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「Kingdom Come: Deliverance II」ではプレイヤーの選択がゲームに大きな影響を与える。インタビュー&試遊レポート[TGS2024]
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印刷2024/09/27 08:10

プレイレポート

「Kingdom Come: Deliverance II」ではプレイヤーの選択がゲームに大きな影響を与える。インタビュー&試遊レポート[TGS2024]

 現在開催中の東京ゲームショウ2024において,Warhorse Studiosが開発している中世ヨーロッパを舞台にしたリアル志向のアクションRPGシリーズ最新作「Kingdom Come: Deliverance II」PC / PS5 / Xbox Series X|S)を,PLAIONブースでチェックしてきた。

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 「Kingdom Come: Deliverance II」は,ファンタジー性を排除したリアルな歴史にこだわり,“魔法もドラゴンもないリアルな中世ヨーロッパ”を描いた作品として高い評価を得た前作を継承した作品だ。
 現時点ではストーリーの詳細は明らかにされていないが,鍛冶屋から戦士へと成長したヘンリー(本作では英語読みではなく,ハインリッヒに名称統一されている様子)が,戦乱の中で盟友となったハンス卿の外交ミッションの護衛を行うために,数名の仲間たちと旅に出るというストーリーが描かれているという。

 フロントパーソンとして馴染みの顔でもあるPRマネージャーの“トビー”ことトビアス・ストルス=ズウィリング(Tobias Stolz-Zwilling)氏によると,想定されているプレイの総時間は80〜100時間。つまり,前作の倍ほど楽しめるとのことで,マップも同様に倍になっているという。

 1か月ほど前には,ゲームプレイを紹介する解説動画が公開されているので視聴した人も多いだろうが,本作では建物の外壁のテクスチャーから表情アニメーション,内装のタペストリーや未舗装の路面にいたるまでが細かく描かれている。

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 プレイヤーの選択がゲームのストーリーに大きな影響を与えるだけでなく,村人がプレイヤーをどのように思うかといった“評判システム”も加わった。これにより,例えば窃盗に失敗するとしばらくは町角で罵られ続けるなど,プレイヤーごとに異なるゲーム体験が楽しめる作風へと昇華されているのだ。

 「Kingdom Come: Deliverance II」では,前作同様に「中世世界を完全再現」「壮大な歴史ドラマ」「没入型アクションRPG」という3つを柱にしつつ,戦闘はさらに流動的で変化に富んだものとなっている。従来のような剣や斧,弓などに加えて,新たにクロスボウやマッチロック式銃などが加わるなど,バラエティ豊かな戦闘を楽しめるようだ。包囲戦で利用する投射兵器のようなものも登場し,ストーリーがどのようなものになっているのか楽しみなところ。

チョイスがゲームに大きな変化をもたらす最新ナラティブデザイン


 東京ゲームショウ2024で公開された本作のデモは,ロケーションのひとつであるクッテンバーグにいる剣の達人に関するクエストを体験できるものだ。

 このロングソード使いのメンハルトと,その弟子であるアルネは,もともとはボヘミア王のヴェンツェル4世の勅書状によって招聘されて,はるばるフランクフルトから旅をしてきた。しかし,その間に王は,兄弟のハンガリー王で“赤い狐”の異名を持つジギスムント王によって追放されるという,前作で描かれた騒乱が起きてしまった。

 その結果,メンハルトとアルネが到着した時にはすでに政権が代わっていただけでなく,プラハから別の達人が招かれて「クッテンバーグ剣術同盟」というギルドまでができてしまっており,仕事がなくなったメンハルトは自暴自棄になっていた。

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 そんな折に,クッテンバーグを通りかかったハインリッヒに声をかけ,自分の能力を疑われたメンハルトは練習用の剣を使って模擬試合を行う。そこにクッテンバーグ剣術同盟からの通報を受けた政治家(評議員)がやってきて,許可なく城内で剣を振り回したという罪をとがめられる。
 しかし,ハインリッヒが会話スキルを使ってうまくやり過ごしたことで信頼を得て,メンハルトが自分の強さを証明するために,剣術同盟の会長との決闘を行うという案を打ち明けられる。

 その案というのがハインリッヒにとっての無茶ぶりで,剣術同盟のギルドハウスに忍び込み,そのシンボルである剣「ギルデンシュベルト」をタウンホールの壁に掲げてくるというものだ。それはギルドが決闘を受け入れるという証となるが,ギルドハウスには普段から多くの会員たちが練習を行っているので,誰もが眠る夜半に忍び込んで,剣を奪ってこなければならないのだ。

 このミッションはそれほど難しいものではなかった。会話の90%はすでに日本語化されていたのは好印象で,正式発売される2025年2月12日にはローカライズされた状態でリリースされるのは間違いなさそうだ。
 また,会話の選択次第ではメンハルトやアルネ,そしておそらく評議員の評判も上げることが可能であり,それによってNPCたちの接し方も変化していくことになる。

 興味深かったのは,剣を奪ってタウンホールに向かう前,男性キャラクターに声をかけると,ランダムにイベントが発生したということだ。親切に接していると,男はいきなりハインリッヒの懐からお金を奪い取って走り去っていったのだ。もちろん,追いかけて奪い返したが,今回は素手でも相手を殴りつけられるので,剣で攻撃するほどでもない相手にも有用になりそうだった。

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開発者インタビュー 〜 コンバットシステムはもう少し洗練させて,より多くのプレイヤーに取っつきやすくしたい


 さて,今回のイベントでは,トビー氏のほかに,Warhorse Studiosの日本人コンセプトアーティストの川谷久海氏にインタビューを行った。細部まで作り込まれた「Kingdom Come: Deliverance II」に関わることになった経緯を聞いてきた。

4Gamer:
 まず,「Kingdom Come: Deliverance II」が春先にアナウンスされた際に,2025年2月12日という発売予定日の近さに驚きました。

トビー氏:
 前作は,発売の4年くらい前から4Gamerさんにお世話になっていましたからね(笑)。「Kingdom Come: Deliverance II」は,実は2019年からゲームの開発に取り掛かっていたんです。2019年にロイヤルエディションの開発を終えた時点で,開発チーム全員で新作に取り組み始めていたんです。前作では110人ほどのメンバーだったのですが,この5年ほどで240人ほどにまで増えています。

4Gamer:
 川谷さんは,いつ頃入社したのでしょうか?

川谷氏:
 私は2年前ですね。もともとは東京藝術大学で油彩画を勉強していた際に政府の奨学金制度に選んでもらい,チェコの学校で3年ほど映画美術の勉強をしいました。そこの教授の人がWarhorse Studiosの社員の知人で,卒業に合わせてポートフォリオを持って面接に行きました。そこで「今はまだポジションがないけど,君の先生とは知り合いだから」と言われ,即採用していただいたんです。アート部門のリーダーが,私のアートスタイルを評価してくれたようです。

PLAION傘下でもWarhorse Studiosの広報マネージャーとして活動するトビアス・ストルス=ズウィリング氏(右)とコンセプトアーティストの川谷久海氏
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4Gamer:
 中世ボヘミア地方のリアリズムに傾倒している,本シリーズのコンセプトアートに日本人が関わっているというのも驚いてます。

川谷氏:
 チームの仲間たちにも助けてもらっていますし,スタジオには歴史家もいて,さまざまな助言をもらったりしています。歴史資料を見てアートを描くのですが,やはり現地の人たちが見ると,彼らにしかわからない違和感を持たれてしまうこともありました。

4Gamer:
 ゲームの話に戻しますが,前作の開発や評価から何を学び,その続編に取り組むことになったのでしょう?

トビー氏:
 やはり歴史的事実に忠実なアクションRPGって少ないと思うのですが,そこにこだわってプレイヤーの皆さんから評価を得られたのは,ゲームの概念実証が成功したものだと受け止めています。そのうえで,まだ不慣れで未完成な部分,例えばコンバットシステムはもう少し洗練させて,より多くのプレイヤーに取っつきやすくしたいと感じていました。

4Gamer:
 特にゲーム序盤は,いかに自分がスキルベースのコンバットが下手なのかを実感させられましたからね。

トビー氏:
 そうですね。ゲーム中で十分に手ほどきされておらず,チュートリアルの少なさについて,多くのフィードバックを受けています。コンバットシステムの基本は同じなのですが,前作では1人のスタントマンからすべてのアニメーションを収録したために,どの武器でも似通ったアニメーションや動作パターンになっていました。今回は,武器ごとに専門家を変えることによって,プレイフィールのユニークさを表現できていると思います。

 もし,ソードファイトが苦手だというプレイヤーであれば,複雑な構えとか突き要素がないメイス(戦棍)のような武器を使ってほしいですね。

4Gamer:
 想定プレイ時間は,80〜100時間だそうですね。ただでさえ長く楽しめた前作の倍もあるということですか?

トビー氏:
 前作は,実はクラウドファンディングを行っており,その時に三部作になることをアナウンスしていながら,それを実現できていなかったんです。つまり,ゲームの開発当初からボヘミア地方の歴史に沿ったストーリーの流れが決まっており,「Kingdom Come: Deliverance II」は2部と3部をくっつけたようなストーリーが展開されます。ですから,本作ではロケーションが異なる2つ分のマップがあり,それに合わせてクエストも増えているというわけです。

4Gamer:
 15世紀のボヘミア地方というと,フス戦争(15世紀に中央ヨーロッパで起こった戦争)が迫っていますが,前作からどれほど時は流れているのでしょうか?

トビー氏:
 「Kingdom Come: Deliverance II」も1403年の物語です。つまり,ゲームプレイの時間はほぼ史実に凝縮されているのです。今,話した視点は非常に重要で,大きな歴史的イベントが起こる直前の知られざる世界に,プレイヤーの身を置いてもらおうというのが当初の企画でした。

 スカリッツ村が襲撃されるのも,ジギスムント王の政治介入によって在地勢力との諍いが起きるのも史実どおり1403年のことで,それは後の歴史的イベントに直結していきます。しかし,そこに至るまでのある種不鮮明な部分に,へインリッヒという架空人物を入れてプレイヤーに提示したというわけです。

4Gamer:
 今回プレイした「剣術同盟」のイベントは,メインのストーリーラインなのでしょうか?

トビー氏:
 いえ,あれもサイドクエストです。今回はメンハルトの目の前からゲームデモがスタートしたので分かりやすかったでしょうが,実際のゲームではさまざまなNPCたちが会話をしていて,メンハルトが呼び止めているのに気付かずに通り過ぎてしまい,このサイドクエストが発生しない可能性もあります。

 ただ,こうしたサイドクエストの中にはゲームの進行において重要な意味があるのもあります。この剣術同盟のサイドクエストもコンプリートしてメンハルトが新しい剣術同盟の師範になれば,ハインリッヒに新しいスキルを授けてくれる練習に参加させてもらえることになりますし,この町で無賃宿泊できる場所にも手に入ります。

 サイドクエスト中の分岐は非常に多くて,例えばギルドに赴いて人を殺めてしまうとか,ギルドソードをタウンホールに掲げずに自分の所持品にしてしまい,さらに剣術同盟にそれが見つかってしまうというような,短期的結果を変化させていくストーリーを楽しめます。

4Gamer:
 親切に声をかけた村人に窃盗されるというランダムイベントも起こりました。

トビー氏:
 はい。とてつもない量のランダムイベントを用意しています。おもしろいのは,こうしたランダムなイベントはプレイヤーが直接介在しなくても起こり得るということで,何千というNPCたちが何百もある建物の内外で,それぞれの日常を過ごしながらも生活している姿が,より鮮明に描かれていると思います。

4Gamer:
 ハンス卿も本作ではさらに大きな役どころになりそうですが,彼でプレイできたりもするのでしょうか?

トビー氏:
 ハンスは,ある意味リーダー的な存在になってストーリーに関わります。彼でプレイすることはできないですが,ゲームの序盤ではゴドウィン神父で少しプレイする機会があります。「なぜ彼で?」とお思いになるでしょうけど,ゲームをプレイしていただくとその意味が理解できるはずです。

4Gamer:
 「Kingdom Come: Deliverance II」では,インベントリーなどのUIも大きくテコ入れしているようです。

トビー氏:
 そうですね。前作では1枚のスクリーンにすべてを詰め込んでいましたが,かえって情報が複雑化していましたた。今回は複数ページに情報が分かれてはいますが,それぞれが非常に分かりやすくなっていると思います。アートも美しく,中世ヨーロッパをテーマにしたゲームとして見合ったUIデザインではないかと自負しています。

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4Gamer:
 Codexというゲーム辞典もフィーチャーされていますね。

川谷氏:
 情報にはテキストとアートがあり,私はもちろんアートの多くを担当していますが,15世紀が始まったばかりのゲームの中では,その100年ちょっと前である13世紀のアートスタイルが多分に使われても現実的におかしくなかったと思っています。

 ただ,Codexで使われているアートのバランス面を考慮して14世紀のアートスタイルに合わせることを重視したのですけど,アートチームのメンバーでも14世紀のどのあたりのアートスタイルを参考にしているのかで,ゲームのために描き上げたアートの雰囲気が異なったりしたのです。
 そうした異なるアーティスト同士でスタイルを合わせて,ひとつの大きなCodexを作り上げていくのは難しい作業でした。「悪魔」の項のアートは私の作品ですので見ていただければと思います。

4Gamar:
 それほど参考文献も多いわけではないと思いますが。

川谷氏:
 そうなんですよね。ひとつの文献から何十種ものCodexを描き上げるのですからコピーするだけではだめで,その文献で使われているアートスタイルをいかに自分のものにするのかという努力はしました。あの時代のアーティストたちは,教会で複数の聖職者たちが祈りを捧げ,その周囲で人々も祈っているというようなアートを描く場合には,それぞれの人物の着ているものとかを何らかの法則で簡略化しているわけです。

 その法則を理解しつつ,地味になり過ぎないよう,アーティストとしての表現と歴史家の追求する史実的リアルさのバランスを常に意識していました。

4Gamer:
 先にリリースされたトレイラーでは,コンパニオン犬を撫でるシーンもありましたよね。

トビー氏:
 前作でよく聞かれたプレイヤーの不満点のひとつが,コンパニオン犬を撫でることができないってことでしたからね。本作でも一緒に戦ってくれる心強い友となりますが,犬だけでなく馬を撫でることもできますよ。

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4Gamer:
 前作では,ゲーム開始数分で窃盗に失敗したばかりに牢屋に入れられて,村が襲われるのを牢獄の小さな窓から見ながら焼け死んでしまいました。そんな開発チームの茶目っ気が感じられるゲームオーバーを楽しみましたが,本作でもありますか?

トビー氏:
 まあ,ゲームオーバーになってしまうかどうかはともかく,そうしたコミカルな描写も「Kingdom Come: Deliverance II」に散りばめられていますので期待してください。


「Kingdom Come: Deliverance II」公式サイト


東京ゲームショウ2024公式サイト

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