連載
レトロンバーガー Order 91:「404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-」でセガを殺りに行く逆セガガガプロジェクト編
私が完全であるためには,暗い側面も持たなければならない」
(How can I be substantial if I do not cast a shadow?
I must have a dark side also If I am to be whole)
スイスの精神科医および心理学者であるCarl Gustav Jungは,著書「Modern Man in Search of a Soul」でこのように述べました。この他にも,Jungは「自分のネガティブな部分を見つめてこそ本当の自分になれる」(それは忌避されがちで,大衆は既成概念の選択や依存に逃れる)といった旨の主張をたびたびしています。簡単に言うと「ペルソナー!」的な話ですね。まあ人間の外的側面を“ペルソナ”と定義したのがJungですし。
実際,本当の自分になる=「主体的な見解を持つ」ことや,そのために「自分の否定すべき部分に目を向ける」ことは困難なものです。人間,自分自身から目を背けて世論に迎合したり,権威があるとされている人に賛同したり,他人と同調したりする方が快適に決まってます。普通は批難を浴びうる位置に立ちたくないわけです。そういう流れに逆らって「実際,他と比べて見劣りするとは思うし,万人受けするゲームではないよね。まあ俺は逆に大衆向けの明るいゲームとか受け入れられないから,こういうの好きだけど……『イルブリード』とか」みたいな事を言える人は,余程の善人か,そうでないなら筆者と同類の捻くれクソ野郎です。
そんなわけで,評価が固まっているものを擦り続けても悪いことではありません。ですが,捻くれて「俺はアキバのワゴンで『惑星ウッドストック』を見つけてウヒャヒャとなっちゃうクソ野郎だから〜〜〜!」となってこそ得られる栄養素もあります。もうちょっとマシなもので栄養を取ったほうが良いんですけど。でも昔のアイルランドではジャガイモくらいしか育たなかったんや! デスメタルは乾いた心にとっての優しさなんや!
といった感じで,今回はセガが「セガを殺せ」と捻くれ気味にブチあげた,セガの暗黒面に挑んでいく,レトロゲーム大行進の,4月25日にサービスが開始された「404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-」(iOS / Android,以下エラゲ)でやっていきましょう。ペルソナも今はセガグループのIPですし。奇しくもセガ設立記念日の掲載で。
「404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-」公式サイト
「404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-」ダウンロードページ
「404 GAME RE:SET -エラーゲームリセット-」ダウンロードページ
セガのひみつ,消された時間
エラゲが舞台としているのはセガの世界改変によって支配されたディストピアの未来世界。「もしかして20年前『セガガガ』でセガの市場シェアを100%にしてしまったせいか?」と思ったりもしましたが,この世界のセガは古くから圧倒的勝利を収めているので無関係のようです。
名作ゲームが美少女となった“キャスト”は,アノードとカソードの二種類が存在し,公式の説明によると「キャストの生まれながらの姿はアノードであるものの、精神汚染など様々な要因でカソードへ変化し、その力が悪用されることで世界改変が発生してしまう」(原文ママ)とのこと。
ジャンルの公称は「闇堕ちした少女を救うシューティングライクRPG」とされていますが,そもそもキャストはセガなどの暗黒メガコーポが邪悪な目論見で開発したものなので,「光と闇」というよりか,RPGのアライメントで言えば「ニュートラルイービルとローフルイービル」的な揺れ幅だと感じます。裏表,どっちをめくってもヤバい女ですね。ちょうど切らしていたから助かる。
主人公はセガに支配された世界を解放すべく戦っていくわけですが,そんな折にバンダイナムコエンターテインメントに支配された平行世界と,タイトーに支配された平行世界から,それぞれ他社キャストが侵攻してきます。様相は四つ巴,と言うかレジスタンスの主人公勢力に対して強敵・強敵・強敵の構図。さてどうなるという話ですね。でもゲーム企業が支配した世界,死ぬほど(not比喩)面白そうなので解放しなくていい気も個人的にはするのですが。
キャスト牧場! 素材を捜せ
アプリゲームの例に漏れず,本作はキャストを育てるのがゲームプレイ上の“正解”となります。キャストの強化要素を,雑に図式化してみましょう。
ガチャor復元
├キャスト(アノード/カソード)
│├パーツ装着(アイテム消費・6種)
││ └バージョンアップ(テーブル更新)
│├レベル(上限はプレイヤー自身のレベルに連動)
│├スキル
││ ├通常スキル(アイテム消費)
││ ├限界突破スキル(限界突破で開放)
││ └スキル解放コード(アイテム消費)
│├限界突破(ガチャやイベント等でピース収集)
│├記憶解放(戦闘またはアイテム消費によるポイント累積)
│└装備品
│ ├フィギュア(キャストとは別のガチャで獲得)
│ │ ├レベルアップ・上限突破(アイテム消費)
│ │ └グレードアップ(アイテム消費)
│ └アクセサリ(5種・特殊クエストで獲得)
│ └レベルアップ(アイテム消費)
└グループボーナス
├キャスト(所持数に応じて上昇)
└フィギュア(同上)
……多くね? 今日びだと一般的にこんなもん?
筆者が日常的にプレイしているアプリゲームは,1キャラの装備が3つや4つだったり,限界突破があくまでオマケ的なものだったり,逆に高ランクステージでは必須なので限界突破のハードルが低かったり,キャラクターの性能強化が戦闘ではなく獲得スコアに影響するものだったり,そういうのばかりなので,キャラクター強化にこうも多種・大量のアイテムを要求される設計には,思わず「うわあ なんだか凄いことになっちゃったぞ」と井之頭五郎フェイスになります。
強化の種類がこれだけあるということは,そのための消費アイテムを収集するクエスト等も多岐にわたるわけで……。交換用アイテムも,技術部トークン,取締役トークン,ガチャトークン,ミッショントークン,通常キャストガチャポイント,通常フィギュアガチャポイント,キャストガチャポイントなどがあり,これが現実の財布だったらめっちゃチャリンチャリンです。
まあ,こうなっているのはゲームプレイ自体にウェイトを置いていない(恐らくはカジュアルプレイのニーズに応えるため)ので,それとのバランス取りでキャストの育成システムが細分化されているのでしょう。プレイスタイル上の分類では,いわゆる“盆栽ゲー”ですね。育てましょう。
そういった部分が好ましいか好ましくないかは人それぞれだと思いますが,その一方で素直に面白いのが本作のBGM。戦闘BGMには,登場するタイトルの楽曲をモダンなエレクトロにアレンジしたものがあり,さらに複数タイトルのメドレーで構成されている曲もあります。これがバチクソかっこいい。今すぐサントラを出していただきたいくらいです。メドレーには未登場タイトルの楽曲も含まれていたりするようですが,今後の布石なのでしょうか?
セガが来た――あなたはだぁれ?
クラシックゲームのファンとしては,やっぱり「好きなゲーム×美少女=最強」的なカツカレー論法をエラゲに期待するところ。ですが,展開されるシナリオは「あのゲームをモチーフとした美少女キャラクターのシナリオ」なので,いくらかの肩透かし感は否めません。
例えば「ファンタジーゾーンのキャストは銭ゲバ武器マニア」というキャラ付け自体は良いのですが,それを主体に話を進められても,それはエラゲの中のことであり「ファンタジーゾーンってそうだったよね〜」「セガのゲームってこうだよね〜」みたいな感覚は触発されないわけです。セガに汚染された人間なら,やっぱり「バーチャロンのテムジンを美少女化するなら明貴美加テイストで」(サタマガ)とか「“2番目”の開発室では真っ赤なエビがスポーツカーのエンジン音で叫ぶ」(セガガガ)とか「アイワ製だ。4万5000円の代物だ」(セハガ)とか「青春を賭けないと『エイリアンソルジャー』のスーパーハードはクリアできねえんだよ……」(おじさん)とか,そっち方面で笑いたいじゃないですか。
……いや,なんだかどうにも言い方が芳しくないな。「出来が悪い」と思うところは基本的に無いんですよ。これがセガIPと無関係なタイトルだったら普通に「良いっすね☆」と言ってると思うんですよ。
でも「釈然としない」! やっぱり“この題材ならば”何らかの形で琴線をくすぐられたい! パロディに終始するのもしょうもないけど,少なくとも「星条旗ビキニの宮本武蔵です!」系とはニーズが違うだろうと!
もっとこう……あるだろう! ファンタジーゾーンさんにマークIIIとファミリーコンピュータとPCエンジンのどれか1つを選ばせるとか! スペースハリアーさんのモジュール(武装)をもいで,ファンタジーゾーンさんに載せて「CDロムロム! CDロムロム!」と連呼してみるとか! ゼビウスさんがマッピーさんを脳改造してバビロニアンスタイルにするとか! ダライアスさんに捕れたてぴちぴちシーマンを与えてみるとか! クソッ,筆者の膿んだ脳ではろくでもないことしか思い付かない!
タイトー世界からスペースインベーダーさんを呼んできて,セガ世界のサミー工業版スペースインベーダーさんや,SNK世界の新日本企画(当時の表記ではシンニホンキカク)版スペースインベーダーさんと会わせてみるとか! セガギャラガさんがセガとバンナムの間で揺れ動いてみるとか! バンナム世界の中村製作所地層から出土したBreakoutさんがセガ勢とタイトー勢にラリアットをPONGとかましていくとか! つくづくろくでもない!
釈然としない! フィギュア陳列棚の存在意義,釈然としない! デフォルトだと薄暗いし!
釈然としない! 404ってHTTPのエラーコードじゃん! 登場タイトル,だいたいアセンブラかCで書かれてると思うんだけど! ぬるぽ(Java)!
釈然としない! 他誌の中村豪介プロデューサーへのインタビューを読むに,キャストに関しては「旧作を知らない人には何なのかよく分からないと思うので」と原作の要素を積極的には押し出さないデザインにしているそうだけど,その一方で“ヨコオ節”を打ち出していきたそうな様子なのは,IP活用が主眼のゲームとして素直な視線を向けて良いのか!?
たびたびJOYJOYテレフォンとか,UGSFとか,激誕(バースト)!多元深宇宙(パラレルディープスペース)!!とか言ってる自分がエラゲやらんわけにゃいかんやろ〜という気持ちでプレイはしているものの,その上にどんなエクスペリエンスを得られるのか,何とも釈然としない!
ゲーム市場最大の侵略
といった感じでして,筆者の所感としては「枝振りはキレイなんだけど,鉢の足元が覚束ない盆栽」な印象です。果たして,この盆栽はどうなっていくのでしょうか。ハウス・オブ・ザ・デッドさん(カソード)のモジュールは「ハウス・オブ・ザ・デッド4」のジャスティスがモチーフですが,キャストにシリーズの包括的な概念を盛り込むならば,いずれは巨大な乾電池を載せたドリキャスも背負ってくれるのでしょうか。
そんなことを言っていると辛口批評のように思われるかも知れませんが,エラゲ自体の今後については大いに期待しています。おためごかしじゃなくてですよ。いやマジで。あえて不満をぶつけたい部分を挙げるとしたら,キャスト強化後などに一拍遅れてポップアップが出るので,その間に他のボタンを触って「反応しねえ?」となったり,ステージ目標の達成条件などで示されるアノード/カソードの指定が分かりにくかったりするなど,メニュー画面周りでのプレイアビリティくらいです。
まず,こうやって「複数社の複数タイトルを同一ゲームで交錯させる」って,なかなか他ではやりにくいですよね。複数社のIPがクロスオーバーするゲームならバンダイナムコゲームス(当時)の「プロジェクト クロスゾーン」,ゲーム会社を美少女化した(セガも)ゲームならコンパイルハートの「ネプテューヌ」シリーズ,ゼビウスやマッピーの美少女化ならケイブの「ゴシックは魔法乙女〜さっさと契約しなさい!〜」(iOS / Android)など,過去に類例が無いわけではないですが,「大手ゲーム会社が暗黒メガコーポと化した未来世界を舞台に,美少女化した各社のゲームを激突させるんです!」までやっちゃうのはセガくらいのものでしょう。他では味わえない,「レンタヒーロー No.1」風に言ったら“超一流のB級ご当地グルメ”です。
それに,ローンチしたばかりのスマホゲームに極端な欠点があるわけでもなしに良いも悪いも言えたものではありません。筆者がサービスインからプレイしている「アリス・ギア・アイギス」(iOS / Android)だって,“ノってきた”と思ったのは3年目くらいからでしたし。長期的なサービスを前提とする今のゲームって,ユーザの反響を受けて変わっていくところもあり,提供側が自分自身で「つかむ」にも時間を要すると思うんですよね。
今後,盆栽の底から太い根っこを2本突き出して,それでテクテク歩きだし,股んGO!状態になることもあるかもしれません。開催中のイベントでSNK世界の餓狼伝説さんが参戦してきましたし,これから侵略してくる予定のカプコンタイトルも交えて,銀河の果てまでウキウキ大行進です。
♪パパヤ〜 パパヤ〜(メキシカンフライヤー)
……えー,ですが。筆者は「アフターバーナー(アノード)のM61A1,弾倉がF-14系の配置じゃなくてF/A-18系の配置だし,左右反転してるし,アモフィーダーに弾が入っていない?」みたいなところに関してはムヮーギョッギョッギョ(別段怒ったり批難したりはしないが,妥協もしないという構えから繰り出す奇声)となる次第ですが。
だって,それは実際にあるものだから。ムヮーギョッギョッギョ。ちなみに弾倉が上だとF-4系(E以降),弾倉が左側だとF-15系,弾倉が横倒しで右側だとF-16系,弾倉を人が背負ったら巨漢のシャーマン,バルカン・レイブンって感じですね。ムヮーギョッギョッギョ。
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