プレイレポート
[プレイレポ]シリーズの原点が遊びやすくなって帰ってきた!「マリーのアトリエ Remake」がオリジナルからどう変わったのか
斬新なシステムと等身大の主人公を描く物語が人気となった「アトリエ」シリーズ
コーエーテクモゲームスが展開するRPG「アトリエ」シリーズだが,その初作となる「マリーのアトリエ」がガスト(当時)から発売されたのは1997年のこと。落ちこぼれの錬金術士である主人公・マリーが5年の期間と一軒のアトリエを与えられ,5年後の卒業試験合格を目指して錬金術修行や材料集め,そして冒険に明け暮れるという内容で,システム的には育成シミュレーション要素とRPG要素を組み合わせ,両者を錬金術でつなぐ,という感じの作品になる。
「世界を救うのはもうやめた」というコピーも話題となった。当時のゲームには世界の破滅や英雄の戦いを扱った壮大なものが多かったが,「マリーのアトリエ」は等身大の主人公を描く物語が共感を呼んだ。
マリーは錬金術の学校で歴代最低の成績を記録した落ちこぼれであり,世界を救うどころか自分が一人前になるので精一杯。錬金術のアトリエを切り盛りして腕を上げ,5年後に先生から認められる作品を提出するという卒業試験を課せられる。マリーの進路は5年間をどう過ごしたかで決まり,それはプレイヤーが望んでいたものと異なることもある。そしてプレイヤーはよりよい未来と,まだ見ぬエンディングを求め,周回プレイに向かうのである。
プレイヤーのやり込みに応えるコアなシステムと,感情移入できる主人公が揃い,「マリーのアトリエ」はヒット。ラジオ番組やキャラクターグッズなどが作られ,ファンの心を掴んでいった。のちに「アトリエ」シリーズとしてさまざまな作品が発表され続け,昨年2022年に25周年を迎えることになった。
シリーズ成立の経緯については,オリジナル版「マリーのアトリエ」やシリーズ初期作を手がけた吉池真一氏と,現在「アトリエ」シリーズプロデューサーを務める細井順三氏にインタビューも行っているので,興味のある方は一読されたい。
「アトリエ」シリーズ,20周年の新たなチャレンジ。新作「ネルケと伝説の錬金術士たち」&「ルルアのアトリエ」インタビュー
コーエーテクモゲームスのガストブランドが展開する「アトリエ」シリーズが,2018年で20周年を迎えた。シリーズ歴代キャラクターが集う「ネルケと伝説の錬金術士たち」に加え,アーランドシリーズの4作目「ルルアのアトリエ」も発表され,節目の年は新作ラッシュだ。長野のガスト開発室を訪れ,話を聞いてきた。
さまざまなアレンジで「マリーのアトリエ」がより遊びやすく
「マリーのアトリエ」は,オリジナルであるPlayStation版からセガサターン版,ドリームキャストにおける続編とのカップリング移植など,さまざまな形で展開されてきたが,フルリメイクは今回が初めてとなる。
本作では,前述したキャラクターの魅力とシステムの面白さはそのままに,各種のアレンジでより遊びやすくなっている。
加えられた変更の中でも,もっとも大きなポイントが,5年の制限時間をなくす「無期限モード」の追加だろう。本作ではオリジナル同様に5年の制限時間がある「通常モード」と,制限時間をなくした無期限モードをゲームスタート時に選択できる。
無期限モードでは6年め以降いつでも好きなタイミングでエンディングを迎えられるので,世界を存分に堪能できる(ただし,一部のイベントを見られないという制限はある)。後述するが,制限時間がなくなることでシリーズの初心者でも遊びやすくなる。近年の作品から「アトリエ」シリーズを始めた人はこちらを選ぶのも面白いだろう。
また,戦闘の難度も近年の「アトリエ」シリーズ同様に「EASY」「NORMAL」「HARD」(クリア後に「VERY HARD」追加)から選ぶことができる。NORMALでもオリジナル版よりは少し楽になっているので,初心者には嬉しいところだ。
マリーは自活しつつ勉強しなければならず,そのためには人々の依頼をこなし,銀貨を稼ぐ必要がある。そもそも錬金術を行うには「材料」が必要で,手に入れるため「採取地」へと向かうことになる。旅をするには護衛の冒険者を雇うことができるが,そのためには銀貨が必要で,銀貨を稼ぐためには依頼をこなさないといけない……と,「マリーのアトリエ」のプレイサイクルは分かりやすい。
依頼をこなすのが主な収入源となる。錬金術の腕を上げつつ銀貨を稼げるので一石二鳥だ |
採取地に行くとき護衛の冒険者を雇えるが,腕が立つ者ほど高額の報酬が必要だ |
これをより分かりやすくしたのが,リメイク版で追加された「イングリド先生の課題」システムだ。マリーの師であるイングリドから期限付きの課題を出されるというもので,「4人以上の仲間と冒険する」「売っている参考書を集める」「パラメータを一定値以上に上げる」などセオリーに沿った内容となり,達成していくとゲームの基本が自然に身につく仕組みだ。
育成シミュレーションというとハードルが高い印象を持つかもしれないが,課題のおかげで安心感がある。とくにオリジナル版をプレイしたことがない人にはありがたいシステムと言えるだろう。
採取地では,錬金術に使う植物や鉱物,水といった材料が採取できる。ここの採取システムにも変更が加えられており,オリジナル版では採取地を選んでからボタンを押すとランダムで材料を採取したり,戦闘になったりしていたが,今作では採取地のフィールドを自由に移動できるようになった。採取も樹木や水辺など,好みの採取ポイントを選べる。
四季の移ろいはフィールドにも反映され,冬に真っ白な雪景色になったかと思えば,春には緑の草が萌えるといった具合で,見た目にも飽きさせない。採取地にはモンスターがうろついており,昨今の作品同様,シンボルエンカウント式の戦闘になる。要するにモンスターを避けながら材料だけをかっさらっていくこともできるようになったわけで,面白い変更と言えるだろう。
「簡易採取」というシステムも用意されており,こちらはフィールドを移動することなくランダムで材料が手に入る,オリジナル版に近いシステムだ。経験者なら簡易採取で当時を懐かしむのもアリだろう。
戦闘はコマンド選択式で,「素早さ」のパラメータによって敵味方の行動順が変わる。戦闘の難度を選べるのは前述したとおりで,オリジナル版だと弱かった初期のマリーも,NORMAL難度なら即戦力として戦えるという印象だ。マリーが冒険に誘えるキャラクターは強さもさまざまだが,戦闘の難度が下がったおかげで安心して育成できるので,プレイの幅が広がっている。難度はいつでも自由に変更できるため,慣れるまでは低くしておき,キャラクターが育ったら上げるなど,状況に合わせて変えてもOKだ。
材料を手に入れたら錬金術で「調合」していく。野草から薬ができ,鉱物が爆発物になるなど,材料がまったく別の物に姿を変えていくさまは魔法のようだ。
調合の幅を広げるために,「乳鉢」「ガラス器具」など必要な道具を買い揃えなければならないあたりは初期「アトリエ」シリーズの特徴で,最近の作品から入った人にとっては新鮮に見えるだろう。
調合のシステムも近作よりシンプルにまとまっている。近作では,パズル的に材料を組み合わせたり,1つの調合レシピから別のレシピを派生させたりといった要素もあったが,本作ではオリジナル版と同様に,材料を必要数揃えて調合していけばいい。近作でお馴染みの材料の自動投入すら必要ないのだから分かりやすい。
材料から中間製品を作り,中間製品を組み合わせて完成品にするというリアルさもこの時点から存在しており,後述する「依頼」に対応するためにアイテムのストックを作っておく必要もある。こうした面白さがRPGと本作を差別化し,人気を博した理由の1つであることは言うまでもないだろう。
調合を成功させていくと,マリーは経験値を得てレベルアップし,さらに高度なレシピを扱えるようになる。落ちこぼれが少しずつ成長していくさまには,育成シミュレーション的な面白みがあるのだ。
調合は錬金術のレベルを上げるだけでなく,マリーにとってはスケジュールをマネジメントする社会勉強でもある。
街で「依頼」を受け,要求されたアイテムを納入すると銀貨がもらえ,同時に「名声」値が上がる。名声が高まるとさまざまなイベントが発生するようになる。また,ゲームが進むと難しい依頼も請けられるようになる。最初は野原で採れた材料をそのまま納品するような依頼だが,高度に加工したアイテムを求められるようになれば,その分だけ多くの銀貨をもらえるわけで,気分はいっぱしの錬金術士だ。
しかし,依頼には期日があり,遅れた分だけもらえる銀貨と名声が減少。最終的には失敗扱いになってしまうのだから恐ろしい。読者の中には「期日に遅れるなんてありえないでしょ。依頼を請けるときにしっかり確認すればいいだけなんだから」と思う人もいるだろう
実にその通りではあるが,往々にして予定外の事態が発生するのが本作のリアルさだ。
採取地への旅,魔物との戦い,材料の採取,調合といったそれぞれで,1日単位の時間を消費していくのだが,「実は手持ちの材料が足りなかった」とか「旅に要する時間を見誤っていた」といった細かいミスが積み重なり,スケジュールは後ろへとズレていく。
マリーが暮らすザールブルグの街でも,採取地同様に実際にマリーを動かしての散策を楽しめる。面積も広くないし,要所にはメニューから一発で移動できるため,テンポの良さは損なわれていない。季節で街の景色が変わるのはもちろん,日食の日には周囲が薄暗くなるといった演出もあり,作品の世界が深掘りされていると言えるだろう。
酒場「飛翔亭」を中心に,街のあちこちには個性豊かなキャラクターがいて交流できる。いつもポジティブで気のいい剣士「ルーウェン」,さえないオジサンに見えるが戦いでは超一流の騎士「クーゲル」,マリーと正反対の優等生で会うたびにイヤミを言ってくる錬金術士「クライス」など,いずれも個性的だ。彼らは護衛として雇うことができ,前述した採取地で魔物と戦ってくれる。
そして,ともに過ごしていくうちに「友好度」が上がり,さまざまなイベントが発生して親しくなれるのだ。今回はキャラクターの人となりを深彫りする交流イベントが追加されている。詳細は実際にプレイしたときのお楽しみだが,それぞれのキャラクターに複数個のイベントが用意されているため,全体的にイベントの密度が上がっているという印象だ。
オリジナル版をプレイした人も,追加イベントのために本作を遊ぶのはアリだろう。
改めてわかる「マリーのアトリエ」の面白さ
本作をプレイして再確認できたのが,「マリーのアトリエ」というゲームの面白さである。RPG的な成長の面白さに,時間にまつわるマネジメント要素が加わったプレイ感は独特のものだ。
マリーの未来は真っ白で,プレイヤーがどう行動するかによって将来の進路が変化していく。そのため,プレイ時には「マリーはこの先どうなるのだろう?」「プレイヤーとして,自分はどんなエンディングを目指すのだろう?」と自問自答することになり,選択や行動のひとつひとつに緊張感が出てくる。育成シミュレーションとしての側面が強い初期「アトリエ」シリーズとしてのプレイ感というわけで,このあたりはリメイク版でもしっかり表現されていると感じられた。
そして,過ぎゆく時間という概念が,作中世界にリアリティをもたらしている。旅や採取,バトルに調合……と,何をしていても時間は過ぎていく。時間はマリーを成長させてくれるが,同時に卒業試験までのリミットでもある。
依頼を期日に間に合わせようとやりくりする際や,季節がうつり変わってしまったときは時間の大切さを痛感することになるが,これは現実世界での暮らしにも通じるところがある。こうしたリアルさは,オリジナル版が広い層から受け入れられた理由の1つであることは言うまでもないだろう。
今回はPS4版でプレイしたが,ロードが十分に速いことも相まって,テンポは抜群に良い。サクサクとゲームが進んでいく中で,懐かしのイベントや追加イベントが展開していく。キャラクター達のボイスも25年前のものそのままで,改めて「マリーのアトリエ」の世界に没入できた。
オリジナル版ではドット絵で表現されていたマリーたちが,今回はデフォルメの効いた3Dグラフィックスになっているのも印象的だった。過去のゲームをリメイクする際,オリジナル版の記憶は往々にして美化されるものだが,笑ったり驚いたりするデフォルメマリーたちというのは良い落としどころで,当時を知る人も懐かしみつつ楽しめるだろう。RPGとしての側面が強くなった近年の「アトリエ」シリーズから入った人も多いと思うが,原点でありつつも古くない「マリーのアトリエ」を遊んでみてほしい。
「マリーのアトリエ Remake 〜ザールブルグの錬金術士〜」公式サイト
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マリーのアトリエ Remake 〜ザールブルグの錬金術士〜
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(C)1997-2023 コーエーテクモゲームス All rights reserved.
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