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[CES 2016]世界初(?)のAR/VR統合型ヘッドマウントディスプレイ「Impression Pi」のプロトタイプ機が公開に
ひょっとすると,本製品がGDC 2015会場で参考展示されていたのを覚えている人もいるかもしれない(関連記事)。この製品は,2015年3月に,Kickstarterを使ったクラウドファンディングで注目されて話題になり,その半年後までにベンチャー投資などを含めて550万ドルもの開発資金を集めるに至っている。
Impression Piは,Android搭載スマートフォンを挿入するタイプのVR(仮想現実)機器でありながら,前部に用意された二つのカメラレンズを使ってAR(拡張現実)ディスプレイとしても使用できるというデバイスだ。機能としては,キヤノンのMR(Mixed Reality)対応HMDなどに近いものだが,製品化されれば(おそらく民生用としては)世界初になるはずである。
ゲーム向けという位置付けではないようだったが,Unity 3DやC++での開発をサポートしており,2016年夏の正式発売を目指して,近いうちに開発キットをリリースする予定にしているという。
USensによると,Impression Piでは,IMU/AHRSアルゴリズム(加速度や角度情報での位置検出アルゴリズム)を使って,スマートフォン内蔵のセンサーによりポジショントラッキングを行える。また,二つのカメラを利用してプレイヤーの手や指の動きをミリ単位の精度で認識することにより,プレイヤーが素手のまま,ジェスチャーで目の前に広がる世界に介在できるようにもなるという。AR/VRの統合型デバイスとして,Impression Piの可能性を感じさせる機能だ。
ジェスチャーのトラッキングは最終的には60pfsで行うとのことで,違和感を引き起こす要因になるインタラクションのラグは感じることは少なさそうだ。
現在公開されているデモの種類は決して多くはないものの,目の前に3Dオブジェクトを置いて色を塗ったり,空間に文字を書き込んだりといったAR的なことから,CGグラフィックスで表現された月面を探訪するといったVR的な楽しみ方のものもある。
また,カメラを使って室内の情景をスキャニングし,それをVR世界に自動生成で置き換えることも可能になるという。これは例えば,部屋の壁がそのままダンジョンの壁になり,コーヒーテーブルは目の前に置かれた宝箱に変化するといった感じになるだろう。VRゲームとしてもほかのデバイスにはない楽しみ方と,プレイヤーの安全性の両立を狙っている様子だ。
サンノゼのメインオフィスで開発が進められているというプロトタイプ機はまだ粗削りな状態であり,撮影するのもしのびないほど手作り感のある状態だったが,多くの来場者の足を止めるには十分だったと思われる。統合型機器であるためか,今のところ手にした印象では「Gear VR」の厚みを増したような状態で,前部が重くてバランスが取れていないという印象を受けたものの,ゲームや教育現場では独特な仕様を生かしていくことは十分に考えられる。今後のデバイスの進化とソフトウェア開発者サポートに期待しておきたいところだ。
Impression Pi公式サイト
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