テストレポート
ZTE製スマートフォン「AXON 7」テストレポート。新世代フラグシップ機は,性能と音と映像のバランスが良好な,ゲームに適した1台だ
これら2製品の中でも,ハイエンド端末に位置付けられながら,他メーカーの同クラス機種に比べて狙いやすい税込で6万円台半ばという価格帯にあるAXON 7については,気になっている読者もいるのではないだろうか。そこで,発表会の現場でAXON 7をチェックしてきたのでレポートしよう。
高級感のある落ち着いたデザイン
まずは外観から見ていこう。
基本的なデザインは,これまでのAXONシリーズを踏襲したものだが,「AXON mini」にも採用されていた,各所に三角形をあしらった装飾はなくなった。そのためか,いくぶん大人しい印象を受ける。
正面から見たときに,極力ベゼルが細く見えるデザインを採用しているところがアピールポイントといえよう。ベゼルを目立たせないデザインは,意外と効果的なようで,横画面にしたときは,ほとんどディスプレイとスピーカーだけのような印象を受けた。
上下端にステレオスピーカーを配置したデザインは,珍しいというほどではないものの,比較的安価なSIMロックフリー端末で,似たようなデザインを採用するものは少ないので,大きな訴求力を持つ要素といえよう。
なお,背面の素材にはアルミニウム合金を採用しており,説明スライドによると,アルミニウム6000番台であるとのこと。航空機でも使われているアルミニウム合金の採用は,最近のハイエンドスマートフォンでは流行りとなっていて,その点ではあまり代わり映えがしない面は否めない。見た目や質感といったデザイン面の利点と,放熱や堅牢性といった実用面での利点を考えると,どのメーカーも同じところに着地してしまうのかもしれない。
売りのサウンド機能はゲームにも恩恵あり
冒頭でも触れたとおり,ZTEは,サウンド機能をAXON 7シリーズの大きな特徴に位置付けている。その1つが,旭化成エレクトロニクス製のD/Aコンバータである「AK4490」の採用だ。このチップは,高級オーディオ機器では定番のものだが,スマートフォンでの採用は世界初とのこと。
また,ZTEと旭化成エレクトロニクスは,AXON 7に内蔵された通信モジュールのノイズ対策などでも協力しており,単に優秀なチップを載せただけではないと主張している。
AK4490を採用したことによる恩恵は,音声出力すべての品質が向上することであるという。これは,もちろんゲームプレイ時にも影響する。筆者が実際に内蔵ステレオスピーカーの音を聞いてみた印象で言えば,「高音域でも角が丸くてとても聞きやすい音」といったところか。
ヘッドフォンの場合は,さらに顕著で,「デレステのプレイがやたらと楽しくなった」と言えるほどだった。
ただ,タッチ&トライコーナーにいたDolbyの説明員によると,Dolby Atmosに対応していないアプリの音声も,Dolby Atmosデコーダーによってアップミックスされたうえで,ポストプロセス処理によって,高さや広がりを感じられるように再生されるとのこと。ゲームにおいてもサウンド面での恩恵は期待できるわけだ。
サウンド録音用に,旭化成エレクトロニクス製のDSP「AK4961」を採用している点も特徴の1つ。これは,旭化成エレクトロニクスのハイエンドオーディオ向けDSPの技術を盛り込んだスマートフォン向けDSPチップで,高音質での録音が可能だという。
また,アクティブノイズキャンセリング機能にも対応しており,マイク付きのヘッドセットやイヤフォンを使用しているときに,そのマイクを利用してノイズキャンセリングを行い,よりキレイな音で録音できるそうだ。会場ではチェックができなかったため,実力は未知数であるものの,スマートフォンでのゲーム録画や実況配信で効果を期待できる。
SoCはSnapdragon 820を採用
ハイエンド端末に有機ELパネルは当たり前のものに
AXON 7のスペックもチェックしよう。
ディスプレイには5.5インチサイズの有機ELパネルを採用しており,解像度は1440×2560ドットだ。搭載SoCはQualcomm製のハイエンドSoCである「Snapdragon 820」(MSM8996)で,メインメモリ容量は4GB,ストレージ容量は64GBとなっている。十分に現行のハイエンド端末らしい構成だ。
ZTEは,発表会でも映像面の優秀さを強くアピールしており,ハイエンド端末であれば,有機ELパネルの採用は当たり前になりつつあるといったところか。
先述したとおり,Nano SIMカードスロットを2基備えており,2枚のSIMカードによる同時待ち受け機能「デュアルSIMデュアルスタンバイ」(以下,DSDS)にも対応する。ただ,対応するMVNOはNTTドコモのネットワークを利用するサービスのみで,KDDIおよび,KDDIのネットワークを利用するMVNOに非対応である点が,少し残念な部分だ。
搭載OSはAndroid 6.0(Marshmallow)で,Android 7.0へのアップデートも予定されているという。ホームアプリは,AXON mini搭載のものをアップデートしたZTE独自のもので,見た目は比較的シンプルなものだ。説明員によると中身はかなり手を入れているそうで,性能面での快適さを重視しているそうだ。
機能周りでは,音声認証によるロック機能や片手操作向けメニュー「Mi-POP」,3点同時タッチでスクリーンショットを撮影するといった機能が便利だった。
背面はかなり熱を持つが,動作は安定して速い
定番のベンチマークテストとゲームで,性能計測も行ってみた。
テストに用いたのはいつものとおり,グラフィックス系ベンチマークアプリの「3DMark」とCPUの動作クロックを見る「CPU-Z」,メインメモリおよびストレージの性能を見る「A1 SD Bench」だ。なお,連打応答性を調べる「ぺしぺしIkina」は,なぜかメニュー画面を呼び出せなかったため,今回は見送っている。
発表会の現場では時間が限られていることもあって,ゲームの動作検証は「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(以下,デレステ)のみ行った。Android版「艦隊これくしょん -艦これ-」と「Pokémon GO」のテストは,SoCのスペック的に3Dグラフィックス性能が期待できず,デレステの動作に向かない場合に利用するのがいいかもしれない。この点は今後の課題だ。
さて,3DMarkから見ていこう。Ice Storm Unlimitedのスコアは「29482」で,Snapdragon 820搭載端末では妥当な結果になった。現行のアプリでは,性能面で困ることはまずないといえるだろう。
ただ気になるのは,温度の高さだ。テスト中は継続して約40℃を記録しており,かなり高めである。Ice Storm Unlimitedの実行直前に,間違えてIce Storm Extremeプリセットを実行してしまった影響があるのかもしれないが,2回の3Dmarkでこの温度は高い。実際に背面の中央あたりは,持てないほどではないものの,かなりの熱を持っていた。高い処理性能をキープしたいのであれば,放熱を阻害することもあるジャケットを装備させるのは避けたほうがいい。
念のために,電源管理を「スマート省電力」に設定してテストしてみたが,スコアに変動はなかった。スマート省電力の説明文には「使用シナリオをベースにCPUとGPUを統制,および制御します」とあったので,ベンチマークプログラムやゲームの場合は,しっかりと性能を発揮するように制御しているのだろう。ゲームプレイ時以外は,なるべくバッテリー消費を抑えたいという場合は,スマート省電力を利用してもよさそうだ。
CPU−Zを見ると,4基のCPUコアを2基ずつ(2クラスタ)に分けたbig.LITTLE構成であることが分かる。動作クロックは307MHz〜2.15GHzとなっていた。負荷状況によっては,4基とも最大クロックで動作すると思われる。
アイドル時は4基とも307MHzまで落ちていたが,CPU0とCPU1の動作クロックだけが上昇することがあれば,CPU2とCPU3のほうが高いクロックで動作することもあった。
またGPUクロックは,最大624MHzと表示されており,チェック中は214MHzに貼り付いていた。必要なときだけGPUクロックを上昇させるといった挙動なのだろう。
Internal memoryはRead 359.09MB/s,Write 182.32MB/sと,とくにReadの高さが目立った。eMMCなのか,UFS 2.0なのかは不明だが,ハイエンド端末らしい結果である。
3DMarkの部分で触れているように,熱の影響によるサーマルスロットリングの発生が不安だったのだが,3回連続のプレイでももたつくことはなかったし,そのままMVを録画しても,描写に問題はなかった。とはいえ,やはり背面の熱さは気になるレベルだったので,持ち方を工夫する必要がありそうだ。
内蔵ステレオスピーカーの場合,両手親指でのプレイでは,ときおりスピーカーを塞いでしまうのだが,おおむね良好な音質でゲームプレイを楽しめた。ビデオ映像を楽しむ場合にも良好で,ZTEのこだわりは功を奏しているようだ。
価格的にも2016年下半期お勧めの1台になりそう
SIMロックフリー端末でも,大手キャリアのハイエンド端末と遜色ないスペックやデザインを有する製品が多く登場してきている2016年下半期だが,そのなかでもAXON 7は,とくに映像と音とバランスがいいものだと感じた。
メーカー想定売価で5万9800円(税別),税込の予想実売価格では6万5000円前後という価格も,ZenFone 3 Deluxe ZS570KLの9万円台後半,「Moto Z」の9万円台前半(いずれも税込)に比べると,狙いやすい価格帯となっている。筆者もそうだが,年末に買うスマートフォン選びで悩む読者にとっては,悩ましい製品の登場といえるだろう。筆者も正直なところ,買うかどうするか,ものすごく迷っているところだ。
大手キャリアのハイエンド端末も今後登場してくるが,それらと比べても,価格とスペックのバランスからすると,AXON 7は頭1つ抜きん出ている。予算を抑えつつ,ゲームを快適にプレイできるハイエンド端末が欲しいという人には,AXON 7は候補の筆頭に挙げる価値のある製品といえるだろう。
●AXON 7の主なスペック
- メーカー:ZTE Corporation
- OS:Android 6.0(Marshmallow)
- ディスプレイパネル:5.5インチ有機EL,解像度 1440×2560ドット
- プロセッサ:Snapdragon 820(MSM8996),CPUコア:Kryo×4(最大動作クロック2.2GHz),GPU:Adreno 530(※動作クロック未公開)
- メインメモリ容量:4GB
- ストレージ:内蔵64GB+microSDXC
- アウトカメラ:有効画素数約2000万画素
- インカメラ:有効画素数800万画素
- 搭載センサー:指紋認証,電子コンパス,加速度,近接,環境光,ジャイロ,磁気
- バッテリー容量:3250mAh
- 搭載インタフェース:USB 3.0 Type-C,nanoSIM×2(SIMスロット2はmicroSDカードと排他利用),3.5mmステレオミニピン
- 待受時間:最大300時間(WDMA時)
- 連続通話:最大800分(WDMA時)
- LTE通信周波数帯:FDD-LTE B1/3/8/19/28,TDD-LTE B41
- LTE 2xCA:B3+B19
- 無線LAN対応:IEEE 802.11ac
- Bluetooth対応:4.1
- 公称本体サイズ:75(W)×151.7(D)×7.9(H)mm
- 公称本体重量:175g
ZTEのAXON 7製品情報ページ
- 関連タイトル:
Android端末本体
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