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[JAEPO2023]ぐでたまの感触をハプティクス(触覚技術)デバイスで再現。磁気粘性流体+スマホアプリの新しい可能性を見た
ぐでたまの感触をハプティクスデバイスで再現
栗本鐵工所は大阪の鋳鉄管メーカーである。水パイプラインや電力ケーブルの保護管,産業用のバルブなどを扱っている会社だが,2020年には磁気粘性流体「SoftMRF」を用いたトルク制御デバイスをJAEPOに出展している。
SoftMRFとはナノサイズの鉄微粒子を溶媒の中に溶かしたもの。普段は液体状だが,磁場の強さを変化させることにより,固まり具合を変えられる。これをツマミやボタンに用いることで,自由に触感を変化させられるのだ。例えば,同じツマミであっても,ある時はスムーズに動き,またある時は中にスイッチが入っているかのようなカチカチとしたクリック感を演出できたりする。部品を変えることなく感触だけが変わるというわけで,さまざまな演出を可能にする技術であることがお分かりいただけるだろう。
そんなSoftMRFとスマホアプリを組み合わせたのが,「Tapユニット」と専用アプリ「サワレル」である。Tapユニットは人差し指を入れて動かすレバー部分と本体で構成されており,Bluetoothでスマホと無線接続が可能。スマホにインストールされたサワレルからTapユニットに命令を飛ばすと,SoftMRFでレバーを押し込んだ時の感触を変えられる仕組みだ。
ここで面白いのが,サワレルはゲームアプリであり,「キャラクターを指(Tapユニット)で触って,その感触を楽しめる」ようになっていること。サワレルにはサンリオのぐでたまと,イラストレーターであるぱげらった氏のニャンチが登場し,Tapユニットで指を上下させることで,ぐでたまをマッサージしたり,ニャンチに穴を掘らせたりできる。こうしたミニゲームをプレイし,ぐでたまやニャンチのバリエーションを集めていくのだが,それぞれの感触が異なるのが面白い。
ニャンチは丸々とした白猫っぽい生物で,Tapユニットで触れると風船のような弾力があるが,寒さに震えるニャンチは身体がとても硬くなり,まったく感触が異なる。一方,ぐでたまは柔らかい触感で,何度も押していると抵抗が弱まっていく。頭にカラがついたままの「みえないたまご」はザラザラとした硬めの触感,ベーコンを布団っぽく被った「ベーコンエッグ」は厚いベーコンを触ったようにぷるんとした感触,UFOのようなぐでたまはプリプリと瑞々しい弾力といったように多彩なフィードバックを得られる。
もちろんTapユニットの部品を交換するようなことはないのが,SoftMRFのポイントだ。SoftMRFで感触を表現するため,栗本鐵工所ではいろいろなものの感触を測定・数値化する「感触収集装置」を開発している。前述の「ベーコンエッグ」を触った感覚を再現するために,実際のベーコンを測定したというのだから,こだわりの強さがうかがえる。
サワレルにはさまざまなミニゲームがあり,中には「指をちょうどいいスピードで上下させ,ぐでたまをぷにぷにしてマッサージする」というものがある。スピードは速すぎても遅すぎてもダメ。そのたびにぐでたまが文句を言うのだが,感触というフィードバックがあるので実在感が高く,不思議な感覚を味わうことができる。
SoftMRFはバンダイナムコアミューズメントの「釣りVR GIJIESTA」(関連記事)のリール部分に使われるなど,ゲーム方面でも実績がある。なお,2022年2月中旬には,Makuakeにてクラウドファンディングのプロジェクトを予定しているようだ。現在,公式LINEアカウントではサワレルの概要が説明されているが,プロジェクトの詳細は不明。ただ,会場で配られていたサワレルのパンフレットには「購入するためにはMakuakeへの登録が必要です」と記載されている。今後,明らかになるプロジェクトに注目したい。
栗本鐵工所 公式サイト
SoftMRF 紹介ページ
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