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生成AI時代,美術チームの在り方はどう変わるのか。制作現場は人機協調へ,クリエイターは「指揮官」になる
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印刷2025/12/19 15:12

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生成AI時代,美術チームの在り方はどう変わるのか。制作現場は人機協調へ,クリエイターは「指揮官」になる

 2025年12月18日,中国・上海で開催された「2025年中国ゲーム産業年会」「AI技術」セッションにおいて,湖北盛天網絡の何 玲(ホー・リン)氏が登壇した。

 何氏は「AI美術チーム転換:効率革命×創造力の拡張」と題した講演で,自身が所属する中規模ゲーム会社の美術チームが,過去2年間にわたって生成AIツールを導入し,段階的に組織改革を進めてきた実例を紹介した。

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 同氏によれば,AI技術の進化速度はすでに個人の裁量で対応できる段階を超え,チーム全体の存続や競争力に直結する「組織的課題」になっているという。

 直近の1か月半だけをみても,画像,3D,動画分野で高性能なAIモデルが相次いで登場し,マルチモーダル技術の進展によって制作のハードルは急速に下がった。こうした状況のもとで問われているのは,「AIを使うかどうか」ではなく,「いかにワークフローに組み込むか」だと何氏は強調した。

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 技術が急速に高度化するなかで,従来型のコンテンツ制作フローは通用しなくなりつつある。美術チームにとって最大の課題は,新しいツールを覚えることではなく,AI活用を前提として,組織構造,人材配置,制作プロセスそのものを再設計する点にあると何氏は指摘した。

 その実践において,同氏のチームはきわめて現実的で,プロジェクト特性に応じた運用を行っているという。AIモデル選定の基準は「効率」「著作権」「プロジェクト規模」の三点だ。開発期間が短く,美術スタイルの自由度が高いカジュアルタイトルでは,安定性の高い有料AIモデルを活用し,スピードを重視する。一方で,長期運用を前提とし,美術表現の一貫性が求められるタイトルでは,オンプレミス環境に構築したオープンソースAIを中心に据え,権利面の明確化とスタイル管理を優先しているそうだ。

 2Dグラフィックスの制作パイプラインでは,すでに比較的安定したワークフローが確立されている。DeepSeekやQwenといった大規模言語モデルと,KLINGなどの画像生成モデルを組み合わせることで,コンセプトアート,UIアイコン,簡易的なモーション制作において,大幅な効率向上を実現したという。

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 対して3D分野では,AIは主にハードサーフェスモデリングの初期工程で活用され,その後はMayaなど既存のDCCツールで仕上げを行う形が定着している。この手法により,制作効率はおよそ30%向上したという。また,美術的な独自性が重視されるインディーゲームにおいても,企画初期段階でAIを用いてプレイアブルデモを迅速に構築し,アイデアを検証する用途に活用されている。

 組織面での最大の課題について何氏は「人材と役割の再定義」だと語り,段階的に進化させる「インテリジェント協調チーム」構想を紹介した。新たに設けたのが,「AIワークフローアーキテクト」という役割である。これはAI技術と従来の美術制作の橋渡し役として,モデル選定,制作フロー設計,社内教育を担うポジションだ。

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 さらに,中核となるアーティストを対象に「AIアートディレクター」を育成する。各プロジェクト専用のリファレンス集を整備し,独自のLoRAモデルをトレーニングすることで,AIによる美術表現の方向性を定義する役割を担う。外部からこうした複合型人材を採用する難しさを踏まえ,内部育成を重視している点が特徴だ。そのうえで,AI美術エンジニアと各プロジェクトのAIアートディレクターによる「AIチーム」を編成し,新しいモデルやワークフローを現場に無理なく導入している。

 一方で何氏は,人機協調への転換に伴うリスクにも触れた。たとえば,アートスタイルの同質化に対しては,プロジェクト専用モデルのトレーニングに加え,生成段階で意図的にノイズや揺らぎを加えることで多様性を確保する工夫を行っており,最終的には人の手による調整でアイデンティティを強化しているという。

 また,AIのハルシネーションや著作権問題については,オープンソースモデルを優先的に採用し,権利が確認された素材のみで学習を実施。有料モデルについても契約内容を厳格に精査して使用している。すべてのAI生成アセットは,最終的にアーティストの監修と手作業による調整を経てから,本開発に組み込まれる。

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 何氏は,業界全体の美術チームは今後,「人手集約型」から「人機協調型」へと確実に移行していくとみている。そのなかで人間のクリエイターは,作業の担い手ではなく,複数のAIモデルを統括してビジョンを具現化する「指揮官」の役割を担うことになると予測した。

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 とくに小規模チームや個人開発者にとっては,多様なAIツールを組み合わせてAIチームを構築し,俊敏に開発を進めることが,大手メーカーに対抗するための現実的な選択肢になり得る。

 この変革の本質は,創造の主導権を人間が握り続けたまま,AIによって技術的な実行力を飛躍的に高める点にあると,何氏は講演を締めくくった。
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