プレイレポート
[プレイレポ]伝説的アンチRPG「moon」の遺伝子を継ぐ「ストレイチルドレン」は,ことばで戦う“しんどさ”を自分で選べるかが肝要だ
「moon」開発スタッフが手掛ける,コドモの世界のRPG「ストレイチルドレン」,本日発売。デジタルコンテンツが手に入る福袋を提供中
Onion Gamesは本日(2024年12月26日),Nintendo Switch向け新作RPG「ストレイチルドレン」を発売した。価格は4840円(税込)。本作は,「moon」開発スタッフが制作するRPGだ。発売を記念し,Onion Gamesの公式メールマガジンで,登録者向けにデジタルコンテンツが詰まった「発売記念福袋」が提供される。
「ストレイチルドレン」公式サイト
本作の物語は,とある事情で「コドモの国」に引き込まれた少年が,異形の姿をした「オトナ」たちとバトルしつつ,6つの領域を旅していく。この世界がいかなる成り立ちのものなのか――詳しくは実際に遊んで確かめてもらうとして,プレイヤーはまったく雰囲気が異なる領域を巡ることになる。
たとえばそれは,バラック小屋に住む子供たちが自給自足している集落。食料となるブタを追って「迷いの森」に足を踏み入れると,そこにはオトナたちが待ち受けていた。
あるいは,雪に閉ざされた監獄。雪だるまの看守たちに反抗せず従い,模範囚となれば,「しあわせの湖」に連れて行ってもらえるというが……。
はたまた,カエルたちの国に迷い込むこともある。謎のヒーローによって主人公は救われるが,恋多きヒーローは婚約者を悲しませ,主人公もそのとばっちりを受けることに。
さらには,よく眠ることが評価される領域なんてのも。ところで「良い子はもう寝なさい」的な言い回しがあるが,それは単に「親にとって都合の良い子」ではないだろうか?
このような定番のようでありつつ,どこかヘンテコな舞台で,脈絡があるようなないような物語が展開していく。ダークな童話絵本というよりも,アングラな演劇を思わせるノリが続き,プレイヤーは「このお話,どこに向かっていくのだろう?」とワクワクしてしまうはず。
そんな奇妙な旅の行く手に立ちふさがるのが,やはり「オトナ」たち。街の外を歩いているとランダムでエンカウントし,地下に引き込まれてバトルに突入する。まさにアンダーグラウンドな演出……といったところだろうか。
ちなみに,登場するオトナたちはこんな感じだ。「炎上が続いて燃えカスになった鳥」「海のシェパードではなくチワワ?」などなど,何かを皮肉ったようなものが多い……というかそういうのしか出てこない。「moon」的な世界観(一般的な誤用ではなく本来の意味)で解釈するなら,「若いころ『moon』を遊んだキミたち,いつの間にか自分自身がこんなオトナになってないかな?」というメッセージ性を受け取れなくもない。
オトナは普通に戦って倒してもいいし,「ことば」の力で成仏させてもいい。ただ,どちらのアプローチを選ぶにしても,相手のターンはシューティングゲームやアクションゲームのような要領で攻撃を回避する必要がある。
こちらから攻撃する際は,ルーレットの目押しを行う。色の濃い場所で止められれば,ダメージがアップする,連続攻撃が可能になるなど,バトルが有利に展開する。
なお,バトル以外の場面でもルーレットが行動の判定に使われる。回転をよく見てリズムをつかみ,目押しする感覚をつかんでおくと,ゲーム内のさまざまなタイミングで役に立つだろう。
一方で,「ことば」の力で戦おうとするプレイヤーも多いだろう(「UNDERTALE」のように)。とはいえ,選択できることばは数が多く,正しいことばを決まった順番で3つ〜5つほど選ばなくてはならない。間違えると最初からやり直しになるため,ノーヒントで挑むのはなかなか厳しいと思う。
ことばで戦う場合,まずはフィールドに残されている「オトナの皮」(一皮むけてオトナになったということだろう)のようなものを見つけ,そのオトナに有効なことばのヒントを得ることが先決だ。よほどセンスがある人ならヒント無しでもオトナを成仏させられるかもしれいないが,基本的にはヒントが見つかるまでは逃げまくったほうが無難だろう。
オトナをことばで成仏させるのは普通に攻撃して倒すより大変なので,どこまで「通常攻撃を我慢」できるかが本作の重要なポイントになる。オトナを倒したか,成仏させたかによって物語の展開も変わると思われるので,なかなか悩ましいところだろう。
とはいえ,このツラさや大変さは,プレイヤーの「オトナをことばで成仏させたいという執着」「図鑑を埋めたいという欲」が生んでいるものだ。経験値やレベルアップといった要素があるので,すべてのオトナから逃げて進むのは現実的ではなさそうだが,攻撃して倒してサクサク先に進むという「スタンダードなRPGの遊び方」を選ぶことはいつでもできる。
それもまたひとつの生き方,いや遊び方。すべてはプレイヤーの気持ちが決めること,と言えるかもしれない。
ちなみに,本作はゲームオーバーになった場合,前回のセーブしたところからやり直しとなる。当然,その間に成仏させたオトナとのバトルもやり直しになるので,成仏させるたびにこまめにセーブポイントに戻るほうが早く先に進めるだろう。
本作には懐かしい「moon」の雰囲気があるだけでなく,さまざまなゲームやモノやコトに対する“愛憎”が渦巻いている。筆者の想像だが,操作性やゲームのテンポはあえて昔のゲームに近い調整にしているのかもしれない。手触りに懐かしさを感じると同時に,現在のゲームでは極力避けようとする「冗長さ」「もどかしさ」がそこかしこに存在する。
だが,それが古い映画を観ているときにも似た,「思索する時間」をプレイヤーに与える効果を生んでもいる。プレイヤーが訪れる各領域のラストに登場する「ボスオトナ」たちも,仕事を続けるうちに大切なものを見失ったサラリーマン,かつて劇作家だった裁判官,7人の妻を愛するカエルの王など,それなりに年齢を重ねた人にとっては他人事には思えない存在ばかりだ。
彼らとことばを交わすうちに,深い思索&自省モードへと誘われることは必定だろう。あるいは,普通に倒してしまいたくなるかもしれないが。
なお,筆者がプレイした評価用バージョンは,何度かハングアップしたり,ゲームが強制終了したりすることがあった。もしゲームを安定して遊べない場合はアップデートによって解決されるかもしれないので,公式サイト等をチェックしてほしい。
「ストレイチルドレン」公式サイト
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(C)Onion Games, K.K.