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「Ryzen 9000」シリーズの性能を高めるアップデートが出そろう。TDP向上やコア間の遅延低減で処理性能を積み増し
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印刷2024/09/30 22:00

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「Ryzen 9000」シリーズの性能を高めるアップデートが出そろう。TDP向上やコア間の遅延低減で処理性能を積み増し

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 北米時間2024年9月30日,AMDは,公式Blogにおいて,デスクトップPC向けCPU「Ryzen 9000」シリーズ向けにこれまで実施した性能向上を実現するアップデートの情報を公開した。これまで小出しに出ていた情報をまとめたものなので,Ryzen 9000シリーズの情報をこまめにチェックしていたAMDファンなら,目新しいアップデートはないが,ざっくりと概要をまとめてみよう。


AGESA PI 1.2.0.2における2つの注目できるアップデート


 すでに一部のAM5対応マザーボードで,UEFIアップデートとして配布が始まっているRyzenシリーズ向けのファームウェア「AGESA PI 1.2.0.2」において,2つの大きな性能向上が行われた。

 ひとつは,「Ryzen 7 9700X」および「Ryzen 5 9600X」で,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)の設定を最大105Wまで引き上げるというもの。登場時のRyzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xは,TDPが65Wだった。しかしAMDによると,Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xは,TDP 105Wでの動作をテストしたうえで出荷されているため,大幅に高いTDPでも保証の範囲内であることをAMDが認めたわけだ。

 TDPを105Wに設定すると,最大10%程度の性能向上が得られるとのこと。消費電力や熱との引き換えになるが,性能を優先したいユーザーにとっては,嬉しいアップデートだろう。ただ,105Wの設定を利用するユーザーは,「その熱出力に対応できる放熱システムを使用してほしい」と,AMDは釘を差している。

TDPを105Wに設定することで,従来比で最大10%程度の性能向上が得られる
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 2つめは,2基の「CPU Complex Die」(以下,CCD)を搭載する「Ryzen 9 9950X」および「Ryzen 9 9900X」において,コア間のレイテンシを低減したというアップデートだ。

 AMDによると,Ryzen 9000/7000シリーズでは,メモリの読み出しおよび書き込みにおいて2回のトランザクションが必要になる「コーナーケース」(※特殊な状況で発生するレアケース)が存在し,そのため以前のRyzenと比べて,コア間のレイテンシが若干ながら大きくなっていたという。
 AMDの開発チームは,この問題の改善に取り組み,トランザクションの削減に成功。その成果をAGESA PI 1.2.0.2に組み込んでいるそうだ。

 もっともAMDによれば,この改善によるアプリケーションへの影響は,ほとんどないとのこと。とくにゲームの場合,2基のCCDを搭載するモデルでは,コアパーキングを使って片方のCCDを停止状態においてレイテンシを下げる施策を取っている。したがって,CCD間のレイテンシ低減がほとんど影響を及ぼさないであろうことは容易に推測できるわけだ。
 ただしゲームであっても,多数のスレッドを駆動するためコアパーキングが使えない「Metro Exodus」「Starfield」「Borderlands 3」といった一部のタイトルや,「3DMark」の「Time Spy」といったベンチマークテストでは,コア間のレイテンシ低減により若干のパフォーマンス向上が見られると,AMDは述べている。ちなみに,4Gamerで実施したRyzen 9000シリーズのテストでも,Starfieldのフレームレートが実行可能なスレッド数に応じて伸びるらしいことを確認していた。この傾向は間違いではなかったわけだ。

AGESA PI 1.2.0.2では,CCD 2基モデルのコア間レイテンシが減った
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 AMDの説明からすると,Ryzen 7000シリーズにおいても2基のCCDを搭載するモデルではコア間のレイテンシが減っている可能性はありそうだ。ただ,筆者の手元の資料では,性能向上に関してはRyzen 9000に限定したような記述になっている。なので,Ryzen 7000シリーズにおける影響は現時点で不明。Ryzen 7000シリーズのユーザーはテストしてみるといいかもしれない。


AMD 870E搭載マザーボードでDDR5-8000 EXPO Memoryをサポート


 Ryzen 9000シリーズとともに発表となった新チップセット「AMD 870E」および「AMD X870」を搭載したマザーボードの販売がスタートした。
 AMD 870EとAMD X870の違いは,PCI Express(以下,PCIe)とUSB 3.xのレーン数だ。たとえばAMD 870Eは,PCIe総レーン数が44であるが,AMD 870は同36レーンと少ない。ただ,PCIe 5.0のレーン数はどちらも同じ24なので,AMD 870で少ないのはPCIe 4.0のレーン数である。

Ryzen向け現行チップセットのおもなスペックをまとめたスライド
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 Ryzen 9000シリーズ発売時にアナウンスされたとおり,AMD 870Eは,新たにメモリモジュールメーカーから登場予定のDDR5-8000に設定可能な「AMD EXPO Memory」に対応するという。AMDによれば,DDR5-8000のExpo Memoryを利用することでメモリレイテンシを1〜2ns程度削減できるので,レイテンシに敏感なゲーム性能を向上させることが可能とのことだ。

 DDR5-8000対応Expo Memoryは,一般的なゲーマー向けではないが,エンスージアストやオーバークロッカーには最適な選択肢であると,AMDはまとめている。つまり,DDR5-8000対応Expo Memoryは,登場直後の価格は高価になるということだ。究極の性能を追求するゲーマーなら,注目する価値がありそうである。


Ryzen 9000発売後の性能向上はひとまず一区切りか


 いささか旧聞になりつつあるが,Ryzen 9000シリーズの分岐予測に対応する最適化を含むWindows 11用更新プログラム「KB5041587」が,8月27日にMicrosoftからリリースされた。この最適化を含むアップデートは,Windows 11の「23H2 build 22631.4112」以降または「24H2 build 26100.1301」以降に含まれており,Windows Updateを欠かさず実施しているなら,すでに自動でインストールされているはずだ。

分岐予測の最適化は,Windows Updateで配布済み
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 分岐予測の最適化により,最大10%程度の性能向上が可能だそうで,先述のAGESA PI 1.2.0.2と合わせてRyzen 9000シリーズは有意な性能向上を実現したと言えそうだ。そのうえで,AMDがそれらのアップデートをまとめた発表をしたのは,ひとまずはアップデートが一段落したことを意味するのではなかろうか。
 遠からずIntelが投入するというデスクトップPC向け次世代CPUを迎え撃つ準備は整ったというわけだ。

AMDのRyzen 9000シリーズ製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    Ryzen(Zen 5)

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