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伝説のFPSを蘇らせた「Delta Force」のグローバル展開戦略。Team Jadeが語る,レッドオーシャンで生き残るための施策[GDC 2026]
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印刷2026/03/10 17:59

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伝説のFPSを蘇らせた「Delta Force」のグローバル展開戦略。Team Jadeが語る,レッドオーシャンで生き残るための施策[GDC 2026]

 FPSは世界で最も競争が激しいゲームジャンルの一つだ。「Call of Duty」シリーズをはじめとする人気タイトルがひしめくなか,15年以上眠っていたフランチャイズを掘り起こし,しかも基本プレイ無料のクロスプラットフォームタイトルとして世に送り出すというのは,よほどの勝算がなければ踏み切れない判断だろう。

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 しかしTencentの開発チーム「Team Jade」は,FPSフランチャイズ「Delta Force」で,まさにそれをやってのけた。

 「GDC Festival of Gaming 2026」で行われたセッション「Bringing Back a Legend: The Global Multi-Platform Publishing Strategy of Delta Force」では,Team Jade Overseas Publishing TeamのJingshen Wei氏Lingjin Meng氏Qinfu Zhao氏の3名が登壇。パブリッシング戦略,PR戦略,クリエイターエコシステムの構築という3つのテーマに沿って,「Delta Force」PC / PS5 / Xbox Series X|S / iOS / Android)のグローバル展開の舞台裏を語った。本稿ではその内容をお伝えする。

「Delta Force」は,基本プレイ無料のクロスプラットフォーム・タクティカルFPSとして,PC,iOS,Android,PS5,Xbox Series X|Sに展開している
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 最初に登壇したのはWei氏だ。Tencent Gamesで8年以上のキャリアを持ち,中国国内のパブリッシングを手掛け,2022年からは「Delta Force」のグローバルパブリッシングを率いてきた人物である。

 Wei氏はまず,「Delta Force」が置かれた市場環境を率直に語った。FPS市場は確立されたタイトルが支配する“レッドオーシャン”であり,基本プレイ無料かつクロスプラットフォームという組み合わせは,とりわけ欧米プレイヤーから低品質と見なされがちだという。にもかかわらず,ローンチ前の段階でSteamのウィッシュリストはトップ4に到達。正式リリース後は各地域のダウンロードランキングで1位を獲得し,PlayStationのトレンドにもランクインするなど,結果は上々だったとのこと。

レッドオーシャンへの挑戦とその成果をまとめたスライド。Steam Best of 2025のMost Played Platinumに選出され,125地域でダウンロード1位,モバイル版も169地域で1位を記録した
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 この成功の背景にあったのが,市場分析に基づく明確なポジショニングだ。「Call of Duty」のようなアーケード寄りのシューターと,ハードコアなエクストラクション系シューターの間に「架け橋」としてのポジションをとったという。大規模戦闘モード,緊張感のあるエクストラクションモード「Operations」,そしてリブートされたキャンペーン「Black Hawk Down」という3つの体験を1本のタイトルに詰め込むことで,幅広い層を取り込む設計としたわけだ。とくにキャンペーンモードは,かつてのIPファンを引き寄せる“感情的なフック”として意図的に用意したものだという。

大規模PvPの「Warfare」,エクストラクションモードの「Operations」,Co-opキャンペーンの「Black Hawk Down」が交わる中心に“BRIDGE”の文字がある
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 興味深かったのは,プラットフォームごとにまったく異なるアプローチを採用したテスト戦略だ。Wei氏はこれを「マトリクス戦略」と呼んだ。

 PC版では北米と欧州に地域を絞り,SteamキーやTwitch Dropsを活用して大規模にウィッシュリストを積み上げる攻めの姿勢を取った。一方モバイル版では,ブラジルやフィリピンなど特定の国に限定した保守的なテストを実施。これは,UA(ユーザー獲得)予算を無駄にせずマネタイズを検証するための手段だ。コンソール版はさらに異なり,技術品質にフォーカス。オフラインテストやクローズドβテストを通じてコントローラ操作の完成度を徹底的に磨いた。

 αテストからグローバルローンチまでPC版は約6か月,モバイル版は約22か月,コンソール版に至ってはわずか1か月という驚異的なスピード感も特筆すべき点だろう。Wei氏はこれを「ロードマップ・スピード」と表現していた。

 テスト期間中のコミュニティとの向き合い方も印象的だ。「Radical Transparency(徹底的な透明性)」というポリシーのもと,プロデューサーやゲームディレクターが直接コミュニティの質問に答える体制を構築。ローンチ前に数千件もの改善を実施したという。

 マーケティング面では,まず自分たち自身のブランディングから始めたことが目を引く。「Team Jade」を「FPSを愛するハードコアなベテランチーム」として位置づけ,欧米ゲーマーの不信感を払拭することを最優先にしたそうだ。

トレイラー公開(Awareness)→ゲームプレイ映像やストアページ(Interested)→「Wishlist Now」「Sign up for Alpha」への誘導(Call to Action)という,一撃で仕留める導線設計を示している
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 PC版のプロモーションでは「CGトレイラー禁止,実機プレイ映像のみ」という厳格なルールを敷いた。過去に豪華なCGトレイラーに裏切られた経験を持つ欧米プレイヤーの心情を踏まえた判断であり,メディアをオフラインの体験会に招いてゲームプレイの面白さを直接証明する方針を貫いている。5回にわたるライブストリームで,ローンチ前にゲームの隅々まで見せたことも信頼構築に大きく寄与したとのこと。

 モバイル版では「モバイルでもAAA体験ができる」というメッセージを打ち出すため,「ブレイキング・バッド」の俳優を起用したクリエイティブキャンペーンを展開。コンソール版は技術テストの直後にほぼ即座にローンチする「フラッシュローンチ」戦略を採用し,クロスプラットフォームによるプレイヤープールの一体化を実現した。

 運営に関しては,「予測可能なもの」と「予測不可能なもの」の両輪が必要だとWei氏は強調する。新マップやオペレーターの追加といった定番コンテンツに加え,文化をレバレッジした“予測不可能な”体験を仕込むのだ。例として挙げられたのが旧正月イベントで,単に赤い装飾やご祝儀を並べるのではなく,「Red Day」というハイリスク・ハイリターンのイベントとして欧米ゲーマーの文化に合わせてリブランディングしたところ,大きな反響を得たという。

 続いてMeng氏がPR戦略について語った。基本プレイ無料で,かつ新しいチームが手がけるタイトルに対するプレイヤーの警戒心は根強い。それを解くために,直接的なマーケティングではなく「第三者の評価」を軸に据えたという。

 PRは3つのステージに分けて設計された。第1段階のSummer Game Fest 2024では,トレイラー公開まで情報解禁日(エンバーゴ)を設定。公開と同時に大手メディアから一斉にプレビュー記事が出るよう仕掛けることで,「このゲームは本物だ」と証明してみせた。

 第2段階のPC版ローンチでは,メディアレビューで7〜8点の高評価を獲得。これが「ハロー効果」となって後続のコンソール版やキャンペーン展開を下支えする形になったという。
 第3段階では,Xbox向けメディアやキャンペーン重視のメディアなど,よりターゲットを絞った専用のハンズオンセッションを実施している。

「MEDIA HAPPY MEAL」のコンセプトスライド。ニュースバリューのある情報(NEWSWORTHY INFO)と見栄えのいいアセット(SHINY ASSETS)をセットにするという考え方を,ハンバーガーとポテトのビジュアルで表現していた
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 また,ローンチ後の露出を維持するため,「メディア・ハッピーセット」と呼ばれる施策をとった。
 これは,シーズンアップデートなどメディアにとってニュースバリューが低くなりがちな情報を,いかに記事化してもらうかという課題に対する回答だ。

 Meng氏はこれをファストフードになぞらえて説明した。「ハンバーガー」(ニュースバリューのある詳細情報)と「ポテト」(目を引く高品質なアセット)をセットにしてメディアに提供したのだという。そして3つのルールを示した。1つめは「食べ過ぎない」こと。すべてを速報扱いにしていたら,壊れるのはメディアとの関係だけだ。2つめは「ワントレイで提供」すること。これでメディアが記事を書くために情報を探し回るようなことはなくなった。

 3つめは「鮮度が命」。情報解禁日の数日前にアセットと情報を事前提供し,メディアが準備する時間を確保したという。

「軽微なUIバグの修正」をプレスリリースにしようとする開発チームのミームが添えられており,会場の笑いを誘っていた
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 プレスキットについても言及があった。大量のコンセプトアートを詰め込むのではなく整理すること,未発表情報やリリース前のアセットが混入しないよう徹底的に「サニタイズ」することが重要だと強調していた。

 最後に登壇したZhao氏は,クリエイターエコシステムの構築について語った。従来の「お金を払って配信してもらう」モデルからの脱却を掲げ,クリエイターの成長段階に応じた3層構造のエコシステムを設計したという。

クリエイターエコシステムの全体像。Tier 3(The Newcomers)→Tier 2(The Full-Timers)→Tier 1(The Headliners)という3層構造で,各層に応じた支援策が用意されている
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 基盤となるTier 3は,新人やファン層だ。彼らが求めているのは金銭ではなく「承認」である。著作権侵害のペナルティを恐れずに動画制作ができるよう,安全に使えるロゴや著作権フリーの音楽,公式ポスターなどのアセットを提供し,Discordでのインサイダーバッジ付与などでサポートする。

 Tier 2は専業クリエイター層で,コミュニティの「バックボーン」と位置づけられている。彼らにとって重要なのは成長と安定収入だ。業界平均より高い収益分配プログラム,テストサーバーへの早期アクセス,さらにはゲーム内プロモーション枠の提供など,キャリアそのものを支える施策を展開している。実際,「Delta Force」のフルタイムクリエイターの中には,過去のタイトルよりも高い収入を得ている人もいるとのこと。

Tier 3向けに提供される「Safe Assets」の実例。著作権クリアな音楽トラックやグラフィック素材,ポスターなどがフォルダ分けされて共有されており,新人クリエイターが安心してコンテンツ制作に取り組める環境を整えている
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Tier 2「The Full-Timers」の支援内容。プロのクリエイターが求める安定収入と成長機会に応えるため,収益分配システム,インサイダーアクセス,オーディエンス拡大支援,そして明確なキャリアパスを提供している
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 そしてTier 1のトップ配信者に対しては,単なる案件ではなく「彼ら自身が本心から面白いと思える企画」を提供する。Zhao氏が紹介した実例が印象的だった。直近のキャンペーンでは,勝利条件を「キル数」から「レアアイテムの獲得」に変更し,さらにビンゴチャレンジやダイスロールの要素を組み込むことで,ゲーム配信をインタラクティブな“ゲームショー”に変貌させたという。次に何が起きるか分からない展開に,視聴者も配信者も巻き込まれていく構造である。

 とりわけ効果的だったのが「クロス・ポリネーション(相互波及)」の仕掛けだ。大規模イベントでTier 1のトップ配信者とTier 2/3の新鋭クリエイターを同じチームに組み込む。すると,トップ配信者の視聴者が新鋭クリエイターのチャンネルに流れ込み,一夜にして数千人の新規フォロワーが生まれることもあるという。トップ配信者は良質なコンテンツを得て,新鋭クリエイターは大きな成長を得て,ゲーム全体のコミュニティが活性化する――まさに三方良しの構造だ。

Tier 1「The Headliners」の支援方針。トップ1%のクリエイターが求めているのはチャンネルの健全な成長であり,それに応えるためにクリエイターの個性に合わせたクリエイティブコンセプトと,配信の“瞬間”をムーブメントに変えるキャンペーン設計を提供する
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Jingshen Wei氏
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 講演後のQ&Aセッションでも興味深いやり取りがあった。クリエイター施策のROI(投資対効果)測定について問われたZhao氏は,視聴者のコンバージョンを各ステップごとに追跡する完璧なツールはまだないと認めつつ,「配信を面白く魅力的にすることに注力すれば,コンバージョンは自然についてくる」という考え方を示した。具体例として「サイバーパンク2077」のEdgerunners効果を挙げていたのが興味深い。

Lingjin Meng氏
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 またIPを復活させた理由についてWei氏は,中国では「Delta Force」がいまなお尊敬を集めるフランチャイズであり,社内の上層部にも開発陣にもファンが多かったことを明かした。「夢を追いかけるようなものだった」という言葉に,プロジェクトの原動力が垣間見えたように思う。

 クロスプラットフォーム・地域別の対応についてはSNSアカウントを統一しつつ,Discordなどのコミュニティはプラットフォームごとに分離。さらに日本,韓国,東南アジアなど地域ごとの専門パブリッシングチームを設けて個別のマーケティングプランを展開しているが,全体的なメッセージの一貫性は保っているとのことだった。

Qinfu Zhao氏
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 「クリエイターのオーディエンスを“借りる”のではなく,彼らが住みたくなる“家”を建てよう」――Zhao氏が最後に残したこの言葉が,本セッションの本質を端的に表している。レッドオーシャンに飛び込む覚悟,透明性で信頼を勝ち取る姿勢,そしてコミュニティを「育てる」という発想。「Delta Force」のグローバル展開から学べることは,FPSに限らずあらゆるライブサービスゲームに通じるものがありそうだ。


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