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「STEPN」のヨーン・ロン氏と,「資産性ミリオンアーサー」の畑 圭輔氏が,NFTプロジェクトの成功体験を語った,WebXの講演をレポート
イベントの1日目には,AIとブロックチェーンが専門の開発スタジオ「Find Satoshi Lab」の共同創設者であり,Web3フィットネスアプリ「STEPN」を展開するヨーン・ロン(Yawn Rong)氏と,スクウェア・エニックスのブロックチェーン・エンターテインメント部門ゼネラルマネージャーである畑 圭輔氏による「ブロックチェーンゲームで変わる未来の生活」をテーマにしたセッションが行われた。本稿では,その模様をレポートしよう。
モデレーターは,Bankless Japan / beyondClubのワキヤマ ユウキ氏が担当している。
NFTプロジェクトに関わった経験から得られた「最大の教訓」とは
スクウェア・エニックスは伝説的なゲーム会社であり,STEPNは世界でもっとも成功したブロックチェーンゲームの1つであると紹介したワキヤマ氏。そんな2社のNFTプロジェクトや過去の経験から得られた,「最大の教訓」は何かとワキヤマ氏が問いかけた。
ロン氏は,3つの大きな学びを持っているとし,その1つがアクティベーションコードシステムを適応させることだと返答した。
人々からは不便に感じられるシステムを,なぜ導入するのかと聞かれるだろうが,アクティベーションコードシステムを使用すると,ユーザーの急激な増加を避けられるだという。ユーザーの急増は,ゲームコンテンツの枯渇を招きやすくなるため,望ましくはないというわけだ。当然だが,これは初期段階で実装することが重要であるという。
さらにロン氏は,ゲームやWebster gaming tokenのインセンティブ,そしてNFTのインセンティブも重要だと答えた。
そして3つ目は,1987年に「ファイナルファンタジー」を制作してから,最新作の「ファイナルファンタジーXVI」まで,製品やブランドを長く継続させてきた,スクウェア・エニックスからの学びだ。ロン氏の作品も7回の拡張を行ってきたが,これは単なる水平スケーリングであり,垂直方向のスケーリングを検討していくと述べた。
畑氏が,プロダクトをリリースして大きく学んだのは,Web3コンテンツのユーザーは,既存のゲーマー以外の多様なタイプだったことだという。具体的には,ゲームを楽しみたい人以外に,ゲームを通して収益を得たい人,マーケットをウォッチしたい人といった視点のユーザーだそうだ。これによって,これまでのF2P作品にはなかった,オペレーションの難しさが学べたという。
また,コミュニティの大切さを非常に多く学んだそうで,「資産性ミリオンアーサー」のプロデューサーでもある畑氏は,ゲームをリリースしてからほぼ毎日,Twitter上でユーザーと直接対話するというのを,3か月以上繰り返しているとのことだ。
いいねをしたり,返事をしたり,リアルタイムに答えることが,ファンになってもらえる要素になり,ファンエンゲージメントの体験がビジネスにおいては重要だと感じたのだという。
Web3ゲームを成功,持続させる重要な要素とは?
Web3ゲームやブロックチェーンゲームの多くは,成功させるために苦労や葛藤があると話すワキヤマ氏。続いてのテーマは,それを成功させて,持続可能なものにするために重要な要素とは何だろうかというものだ。
ロン氏は,それは2つに分けられると述べ,1つは製品をリリースするタイミングが非常に重要だとした。具体的には,ゲーム内外,マクロ経済がすべて一致しなければならないのだという。
もう1つは,取り組んでいる方向性だ。Web3や暗号資産は,例えば4年ごとに新しいものが出てくるとした場合,その頃には人々が特定の方向に取り組んでいることが分かり,そこに注目が集まるという。
またロン氏は,“10倍の法則”が示すように,前任者や競合他社の製品よりも,10倍優れたものを作り上げることも重要だと話す。そして動き出しが遅ければ,誰かが同じような製品を作り始めるので,はるかに優れていなければならないとした。
製品作りにおいて,これらの考え方は重要で,持続性の面で2つの方向性が考えられるという。1つは,ユーザー獲得で,もう1つがユーザーの維持だ。そもそもユーザーが維持できなければ,持続可能なビジネスも成り立たないことになる。
畑氏は,自身のプロジェクトにおいて,すごく重要なのは,自分自身がそのプロダクトのファンであることを大事にすることだと述べた。
デジタルシールをリリースしたときは,このプロジェクトで収益が得られるのかというコメントが寄せられたそうだが,そういうことではなく,畑氏はフィジカルシールを集める楽しさを,デジタルステッカーで届けたいという思いなのだという。
その後,シールというプロダクトの魅力をSNSなどで発信しながら運営していたそうだが,それを通じてコレクターになっていく人が増え,プロジェクトを支援する人も増えたそうだ。
持続という面では,デジタルシールを毎回を販売するだけではなく,アイテムを使ったユーティリティやゲームといったものをリリースし,ユーザーにわくわくを届けたいと述べた。ユーザーが何を求めているのかを,その視点に立って考え,1つ1つを丁寧に行っていくのだという。
ブロックチェーンゲームを普及させるためには?
最後の質問は「ブロックチェーンゲームを大量に普及させるにはどうすればいいか」「暗号資産やWeb3に詳しくない人たちを,どのように取り込むのか」というものだ。
ロン氏は,ポイントが2つあり,1つはETHのような抽象化されたウォレットだという。このツールがより抽象化されたウォレットで修正できれば,(ブロックチェーンなどの)導入は,より容易になるだろうと話す。
もう1つは,人々の生活に密着した製品を作ることだ。それこそTwitterのように,頻繁に利用するようなものになれば,間違いなく成功に近づけるだろうと述べた。
畑氏は,“マスアダプション”(大衆への普及といった意味)を成功させるためという点で,LINEのプライベートチェーンを使ったことが大きな成功だったと話す。プライベートチェーンであるため,閉鎖的だと言われることもあるが,流通するNFTがすべて正規のものなので,いわゆる偽コレクションといったものに悩まされることがないのだそうだ。
また,最近になってLINEを選んだ最大のメリットが出てきているそうで,LINE NFTマーケットで売買できるプロダクトは,無料で始められて,無料でNFTを入手でき,無料で出品できるようになったという。それもあるのか,最近になって120万個のNFTを発行したという記録を達成したそうだが,それだけ発行していても,NFTを出品すると1〜2分で売れてしまうくらいにトランザクションが行われているのだとか。
そこで得た収益は,LINE Payに直接チャージされるため,お店や自動販売機で,決済できるという部分が非常に受けているそうで,これがまさに1つの成功事例だと畑氏は語った。
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