621(以下,621)」。謎の男「ハンドラー・ウォルター」によって目覚めさせられた彼は,新たなエネルギー資源「コーラル」が埋蔵する惑星「ルビコン」へと送り込まれる。そこでは,コーラルを手に入れるためルビコンを侵略する星外企業と,これに抗う地元民の「ルビコン解放戦線」,そしてルビコンを封鎖して争いを鎮圧しようとする「惑星封鎖機構」が対立している状態だった。果たして621は,ルビコンでどのような道を選んでいくのだろうか。
621が操るのは,人型兵器「アーマード・コア(以下,AC)」。「頭部」「コア」「腕部」「脚部」「ジェネレータ」「FCS」「ブースタ」「右腕武器」「左腕武器」「右肩武器」「左肩武器」の,全11カテゴリで自由にパーツを選んで,自分だけのACをアセンブル(構築)し,さまざまな企業から依頼される「ミッション」に挑んでいく。
ACは巨大なメカではあるが,ブースタを使用した高速戦闘により,戦場を縦横無尽に動き回って弾を回避し,動きについて来られない敵を次々と葬り去ることが可能だ。ACの動きと攻撃の自由度はかなり高く,性能をフルに使った一騎当千の戦いは爽快の一語に尽きる。
この戦いを彩るのが「スタッガー」システムとアセンブルである。スタッガーとは,敵に攻撃を当てて「衝撃値(ACS負荷。ACS=姿勢制御システム)」を溜めていき,一定以上の負荷を与えることで無防備な状態にさせられるシステムだ。その状態の敵に攻撃を当てると,クリティカルヒットとなって大ダメージを与えられる。つまり,同じ武器を使ってもスタッガー状態か否かで与えるダメージが大きく変わり,ここに独特の戦略性がある。
耐久力の高いボスや,激しく動き回る敵ACと戦う際は,スタッガー状態に追い込んで大ダメージを与えるのが有効だ。スタッガー状態は一定時間で解除されてしまうため,ブレードなどの近接武器や,キャノンのような単発火力の高い武器で,スタッガー状態が解除される前に大ダメージを与えよう。
だが,この手の武器は敵に与える衝撃値も高いので,スタッガーさせるためにも使いたい。しかしそうするとリロードが必要になり,肝心のスタッガー中には使えない。スタッガーさせるために使うか,スタッガーさせた後で使うかの判断は,戦闘で大きなポイントとなるだろう。
なお,スタッガーは敵の攻撃により自分に起こることもあるため,ちょっとしたミスで手痛い一撃を食らってピンチに追い込まれることもある。スタッガーの際には「ガコン!」というSEが鳴るのだが,相手をさまざまな攻撃で追い詰めた上での計算済みの音には喜びで心が震えるし,敵の猛攻を必死で凌ぐ中で不意に響いた音には背筋が凍るような恐怖を覚えてしまう。
そして,スタッガーにはアセンブルが密接に絡んでくる。ACに搭載する武器は自分で選べるため,さまざまな構築が可能だ。スタッガーを狙って一発がデカい武器を複数積み込んでもいいし,逆に手数や当てやすさを重視してもいい。ACには両手と両肩に最大4つの武器を装備でき,組み合わせによって戦略もさまざまだ。
例えば,垂直落下型のミサイルで壁越しに先制,ジャンプして頭上を取り,側面から回り込むミサイルとマシンガンで敵を動かし,最後は一発が大きなライフルで狙い撃つ……といった,複数武器による三次元戦闘が可能だ。自分好みの戦略に合わせたさまざまな組み合わせを試してみよう。
しかし,好きな武器を好きなだけ積み込めるというわけではない。武器には「重量」があり,腕部パーツや脚部パーツに設定された「積載上限」を越えてしまうと基本的には出撃できない。要するに重すぎるものを積んだら動けないということだ。なら,積載上限が高いパーツを選べばいいと思うだろうが,そうしたパーツはそれ自身が重いため,その分だけ「アサルトブースト」(長距離突進)や「クイックブースト」(緊急回避)といった各種機動に影響する。逆に,軽いパーツは機動力を発揮できるが「AP」(耐久力)は低く,自分がスタッガー状態になった時が怖い。耐久力と機動力,手数と単発火力を天秤に掛けて,ガチャガチャとパーツを組み合わせていくのがアセンブルの醍醐味の一つだろう。それだけに,しっくりくるACを作れたなら,そのぶん思い入れも深まるのである。
敵の数やミッションの地形,さまざまな状況によって有利なアセンブルが変わってくるのもポイントだ。「強い者が生き残るのではなく,変化できるものが生き残る」適者生存の法則は本作でも健在だ。特にボス戦では,どんどんアセンブルを変えて試行錯誤するのが重要と言えるだろう。
アセンブルの中でも,ACの挙動に大きな影響を及ぼすのが脚部パーツだ。脚部パーツは大別して「二脚」「逆関節」「四脚」「タンク」の4系統があり,ACの動きはもちろん,フォルムも大きく変化する。
2脚はスタンダードで,特殊な能力こそ持たないものの,積載上限,耐久力,機動性のバランスが取れている。逆関節は積載上限と耐久力は低めだが,高いジャンプ力を持ち,回避を得意とする。四脚は空中でホバリング(浮遊)できるのに加え,足を止めずに重火器を使える。タンクは高い耐久力と「姿勢安定性能」値を持ち,スタッガーになりにくい上,四脚と同じく足を止めずに重火器を使える。操作感と採るべき戦術が異なり,それぞれに魅力がある。
逆関節に近接武器を積み,敵の攻撃をかいくぐりながら一撃を与えるロマンを追い求めてもいいし,四脚で敵の頭上から重火器の雨を降らせてもいい。タンクで乱射してゴリ押しするのも楽しいし,2脚なら初見のミッションにも柔軟に対応できる。好みと状況に合わせて,色々な機体を組み上げるのが楽しい。
なお,これらの特性については脚部パーツの種類ごとにチュートリアルが用意されているため,初心者でも安心してプレイできるだろう。パーツは購入時と同じ価格で売れるので,好きなだけパーツを試すこともできる。もちろん,カラーリングも自由だし,模様を入れる「パターン」や汚しを入れる「ウェザリング」といった機能を合わせれば,実に多彩な表現が可能だ。
こうして作った機体はセーブすることができ,その枠は40×4=160スロットが用意されている。また,後述するアリーナで倒したNPCの機体構成を再現したり,(発売前なので体験できなかったが)誰かがオンライン上に公開した機体構成を「共有コード」でダウンロードしたりもできる。発売後は,さまざまな個性的な機体で界隈が盛り上がりそうだ。
巨大な敵を相手に,歯ごたえのあるバトルを楽しめる
621が挑むミッションには,さまざまなシチュエーションが存在する。たくさんの敵と戦うだけでなく,衛星兵器の狙撃をかいくぐるといった,スリリングなシチュエーションも用意されていて飽きさせない。ミッションはメイン目標を達成すればクリアできるが,その間により多くの敵を撃墜すれば,追加報酬がもらえることもある。また,ステージの片隅には武器やパーツが落ちていることもあるため,探索も重要な要素になっている。
ミッションの要所では,ステルス状態の敵や高性能のAC,巨大なボスといった難敵と戦わなければならないことがある。中でも印象的なのが巨大ボスだ。圧倒的な火力と防御力を持ち,真正面から立ち向かおうものなら一瞬で粉砕されてしまうだろう。
猛攻撃で地面を焼き払う大型武装ヘリ「AH12」。超巨大な武装採掘艦「ストライダー」。前方の重装甲でイノシシの如く突進する重機動砲台「ジャガーノート」。無数の誘導弾による圧倒的な火力と制圧面積を誇る特務無人機体「バルテウス」。火山のように炎を吹き出す無人重機「スマートクリーナー」。前足でこちらを突き刺す鋼鉄のクモ「シースパイダー」など,今回紹介する部分だけでも個性的な連中が揃っており,いずれも一筋縄ではいかない難敵だ。
初見であっさりと瞬殺され,「こんなの,倒せるわけないじゃん!」と絶望しつつ,繰り返し挑むうちに攻撃パターンがジワジワと見えてくるあたり,実にフロム・ソフトウェアらしい作りとなっている。
同社のアクションRPG作品に比べると,遠い間合いでの戦いが多いが,危険な大技には前兆となる特徴的なモーションがあるうえ,警告表示と警報で注意を促してくれるため,わかりやすいだろう。
なお,たとえ撃墜されてもボスの直前からリトライできるし,ACのアセンブルもやり直せる。アセンブルを変えれば立ち回りも劇的に変化するため,色々な戦法を試すことが可能だ。相手の装甲が厚く「RICOCHET(跳弾)」が起きるなら,高火力の武器を選ぶか,近づいての射撃を心がけるといいし,相手の動きが遅いのであれば,衝撃値に優れたショットガンや近接兵器でスタッガーを狙っていくのもいい。あちこち動き回るようなら,逆関節でこちらも機動力を上げ,激しい攻撃を仕掛けてくるなら,タンクや姿勢安定性能の高い構成でガチガチに固めて動きのパターンを観察するのも有効だ。もちろん,どんなにリトライを繰り返してもペナルティはない。シリーズ伝統のダメージ分の「修理費」と,撃った分の「弾薬費」を取られるシステムは本作にも存在するが,どれだけリトライを繰り返しても費用はその1戦分だ。
もしなかなか勝てないようなら,一度ミッションから撤退するのも一つの手だ。過去のミッションをリプレイしてお金を稼ぎ,新しい武器やパーツを買うのもいいだろう。特にオススメしたいのが,アリーナへの挑戦だ。アリーナでは有名な傭兵たちの戦闘データと仮想空間で戦うことができ,修理費や弾薬費は不要となっている。勝てば賞金と「OST CHIP」,さらに機体構成とエンブレムのコピーをもらえる。重要なのがOST CHIPで,これを使うとOSチューニングによる追加機能のアンロックや能力の底上げができるのだ。
OSチューニングの中には,ボス攻略に役立つものも存在する。武器の攻撃力アップ,被ダメージの軽減といった基本的な能力アップをはじめ,耐久力を回復するリペアキットの効果アップ,致命傷を受けても耐久力1で踏みとどまり,自動でバリアを張る「ターミナルアーマー」なども存在する。攻略に行き詰ったら,アリーナでOST CHIPを入手することも視野に入れてみよう。また,アリーナでの戦いは,相手を反面教師として自分の戦いを見直すことにも役立つ。脚部ごとの長所や弱点が見えてくるし,戦い続けることで立ち回りも最適化されていくだろう。
こうしたプレイサイクル自体は過去作にも存在していたが,今回は攻撃力アップや被ダメージ軽減といったパラメータを底上げできるのが大きな特徴で,アクションに自信がない人もモチベーションが上がりやすい仕組みになっている。なお,倒した相手に再び挑むこともでき,賞金は何度でも手に入るが,OST CHIPは初回の撃破時にしかもらえない。また,ストーリーを進めないとアリーナに新たな対戦相手が出てこないので,アリーナだけを最後まで進めて飛び抜けた補正を得るようなことは不可能になっている。この辺りはアクションRPGではなくメカゲームとしての「AC6」を象徴している調整だ。そのかわり,OSチューニングは本拠地でお金と引き換えにやり直すことができるため,こちらは試行錯誤するのがいいだろう。
謎に包まれた主人公とハンドラー・ウォルターの目的とは
本作の注目ポイントはアクションだけではない。ハードボイルドな物語も見どころの一つだ。ハンドラー・ウォルターと621はさまざまな勢力の依頼を請け,ルビコンを転戦していく。621は,エリート然とした「ヴェスパー」や,荒くれ者の集まりである「レッドガン」といった部隊にゲスト参戦し,依頼主からの信頼を勝ち得ていくのだ。その過程では,ハンドラー・ウォルターの噂も色々と聞こえてきて,苛烈な人物であるような印象も受ける。
また,ストーリートレイラーでは621と良く似たコード名の傭兵たちがいる「ハウンズ」部隊が無謀とも取れる戦いを挑んで全滅している様が描かれるが,この出撃を命じたのはハンドラー・ウォルターであるようだ。その一方で,彼は621に対してはその境遇を気遣うような発言もする。果たしてハンドラー・ウォルターはいかなる人物で,どのような目的を秘めているのだろうか。
そして,621自身にも謎が多い。621は先の全滅作戦に出撃しておらず,「在庫」として保管されていたという。強化手術の副作用として感情を喪失しており,台詞すらない。ハンドラー・ウォルターは621を「コーラルに脳を焼かれた独立傭兵」と呼び,作戦を遂行すれば「人生を買い戻すだけの大金が得られる」と語るが,感情すら失った彼は何を望んでいるのだろうか。
今回プレビュー版をプレイしてみて,これまで「AC6」のコンセプトとして語られてきた「スケールのある立体的なレベルデザイン」「アセンブルと駆け引き重視のバトルデザイン」「高い達成感」が,いずれも有言実行されていたという印象を受けた。
衝撃を与えて姿勢を崩すことで受ける・与えるダメージが激増するスタッガー,厚い装甲が小火器を弾く跳弾,突進中は対衝撃性が増すアサルトブーストなど,鋼鉄の塊としてのメカにこだわったシステムが非常に面白い。敵の小火器から大したダメージを食らわず,鎧としてのACに安堵していたと思ったら,スタッガーして動きが止まり,鋼鉄の棺桶に思えてくるなど,操作キャラがメカであるという醍醐味が,ゲームのシステムとして表現されているわけだ。
「装甲騎兵ボトムズ」の高橋良輔氏は,2011年のCEDECにおいて,メカアニメにはスマートな「空軍的なカッコ良さ」と,無骨な「陸軍的なカッコ良さ」があると指摘していた(関連記事)が,メカ好きとしては,「AC6」がこれらを両立していると考える。パーツのデザインはスマートなものから無骨なものまでバリエーション豊かだし,機体のあちこちから噴き出るバーニアの炎,加熱して赤くなるガトリング砲の銃口や弾が当たる際の轟音が,空軍的・陸軍的両方のカッコ良さを表現していると感じられる。そういった面でも「AC6」は実に贅沢なメカゲーといえるだろう。
「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」は,“フロムゲー”らしい試行錯誤で戦う手強さと,OSチューニングによる能力アップの遊びやすさを兼ね備えた作品であり,「AC」シリーズ入門としてお勧めするにも充分な作品だと感じた。本稿で触れた以降の部分でも,個性的なパーツやボスが登場しており,筆者の「AC6」のプレイ時間は増え続けている。
近年は,初代「AC」当時と比較するとメカゲーの数も少なくなりつつあり,メカゲーは人を選ぶジャンルなのかもしれないとも思えてくる。そうした中,遊びやすさに配慮した「AC6」が高い注目度の中で登場するのは,ジャンルが復権するチャンスであるとも感じられる。「AC6」はフロムゲーとして強く知られるアクションRPGとは方向性は違うが,確かにフロム・ソフトウェアらしさが存在し,「DARK SOULS」や「SEKIRO」「ELDEN RING」などが好きな人も,その魅力に気付けるはずだ。
「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」公式サイト
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- アクション
- CERO C:15歳以上対象
- バンダイナムコエンターテインメント
- フロム・ソフトウェア
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- プレイ人数:1人
- ロボット
- PS5:ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON
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- ライター:箭本進一
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