プレイレポート
[プレイレポ]少女の心の葛藤を丁寧に描いた名作ADVがSwitchに。「アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉」先行プレイ
1作目の発売から19年が経った2024年。主人公の少女アシュレイを中心とした,謎に満ちた物語が紡がれるアドベンチャーゲームが,グラフィックスや謎解きなどを一新し,さらに遊びやすくなって帰ってきた。そんな名作ADV「アナザーコード」をSwitchでふたたび味わい,新しくなった部分を“発見”してきたので,ゲームの魅力とともにそれを紹介しよう。
なお,ストーリーのネタバレには最大限配慮しているが,2章までの展開,謎解きに触れている箇所がある。なるべくまっさらな状態で楽しみたいという人は,この点に注意してほしい。
「アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉」公式サイト
シナリオの変更点も。アシュレイの“記憶”がキーワードとなるふたつの物語
ゲームは「2つの記憶」から始まり,これをクリアしてエンディングまで見ると「記憶の扉」のオープニングにつながっていく。前者は14歳の誕生日を間近に控えたアシュレイ,後者はその後日譚である16歳になったアシュレイの物語となっており,それを順番に楽しめるというわけだ。
「2つの記憶」は,14回目の誕生日を間近に控えたアシュレイの元に,差出人不明の小包が届くところから始まる。荷物には,3歳のときに亡くなったはずの父からの手紙と,1台の機械が入っていた。アシュレイは父親に会うため,また,同じく亡くなったとされる母親のことを知るため,自分を育ててくれた叔母であるジェシカと共に,父がいるという無人島へと赴く。
アシュレイがたどり着いた無人島は,かつては「エドワード家」という大金持ちの一家が住み,人の出入りも多く,たいへん栄えた島だったが,今はその栄華は見る影もない。エドワード家の当主が病に倒れたことをきっかけに,一族の人間は次々と死んでいき,残された家族も島を出て,今では誰も寄り付かないのだという。
そんな背景から,いつしかその島は,血塗られたエドワード家の島=「ブラッド・エドワード島」と呼ばれるようになったらしい。いったいなぜ,そんなところにアシュレイの父はいるのだろうか。
そんないわくつきの無人島に上陸したアシュレイは,早々にジェシカとはぐれてしまい,“ディー”という,生前の記憶をなくした少年のゴーストと出会う。父を捜すアシュレイと,生前の記憶を探すディー。ふたりは互いの目的を果たすために協力しあい,エドワード家の屋敷へと足を踏み入れていくのだ。
ゲーム開始からいろいろなことが起こるが,それに向かい合うアシュレイは表情豊かでまっすぐな心を持っている。すぐに感情移入できるはずだ。
父と母の真実は不明であり,その記憶もほとんどないアシュレイ。記憶をなくし,独りぼっちで島にいるディー。互いにシンパシーを感じたふたりのあいだには,徐々に心のつながりができていく。彼らに生まれる奇妙な友情,ブラッド・エドワード島にまつわるエピソード,アシュレイの両親に関すること……。現状で分かっていることはわずかだが,島での探索を進めていくと,それらの点と点がつながり,驚きの真実に向かっていく。
2作目である「記憶の扉」は,16歳となったアシュレイがひとり,キャンプ場に向かうシーンから始まる。ブラッド・エドワード島の出来事から2年が経ち,ここでのアシュレイはバンド活動に夢中な高校生だ。
キャンプ地は,雄大な自然と美しい湖で有名な「ジュリエット・レイク」で,ここにはキャンプ地のほかに,「JCヴァレー」と呼ばれる研究施設,倒産したリゾート開発会社の跡地などがある。
到着してすぐ置き引きにあったり,キャンプに馴染めなかったりと,想定外のことに見舞われるアシュレイ。そこに突然“以前,母親とここを訪れたことがある”という記憶が呼び起こされる。母の面影を追うアシュレイは,家出少年のマシューと共に,新たなる探索を始めることになる。
「2つの記憶」では,主に父親・リチャードとアシュレイがフィーチャーされたが,「記憶の扉」では母・サヨコの過去に迫っていく。優れた科学者であったサヨコは,いったいどうして死ななければならなかったのか。そして,幼いアシュレイをこのジュリエット・レイクへ連れてきた意味とは。1作目と同様,最初は謎だらけの状況だ。
「2つの記憶」では,アシュレイと直接関わる登場人物は少なく,ガランとした洋館をゴーストのディーとふたりで行動するシーンが多い。だがこの「記憶の扉」では,舞台はキャンプ場というひらけた場所で,それだけに関わる人物も多い。そして,アシュレイ自身の成長もあって,物語の雰囲気はだいぶ異なる。
設定やストーリーには,本作で大幅な変更が加えられている。内容を詳しく語ることは避けるが,かなり意外な変更点もあるので,オリジナル版を遊んだことがあっても新鮮な気持ちでプレイできるはず。以前とどう変わっているかを見つけながらプレイするのも楽しいだろう。
オリジナル版のプレイヤーにも新鮮な謎解き,より遊びやすくなるアシスト機能
シナリオに限らず,オリジナル版から変更・追加されている点は多くある。まずはキャラクターのデザイン。オリジナル版の雰囲気はそのままで,より現代的なテイストに変更されている。アシュレイ以外の登場人物のなかには,ガラッと変わっている人もいるので,オリジナル版のプレイヤーはその変化も楽しんでほしい。そして,より美しく描かれているエドワード家の屋敷や周辺の自然にも注目だ。
とくに,屋敷に差し込んでくるあたたかい光の表現は秀逸 |
屋外の景色も美しい…… |
また,アシュレイのお供として欠かせない端末,DASことDual Another Systemのデザインも変わっている。オリジナル版「2つの記憶」ではニンテンドーDSによく似たものだったが,今作ではSwitchによく似た,フラットなデザインとなっている。プレイヤーの手元にあるものと同じデザインというのは,世界への没入感を高めるし,アシュレイと同じ操作で端末を扱っている感覚があるのがいいところだ。
そのDASでは,写真の撮影,撮影した写真のアルバムや登場したキャラクターの相関図の確認などができる。カメラ機能は,謎解きのヒントを撮影することでメモとして活用可能というほかにも,章を進めていけば別のことができるようになっていく。だがこれは攻略に関わる内容であるため,詳しくは触れないでおく。ぜひプレイのなかで発見し,「ああ,これか!」と楽しんでほしい。
キャラクター相関図は,登場人物全員の関係性とそれぞれの人物情報が確認できる機能だ。ストーリーが進み,明らかになることが増えるたび,相関図のなかの説明文も変化していく。こまめにチェックしてみよう。
屋敷の内外を探索していると,たびたび先に進むための謎解きが発生する。
たとえば,壊れた橋を渡れるようにするというものがある。これはチュートリアルを兼ねた,本作で最もやさしい最初の謎解きだが,あくまでそれは操作や考え方の基本を教えてくれるもの。以降のプレイで,これとまったく同じ謎解きは出てこない。また,それらの謎解きはオリジナル版とは違うものになっているので,オリジナル版をクリアした人でも新鮮に楽しめるのが嬉しい点だ。
ときには会話の内容から,ときには手に入れたアイテムから推理し,謎を解明していく場面に遭遇することも。
謎解きの全体的な難度は高くないが,解いたときの達成感を感じられるくらいの歯ごたえだ。ジャイロ機能を使ったものなど,Switchだからこそできる謎解きも楽しい。マップの広さも,物語を追うのに邪魔をしないくらいの適切なバランスに調整されている。探索中に登場人物とした会話や,探索で見つけたヒントなども参考に,一歩ずつ真実へと迫っていこう。
「どうしても謎解きに詰まってしまった」「謎解きで足止めされず,ストーリーをスムーズに楽しみたい」という場合には,アシスト機能の活用をおすすめしたい。
これはオプションの設定からいつでもオン/オフできるもので,次に行くべき方角を矢印で教えてくれる「ナビゲーション機能」,3段階で解きかたのヒントを授けてくれる「ヒント機能」のふたつだ。
段階分けされたヒント機能が絶妙で,謎解きの達成感をできるだけ損なわないよう考えられているのが好印象だ。「少しだけヒントはほしいが,答えは知りたくない」という場合は1段階目か2段階に,謎解きが苦手な人は,ほぼ答えを教えてくれる3段階に設定するといった形で,プレイヤーに合わせた微調整ができるのが嬉しい。
ふたつの名作をひとつにし,現代によみがえった,「アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉」。物語の一部やシステム,デザインなどの変更点は多いが,主人公・アシュレイの真っすぐな優しさや勇気,10代の少女が抱える悩み,心の葛藤などがみずみずしく描かれている点は変わらない。
オリジナル版をプレイしているときにアシュレイと同じくらいの年齢だったならば,今作は登場する大人側の気持ちにもなって,また違った味わいを楽しめるかもしれない。ひとりの少女の成長譚として,謎解きミステリーとして,さまざまな感動をもたらしてくれる作品だ。
「アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉」公式サイト
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