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「音を現実世界に定位させる技術」はゲームで効果があるのか? 「Waves Nx」と「Nx Head Tracker」を試してみた
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印刷2017/04/29 00:00

レビュー

「音を現実世界に定位させる技術」はゲームで効果があるのか

Waves Nx+Nx Head Tracker

Text by 林 佑樹


Nx Head Tracker for Headphones
メーカー:Waves Audio
問い合わせ先:メディア・インテグレーション MI事業部 ご購入前のお問い合わせ 03-3477-1493
実勢価格:7560円前後(※2017年4月29日現在)
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 Waves Audio(以下,Waves)製の「Nx Head Tracker for Headphones」(以下,Nx Head Tracker)を購入した。
 Nx Head Trackerは,「音を現実世界に定位させる技術」である「Waves Nx」を活用するためのBluetooth接続型デバイスだ。WavesはGDC 2016のタイミングでWaves Nxを「ゲーム市場でも展開する」としていたものの(関連記事),実のところ,技術基準適合証明――いわゆる技適――を取得して2017年1月17日に登場した国内版はプロオーディオ系のWaves国内代理店がいつもどおり扱っていたため,筆者の視界に入らず,すっかり忘れていた。そんなある日,秋葉原の店頭で実機を見つけ,「そう言えばWaves Nxってあったなあ」と,手に取った次第である。

 入手の経緯が経緯だけに,ほとんど予備知識なしでのテストとなったが,いろいろ面白いことが分かったので,チェック結果をお伝えしたい。


愛用のヘッドフォンやヘッドセットに取り付けて使うNx Head Tracker


プロオーディオ向けWaves Nxのイメージ
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 Waves Nxの「音を現実世界に定位させる技術」とはどういうことかだが,仮想空間内にスピーカーを置く技術だと考えるとイメージしやすい。
 音楽制作の現場では,スタジオとなる部屋の中に複数のスピーカーを配置するので,音はユーザーの前方から聞こえることになるが,Waves Nxではその体験をヘッドフォンやヘッドセットで再現するのだ。2ch出力対応の一般的なヘッドフォンやヘッドセットだと,音は頭の真横から聞こえるのに対し,Waves Nxを導入すると,Waves Nxは「ユーザー(の頭)がいまどの方向を向いているか」を追跡(=トラッキング)し,それに合わせて,ユーザーがどの方向を向いていたとしても,音は部屋の奥に“設置”されたスピーカーから聞こえるようなイメージになる。
 「いつものスタジオと異なる場所で,ノートPCとヘッドフォンだけで作業の続きを行うときも,いつもと同じように音が前方のスピーカーから鳴っている感覚が得られる。だから作業しやすい」というのが,プロオーディオ向けWaves Nxの謳い文句だ。

 もっとも,Waves Nx自体はマルチチャネルサラウンドに対応している。そのため,ヘッドフォンやヘッドセットの装着時に音が“部屋”の後ろから聞こえるようにすることも可能だ。Wavesがゲーム市場で展開しようとしているのは,2chというより,マルチチャネルサラウンドのほうという理解でいいだろう。

製品ボックスを開けたところ。本体とストラップ,単四形乾電池が入っていた
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 というわけで入手したNx Head Trackerだが,これはヘッドフォンやヘッドセットのヘッドバンド部に取り付けのうえ,PCやモバイルデバイスとBluetooth接続させて使うことになる。
 本体サイズは実測約55(W)×35(D)×13(H)mm(※突起部除く),重量は本体のみが実測約15.6g,付属の単四形乾電池を取り付けた状態で同26.9g。ヘッドフォンやヘッドセットに取り付けたとき,邪魔にならないサイズ感であり,重くてつらいとも思わない重量感である。

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 なお,本体天面部には電源ボタンとステータス表示LEDがある。本体側の操作としては電源ボタンを約2秒押すだけだ。電源オンの状態から音を出さない状態が20分ほど続くと電源はオフになる。
 バッテリーは連続で40時間持つとされ,残量が心許なくなった場合には通常時に青く光るLEDが赤くなるとのことだが,2週間ほど使ったりよしたりした感じでは,バッテリー切れを思わせる兆候はない。使い方次第ではあるものの,けっこう持つという理解でよさそうだ。

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天面部にあるのは電源ボタンとLEDインジケータのみ。シンプルな外観だ。ボタンは短押しでBluetoothペアリングモードとなる
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電池は底面側の蓋を開けると取り付けられる。技適通過を示す印刷も底面側にあった

本体には標準で大きなほうのゴムストラップが付いた状態になっていた。小さいほうのゴムストラップにも簡単に取り替えられる
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 本体は,付属する大小2つのゴムストラップを使って,ヘッドフォンやヘッドセットのヘッドバンド天頂部と固定する方式だ。SteelSeries製ヘッドセット「Arctis 5」のように,クッション部がアーチから独立しているようなヘッドバンドだと問題ないのだが,一般的な,クッションとアーチが一体型のヘッドバンドだと,クッション部が一部潰れることになる。
 長期的にこの状態で利用すると,クッション部がゴムバンドの形に凹んでしまったり,材質によってはクッション部のカバーが痛んでしまったりする可能性はあるので,ここは注意が必要だろう。

クッションとアーチが分離したタイプだと違和感なく装着できるのだが(左),そうでないタイプだとクッションがいくらか潰れた感じになる(右)
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本体側面には左右の指定が入っている。正しい方向に取り付ける必要があるので,ここも気を付けたい。もっとも,左右さえ正しければ,あとは「だいたい天頂部」くらいのアバウトな取り付けでOKだ
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 対応OSはWindowsが8.1以降,macOSが10.9.5以降。AndroidとiOSに関する具体的なバージョン情報は出ていないのだが,筆者はAndroid 6.0.1とiOS 10.3.1での動作を確認している。ハードウェア側としてはBluetooth 4.0以降に対応していることが条件だ。
 デスクトップPCだと追加でUSB−Bluetoothアダプターが必要になると思うが,それ以外の端末だと,最近のものなら標準対応している可能性が高いだろう。

 なお,スマートフォンやタブレットではPlay StoreもしくはApp Storeからアプリ版「Waves Nx」をダウンロードすることで,Nx Head Trackerを利用できる。ただ,これは「音を現実世界に定位させる技術」を活用したメディアプレーヤーであって,ゲームには使いようがないため,今回は紹介を割愛する。無料で使えるので,Nx Head Trackerを導入したなら,一度は試してみるといいのではなかろうか。

iOS版Waves Nxアプリ。後述するPC版と同じような設定を行えるあたりは充実しているのだが,メディアプレーヤーアプリとしてはお世辞にも使いやすいとは言えず,常用には不向きだ。ただ,音はけっこういい
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Waves Nx自体は単体で利用可能。Nx Head Trackerはその機能拡張用ハードウェア


 PCおよびMacでNx Head Trackerをゲームやビデオ,音楽で使うには,「Nx for Windows and Mac」という別売りのソフトウェアを購入する必要がある(※音楽制作用には「Nx」というプラグインが別途用意されている)。もっと言えば,単体で利用できるNx for Windows and Macというソフトウェアが先にあって,Nx Head TrackerはNx for Windows and Macの機能拡張用ハードウェアという扱いだ。

Nx for Windows and Macを導入すると仮想再生デバイスとしてのNx headphonesが「サウンド」に加わる。これを「規定のデバイス」にする必要がある
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 Nx for Windows and Macは仮想再生デバイス(≒仮想的なサウンド再生ハードウェア)と設定用アプリケーションで構成されている。以下はWindows 10環境の話になるが,インストールすると,仮想再生デバイスとしての「Nx Headphones」が「サウンド」に加わった。一般的なゲームサウンドの場合,普通は,

  • ゲーム(プログラム)→OS(のサウンドマッパー)→サウンド出力デバイス

という感じのサウンド出力処理になるのに対し,Nx for Windows and Macを導入すると,

  • ゲーム(プログラム)→OS(のサウンドマッパー)→Nx Headphones→サウンド出力デバイス

という流れになる。

 常駐し,タスクトレイから呼び出せる設定用アプリケーションのスクリーンショットが下だ。ご覧のとおり,「真上から見た人間の頭部」を模した3Dヘッドモデルの周辺を,5基のスピーカーが囲むようなものになっている。

Waves Nxを起動させた直後の状態。イラストではフロントの左サラウンドスピーカ−近くにサブウーファも描かれているので,バーチャル5.1chサラウンドサウンドのように見える
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Webカメラを使ってWaves Nxによる追跡を行っている例。Wavesは,Webカメラを使う場合,カメラに対して1.2m以内に顔を配置し,かつカメラに対して左右それぞれ30度を超えて首を傾けないようアドバイスしている
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 最初にクリックすべきは左上にある歯車マークのところで,ここをクリックすると「Settings」メニューが開く。
 前段で触れたとおり,Waves Nxではユーザーの頭がどこを向いているのかリアルタイムで追跡することになるのだが,設定アプリケーションでは,追跡にどのハードウェアを使うのか選択できる。「え? そこはNx Head Trackerなんじゃないの?」と思うかもしれないが,実はNx Head Trackerを持っていない場合,Webカメラで代用することができるのだ。もっと言えば,Waves Nxを単体で利用することもできる

 ただしWebカメラの場合,ユーザーの目の位置を追跡して頭の位置を把握するため,部屋がやたらと暗かったり,ユーザーが後ろを向いてしまったり,そもそもVR(Virtual Reality,仮想現実)対応ヘッドマウントディスプレイを装着していたりする場合は使えない。また試した限り,左右の首振りの検出精度は良好で,上下の動きにはやや弱いという特徴を持ち,また遅延面においてゲーム用途では不利だったので,少なくともゲームやVRコンテンツで利用したいのであればNx Head Trackerの利用が必須だと断言しておきたい(※ビデオや音楽を楽しむだけならWebカメラでも十分に代用可能だと思う)。
 また,こちらは言うまでもないが,単体で使う場合はそもそも頭の動きの追跡機能は使えない。

上は「Output Devices」,下は「Buffer Size」のプルダウンメニューを開いているところ
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 というわけで設定周りはひとまずNx Head Trackerを使う前提で話を進めていくが,「Output Devices」(アウトプットデバイス)は,標準で「Nx for Windows and Macを導入する直前まで『規定のデバイス』になっていたハードウェア」が選択されているはずだ。ただ,そうでない場合はここのプルダウンから選択する必要がある。

 次に「Buffer Size」(バッファサイズ)は,サウンドデータを一時的に貯めておくためのデータ領域のことで,選択肢は64/128/256/512/1024。書かれていないが,おそらく単位は「KB」だ。PCに慣れた人ほど,なんとなく多いほうがいいと判断してしまうと思うが,大きな値にすればするほど先読みデータが増えるため,再生時の遅延が大きくなる点に注意したい。ならできる限り小さな値にすればいいかというと,再生遅延は短くなる一方,先読みデータが減るため,CPU負荷が高くなったとき,音がブツブツ切れたりする可能性が上がる。CPU性能が足りない場合には最悪,音の再生が数秒単位で途切れるといった事態が生じうるので,一筋縄ではいかない。

 試した感じでは,スピードが優先されるFPS用途だと選択肢は64しかない。FPSでもとくにスピード感重視のタイトルだとそれでも遅く感じられることがあったので,FPSとの相性はあまりよくないと言わざるを得ないだろう。
 一方,それ以外のタイトルだとデフォルトの512でも気になるケースは少なかった。「音が明らかに遅れて聞こえるようなら,より小さなバッファ値を選ぶ」くらいでいいと思われる。このあたりはジャンルやプレイスタイル,PCスペックとの相談だ。

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 「Personalization」(パーソナライゼーション)は重要であり,以下の2項目はしっかり計測し,設定すべき項目だ。

  • Circumference(サーカムファレンス):耳の上端を基準とした頭囲
  • Inter-Aural Arc(インターアウラルアーク):左右にある耳の穴から穴まで,後頭部を回したときの長さ

 ここを正確に入力しないと,仮想スピーカーが正面ではなく,頭の中にあるように聞こえたり,横からの音の定位がズレたりと,本来の性能を味わえない。なので,面倒だがちゃんと計測しよう。

 ひととおり設定が終われば,あとはシンプルである。右上のスイッチボタンは,Waves Nx機能の有効/無効切り替え用。「OFF」にした場合は仮想デバイスとしてのNx Heaphonesがバイパスされ,Output Devicesで選択しているサウンドデバイスから「普通に」サウンドを出力することになる。

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 右下の「Presets」は文字どおりプリセット選択用で,選択肢は,

  • Voice:Nxエフェクトは最小限で,主にボイスチャット向きのプリセット
  • Multimedia:中程度のNxエフェクトがかかるプリセット。ゲーム用途や音楽試聴用途,ビデオ鑑賞にまんべんなく向くとされる
  • Movie Theater:最大限のNxエフェクトがかかるプリセット

の3つ。WavesはMultimediaとMovie Theaterをゲーム向きとしているのだが,Movie Theaterは反響音など残響系の音が増えるので,広大な世界を旅するオープンワールドのMMORPGや,広い世界を味わうVRコンテンツ向けといったところで,基本的には「MultimediaかVoiceのほうで好みのものを選ぶ」ほうが早いのではないかと思う。

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 最後に[Sweet Spot](スイートスポット)ボタンだが,これはキャリブレーション機能という認識でいい。画面に対して正対した状態でこのボタンを押すと,その状態を正位置として取り扱うようになる。そのため,少しくらいなら,Nx Head Trackerが若干斜めに取り付けられていたとしても,Nx for Windows and Macはその状態を「画面に対して真正面,かつ水平」として取り扱うので,心配無用だ。
 ただ,たとえば「左右も無視してメガネのツルに引っかける」といったことを行うと,軽く動かすくらいなら問題ないものの,首を一定以上動かすと変な挙動になった。できる限り「ヘッドフォンやヘッドセットの天頂部設置」を心がけたほうがいいだろう。


自然なサラウンド感が得られるWaves Nx。Nx Head Trackerも優秀だが,いくつか注意事項あり


 実際にWaves Nxを使ってみると,「違和感のないサラウンドサウンド」であることにすぐ気付く。たとえばRealtek Semiconductor製のHD Audio CODEC用ドライバソフトウェアに付属する“おまけ”のバーチャルサラウンドサウンド機能は言うに及ばず,「Razer Surround Pro」よりも,サラウンド感は自然だ。

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 テストプレイでは,まず,Nx Head Trackerを使わず,Nx for Windows and MacからWaves Nxだけ有効化のうえ「World of Warships」をプレイしてみた。Waves Nx側はBuffer Sizeが512,プリセットはMultimediaで,World of Warships側の設定は「サウンド品質」が「高」,「ワイド・ダイナミックレンジ」が「オフ」の状態としたが,あちこちから砲撃が飛んでくるのがよく分かるのが印象的だった。とくに着弾時の位置が明瞭なのは驚きだ。
 戦艦の場合は主砲の位置も体感でき,たとえば1番砲塔から3番砲塔まで順次発砲といったとき,耳が楽しく,カメラをズームするとなお楽しい。あるいは,艦載機が接近し,上空を過ぎて遠ざかっていくのも,魚雷の接近するイヤな音も,正しくその方向から聞こえる。

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 ここで重要なのは,確かに仮想空間上にあるスピーカーの数は5基なのだが,いわゆるバーチャル5.1chサラウンドサウンドのように音が周囲をぐるっと囲むのではなく,艦載機が自艦の上を飛んでいるとき,音が真上にあるように聞こえる点だ。WavesはWaves Nxを「3Dオーディオ」と位置づけているが,たしかに既存のバーチャルサラウンドサウンドとは一線を画していると言っていい。

 ただ弱点もあり,端的に述べて真後ろは弱い。Razer Surround Proだとほぼ真後ろから聞こえるようなシーンでも,Waves Nxだと後方の左右にズレて鳴っているように聞こえることが多々あった。担当編集が「Voiceプリセットだとむしろ真後ろは良好だと思う」と言っていたので試したが,やっぱり違和感は残ったので,ここは聞こえ方に個人差があるところなのかもしれない。
 なお,ゲーム側で「ワイド・ダイナミックレンジ」を無効化したせいかなと思い「オン」にした場合でも,ズレた感じは変わらず。むしろ効果が弱くなったように感じられ,筆者はすぐ「オフ」に戻している。

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 次にNx Head Trackerを有効にしてみたが,結論から先に言うと,これは思いっきりVR向けだ。
 顔を真正面に向いているときはWaves Nxを単体で使っているときと同じ感覚だが,顔を右に向けてみると,前方の仮想スピーカーから鳴っている音は左耳を中心に聞こえ,かつ,右耳には反響音がとどくようになる。真後ろを向けば,正面の仮想スピーカーが後方かなり後ろにあるいように聞こえ,頭を下に向けると斜め上のほうで仮想スピーカーが鳴っているように聞こえる。立体的な音環境を体験できるという点で,これはとても面白い。

 ただ,そうやって頭をぐりぐり動かしていると,頭を正位置に戻したときにWaves Nx上の正位置からズレていることがまれにあった。その場合,左右の音のバランスも微妙に変わってしまう。

VR対応ヘッドマウントディスプレイを装着した状態で正位置に対して右後方を向いてしばらくゲームをプレイし,ヘッドマウントディスプレイを外して正位置に向き直した状態が左のスクリーンショットだ。微妙にズレている。この状態で[Sweet Spot]ボタンを押すと,右のとおり正位置で再度キャリブレーションできた
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 対策自体はあり,[Alt]+[Tab]キーでタスクを切り換えて,[Sweet Spot]ボタンを押してそれからゲームに戻ればいいのだが,正直,面倒だ。せめてキーボードショートカットでいつでも再キャリブレーションを行えるようにしてくれると,VRヘッドマウントディスプレイを外してぱっと再キャリブレーションできるので,センターがズレたとき,違和感に苛まれなくて済むだろう。対応をお願いしたいところだ。

 もう1つ,Nx Head Trackerを使っていて気になったのは,不定期に生じる「追跡の停止」だ。最初は六畳のテスト部屋に無線LANルーターが3台あって,それぞれから2.4GHz帯と5GHz帯の電波が出ており,さらにスマートフォンが6台,Bluetooth接続型機器がマウス2台とキーボード1台,Apple Watch Series 2 1台の計4台あることによる2.4GHz帯の混雑が原因かと思った。だが,Nx Head Tracker以外の無線接続型デバイスをすべて無効化しても症状に変わりはなかったので,現状のファームウェアなりソフトウェアなりに,何らかの問題がある可能性はある。
 もっとも,筆者の環境だと症状が出たのはテスト開始後1時間以上経過してからだったので,VR用途だと問題はないかもしれない。付け加えると,一般的なPCゲームと組み合わせてNx Head Trackerを5時間使い続けたという担当編集者の環境では,とくにそういう問題は出なかったものの,Webカメラを用いたテストでは遅延設定を詰めた場合に症状の頻発を確認したとのことだった。


まずは体験版を使ってみよう。Nx Head Trackerはそれからでも遅くない


Nx Head Trackerの製品ボックス
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 というわけで,今回試したWorld of Warshipsのような,広義のシミュレータ要素を含むタイトルだと,Waves Nxは有効なように思う。アスペクト比21:9のディスプレイでレースゲームやフライトシムをプレイするときに,音環境として正面がキープされるのは,かなりのメリットになるはずだ。

 今回筆者は「Core i7-6700HQ」と「GeForce GTX 1070」搭載のゲーマー向けノートPCでテストしたが,Nx Head Tracker利用時であってもCPU負荷は無視できるレベルだったので,むしろCPU性能は前述した処理遅延の問題を左右するという理解でいいだろう。

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体験版のスクリーンショット。試用できる残日数が表示される
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Webブラウザ「Chrome」上で試せるデモもある。頭囲の設定ができないのでちゃんとした仮想スピーカー感は得にくいが,雰囲気は掴めると思う
 ちなみにNx for Windows and Macには体験版があり,30日間の試用中はすべての機能を使うことができる。なので,ひとまずソフトウェアだけ導入して,一般的なゲームのプレイで「音を現実世界に定位させる技術」がどんなものかを確認し,自分に合っているかどうか確認してみるといいだろう。ゲーム以外にも音楽やビデオでも使えるため,試し甲斐はあるはずだ。
 価格はWavesの公式サイト上だと9.99ドル(税別,日本から購入する場合は無税)で,国内代理店版も1296円(税込)と安価だから,気になったら買ってしまっていい価格だ。

 またNx Head Trackerは,通常価格が1万1880円(税込)のところ,「特別価格」として7560円(税込)になっている。いつまで特別価格が続くのかは分からないが,Nx for Windows and Macをまず試し,Webカメラを用いて頭の動きを追跡する機能にも満足したのであれば,VR用途を前提に,人柱気分で衝動買いをしても後悔は少ないはずである。

WavesのNx for Windows and Mac販売ページ

メディアインテグレーション(販売代理店)のNx for Windows and Mac販売ページ


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