[GDC 2025]Steamマーケティング最新講義。15万ドル分のゲームを売ると見えてくるかもしれない“リアルSteam”とは?
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ズコウスキ氏は,昨年のGDC 2024でも「Steamのアルゴリズムを理解して,ゲームをユーザーにアピールしよう」という趣旨のセッションを開催して高い評価を得た人物だ。
Access Accepted第789回:手法が変わりつつあるSteamでのゲームの売り方。アルゴリズムをよく理解してゲームをアピールするべき

数年にわたって手塩にかけて作り出したゲームなのに,Steamでの情報量が少なく,潜在的な消費者に向けてメッセージを届けられていないデベロッパが散見される。今回は「Steamのアルゴリズムを理解することで,より多くのゲーマーに情報が届きやすくなる」と説いた,GDC 2024のセッションを紹介したい。
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そんなズコウスキ氏は,2024年1月にValveがアナウンスしたSteamの売り上げデータが減少していたことに注目する。それを示すグラフは目安となる数字が記されていない,非上場企業らしい漠然としたものであったが,ズコウスキ氏は,「7ピクセル分」の業績下落を,単にコロナ明けの巣ごもり需要の喪失ではなく,内部のアルゴリズムの変化が失敗したためと睨んでいたらしい。クライアントソフトだけでなく,開発者向けのバックエンドでも頻繁にアップデートが行われるSteamであるが,2024年にはそういった中で何らかの修正が施され,同年度は「154ピクセル分」のV字回復を成し遂げた。
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Steamの業績は,言い換えれば「それだけゲーム販売が行われた」ということ。Valve自身は,毎年1万本近くもSteamでリリースされるゲームの1本1本を後見しているわけではなく,自動化されたアルゴリズムによってトレンド化し,ゲーマーにお勧めしたり,フロントページにピックアップしたりする。
つまり,Steamでどのゲームが何をして売れたのかをトレースすれば,新作ゲームを売りたいゲームデベロッパがその恩恵にあずかれるというわけだ。
完成していなくてもプレイテストやデモ版を配信
ズコウスキ氏によると,2024年度におけるSteamの大きな変化で押さえておくべきことは,「デモ至上主義化」「ローンチ後のブースト」「NEXTフェスの有効活用」の3点であるという。
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ここで詳細に説明されたのが,1つめのデモについてだ。ズコウスキ氏が挙げた例の1つが,2024年10月にアーリーアクセス版がリリースされたOsaris Gamesの「Eden Crafters」(外部リンク)。2024年2月にSteamストアページを公開後,しばらく何の反応もなかったが,6月にデモを公開した途端に6000件ものウィッシュリストを獲得したという。
2025年内にリリースされる予定の「Parcel Simulator」(外部リンク)も同じような動きをたどった。2023年4月にSteamストアページが公開されてもほとんど話題にならず,1年半以上が経ってもウィッシュリストの登録数は7000件が精いっぱいだったが,2025年2月にデモがリリースされるや否や,そこから1万件ものウィッシュリストを上乗せしたという。
つまり,ゲーム開発者はデモを少しでも早くリリースすべきというわけだ。デモは,世界中のどこかのコンテンツクリエイターに取り上げられたり,「ストラテジーゲームイベント」や「Wholesome Direct」といったような,Steamのショーケースイベントにピックアップされるきっかけとなる。それらに加わることによってビジビリティ(ゲーマーへの可視化)も高まることをズコウスキ氏は指摘するのだ。
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実際,Steamストアのホームには,「人気の新作」や「近日登場」などのタブに交じり,2024年度には「話題の無料作品」という項目が登場しており,ここにはデモ版も含まれている。これはズコウスキ氏の想像での範疇であるが,デモも100人の同時アクセス者数があれば,お勧めの上位にランクインして,ビジビリティも大きく高まるはずだという。
また,デモを公開する際にはデモ専用のSteamストアページを作るかどうか選択できるが,ズコウスキ氏はできることならデモ専用ページを作っておくべきと語った。その理由は,デモ専用ページには,正式リリース前であってもプレイヤーがレビューを書き込め,それによってビジビリティを高められる可能性があるからだ。
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なお,最近のSteamでよく見かける「プレイテスト」は,デモ版と似たようなものに思えるが,これはSteam内部だとデモとして扱われない。そのため,プレイテストを利用することで,デモの効果をさらに高められるという。
「ジャンル」と「アートディレクション」を決定し,30秒のトレイラーを完成させてSteamストアページを公開したのち,短い周期で何度でもリリースできるプレイテスト版で完成度を高め,デモ版の配信まで持ち込んでいくべきだとズコウスキ氏は語っていた。
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「リアルSteam」という謎の存在
ズコウスキ氏は「本当に存在するかどうかは分からない」と前置きしつつ,Steamでのリリース後にある程度の収益が得られたゲームは,自動的に“格上げ”されて,さまざまなマーケティングやデータツールが利用できるようになるらしいと語り,これを「リアルSteam」と呼んだ。
リアルSteamが開放されるボーダーラインは,Valveへの配分前で15万ドル程度の収益がローンチ後6~9か月以内に得られるかどうかといったところ。このあたりの具体的な数字も,あくまでもズコウスキの推測とのことだ。
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Valveは以前から「ベンチマークになる指標は設けていない」としているが,面白いことに,2024年度の「154ピクセル分」の業績回復と足並みを合わせるように,1000件以上のユーザーレビューを得て,リアルSteam入りを果たしたと思われるゲームが急増した。
ズコウスキ氏が語るには,これはValveが「15万ドル」のベンチマークを下げたのではなく,ゲーム内イベントの回数が増えたことで,デモのリリース情報が多くのユーザーに届くようになったことが関係しているらしい。2024年度は,サードパーティが主催するSteamショーケースイベントが900回を超えており,それだけ主催者側もユニークなタイトルの体験版を求めるようになっているというわけだ。
もちろん,デモをプレイしてウィッシュリストに追加したプレイヤーが全員正式リリース版を購入してくれるわけではない。ウィッシュリストに追加したプレイヤーの20%が実際にゲームを購入してくれる場合もあれば,2%しか購入してくれない場合もある。デモが乱発されてウィッシュリストに“インフレーション”が発生している可能性もあるとズコウスキ氏は指摘したが,このコンバージョン率の差を決めるのは,ある種の“マジック”による力であるという。
GDC 2024のセッションでも,「美しいグラフィックスでユーザーの気を惹く」という,抽象的な説明をしていたズコウスキ氏だが,このマジックが何であるかについて「私は薄汚いマーケット屋であり,ゲームデザインのセンスや芸術性の欠片もないから私に説明を求めないで」と笑いを取った。
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つまりは「ゲーマーの心を惹き付ける何か」であり,そのマジックは数字では推し量れない,ゲーマーへのちょっとしたアピールや,ストリーマーに取り上げられて話題になるといったような,コミュニティを突き動かす何かの衝動のことなのだろう。強いて言えば,ゲーマーやコミュニティではなく,ディスカバリーキュー(Discovery Queue)機能に発見される要因があるかどうかのようだ。
ズコウスキ氏の調査によると,ローンチ時のゲームのビジビリティは,その45%がディスカバリーキューによるものだという。Steamは,ローンチから2週間を追跡し,特に3日目のプレイヤー動向を重要視しているとのこと。
また,1000レビューを獲得してリアルSteam入りした2024年度作品の445作のうち,74%は1000レビュー到達をローンチから3か月以内にクリアしており,3~6か月のあいだに達成したタイトルは17%に急減してしまう。つまり,リリースから1年ほど経過して急に人気を得た「Among Us」のようなタイトルは非常に稀有な例というわけだ。
ここ数年間で,“マジックなし”の状態から1000レビュー獲得したのは2024年4月にリリースされた「Beltmatic」(外部リンク)のみだという。数字を示すと1万4077分の1でしかないとのことで,リアルSteam入りして成功作に加わるのは,ほぼ不可能になってしまうのだ。
ズコウスキ氏も「最初の1か月で250レビューを獲得できなければ,第2計画に移りなさい」と語っていたが,それはアップデートやDLCを諦めて次回作に取りかかれということなのだろう。
ローンチから1か月で250レビュー,3か月以内に1000レビューを獲得してリアルSteamにアクセスできるようになるには,「リリースから2週間目に,シーズンセールスを合わせること」とズコウスキ氏は力説した。
もちろん,無料のアップデートやDLCを公開したり,その情報を発表したり,日替わりのセールに参加したり,業界の仲間を募ってサードパーティタイトルとのバンドル商品を作ったりと,さまざまな手法で話題を欠かさないようにし,ビジビリティを高め続けていくことも必要だ。
「お金がないならインターンを雇ってでも」と会場を笑わせていたズコウスキ氏だが,マーケティングの努力はゲーム開発と同じ力量で行わないとヒットさせるのは難しいということを,マーケティング屋としての彼の立場からゲーム開発者たちに諭しているように思えた。
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「GDC 2025」公式サイト
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