［インタビュー］ヨコオタロウ×ゆーげん×セガが構築する「エラーゲームリセット」の挑戦的な世界観をプロデューサーに聞く

　セガが本日（2023年2月10日）発表した，新作スマートフォン向けタイトル「404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-」は，「キャスト」と呼ばれる擬人化されたゲームを悪用したセガが世界の頂点に君臨し，全てを支配するという衝撃的（？）な世界観だ。クリエイティブディレクター/シナリオライターにゲームクリエイターのヨコオタロウ氏，キャラクターデザイナーにイラストレーターのゆーげん氏を迎え，2023年春頃のサービス開始を目標に開発が進められている。

　本作には，「レジェンドIP」と呼称されるセガやコラボゲームメーカーの今も輝くヒットタイトルを擬人化したキャラクターが登場するという。ゲームのシナリオや本編に深く関わる重要な存在となるようだが，その詳細は今のところ不明だ。
　詳しいゲーム内容もまだ明らかにされておらず，まだ謎の多い本作だが，今回4Gamerではプロデューサーの中村豪介氏にインタビューを行い，現在明らかになっていることの詳細を伺った。

「エラーゲームリセット」公式サイト

「エラーゲームリセット」公式Twitter

“セガが支配する世界”でキャストたちが織りなす物語。ゲームはRPG＋シューティング？

4Gamer：
　本日はよろしくお願いします。「エラーゲームリセット」は，ヨコオタロウさんとゆーげんさん，そしてセガがコラボした新作タイトルという情報が公開されましたが，いろいろと謎も多く，お話いただける範囲でその詳細を伺えればと思います。
　まずは，本作を企画された経緯を教えてください。

「エラーゲームリセット」プロデューサー，中村豪介氏

中村氏：
　ヨコオさんと組んで新しいゲームを作りたいという前提があって，弊社よりご本人に相談をしたんです。非常に多忙な方なので，一度はお断りされてしまったんですが，「セガのIPを使ってゲームを作れるのであれば」というご連絡をいただくことができまして，社内的な確認も取らずに「ぜひお願いします」とお返事しました（笑）。

4Gamer：
　セガIPを使うというのは，ヨコオさんのアイデアだったんですね。

中村氏：
　社内的にセガIPを使った企画が検討されている時期でもあり「ヨコオさんにセガのIPをディレクションしてもらったら，どんな世界観になるんだろう？」というスタートでした。僕も元々ヨコオさんの大ファンなので，その世界観をいかに魅力的にゲームに落とし込めるかを優先しました。

4Gamer：
　過去には，セガさんが自らのIPを使った「セガガガ」や「セガ・ハード・ガールズ」といったコンテンツもありましたが，ヨコオさんだからか，それらとはかなり違うテイストになっていますね。

中村氏：
　今作に登場する往年の名作，あるいは今も燦然と輝く名作ゲームたちを「レジェンドIP」と呼んでいます。この「レジェンドIP」たちをヨコオさんのディレクションを通してリブランディングし，オリジナルのゲームを知らない世代にも改めて届け直すことが本作のテーマになります。

4Gamer：
　タイトルの「エラーゲームリセット」にはどんな意味があるんでしょうか。

中村氏：
　ティザー映像でご覧いただいた通り，本作の世界では，セガが世界一の企業となって，世界を牛耳っています。セガによってあらゆることが歪められており，その歪み＝エラーをリセットして正していくという意味合いを込めたタイトルです。


4Gamer：
　タイトルロゴも斬新ですね。ぱっと見「エラーゲームリセット」とは読めない感じで。

中村氏：
　「404」 はHTTP 404からの由来でエラーと読みます。「GAME」の文字は正しく読めるけど，「RESET」は裏返っていて，世界の歪みを正すみたいな意味を込めています。

4Gamer：
　セガさんが悪の企業になるという設定に誰もが驚かされたと思うのですが，社内的にはどうだったんでしょう。さすがに反対意見はありそうですが。

中村氏：
　そうですね。自社を悪者にするという尖りに尖った世界観ですので，当然懸念の声はあがりました（笑）。かと言って丸くするほど本来の魅力は失われますし，品質が低ければ内輪ネタで終わってしまいますから，やれるところまでやろうと思いました。やりすぎて倫理表現の観点から修正した箇所もありましたが（笑）。そういった試行錯誤を繰り返しながら社内のOKをもらったんですが，なかなかハードルが高かったですね。

4Gamer：
　セガが敵の企業になるというアイデアはヨコオさんからでしょうか。

中村氏：
　お互いにアイデアを出した結果ではあるんですが，ヨコオさんから「自社を扱う世界で自画自賛では面白くないので，それなら思い切り悪い方に振り切ってしまうのがいいのでは」という案をいただいて，それを双方の話し合いで現在の形にまとめたんです。


4Gamer：
　そんなセガが悪の企業という設定も含め，本作をとりまく世界観についてもう少し詳しく聞かせてください。

中村氏：
　まだティザー映像以外のことはお答えできないんですが，セガが世界を支配している近未来が舞台で，セガは自社が開発したゲームに自我を与えた「キャスト」という存在を悪用して，世界のあらゆるものを歪めてしまっているんです。プレイヤーはある事件をきっかけに「リボン」という謎の少女と出会い，この歪められている世界を正していく，というのがゲームの主な目的となります。

4Gamer：
　その「キャスト」が，先ほどのレジェンドIPのタイトルをモチーフとした擬人化キャラクターなんですね。

中村氏：
　ティザー映像でご覧いただいた「アウトラン」「アフターバーナー」「バーチャファイター」「バーチャコップ」の4タイトルがそうですね。もちろんこれだけではなく，映像を隅々まで見ていただいた方は，今後どのようなレジェンドIPが登場するかわかるかもしれません。


4Gamer：
　ティザーでゆーげんさんが解説されていた「アウトラン」に関しては，雰囲気の異なるキャラクターイラストが2種類出ていましたが，何か違いはあるんでしょうか。

中村氏：
　そこに関してはまだ詳しいことはお話できないんです。どちらも「アウトラン」のキャストでありその理由もあるんですが，詳細発表まではご想像にお任せします。

4Gamer：
　当然，キャストはプレイヤーに関わってくるんですよね。

中村氏：
　もちろんです。ヨコオさんが語っていた通り，ゲームのシナリオにもシステムにも関わる重要な存在です。

4Gamer：
　セガによって作り出された存在だとして，キャストはゲーム内の実世界に存在するのか，それともプログラムみたいな存在なのか，どちらなのでしょう。

中村氏：
　ホログラムのような形で現実世界に現れることもありますが，基本的には「電脳世界」の中に存在しています。しかも，キャスト自体は世の中には知られていない存在なので，出会うのも原則として電脳世界のみになります。


4Gamer：
　まだゲーム本編の具体的な内容が明らかにされていませんが，お話しできる範囲で，どういったゲームなのかを教えてください。

中村氏：
　ジャンルとしてはRPGですが，過去にヨコオさんが手がけた作品を想像していただくといいかもしれません。ヨコオさんには世界観やシナリオだけでなく，ゲームデザインにも密に関わっていただいているので，単なるRPGではないというのは間違いありません。ちょっとシューティングゲーム的な要素も……。

4Gamer：
　シューティングですか！？　それは意外ですね。

中村氏：
　スマートフォン向けRPGをよくプレイされる方からすると，あまり馴染みのないジャンルかもしれませんが，だからこそ目新しいゲームデザインとして成立する可能性も秘めています。
　また，シューティングと聞いてプレイヤースキルに不安を感じる方もいらっしゃるかと思いますが，ゲームプレイにはキャラクターの育成も強く関わっているので，しっかり育てればクリアできるバランスになるよう調整しています。

4Gamer：
　育成がゲーム進行に関わるところはRPGらしいですね。

中村氏：
　そうですね。ただRPGとしても，マップを歩いて敵とエンカウントしてコマンド入力でバトルして……といったオーソドックスなRPGとは違うものにしたいと考えました。なのでヨコオさんにゲームデザインや手触り，UIなども含めて監修をしていただいて，独自性もありつつスマホで遊べる手触りのいいRPGとして作り込んでいる最中です。

レジェンドIPタイトルは，ゆーげんさんの手によってゲームファンに向けたキャラクターへと昇華

4Gamer：
　クリエイターとしてもうひと方，ゆーげんさんがキャラクターデザインで関わっているとのことですが，その経緯についてもお聞かせください。

中村氏：
　本作の場合，世界観が大きな魅力の一つでもあるので，なるべく統一感を出したいと考えまして，キャラクターデザインは1人の方にお願いしようと早期から決めていました。ヨコオさんとも相談しながら候補のイラストレーターさんを検討しましたが，お願いするボリュームが膨大かつ，世界観を決める重要な役割ですので，選出は難航しました。
　ゆーげんさんも初期から候補に上がっていたんですが，「アトリエ」シリーズなどで人気を博している方ですから，恐らく無理だろうと思っていました。しかし，ダメもとでお声がけしてみたところ，ゆーげんさんがセガファンだった事もあり，良いお返事をいただけました。

4Gamer：
　キャラクターデザインのオーダーはどのようにされたんですか？

中村氏：
　イラストレーターさんにキャラクターデザインをお願いする場合，普通ならキャラの性格や希望のポーズ，アングルなどを指定するんですけど，ゆーげんさんの場合は，最初はシンプルなキャラクターシートだけ欲しいとお願いされたんです。
　もちろんこちらとしても入れ込みたい要素はありますから，そこからはゆーげんさんを交えながらデザイナーやプランナーといろんなアイデアを出して，そもそもの原作となるゲームの要素を抽出してデザインに落とし込みました。

4Gamer：
　公開されたキャラクターを見てみると，アーケードゲームの筐体や，ゲームに登場するアイテムといったポイントを押さえていますね。

アウトラン

アフターバーナー

バーチャファイター

バーチャコップ

中村氏：
　はい，元となったゲームをご存知の方がニヤリとできるような要素は必ず入れるようにしました。また，筐体の写真や基本情報を参考にするだけでなく，開発に携わったスタッフや有識者から話を聞いて，当時の時代背景やバックボーンなども取り入れ，さらに本作の世界観に沿う“曲解した解釈”なども付与しつつ，衣装やキャラクター性，キャストごとに持つ「モジュール」という共通の意匠にも反映させています。

　実は，こうしたデザインのフローを決める最初のベースとなったのが，ティザー映像でゆーげんさんが話している「アウトラン」なんです。乗っているスポーツカーの外観やエンジンっぽいデザイン，助手席に乗っていた女の子の髪色といったポイントですね。
　おかげさまで，当時からそのゲームが好きな方々の期待を裏切らず，なおかつ踏襲しすぎてもいない，まったく新しいデザインへと昇華させることができました。

インタビュー当日，偶然にもホールに「アウトラン」と「バーチャコップ」の筐体が展示されていた

4Gamer：
　今後のキャラクターデザインも，引き続きゆーげんさんが担当されることになるんでしょうか。

中村氏：
　はい，その予定で進めています。

4Gamer：
　セガさんのIPの擬人化というとやはりゲームハードのイメージが強いんですが，本作はアーケードタイトルを擬人化したものになるんですね。

中村氏：
　いえ，まだ公開できないタイトルが多数控えていて，コンシューマーの名作ももちろん登場します。開発初期は，2000年頃までの作品を候補としていたんですが，知名度の高さや根強いファンがいるタイトルであれば，そこに縛られることなく選出しています。リリース後にはきっと，ユーザーの方からリクエストがたくさん来るのではないかと予想していて，そこにも柔軟に対応できるよう考えていきたいですね。

4Gamer：
　ティザー映像では他社ゲームメーカーのタイトルも登場するとのことでしたね。

中村氏：
　はい，他社さんのIPもキャストとして登場する予定です。具体的なメーカー名やタイトルは発表までお楽しみにしていただければと思いますが，メーカーさんによってはすでに決定しているものもあります。

4Gamer：
　各社さんにお声がけしたときの手応えはいかがでしたか。

中村氏：
　タイトルを擬人化させてもらうという，結構ハードルの高いお願いですから，難しいかもしれないという覚悟で各社を回ったんですが，どのメーカーさんもことのほか好反応で面白そうだと言ってくださいました。「中途半端なものを作るくらいなら，突き抜けて面白くしてくれ」と言ってくださるメーカーさんもいて，こちらが予想した以上にたくさんご参画いただけることになりました。

4Gamer：
　ヨコオさんとセガさんのタッグですから，きっと面白くなるだろうという反応なんでしょうね。

中村氏：
　手前味噌ですが，弊社もゲーム会社ですので，他社の過去IPに関して社内にも詳しい人間がいますから，彼らに協力をあおぎつつ，本来のコンセプトを踏まえたうえで事実と異なることがないよう，リスペクトは常に忘れないようにしたいです。

4Gamer：
　「エラーゲームリセット」を通して，さまざまなゲームタイトルを知るきっかけにもなりそうです
。

中村氏：
　本作の世界観やキャラクター，ゲームデザインなどから興味を持って入っていただいて，そこから元のゲームを知って，改めて遊んでいただければなと思います。
　キャラクター設定だけでなく，元となったゲームの詳しい情報なども関係者の監修を受けつつ収録していますので，それらも含め楽しんでいただきたいですね。


4Gamer：
　今後の発表やプロモーション展開などについて，予定や構想などがありましたら教えていただけますか。

中村氏：
　まずはこの発表以降は，ゲームの詳しい内容について順次公開していきたいと考えています。とくに世界観に関しては，少しずつになると思いますが，しっかり継続して情報は出していきます。ストーリーラインに合わせて，事前に本作のいろいろな魅力を知っていただけるのではないでしょうか。

　今後のプロモーションはそれ自体を本作の体験の一環としていて，セガに支配された世界で一体どんなことが起きているのかを感じられる，数話の短編アニメーションの配信も予定しています。ゲームのリリース前から関連コンテンツはどんどん出していきますので，ぜひそこから「エラーゲームリセット」の世界へと入ってきてください。

4Gamer：
　最後にこの発表を受けて本作に興味をもったユーザーにメッセージをお願いします。

中村氏：
　「エラーゲームリセット」は，セガらしさもありヨコオさんらしさもある，尖っていて挑戦的な内容に仕上がっていると自負しています。「セガが支配するifの世界」を疑似体験していただけるよう，サービスの開始前から段階的にコンテンツを提供していく予定です。
　普通のゲームではないことは間違いないので，ゲームに刺激を求めている方は，ぜひ公式サイトや公式Twitterをフォローしていただいて，本編のスタートをお待ちいただければと思います。

4Gamer：
　ありがとうございました。

「エラーゲームリセット」公式サイト

「エラーゲームリセット」公式Twitter