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[COMPUTEX]5GHz帯と2.4GHz帯を自動切り替えしながら,オンラインゲームも途切れない。無線LANの新技術「Wi-Fi SON」とは何か?
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印刷2016/06/01 00:00

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[COMPUTEX]5GHz帯と2.4GHz帯を自動切り替えしながら,オンラインゲームも途切れない。無線LANの新技術「Wi-Fi SON」とは何か?

Wi-Fi SONの説明を担当した,Rahul Patel氏(SVP&General Manager,Connectivity,Qualcomm Technologies)
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 台湾時間2016年5月31日,Qualcommは,COMPUTEX TAIPEI 2016(以下,COMPUTEX)の開幕に合わせてプレスカンファレンスを開催した。主なテーマとなったのは「Internet of Things」(以下,IoT)や次世代無線通信技術「5G」といった話題であり,ゲーマーに直接関係ある話題は少ない。
 ただ,その中で説明された近い将来に登場する無線LAN技術「Wi-Fi SON」は,コンシューマーにも関わってくる技術となりそうだ。そこで,カンファレンスで説明されたWi-Fi SONについて,簡単にレポートしよう。

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 IoTの時代では,家庭内にあるさまざまな機器がインターネットにつながるようになる。そうした機器の多くは,無線LANを使って家庭内の無線LANルーターにつながるはずで,機器が増えれば増えるほど無線LANは混雑していく。そうなると,無線LANの通信速度は遅くなってしまうし,場合によっては接続できない機器も出てくるかもしれない。これからの無線LANは,通信速度の高速化だけでなく,多くの機器を同時に利用するための“容量”拡大が求められていくのだ。
 無線LANの容量を拡大するために,Qualcommは,「More spectrum」(周波数帯の拡大)「More antennas」(より多くのアンテナ)「More efficiency](さらなる効率化)という3つのアプローチを研究しているという。

無線LANの容量を確保するための3つのアプローチ
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 無線LANの容量拡大に効果的な手法として,すでに広く利用されている技術に「Multi User-MIMO」(MU-MIMO,関連記事)がある。IEEE802.11ac規格では,MU-MIMOを利用することで,無線LANのスループット(通信速度)や容量を3倍にできたという。

MU-MIMOでは,従来のSU-MIMOに比べて3倍の効率化を実現した
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 このアイデアをさらに発展させたのが,今回のCOMPUTEXに合わせて発表された無線LANルーター向けのQualcomm製SoC(System-on-a-Chip)「IPQ40x9」に搭載される技術であるWi-Fi SON(Wi-Fi Self-Organizing Networks)なのだ。
 ちなみにSONとは,携帯電話の通信ネットワークでも使われる用語だが,それと同様の仕組みを無線LAN向けに導入したのが,Wi-Fi SONなのである。Wi-Fi SONの発表自体は2016年1月に行われたのだが,機器メーカーの多い台湾の地で詳細に説明することで,対応デバイスの拡大につなげたいとQualcommは考えているのだ。

Wi-Fi SONに対応するルーター向けSoCがIPQ40x9だ
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 IPQ40x9は,5GHz帯で2つ,2.4GHz帯で1つの合計3波を使う「Tri-Radio Platform」という技術を採用しており,無線LANルーターが今までよりも効率よく,柔軟に周波数帯域を活用できる。Wi-Fi SONでは,これをさらに進化させるという。
 現在の無線LANルーターでは,2.4GHz帯と5GHz帯がSSIDによって区別されており,ユーザーがどちらかを選んでつなぐ必要がある。Wi-Fi SONでは,これを簡略化して,1つのSSIDで,どちらもつなげられるようになるとのことだ。

Wi-Fi SON対応ルーターでは,ルーター自体がWi-Fi SONの設定や管理などを自動で行ってくれるのが特徴となる
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デモで使われたスマートフォンは,Xiaomi製「Mi5」だった
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 Wi-Fi SON対応ルーターは,30秒間隔で周波数帯域をチェックして混雑度合いを測定し,混雑している周波数帯からデバイスを切断して,空いている周波数帯へと自動的に切り替える。このときでも通信は維持されてシームレスに切り替わるため,ユーザーが特別な操作をする必要はない。
 同社の説明員は,「切り替えに遅延は発生しない」と述べていた。本当に一切遅延がないのかはともかくとして,少なくともパケットロスが起こるようなことはなく,2.4GHz帯から5GHz帯,5GHz帯から2.4GHz帯へといった切り替えを自動的に行えるそうだ。

最初は2.4GHz帯に接続されていたテスト端末「gemini-MiPhone」(左)が,空いている5GHz帯に自動でスイッチした(右)。デモではSkypeのビデオ通話を使っていたが,切り替え時も通話が途切れたり映像が乱れたりすることはない
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 通常は高速で安定した5GHz帯を使っているが,他の端末がビデオストリーミングを見始めたので帯域が逼迫するようなときには,2.4GHz帯に切り替えると安定する場合もある。だが,これまでの無線LANでこのようなことをするには,ユーザーが明示的にSSIDを切り替える必要があったし,セッションも途切れるために,プレイ中のオンラインゲームが終了してしまうこともありえた。それがWi-Fi SONであれば,切り替え中もセッションが維持されるため,常に安定した回線でゲームを楽しめる,というわけだ。

 ほかにも,無線LANルーターとの接続を簡単にするためにBluetoothを利用する技術や,無線LANのリピーター(中継器)を設置して無線LAN環境を改善する場合でも,より簡単に環境を構築できるような技術も導入していくという。
 とくにQualcommでは,今後のIoT時代において各部屋の無線LAN環境を快適化するために,リピーターの重要性が増すと見込んでいるそうだ。Wi-Fi SONでは,リピーターも含めて管理できるので,リピーターから別のリピーター,さらに親機となる無線LANルーターといった相互の接続もシームレスに行えるようになる。
 さらに,管理用アプリを提供することで,無線LANルーターの接続管理を容易に行えるようにして,多数のIoTデバイスを管理しやすくなるだろうと,Qualcommは主張していた。

 今回の説明によると,すでに販売されているIPQ40x9搭載無線LANルーターでも,ファームウェアのアップデートでWi-Fi SONのサポートが可能になるとのことだ。日本でも,IPQ40x9を採用した無線LANルーターはすでに販売されているので,今後のアップデートを期待したい。
 また,Wi-Fi SON対応ルーターに接続するデバイス側は,無線LANの管理に利用する標準規格である「IEEE802.11k」や「IEEE802.11v」をサポートしていれば――たとえば現行製品のiPhoneなど――,自動切り替えに対応できるという。

 今後,さらに高速な無線LAN技術である「IEEE802.11ad」が登場すれば,2.4GHz帯や5GHz帯に加えて,60GHz帯も使った自動的切り替えが可能になる。短距離だが高速な60GHz帯,長距離に届く2.4GHz帯,干渉の少ない5GHz帯といった切り替えも,ルーターが自動で行ってくれるようになるわけで,家庭内での安定した高速な無線LAN通信環境の実現が近づきそうだ。

Qualcommによる当該プレスリリース(英語)

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