突然だが,「
PHANTOM-S」(型番:UC410)という製品を知っているだろうか。KVM(≒PC切り替え器)の世界的大手であるATEN INTERNATIONAL(以下,ATEN)が世界市場で2014年2月に発表した,「
据え置き型ゲーム機でPC用キーボードとマウスを利用できるようにするデバイス」だ。欧米では利用者が結構いるので,ゲームデバイスにアンテナを張っている人だと,何度となくその名前を見たというケースがあるかもしれない。
PHANTOM-S
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ATENブースにおける展示
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今回,TWTC(Taipei World Trade Center)にブースを構え,PHANTOM-Sのデモ展示を行っていたATENに話を聞いてみたところ,なんと,
日本での発売が決まったとのこと。価格未定ながら8月発売予定という情報が得られたので,取り急ぎ,製品概要をまとめてみよう。
「純正ゲームパッドを差す」ことで認証問題をクリア
PHANTOM-Sは,7.9(W)
×10.6(D)×2.44(H)mmというサイズをした,箱形のデバイスだ。Ankerの5ポートUSB充電器を持っている読者はけっこういるのではないかと思うが,アレをひと周り大きくしたような感じというと伝わるかもしれない。
インタフェースは,USB Type-A×3とUSB mini-B×3だが,ここは説明が必要だろう。
まず,USB Type-A端子のうち2つは,PC用のキーボードとマウスを接続するためのものである。残る1つには「Gamepad」というシルク印刷があるのだが,ここには,「PC用のキーボードとマウスを接続したい据え置き型ゲーム機」の純正ゲームパッドを接続することになる。PHANTOM-SはPlayStation 4(以下,PS4)とPlayStation 3,Xbox One,Xbox 360に対応するので,たとえばPS4で使いたいなら,DUALSHOCK 4を,USB接続でつなぐことになるわけだ。
USB Type-Aインタフェース×3。左から順に「Gamepad」「Keyboard」「Mouse」とプリントされている
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最近の据え置き型ゲーム機では,不正なハードウェアが利用されるのを防ぐため,本体側とゲームコントローラ側で相互認証を行い,認証されないハードウェアでは使えなくするような機構が組み込まれていたりする。そこでPHANTOM-Sは,純正ゲームパッドを接続することで認証をクリアしつつ,純正ゲームパッドとゲーム機側の間で行われる通信のパケットに,PCキーボードおよびマウスからの入力信号を載せる処理を行っているのだという。
ブースの静態展示機は,PS4の傍らに置いてあった
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それって権利的に大丈夫なのかと心配になる人もいるだろうが,とくに認証周りが厳しいとされるPlayStationプラットフォームについて聞いてみたところ,ATENの製品担当者からは「Sony Computer Entertainment Taiwanに問い合わせて返事はもらっている」との答えが返ってきた。当然,公認されているわけではなさそうなので,ハードウェアの仕様上,キーボードとマウスしか接続できない(ことで不正には直接つながらないも)のだから黙認,というのがSony Computer Entertainment Taiwan側の判断ということかもしれない。
続いてUSB mini-B×3だが,こちらは1つが給電用で,残る2つは,片方がゲーム機との接続用,もう片方がPCとの接続用になっている。PC上で,キーボードやマウスにゲームパッドの機能を割り当てる必要があるため,PC接続用のインタフェースも用意されているわけだ。
設定用ソフトウェア。複数の「GROUP」ごとに8スロット用意されており,1から設定を行うときは,まず,ゲームパッドのイラストでゲーム機を選ぶことになる
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設定用ソフトウェアで,ATENが用意しているのは,4種の据え置き型ゲーム機に向けて,「とりあえずマウスとキーボードで動くようにしました」レベルの,シンプルなプロファイルのみ。ただし,プロファイルはユーザーが自分でカスタマイズし,ATENが運営するコミュニティページへもアップロードできるようになっており,販売が始まって久しい米国と台湾では,ユーザーコミュニティによってさまざまなゲームタイトルに向けたプロファイルがアップロードされているという。実際,ブースのデモで使われていたプロファイルは,そこから入手したものとのことだった。
PS4版「Call of Duty: Modern Warfare 2」のプロファイル。PHANTOM-Sのユーザーが作成したものだそうだ
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もちろん,そのプロファイルをさらにカスタマイズすることも可能だ。単純なボタンの割り当てだけではなく,アナログ入力時に,ちょっと触れただけで入力が入ってしまうのを防ぐためのデッドゾーン設定や,たとえばFPSで,ゲームタイトルごとに異なる「アナログスティックの倒れた角度による,視点移動速度の違い」を吸収し,マウス操作らしい視点移動操作を実現するための設定項目も用意されていたので,奥は相当に深いと言ってよさそうである。
マウスの挙動と,ゲームパッド側のアナログ操作間で整合性を取るための設定項目
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アナログスティックをエミュレートするにあたっての設定は,マウス操作で簡単に行える。ただ,望んだとおりにするのは難しい印象で,最初はコミュニティベースのプロファイル頼みになりそうだ |
設定ツールは現時点ですでに日本語109キー配列をサポート済み。メニューの言語も日本語を設定できるようになっていた。また,マウス側の設定に合わせて,DPI値を指定する項目も確認できる |
PS4&Xbox One世代で,PC用キーボードとマウスを利用できるようにする製品は,PHANTOM-Sが唯一ではないと記憶しているが,国内で,ATENの正規品として出回ることになることには意義があるだろう。8月の発売を楽しみに待ちたい。