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ゲーム関連では「Fortnite」と「FFXV」が入選。SIGGRAPH 2017のCG映像コンペ「Electronic Theater」レポート
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印刷2017/08/09 17:33

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ゲーム関連では「Fortnite」と「FFXV」が入選。SIGGRAPH 2017のCG映像コンペ「Electronic Theater」レポート

Electronic Theater会場の様子
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 プロ・アマ不問のCG作品コンペ「Computer Animation Festival」(以下,CAF)が,SIGGRAPH 2017でも行われた。CAFの応募作品から選ばれた入選作品のうち,さらに厳選された優秀作品は,SIGGRAPH会場内の大劇場「Electronic Theater」で上映され,優秀作品のクリエイターに対する表彰も行われるのが通例となっている。映像制作やゲームを含むCG業界に携わるクリエイターにとって,Electronic Theaterでの上映は名誉であり,毎年このイベントには,大勢の来場者が足を運ぶのだ。

SIGGRAPH会期中の上映は2回行われ,初回上映時には優秀作への表彰式も行われた(左)。上映に使うプロジェクタは,ここ数年使い続けているChristie Digital Systems製の4K対応3板式DLPプロジェクタ「CP4230」だ(右)。光源ランプは,輝度4万ルーメンのキセノンランプで,表示解像度はデジタルシネマの規格「DCI」における4K解像度の4096×2160ピクセルである
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 そんなElectronic Theaterの上映作品を簡単にレポートしよう。


【Best Student Project】Garden Party

Florian Babikian氏,Vincent Bayoux氏ほか,MOPA


Garden Partyの公式Webページ
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 フランスの映像/演劇系専門学校であるMotion Picture in Arles(以下,MOPA)は,SIGGRAPHのCAFでは入選の常連として知られる名門だ。その学生であるFlorian Babikian氏とVincent Bayoux氏らのチームによる作品「Garden Party」(関連リンク)が,CAFの「Best Student Project」(最優秀学生作品賞)を受賞した。
 ちなみに,MOPAは,2015年まで「Supinfocom Arles」という名称の学校だった。それが同年にMOPAと改称したそうで,本作品は,改称後の校名では初となる同校学生の入選作である。2016年にも,同校の学生による作品「La légende du Crabe Phare」(The Legend of The Crabe Phare)が同賞を受賞しており,さすがは名門校といったところか。

SIGGRAPH 2016の記事では旧称で扱われているが,これはCAFの作品募集が2015年内に行われたので,旧称のままで提出したためと思われる。

 本作の舞台は,豪華なお屋敷だ。屋内には美しい調度品が並び,敷地内にはフェラーリが停めてある。しかし,不気味な雰囲気の音楽が流れ始めると,腐った料理の数々に大量の蠅がたかっている様子が映し出される。どうやら屋敷は無人らしい。不穏な雰囲気漂う屋敷に,ためらいもなく足を踏み入れるのは,数匹のカエルたち。この屋敷で何が起こったのか。その謎が,カエルたちの目線で解き明かされていくというのが本作の概要である。


 ほぼデフォルメなしの超リアルタッチで描かれる動植物のアップと不気味な音楽は,「バイオハザード」シリーズのオープニングムービーを思わせる雰囲気だ。ところが,徐々にコメディ的な展開に変わっていく流れが面白かった。音楽はあっても,台詞は一切なしというところにも,リアリティと独創性を感じる。なにより,この完成度で学生作品ということには,まったく驚かされた。


【Jury's Choice】Buster The Boxer

Dougal Wilson氏,Moving Picture Company


 審査員特別賞に当たる「Jury's Choice」は,英国の百貨店チェーンであるJohn Lewisの2016年クリスマス商戦向けCM「Buster The Boxer」(関連リンク)が受賞した。
 映像制作を担当したのは,ハリウッド映画の特殊効果でもお馴染みのCGプロダクションであるMoving Picture Company。同社は映画のクレジットでは略称の「MPC」と表記されることが多く,略称のほうに覚えがあるという映画ファンもいるのではないか。

 クリスマスの直前,ある男性が自宅の庭に,娘へのプレゼントであるトランポリンを設置する。完成したところで日が暮れて,トランポリンをプレゼントするのは翌日になるのだが,その夜,近所の森から動物たちがやってきて,一足先にトランポリンを楽しむのであった。その様子をじっと見つめているのは,その家の番犬であるボクサー犬のBuster。翌朝,Busterは,家族も驚く,突飛な行動に出るのであった。


 本作では,黒人の一家と主役のBuster,そして庭に忍び込んでくるキツネやアナグマ,リスといった野生動物など,多彩なキャラクターが登場する。これらのうち,人間はすべて実写で撮影されたものだが,野生動物はすべてCGで再現しているとのこと。
 一方でボクサー犬のBusterは,実在する犬の実写映像とCGで再現した映像を巧みに合成して制作しているという。映像の中で,トランポリンで跳ねるBusterはCGで描かれたものなのである。

 Busterの制作にあたっては「睫毛,毛並の一本一本に至るまで再現した」というほどこだわり抜いており,筋肉の動きも実在のボクサー犬を徹底的に観察することで再現したという。
 ちなみにMPCは,本作のスピンオフ作品として制作したVR版を公開中である。興味のある人はそちらもチェックしてほしい。


【Best in Show】Song of a Toad

Kariem Saleh氏,Alexandra Stautmeister氏ほか,Filmakademie Baden-Wüurttemberg


 ドイツの映像系専門学校であるFilmakademie Baden-Wüurttembergは,前出のMOPAと双璧をなすと言っても過言ではない名門校だ。そんな同校の学生による作品「Song of a Toad」(原題:Ein Krotenlied)が,2017年の最優秀作品賞にあたる「Best in Show」を受賞した。

 CAFにおける最優秀作品賞は,分かりやすい作品よりも難解で暗い作品の方が受賞しやすいと言われることがある。2016年のBest in Showに選ばれた作品「Borrowed Time」も,ある青年の悲劇を描いた暗い物語だった。Song of a Toadも難解な作品であり,見事にCAF審査員のツボを突いたといったところか。

画像集 No.012のサムネイル画像 / ゲーム関連では「Fortnite」と「FFXV」が入選。SIGGRAPH 2017のCG映像コンペ「Electronic Theater」レポート
 本作で描かれているのは,空想と現実が交錯した不思議な世界だ。人間のストレスやトラウマのようなものが,頭上にガマガエル(Toad)として具現化してしまうらしい。主人公のSvobodanは,日々のストレスからか,相当に口の悪いガマガエルが寄生してしまっている。これを取り除くために,Svobodanは病院に訪れるのだが,なぜか奇妙な幻想世界に迷い込んでしまう……という筋書きだ。
 劇中では,外科手術でガマガエルを取り除こうとするのだが,この治療法は,我々の世界でいうところの心療内科におけるセラピーに相当するものなのかもしれない。実のところ,本作はかなり難解な作品で,いろいろ解釈できるあたりが審査員に評価されたのだろうか。

 本作で登場するキャラクターは,現実の人間とは異なる体型を有している。そんなキャラクターのアニメーションを効率よく制作するために,制作スタッフは,骨組だけで構成したモーショントラッカー付きのマペット(手人形)を制作したそうだ。そして,キャラクターのアニメーション制作では,マペットの口を動かしてクチパク動作を,操り人形のような操作で手足の動作を表現したという。

キャラクターアニメーションを制作している様子。顔と骨組みだけのマペットを動かして(左),その動きを取り込んでCGキャラクターに反映させた(右)
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 残念ながら本作は,本編どころか予告編も公開されていないのだが,メイキング映像は公開中なので,興味のある人は見てほしい。また,監督を務めたKariem Saleh氏のWebページでは,本作を含めた過去作品も紹介されている。



Fortnite "A Hard Day's Nite"

Gavin Moran氏,Michael Clausen氏ほか,Epic Games


 部門賞の受賞は逃したものの,Electronic Theaterの入選作には,ゲーム関連の映像もいくつかあった。それらも簡単に紹介しておこう。

 1つめは,Epic Gamesのタワーディフェンス系アクション「Fortnite」を予告編に当たる「Fortnite "A Hard Day's Nite"」という作品だ。Fortniteそのものは,2017年7月にアーリーアクセス版がリリースされたばかりのゲームである。

 ゾンビが蔓延した未来世界。4人のヒーローが,廃墟となっているハンバーガーショップから資材を集めようと入り込んだところ,そこに隠れていた母子とばったり遭遇。怯える母子をなだめていると,そこにゾンビ軍団が近づいてくる。ヒーローたちはハンバーガーショップを即席の砦に改造。襲い来るゾンビたちと死闘を繰り広げる……。


 かなりクオリティが高い映像なので,オフラインレンダリングと思う人もいそうだが,この予告編自体が,Unreal Enegine 4(以下,UE4)で制作されたリアルタイムグラフィックス作品なのだ。
 現行のUE4では,映像編集ソフトのようにタイムラインベースで編集できるタイムラインエディターを搭載している。それを使って,Epic Gamesが作り上げた映像作品が,この予告編であるという。

 予告編を見てみると,起承転結がしっかりしていて,カメラワークも映画的で,カット割りも妙にアーティスティックなことに気がつく。単なる予告編というよりも,Fortniteのゲーム内容を凝縮した短編映画のようだ。
 それもそのはず,本作を手がけたGavin Moran氏は,DreamWorks AnimationやSony Pictures Imageworksでアニメーターを務めていたCG映画制作のプロで,2010年にEpic Gamesで働いているという。Moran氏は,2015年のGDC 2015で公開されたUnreal Engine 4のデモ映像「Kite」でも,監督を務めている(関連記事)。



FINAL FANTASY XV「Omen」

Istvan Zorkoczy氏ほか,Digic Pictures


 「FINAL FANTASY XV」(以下,FFXV)をベースにした映像作品「FINAL FANTASY XV『Omen』」(以下,Omen)が,Electronic Theaterに入選した。Fortniteの予告編とは異なり,こちらは完全オフラインレンダリング作品である。

 制作を担当したのは,ハンガリーのCGプロダクションであるDigic Pictures。同社は,「Assassin's Creed II」以降のAssassin's Creedシリーズ公式トレイラーを手がけているほか,「Watch Dogs」や「HALO 4」「The Witcher 3: Wild Hunt」などのオープニング映像も制作している。FFXVの前日譚にあたるCG映画「FINAL FANTASY XV KINGSGLAIVE」(以下,KINGSGLAIVE)の制作にも参加している。


 Omen自体は,やや難解な作品で,FFXVのキャラクターや世界観をベースにしたイメージ映像に見えるかもしれないが,主人公ノクティスの父親であるレギス王が見た予兆(Omen)という設定らしい。つまり,ノクティスが1人で旅に出ると悲劇が起こるかもしれない,だから3人の仲間と旅に出ることを命じた,その動機に当たるのが,この映像というわけだ。
 FFXV本編をプレイしたり,KINGSGLAIVEを見たりした人なら,思い当たるところの出てくる作品なので,Omenも見てみることをお勧めする。

 余談気味だが,2017年のElectronic Theaterで上映された日本のゲーム関連映像は,Omenのみだった。2016年のElectronic Theaterも,日本のゲーム関連映像で上映されたのはFFXV関連の作品「The Universe of FINAL FANTASY XV」だけ。2018年こそは,日本のゲーム関連映像が入選することを期待したい。

SIGGRAPH 2017のElectronic Theater 公式Webページ

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