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新型PS4「CUH-1200」分解レポート。軽量化と省電力化を実現した背景には,筐体と基板のシンプル化があった
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印刷2015/07/18 00:00

テストレポート

新型PS4「CUH-1200」分解レポート。軽量化と省電力化を実現した背景には,筐体と基板のシンプル化があった

CUH-1200という型番シリーズ名が与えられた新型PS4
画像集 No.002のサムネイル画像 / 新型PS4「CUH-1200」分解レポート。軽量化と省電力化を実現した背景には,筐体と基板のシンプル化があった
 2015年6月22日,PlayStation 4(以下,PS4)の新モデルとなるCUH-1200シリーズが発表された。6月下旬から,店頭販売が始まっている。
 新モデルでは,従来のPS4と比べ,本体重量,そして消費電力が下がったという大きな違いがあるのだが,実際のところ,これらの違いは何によってもたらされているのだろうか。

 「ジェットブラック」(製品型番:CUH-1200B01)と「グレイシャーホワイト」(製品型番:CUH-1200B02)の2色が用意され,前者には「PlayStation Camera」同梱版(製品型番:CUH-1200A01)も存在することから,計3モデル展開となる新型PS4。4Gamerは今回,そのなかから,PlayStation Cameraが付属しないジェットブラックモデルを独自に入手したので,今回は,本機の分解レポートをお届けしてみたい。

※注意
 ゲーム機の分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。


重量と消費電力が下がり,外観もさりげなく変更になった新型PS4


 CUH-1200の分解に先立って,PS4のこれまでを簡単に振り返っておこう。
 PS4は欧米市場で2013年11月,日本市場では2014年2月に発売となった。このとき登場した最初期モデルがCUH-1000Aシリーズである。4Gamerでは,米国で発売になったCUH-1000Aを分解し,内部構造や構成をレポート済みだ。

「PlayStation 4」分解レポート。AMDのカスタムAPUを搭載する新世代マシンは,とてもゲーム機らしいゲーム機だった


 続く2014年10月には,CUH-1000Aシリーズで採用されたジェットブラックモデルのほか,白いグレイシャーホワイトの筐体を採用したモデルも追加されたマイナーチェンジモデルが,CUH-1100Aシリーズが登場した。
 CUH-1000AとCUH-1100Aの両シリーズは,製品型番こそ異なるものの,スペックは共通だった。もしかするとCUH-1100Aシリーズで内部構造などが少し最適化されたという可能性はあるが,残念ながらCUH-1100Aシリーズの分解は行っていないので,この点はなんとも言えない。

CUH-1200の製品ボックス
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 ともあれ,そんなCUH-1100Aシリーズに続くモデルとして登場したのが,今回のCUH-1200シリーズである。
 冒頭でも簡単に触れたが,CUH-1200シリーズにおける重要なポイントは,公称本体重量がCUH-1000A&1100Aシリーズの約2.8kgから約2.5kgへ,公称消費電力がCUH-1000A&1100Aシリーズの250Wから230Wへと,順に300g,20Wの低減を果たしていることだ。それ以外のスペックは共通ながら,消費電力と重量が変わっている以上,内部的に何らかの手が入っていることは間違いない。なら分解し,内部を確認してみようというのが,本稿のテーマである。

CUH-1200。基本的な形状は従来のCUH-1000A&1100Aシリーズから変わっていないが,それだけに,HDDベイカバーがつや消しに変わったことはすぐ気づくだろう
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 というわけで製品ボックスから出してみるが,最初に気づくのは,ドライブトレイ部を覆う「HDDベイカバー」が,CUH-1000A&1100Aシリーズのピアノブラック的な光沢仕様から,筐体部のほかの部分と同じ,ザラザラしたつや消し加工――専門用語では「シボ加工」という――になっていることだろう。
 見た目のアクセントがなくなった点の評価は好み別れると思うが,実用面からいえば,ピアノブラックのパネルはあまり良いものではなかった。埃(ほこり)や指紋が目立ちやすく,かつ傷も付きやすかったので,個人的には,HDDベイカバーはCUH-1200のほうが好ましい。

CUH-1200とCUH-1000Aを並べたところ。いずれの写真でも左がCUH-1200だ。HDDベイカバーが変わったのが最も大きな外観上の違いだが,右の写真をよく見ると,CUH-1200では横置き用のゴム足が小さくなっているのも分かる。この大きさで必要十分ということなのだろうか
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CUH-1200で電源とBD取り出し用の操作系はいずれもボタンスイッチになった
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 また,ぱっと見だと気づかないのだが,本体側のスイッチにも変更がある。CUH-1000A&1100Aシリーズで,スイッチは電源,Blu-ray Disc(以下,BD)取り出しともにタッチセンサーだったのが,CUH-1200ではメカニカルスイッチになっているのだ。タッチセンサーは未来っぽい感じがある一方,“誤爆”しやすかったりもしたので,実用性を考慮してのコストダウンが図られた,というところかもしれない。

HDDベイカバーの変更に伴って,HDDベイカバー部にある「SONY」ロゴは,「PS4」ロゴと同じ,彫込加工となっている
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 本体背面側のインタフェース部は,仕様こそ変わっていないものの,並びは従来モデルで背面向かって左側から光角形サウンド出力,HDMI Type A,1000BASE-T LAN,AUXという順だったのが,CUH-1200ではこれが光角形サウンド出力,AUX,HDMI Type A,1000BASE-T LANに変わった。これらの端子は基板上に実装されているので,この事実から,基板のレイアウトが変わっていることが分かる。

CUH-1200(左)とCUH-1000A(右)ではコネクタの並び順が異なる
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HDDベイカバーの取り外し方は従来と同じ。ただ,ドライブトレイ周辺のデザインは変わっており,写真右奥にプラスチック製のカバーがビス留めされているのが見える
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 分解前に,ドライブトレイ部もチェックしておきたい。
 HDDベイカバーを取り外すと,2.5インチHDD互換のドライブトレイにアクセスできるというのはこれまでどおり。ただ,CUH-1000Aではドライブトレイの周囲が金属パネルで覆われていたのに対し,CUH-1200ではドライブベイの奥側にプラスチック製パネルが用意されていた。これが何なのかは後述する。

 ちなみに,4Gamerで入手した個体には,HGST製で2.5インチ7mm厚,容量500GBのHDD「Travelstar Z5K500」(製品型番:HTS5450A7E680)が取り付けられていた。HDDはロットによって変わっている可能性もあるので,すべてのCUH-1200でこのHDDが採用されているかどうかは分からない。

ビス1本でドライブトレイからHDDを取り出せる。今回入手したCUH-1200では,HGST製の容量500GBモデルが搭載されていた
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 ここまでをまとめると,外観はそれほどでもないものの,ハードウェア仕様は確実に変わっている印象である。とくにインパクトがあったのは,300gもの軽量化を果たしたところで,手に持ったときは「ひょっとして従来より小さくなった?」と錯覚したほど,体感レベルでの重量感は軽くなっている。


CUH-1000Aと比べてシンプルになったCUH-1200


 以後本稿では,CUH-1000A分解記事で紹介した内容にも適宜触れることになる。そのため,必要に応じてWebブラウザの別タブで開いておいてもらえるとありがたいと述べつつ,いよいよ分解だ。

ドライブトレイ近くのプラスチック製カバーを外すと,その下にはLSIが3基実装されているのを確認できた
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 まずは,前段でドライブトレイの近くにあった,プラスチック製パネルを取り外してみたい。
 このパネルは数本のビスで留められており,その下にはLSI(大規模集積回路)が3基実装されていた。CUH-1000Aでは,BDドライブの制御部が,マザーボードとは別の制御基板上に実装されていたが,CUH-1200だと,それがマザーボード上に集約されているわけだ。
 おそらく,ここがプラスチック製カバーで覆われているのは,「EMIや発熱の問題がなく,金属シールドで覆う必要はないが,ユーザーがストレージを交換するとき誤って触れて壊す可能性を排除したい」という考えによるものではなかろうか。

剥がすと保証が切れるシールの下にあるビス2本を外せば,外装はすべて取り払えるようになる
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 プラスチック製パネルの確認が終わったところで外装の取り外しだが,端的に述べて,そのやり方は,CUH-1000Aとあまり変わっていない。本稿は分解を奨励するものではないため,詳細は記述しないが,背面にある,剥がすと保証が無効になる跡の残るシールを取り,その下に隠れているビス2本を外すと,外装はすべて取り払える構造になっている。

 下の写真は横置き時の底面側にある外装パネルを取り払った状態だ。CUH-1000Aのそれと見比べてもらえればと思うが,大まかなレイアウトは変わっていない。

横置き時の底面側となる外装を取り払ったところ
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鳳氏が示していた,PCH-1000Aにおけるエアフローの模式図
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 ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)でPS4の筐体設計に携わった鳳 康宏氏は以前,PS4のエアフロー設計を解説しているのだが(関連記事),そこで語られた基本設計は維持されていると述べていいだろう。APU部に取り付けられた遠心ファンが,筐体周囲のスリットから外気を取り入れ,APUのヒートシンクを冷却した空気を,対数螺旋の圧縮流路で電源ユニットに導き,背面から排出するという仕様に変化はない。

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 ただ,大まかなレイアウトが変わっていないだけで,細かな違いはたくさんある。
 CUH-1000Aでは,BDドライブ部の金属シールド下にBDドライブ制御基板が取り付けられていた。それに対してCUH-1200では,先ほど指摘したとおり,制御部がマザーボード上へ移動したため,BDドライブ周りのシールドがなくなった。そのため,マザーボード以外の基板は,フラットケーブルと,BD取り出し用スイッチが搭載された,ドライブユニット上の小さなものを残すだけになっている。
 BDドライブ周りがスッキリしたことで,組立て工数の低減が実現されているはずである。

電源部のシールドを,共締めしているビスごと取り外したところ
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 もう1つ,細かな相違点として,CUH-1000Aでは電源部のEMI対策用シールドが筐体パネル側に貼られていたのに対し,CUH-1200ではそれが電源部に移っていることが挙げられる。
 電源ユニットは,そのシールドを共締めしている2本のビスを外すと,筐体から取り出せる。長い金属板を使ったコネクタと,制御用のケーブルで電源ユニットとマザーボードが接続される仕様自体はCUH-1000Aと同じだが,電源ユニットはやや小振りになり,重量もかなり減っている。消費電力が250Wから230Wへ低減したことに合わせて,小型軽量化が図られたのだろう。
 ちなみに,電源ユニットのDC出力は4.8V 1.8A,12V 16Aという仕様だった。製造メーカーを窺わせる表記はなく,ただ「SONY COMPUTER ENTERTAINMENT」と刻まれているのみだ。

電源ユニットを取り出したところ(左)。マザーボードとの接続仕様はCUH-1000Aから変わっていないようだ(右)
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電源ユニットは明らかに旧モデルより軽く小さくなった。DC出力は4.8V 1.8A,12V 16Aとなる
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 電源ユニットを外すと,底面側から見えるすべてのフラットケーブルを取り外せるようになり,結果,BDドライブユニットを取り出せるようになる。
 なお,左下の写真を見てもらうと分かるのだが,BD取り出し用スイッチの載った小型基板は,スペーサー付きのビスでドライブユニットに半固定されており,前後に数mm程度の前後に動すことができた。
 ドライブユニットを分解すると元に戻せないことが多いため,基板を取り外して調べることまではしていないが,おそらくこの基板と光ヘッドがフラットケーブルか何かでつながっているのだろう。光ヘッドの移動にともなってケーブルに負荷がかかるため,基板に遊びをもたせることでケーブルの負荷を軽減しているのだと思われる。

電源ユニットの“下”に,BDドライブユニットから伸びるフラットケーブルのコネクタが3つ用意されていた(左)。これを取り外すと,BDドライブユニットを筐体から取り出せる。ちなみに黒いケーブルの先に見える金属片はWi-Fiアンテナ。BDドライブユニット取り外しの障害になるため,ここで外した次第だ。右はBDドライブユニット筐体から実際に取り外したところ
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外装側に取り付けられている導光板。一部が曲げられていてマザーボード上のLEDの光を天板側の光るスリットに導く仕組みなのは従来どおりだが,そのサイズは小さくなった
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 続いては,横置き時の天面側から内部にアクセスしていこう。ストレージトレイ脇のプラスチック製カバーを外した状態で外装を取り払った状態が下の写真で,プラスチック製カバーで覆われていた部分を除く,ほぼ全体が金属シールドに覆われている。
 こちらも,大枠ではCUH-1000Aとの間に大きな違いはない印象だ。天板部の外装に,LEDインジケータ用の導光板が取り付けられている点も変わっていないが,導光板のサイズは明らかに小さくなっている。

横置き時の天板部側で,外装を取り払ったところ
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小さく薄い金属プレートを取り外したところ。ヒートパイプの埋め込まれたAPU冷却機構の一部が顔を出した
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 金属シールド部には,CUH-1000Aにはなかった「多数の穴が空いた,薄い金属プレート」がネジ留めされていた。それを外すと,APU冷却機構の一部が見える。なぜ一部だけ金属プレートになっているのかは分からないが,穴が空いている以上は,エアフロー調整がらみではないかとは思う。

 なおこの状態からシールドのビスを外すと,マザーボードにアクセスできるようになる。実際に金属シールドを外したところが下の写真で,GDDR5メモリチップはシリコンシートを介して金属シールドと接触し,熱を逃がす仕様になっていた。

金属シールドを取り外したところ
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メモリチップ周辺に寄ってみると,シリコンシートが接触している(いた)のがよく分かる。右は金属シート側でメモリチップと接触する部分のクローズアップ。右奥だけシリコンシートを突起部からどかしてある
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 メモリチップに囲まれるような格好で配置されている金属プレートは,APUを放熱機構に固定するためのバネ的な役割を果たしていて,取り外すと,その下にもう1枚,クッション材付きの保護板があると分かる。これを外せば,いよいよマザーボードとご対面だ。

バネの枠割を果たしているプレートの下に,クッション材付きの保護板があり,それを外すとマザーボードにアクセスできる
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 下に示したのがマザーボードを取り出した状態のカット。先ほど薄い金属板を取り外したときにちらっと見えたヒートパイプは,ヒートプレートに埋め込まれているのが分かる。

シールド板にヒートシンクのヒートプレートが取り付けられていた。このヒートプレートがマザーボード上のAPUと接触しているわけだ
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 ヒートプレートが取り付けられた金属シールド板も取り出してみたところが下の写真で,ヒートプレートの“裏側”には,平行四辺形柱のようなヒートシンクが取り付けられていた。空気の流路に沿った角度で取り付けられているのも,何となく見て取れるだろう。

金属シールドを裏返してヒートシンクを確認してみた。ヒートシンクは,真上から見ると平行四辺形になっている
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 ヒートシンクのサイズは実測で約100(W)×40(D)×28(H)mmで,CUH-1000Aのそれを比べると,その大きさは約85%。CUH-1200は若干小型化したことになる。CUH-1000Aの場合,ヒートシンクには2本のヒートパイプが通り,かつ,空気の流量に応じてフィンピッチを変える工夫が施されるという,凝ったものになっていたが,それと比べると,CUH-1200のヒートシンクはかなりシンプルだ。
 もちろん,「CUH-1000Aは豪華すぎたので,適正なものに変更した」という可能性は十分に考えられるが,何らかの刷新により,APUの発熱量が減ったという可能性も,ゼロではないように思う。

ヒートシンクの体積はCUH-1000Aのそれと比べて約85%に小型化し,ヒートシンク側のヒートパイプも省略された。ヒートパイプは,ヒートプレートの熱拡散用に埋め込まれた1本のみになったわけだ
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 軸流ファンの羽(インペラ)は横から見ると台形になった形状だ。これは鳳氏による解説に詳しいのだが,このインペラは乱流を減らすよう最適化されたものだそうで,CUH-1200でも,CUH-1000Aから変わっていないように見える。
 サイズは直径が約82mmなので,PC用のファンでいうと92mm角相当といったところだろうか。インペラの高さは約20mmだった。

ファンのインペラは横から見ると台形に見える。CUH-1000Aで採用された形状を受け継いでいるようだ
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 以上が分解結果だが,総じて,CUH-1000Aと比べて構造がシンプルになった印象がある。BDドライブ周りを中心に構造が単純化されており,また使われているビスの種類も少なくなった。CUH-1000Aの基本構造を継承しつつ設計の最適化を行い,組立て工数を減らしてコストを削減した,という感じだろうか。


LSI数が削減され,基板レベルでシュリンクされたといえるCUH-1200


 では,マザーボード上のLSI類を見ていこう。以後本稿では,APUが実装された面を「部品面」,その裏を「パターン面」と便宜的に呼ぶが,下に示したのは,部品面を正面から撮影したものだ。

CUH-1200のマザーボード部品面
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AMDによるカスタムAPU。プリフィックスの「CXD」はSCE(あるいはソニー)のカスタムLSIを表すものだ
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 心臓部にして頭脳でもあるAPUの型番は「CXD90037G」。4Gamerで分解したCUH-1000Aだと「CXD90026G」だったので,型番の数字部分下2桁が異なる。
 型番が異なる以上,何らかの改訂が加えられたのは間違いないが,どのように変わっているのかは不明だ。ただ,製造に用いるプロセス技術は28nmのまま変わっていないようで,実際,実測約19×19mmというダイサイズもCXD90026Gから変わっていない。

こちらがCXD90036G(と,そのローカルメモリとして機能すると思われるK4B2G1646Q-BCMA)。USB 3.0ハブや有線LANコントローラの物理層などが統合されたようだ
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 部品面には,「SCEI」と刻まれた大きめのカスタムLSI「CXD90036G」も載っている。これはCUH-1000Aにおける「CXD90025G」と同じ機能を担っていると思われ,CXD90025Gと同じく,Samsung Electronics製の2Gbit DDR3 SDRAM「K4B2G1646Q-BCMA」が接続されていた。
 面白いのは,CXD90036Gの機能がCXD90025Gから変わっていることだ。これは基板上のパターンを追ってみるとすぐに分かるのだが,CXD90025Gの場合は,Serial ATAポートが,富士通製のUSB 3.0―Serial ATAブリッジ「MB86C311B」を介して接続されていたのに対し,CXD90036GではパターンがSerial ATAポートへ向かっているのである。

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Macronix International製のシリアルフラッシュメモリは健在。型番は「MX25L25635FZ2I-10G」で,微妙にCUH-1000A時代とは異なっているが,今回も用途はファームウェア格納用だろう
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RT5069という型番のLSIが,CXD90036Gの近くに置かれていた
 また,CUH-1200では,CUH-1000Aにあった,Genesys Logic製のUSB 3.0ハブコントローラもなくなっており,CXD90036GとUSB 3.0ポートは直接つながっている。付け加えると,CUH-1000Aにあった1000BASE-Tの物理層も見当たらない。これらはすべて,CXD90036Gに集約されたのであろう。

 ちなみに,CUH-1000AにあったIntegrated Device Technology(以下,IDT)製のLSIも,CUH-1200のマザーボードには見当たらなかった。CUH-1200の場合,CXD90036Gのすぐ近くに「RT5069」と記された小さなLSIがあり,パターンからすると,これがCUH-1000AにおけるIDT製LSIの機能を果たしている可能性もあるのだが,RT5069は,データシートこどころかメーカー名すら分からないので,なんとも言えないというのが正直なところである。

システム制御用マイクロコントローラであるA00-C0L2 518FZIKも,部品面に実装されていた
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 さて,マザーボードの部品面には「SCEI」と刻まれたLSIがもう1つある。これには「A00-C0L2 518FZIK」という型番が記されているが,位置関係やパターンからすると,おそらくはCUH-1000Aで実装されていたSCEI銘入りLSI「1330KM420」と同じ機能を担うものだろう。
 CUH-1000Aを分解したときサウンド用ではないかと推測したが,その後の情報から,1330KM420はシステム制御用のマイクロコントローラであると明らかになっている。スリープ時や起動時にはこのマイクロコントローラがシステムバスを乗っ取ってシステムを制御するというゲーム機らしい設計で,おそらくは電源のオン・オフ以外に,システムの起動,スリープ,ファームウェアのインストールなども制御していると考えられるが,それが新しくなったというわけだ。

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HDMIトランスミッタであるMN864729。CUH-1000Aでははんだづけされた金属シールドの下になっていたが,今回はシールドされていない
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APU用と思しき4フェーズ電源部
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こちらはそのほかの要素用となる2フェーズ電源部
 以上が主要なLSIで,残りは周辺LSIという扱いになる。HDMIポートの近くには,「Panasonic」のロゴ入りLSI「MN864729」があるが,これは位置関係とメーカー名からして,まず間違いなくHDMIトランスミッタだろう。このHDMIトランスミッタはデータシートが見当たらないので,たとえば「HDMI 2.0に対応しているか否か」などといった,気になる事項は何も分からない。

 部品面で大きな面積を占めているのが電源部だというのは論を俟(ま)たないと思われるが,マザーボードを見る限り,APUの近くに3フェーズ,HDMIトランスミッタの近くに2フェーズという構成になっているようだ。位置関係こそCUH-1000Aとは異なるものの,4+2フェーズという構成自体は変わっていないと見ていいだろう。

 なお,APU近くの4フェーズにはパワーICとしてFairchild Semiconductors製の「FDMF6840C」が,またフェーズコントローラとしてはInternational Rectifier製IC「35211」がそれぞれ利用されていた。CUH-1000AだとパワーICがVishay Siliconix製だったので,メーカーが変更となった。また,フェーズコントローラはメーカーは同じだが型番が変更となっている。

 続いてはパターン面だが,こちらで目を引くのは8枚並んだGDDR5メモリチップだろう。

マザーボードのパターン面
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K4G80325FB-HC03。容量8Gbitの6Gbps品である
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 搭載されているのは,Samsung Electronics製の「K4G80325FB-HC03」。CUH-1000Aの場合,グラフィックスメモリチップは4Gbit品が部品面に8枚,パターン面に8枚で合計容量8GBを実現していたのに対し,CUH-1200ではパターン面に搭載される8Gbit品8枚で同じ容量を実現しているのが大きな違いだ。
 メモリチップの枚数が半減したことは,コストダウンに間違いなく寄与していると断言していい。

 パターン面にはそのほか,分解パートの序盤で紹介した,BDドライブの制御回路も実装されている。BDドライブコントローラにはルネサスエレクトロニクス製の「R9J04G011FP1」で,またモータードライバICはロームの「BD7764MUV」だ。LSIの型番こそ変わっているものの,基本構成そのものはCUH-1000Aから変わっていないわけである。

R9J04G011FP1(左)とBD7764MUV(右)
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 以上,マザーボード全体として,搭載されるLSI数の削減が,CUH-1200における最大の特徴とまとめられそうだ。とくに,SCE銘入りのカスタムLSIであるCXD90036Gに多くの機能が集約されたことが,LSI数削減に効いているように見える。
 従来,据え置き型ゲーム機の場合,半導体製造技術の進歩によってプロセス技術の微細化が進み,それがメインプロセッサの小型化,省電力化,低コスト化につながって,それが製造コストの低減を実現してきた。しかし,よく知られているとおり,プロセッサ向けのプロセス技術は微細化のペースが落ち気味で,かつてのようなパターンを踏襲することが難しくなっている。

 CUH-1200は,そんな状況に対する,SCEなりの回答と評することができるのではなかろうか。メインのプロセッサをどうにもできない以上,サブのLSIに手を加え,基板レベルのシュリンクとでも呼べるような最適化によって,コストダウンを図ればいい。SCEはそう考えたのではなかろうか。


次世代プロセス版APUを搭載したモデルまでの“つなぎ”として,順当な進化を遂げた新型PS4


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 新型PS4において,LSI数の削減が製造コストを下げていることはまず間違いない。一方で価格は変わっていないので,利益率は向上しているはずだ。

 APUの製造を請け負うTSMCのロードマップからすると,2015年の終わりか2016年には,APU製造プロセスのシュリンクが行われる可能性が高い。その暁にはPS4筐体の再設計が行われることも大いにあり得るが,今回のCUH-1200は,それまでのつなぎとして,順当に進化を遂げたモデルとまとめることができそうである。

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ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアのPS4公式情報ページ

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