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印刷2023/05/02 09:30

企画記事

歴代PlayStation“何番”が好きだった? GWに己の黄金世代を問う

 初代PS,PS2,PS3,PS4,PS5――。

 あなたの一番,どれだった?



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 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の言わずと知れたゲーム機「PlayStation(プレイステーション)」シリーズ。
 4Gamerの読者で,遊んだことのない人などいないだろう。

 ある人は小学生のころに,PS4を。
 ある人は社会人のころに,PS2を。
 人それぞれの接点があったはずだ。ゆえに思う。

 自分の黄金世代は“PS何番”だったのかと――。


GWにかこつけた自分黄金世代探し!


 本日2023年5月2日は,初代PSの発売日から28年と約5か月!

 という周年とは言いづらいこの時期だが,来年の“2024年12月にPSシリーズ30周年”を迎えるころには,我々ゲームメディアなんぞ右も左もプレステ,ピーエス,ぷすぷすぷすと騒がしくなる。

 そのため今年の大型連休にかこつけて,先んじてカジュアルな企画でジャブを打ち逃げしておこうと思った次第である……企画に理由を求めるヤツはだいたいワルいヤツなんだよっ!(編集部への一言)


 コホン。さて,これより追っていく歴代PSシリーズだが。



・初代PS,PS2,PS3,PS4,PS5のみ対象
・最低限の発売情報,特徴,一部代表タイトルを提示
・販売台数は,SIE「ビジネス経緯」調べ
・“6番目くらいに好きだったタイトル”の関連話
・PS oneやPSXの話をしたかった人は来年に期待




 としておく。私を含む,人それぞれの黄金世代を考える都合上,ゲーム体験には「そんなん人それぞれじゃん」という強固な結論があるわけなので,本稿では強要や共感はなるべくさけることにする。

 しかし,名作を一つ語るだけでも思い出の趨勢は傾き,意図的に同意・同調を誘ってしまう懸念があったため,今回は「一番好きとかではないタイトルのエピソード」を各PSの紹介文にしたためた。

 名作基準とは別に,“己の黄金世代”を問う。
 それがどういう意味かは,読んでもらえれば分かるはず。



■PlayStation

画像はプレステミニこと「PlayStation Classic」
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 通称“初代PS”。1994年12月3日発売。ポリゴン描画の3D表現でゲーム業界に打って出て,伝説の幕を開けてしまった化け物ハード。

 井上トロ,クラッシュ・バンディクーなど数々のアイコンも強力だったが,価格競争のトップランナーで居続けたのが普及の決め手か。

発売当初の小売価格:3万9800円(税抜)
世界累計の販売台数:1億240万台以上(2012年3月31日時点)
※SIE「ビジネス経緯」(セルイン)調べ



★代表タイトル(一部)

・「アークザラッド」(1995年6月)
・「パラッパラッパー」(1996年12月)
・「ファイナルファンタジーVII」(1997年1月)
・「みんなのGOLF」(1997年7月)
・「グランツーリスモ」(1997年12月)
・「バイオハザード2」(1998年1月)
・「どこでもいっしょ」(1999年7月)
・「ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち」(2000年8月)




 初代PSは当時のSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)主導のIPタイトル,そのほかサードパーティの名作も数多く,記憶を掘り返すだけでも上記の3倍〜4倍のタイトル数が容易に思い浮かぶ。

 個人的嗜好の作品を計上すれば30本も40本も挙げられてキリがないし,RPGだけでTOP10を作れてしまいそうなくらいだし。
 などと,作品を積み上げていくだけで評価が爆上がりする一方なので,以降のPS機も代表タイトルはあくまで一部としつつ――。


画像はGEOオンラインストアより拝借
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 「雷弩機兵ガイブレイブ」。アクセラが1997年7月17日に発売した,PS用アクションRPG。これが6番目くらいに好きだったタイトルだ。

 同作は,横スクロールステージをRPGっぽく右往左往して,ロボットをカスタムしながらアクションバトルで敵と戦っていく作品だが,個人的に「ものすごい神ゲーだった!」などと言うつもりはない。
 前述したように,どのPS機も各社の名作RPGを並べるだけで琴線に深く刺さってしまうため,これは名作由来の選出とはまた別口だ。

 同作の場合,あれはコミックボンボンだったか,コロコロコミックだったか。ともかく少年誌にガイブレイブ特集が掲載されており,「東京ゲームショウで遊んでみてね!」といったコピーが記されていた。それを見て親に行きたい行きたいとせがんだ結果,当時は東京ビッグサイトで開催されていたTGSに,小学生の私,母と祖母で行くことになった。

 なお,TGSは1996年に東京ビッグサイトで初開催され,1997年春にも同会場で行われたが(1997年〜2001年までTGSは年2回開催だった),同年秋からは会場を幕張メッセに移している。そして,このときが初回開催だったのか,2回目開催だったのかはまるで記憶にない。

 パーティメンバーに祖母が加わった理由は「ゲームショウっていうもんだから,なにかのお祭りだと思ったのに」だ。いやお祭りには違いないのだが,ゲームに縁なき昭和と平成を生きていたレディ。脳内で想像していたのは江戸前な雰囲気の縁日のようなものだったのだろう。
 当日のビッグサイトは,おぼろげな記憶ながらも入場口まで長蛇の列。今でいうコミケ級の混み具合。しかも雨天。入場直後には疲れきった母と祖母。彼女らの回復を待ってウズウズ待機。出足から失敗した。

 お目当てのガイブレイブはすぐに見つけられた。ブースというよりも,円柱の台座に実機を数台並べただけの出展だったと思う。
 そうして気が急くままに飛びついたが,隣で見守ってくれているコンパニオンのお姉さんに,服屋の店員のような圧力を勝手に感じてしまった。また失礼な話,周囲のブースが大盛況なのに,そこだけは(タイミングの話だろうが)試遊台がガラガラ。なんとも居心地の悪さを感じてしまい,ものの10分もしないうちに,満足したフリをして離れた。

 そのあとは,なにを見るでもなく母と祖母をつれ,あてもなく会場を歩いた。ガイブレイブを遊ぶこと以外,なにができる場所なのか知らなかった。ほかの試遊にせよ,当時は「分からないし恥ずかしい……」と思って近づけなかった。今じゃその感覚は意味不明なものの,ともかくパーティリーダーにされた勇者はすでに目的を失い,武闘家と魔法使いから「もういいの?」「もう帰る?」と心配されはじめる。それがプレッシャーで,子供ながらにすごくイヤだった。TGSもイヤになった。

 そんな空気を払拭してくれたのが,こちらも鬼のようにガラガラだったサムスピのRPGこと,PS用ソフト「真説サムライスピリッツ武士道烈伝」の試遊台だった。そのときはたまたまだったのか,周囲に大人もおらず,人目を気にしないでよさそうと思い,飛びつけた。
 ただし,当の試遊台は“RPGの冒頭をそのまま遊ばせる”という,今では好手とはなり得ないゲーム体験であり,「(なにか際立ったシステムとかを試せるデモでなければ,RPGを冒頭だけ遊ばせてもらっても)つっまんねぇ……」と思ったのを,今でもよく覚えている。

 武士道烈伝は初戦闘の直後に飽きて,すぐにその場を離れた。結果,試遊時間は2本合わせても計15分に満たなかったが,彼のおかげで,私は初めてのTGSで,目的外のゲームに自発的に触れるという成功体験をさせてもらった。そして2本もの新作ゲームをタダで遊ばせてもらった。
 今では考えられない話だが,当時はゲームを無料で遊べるだなんて,友達ん家でもなければありえない体験だった。

 だから満足した。東京ゲームショウは楽しいと思えた。すべてはあそこにいてくれた武士道烈伝が,TGSの醍醐味を味わわせてくれたから。
 まあ,それからガイブレイブを買ってもらったのは数年後の話で,武士道烈伝のほうはいまだに遊んだこともないのだが。



 といったように,ゲームには名作体験のみならず,人それぞれの思い出がある。ありまくる。つまり今日は,名作基準でPS何番が好きかを探るのではなく,自分とPSシリーズとの付き合いを振り返り,自らの黄金世代をあぶり出していく。自語り合戦と言い換えても構わないな。

 それと余談だが,次にTGSに行ったのは高校生になってからのことで,以降は友人と毎年行くくらい大好きな催しになった,が。
 この仕事あるある。年に1回の恒例行事。メッセとホテルの前入り往復5日間いらっしゃいませ缶詰ヘルパーティを長らく経験していると,彼には今や文章では言い表せられない想いを抱いている。去年からはオフライン開催もめでたく復活して,うん。TGSだーいすき(校正済み)。



■PlayStation 2

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 通称“PS2”。2000年3月4日発売。初代PSからの正統進化とDVDプレーヤー搭載による二軸の武器で市場を席巻した,ザ・モンスター。

 2023年5月時点,公表されている数字ではいまだにPSシリーズで最も売れており,当時はゲーマー以外の数多くの人たちも持っていた。

発売当初の小売価格:3万9800円(税抜)
世界累計の販売台数:1億5540万台以上(2012年3月31日時点)
※SIE「ビジネス経緯」(セルイン)調べ



★代表タイトル(一部)

・「鬼武者」(2001年1月)
・「ファイナルファンタジーX」(2001年7月)
・「真・三國無双2」(2001年9月)
・「キングダム ハーツ」(2002年3月)
・「メタルギアソリッド3」(2004年12月)
・「ワールドサッカー ウイニングイレブン9」(2005年8月)
・「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」(2004年11月)
・「モンスターハンター2」(2006年2月)




 小学生から飛んで,中高生になった時節。PS2を手に入れたのは安価な薄型PS2の発売後だったが,若き青春のど真ん中に買った。

 なかでも3Dアクション系の思い出は突出しており,「真・三国無双2」や「アーマード・コア2」に「Another Century's Episode」,カプコンの「カオス レギオン」ならこれ一本で考察論文も余裕だが。


画像はAmazon.co.jpより拝借
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 「バウンサー」。スクウェア(現スクウェア・エニックス)が2000年12月23日に発売した,PS2用アクションRPG。

 本作は「トバルNo.1」や「エアガイツ」など,同社の3Dアクションないし対戦格闘ジャンルの系譜に連なるPS2初期のタイトルで,言ってしまえば“見目のいいイケメンたちがスタイリッシュにバトルする”系の先駆けの1本だ。世間的な評価についてはとくに触れないでおく。

 同作もまた,このような場で多数派が選ぶタイトルではなく,名を挙げたところで「やっぱオレPS2だわ!」などと思う者はまずいないはずの選出かと思われるが,私はこのゲームがとても大好きだ。

 先に言っておくと,同作のストーリーモードなどのメインコンテンツは遊んだことがない。というのも,発売から長らく時間が経ったのち,友人と遊んでいるとき,中古ショップで売っていたのを,たしか千円札でお釣りが出るくらいのお値打ち価格で購入したのだ。
 購入に至った理由は,当の友人がメンタルの正常さを疑いたくなるくらい「バウンサー超面白いから」と静かにガン押ししてきたせい。

 夜にノリで購入したあとの,真夜中も通り越した不良な時間帯。当時はすでに,X的な箱形の360度系に乗り換えたあとで,ロスプラにアイマスにカルサガを堪能していた時期に突入していたはずだが,その日は紙幣1枚分の価値を取り返そうと押し入れから薄型PS2を引っぱり出した。
 このときはもうPS2自体がレガシーハード扱い。ホコリもかぶってる。ディスクドライブに入ったままのソフトは確か,DOD2だった。

 「ストーリー進めないとキャラ開放されないから」友人がそう言ったので,興味の湧かないゲーム攻略はしばらくそいつに任せて,隣でマンガを読んでいた気がする。この当時は“買ったDMC4を友人に隣でクリアさせ,ボス戦とエンディングだけチラ目にして,クリアした気になる”といった,今でいうゲームプレイ動画の視聴者気分を先取りしたような体たらくだったため,1ミリも気にしなかった。
 しばらくして,深夜にノリだけでバウンサーをやるという罪を自ら背負った大罪人が「対戦やろ」と言ってきたので,そこで初めてゲーム画面に目を向けた。ストーリーはけっこう進められていたようだが,選べるプレイアブルキャラクターは数人くらいしかいなかったような。

 選択したキャラは,主人公の1人「シオン・バルザード」。お手本のような中性的な見た目のカッコカワイイ系イケメンといった彼の雰囲気は,正直,鼻についた。それでも2人対戦をはじめたわけだが……私はそれまで,いっさい画面を見ていなかったので,知らなかった。

 フワーーーっと。目の前で。私が操作するシオンが。
 殴られ蹴られ,フワーーーっと。宙に浮いたのだ。

 同作は今で言う“3Dモデルが(当時の水準の)物理演算で動く”系の作りであり,キリッとしたポージングで立っていたはずのシオンは,殴り飛ばされた瞬間,全身に不思議な浮遊感を与えられ,イケメン顔のまま体の骨格をグニャらせて,地面にグシャアっと五体投地でぶっ倒れた。そりゃそうだ。当たり前だ。それがケンカであり,彼らは傭兵(バウンサー)だ。だから私は,私たちは,最高にイカしたイケメンが画面上でフワーーーっと浮き上がり,グシャアっと地面にスッ転ぶ姿を見て。

 笑った。それはもう笑った。深夜テンションで笑った。
 笑うだろうがよ,そんなのよう。

 ものすごく顔のいいアイドルじみた美青年が,PS3を近々に控えていたような時代にあって,(当時はまだ目にしなかったものの)ウケ狙いの物理演算系インディーゲームのような挙動で吹っ飛ぶ姿は,いろんな意味でそっち側にいけないヤツらのツボにハマった。
 当然,今考えると,あの時期に試行錯誤して挑戦していたタイトルなのだから,それだけで敬意に値する。だが残念なことに,そのとき遊んでいた我々は知性という漢字の書き方も知らない中高生。もはや箸が転べば笑う女子高生状態だったし,そんな年代なんだから仕方ない。

 イケメンがフワーーーっと飛び,グニャアっと体を広げ,グシャアっと這いつくばる姿。笑うよ。笑うだろが,そんなのよ。そうしてバカな2人は長らくシオン同キャラ戦で殴り合い,笑いの止まらない真夜中を無為にすごし,朝の日差しに追いつかれるまで爆笑していた。



 これは作品自体の体験とはまったくもって言えず,もし当時の制作関係者らが読んでいたものなら気を悪くするだろう。さらに言うと,あれから今まで同作を起動したことは一度もない。一度もないのにだ。
 「PS2ならなに?」と聞かれれば,十数年と経っても,私はあのわずか数時間の真夜中を思い出して「バウンサー」と答えるようになった。PS2なら,なにを求めてマラソンしていたのかも理解できないくらいの時間をモンハンGのステキャン黒滅龍槍に費やしたりしていたはずだが,バウンサーはこのワンエピソードでもって,PSシリーズの黄金世代探しという大一番に乗り込み,私の心をいまだにグッと動かしてくる。

 もっとお世辞を言うのなら,私が後年,「(FF15の主人公)ノクトとかを初見で好きになっちゃった」原因は,すべてはシオンというスクエニイケメンの象徴に親近感を覚えるようになっていて,彼らのような顔がイイヤツらを無条件で好ましく思うようになっていたから。
 ほんと,関係者らはキレてしかるべき,望まぬ罵声に聞こえるかもしれないが――たった数時間の体験をいまだに記憶させ,さらには後世の新作の好感度にまでつなげるゲームを作ったこの事実だけは,今さらだがユーザーからの感想として親身に受け取ってほしい。

 PS2の時代も終わったあとに出会ったバウンサー。私のPS2最後の体験にして,6番手にふさわしい作品。彼の存在だけでPS2は今も戦える。



■PlayStation 3

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 通称“PS3”。2006年11月11日発売。ネットワーク機能の標準搭載でオンラインプレイを普遍化させ,Blu-rayも盛り込んだ鬼の金棒。

 販売価格の跳ね上がりと,発売当初の入手困難さは無視できない立ち上がりであったが,生産体制が整ってからの追い込みは勝ち馬。

発売当初の小売価格:5万9980円(税抜。60GBモデル)
世界累計の販売台数:8740万台以上(2017年3月31日時点)
※SIE「ビジネス経緯」(セルイン)調べ



★代表タイトル(一部)

・「メタルギアソリッド4」(2008年6月)
・「ファイナルファンタジーXIII」(2009年12月)
・「北斗無双」(2010年3月)
・「龍が如く4 伝説を継ぐもの」(2010年3月)
・「テイルズ オブ エクシリア」(2011年9月)
・「ドラゴンズドグマ」(2012年5月)
・「バイオハザード6」(2012年10月)
・「グランド・セフト・オートV」(2013年10月)




 PS3時代から先,買うゲームの傾向はガラッと変わった。一番大きかったのは“オンラインマルチプレイ”が当たり前になったことだ。

 これにより,もとからゲームセンター狂いの格ゲー勢であったのが強く作用し,プレイタイトルの主流が格ゲーに塗り変わる。
 それ以外もFPSをはじめとする対戦・協力ゲームが大半で,大作RPGも大学生としての義務教育で嗜んでいたが,なかでも6番手となると。


画像はGEO オンラインストアより拝借
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 「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス」。バンダイナムコゲームスが2011年12月1日に発売した,PS3用対戦アクション。

 ここまでのラインナップと比べると,あからさまにブランド力も説得力も高まりすぎた説明不要の人気シリーズからの選出に見えるだろう。本音でも「うーん,三本の指に入るかもしれない」くらいレギュレーションを違反している節があるが,まあいいだろ。
 PS3以降はPSN(PlayStation Network)にトロフィーが記録されているので,上から順に数えれば,6番手くらいにはできるはず。

 同作の内容は“ガンダムなどを操作して戦う,2vs.2のチーム対戦”で,前述のバウンサー男と固定(タッグ)を組んで乗り込んだ。
 ただ,その面白さを語るのは格ゲージャンルと同様,「もはやなに言ってんのか分かんない」になること請け合いのため,ここでの選出理由についても背景から攻めていこう。答えは単純,エクバは「大学の卒論にかけた時間,その10倍ものプレイ時間を費やした」ところにある。

 ある年の12月。ひと月いっぱいで完成させなければならなかった卒業論文は,約20時間で完成させた。一方,エクバは同月1日から31日の年明けまで,約200時間やった。これは正真正銘の頭サイコミュ状態だったし,このオールドタイプ(猿)になったような感覚はエクバのみならず,多くの対戦ゲームファンが共感してくれることだろう。

 この時期は典型的なモラトリアム専攻の大学生であった。毎日寝るのもだいたい朝だった。今までの人生において,時間という限られたリソースにもっとも希少性がなかったころだけはある。
 出席しなさすぎた必修ゼミで浮くよりも,フワステで浮くほうがよっぽど大事だった。勉学でなにか新しい知識を養うくらいなら,トレモにこもって5Bカウンター>5B>蛇翼崩天刃からの最大コンボルートを探求するほうがよっぽど大切だった。じゃないとダメだった。

 強くなければ楽しめない一瞬を,永遠に味わいたい。
 この瞬間を待っていたんだと,脳死のN格で追い詰めたい。
 マスター横格ブンブンやめろ。今すぐやめろ。ファンメするぞ。

 まあ,界隈で名が挙がるような活躍はいっさいしておらず,相方との当時のLINEも「だから相方ァ!」とプレイ後に罵詈雑言で埋まっている危険な種割れ状態にあったが,有象無象の一角なりに頂きに目を向けていた。今じゃ天上なんてスマホゲーでもなければ見ないのに。

 初代PSもPS2もそれ以外のゲーム機も。できれば振り返りたくないほどの時間を投じていたのは明白だが,PS3はことさらヤバい。続くPS4やPS5を差し置き,人生で一番遊んだゲーム機1位の座はまず固い。

 こういった“人生のとあるタイミングとかみ合った時代”というのもまた,名作基準で考えるべきではない,人それぞれの黄金世代の判断材料となり得る。「ゲーム機の良さはタイトル次第」の論旨こそ当たり前であるが,遊ぶための時間はPS Storeにも売っていない。
 なお,PS3以降は全体的に大作ゲームを遊ぶ傾向が加速した。小粒な安価タイトルもそれなりに遊んだはずだが,PSN記録が正直なだけに,あまりおもしろタイトルが思い浮かばなかった。

 おいッ! バウンサーはおもしろタイトルじゃねえぞッ!!!



 滑稽なほど真剣な眼差しを向けているゲーム用ディスプレイとは別に,なんとなしにつけているだけのPCから流れてくるWebラジオ。
 音割れするスピーカーから聞こえてくる,名も知らぬ深夜番組の数々をノイズに,RAPが奏でる騒音を家族に飽きるほど怒鳴られながら,オンライン上のフレンドと真っ暗な真夜中を突っ切り,気付けばカーテンの裏地が茜色に染まる。そうして1日を終え,雑に広げた布団に潜る。

 ああ,なんとすばらしき大学生活よ。

 このときだけ口内にこみ上げる,味もないのになにかをやりきったような気にさせる唾液の酸っぱさは,夜中とラジオとゲームと朝日をそろえたところで,今じゃもう,味わえる朝はやってこない。



■PlayStation 4

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 通称“PS4”。2014年2月22日発売。4KにスマホにVRにと,時代に合わせた対応もあって累計1億台の大台に乗せたストロングボーイ。

 今現在でも現行機として十分に使えて,年代的にも記憶に新しいナンバリング機とあり,その優等生ぶりは説明不要だろう。

発売当初の小売価格:3万9980円(税抜。500GBモデル)
世界累計の販売台数:1億1700万台以上(2022年3月31日時点)
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★代表タイトル(一部)

・「メタルギアソリッドV ファントムペイン」(2015年9月)
・「Minecraft: PlayStation 4 Edition」(2015年12月)
・「ペルソナ5」(2016年9月)
・「ファイナルファンタジーXV」(2016年11月)
・「NieR: Automata」(2017年2月)
・「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」(2017年7月)
・「モンスターハンター:ワールド」(2018年1月)
・「DEATH STRANDING」(2019年11月)




 ここまでイケイケにゲーム人生を歩んできたが,陰りが見えてくるのがこれからだ。大人は生きていく以上,社会的動物として働かざる者食うべからず。お仕事というデイリーミッションが課せられる。

 ネットを見ているとよく「年を取ってゲームできなくなった」などといった理由で,アニメやマンガなども含め,大人のエンタメ離れが叫ばれている。昔はそれを「へっ,甘ちゃんどもが」と思っていたが,気付けばそっち側にいて,したり顔で「大人になるとね……」と説教くれるモンスターになっていた。だから,のんびりできるなにかに憧れて。


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 「ザ クルー(THE CREW)」。Ubisoftが2014年12月4日に発売した,PS4用オープンワールド・レースゲーム。

 本作は“アメリカ合衆国(の縮小した)全土を自由にドライブ”できるゲームで,物語を追ってもいい,車のカスタムを楽しんでもいい,気ままにドライブしてもいいし,マルチプレイで交流してもよかった。
 9年前のタイトルだが,ゲームの作りはもう現代水準に達している。

 なお,レースゲーム系については「チョロQ」シリーズや「首都高バトル」シリーズなど,基本は頭文字がDだったり,湾岸がミッドナイトしたりする系を好んだ。その反面,リアル系の「グランツーリスモ」や「リッジレーサー」などは累計6分くらいしか遊んだことがないほどアウトオブ眼中。掟破りの地元(友達ん家)走りでしか経験がない。
 こうしたリアルカーレース系に触れなかった原因は。

 ……醒めちまったこの街に……
 ………熱いのは………俺たちのDRIVING……

 RealなKurumaじゃDramaは追えねえのさ……と,初代PS時代の早いうちにレースゲームは架空系しか遊べない病にかかったためだと思われるが,そんなことはごま塩程度に覚えておいてくれ。

 当のザ クルーでは,なにかガツガツ争ったりもせず,プレイ時間が膨大だったりもしない。ストーリーも難しくて途中で諦めたくらい。
 それでもこのゲームが好きだったのは,仕事が終わったあと,なにも考えずに2時間くらいアメリカを走ってるだけで,なんか楽しかったから。イベントをこなすわけでもない。ただドライブするだけ。

 ストレートな話,疲れた大人なりの遊び方が心地よかった。

 とくによかったのは,ただただ車を走らせているだけで,速度や挙動に応じて少額の報酬がもらえたことにある。RPG的な成長要素としては,それらはなんら足しにならない,どうでもいい額面なのだが,コウテイしてくれるゆるキャラのように「走っててエラいね」と褒めてくれている気がして,それだけで思考停止のドライブがとても楽しくなった。
 なあ,聞いてるか,「ザ クルー2」?

 コホン。話を続けると,人生で初めてゲームのプレイスタイルに明確な変化を感じさせてくれたのが,このタイトルである。
 もちろん,ほかに精力的に遊んでいる作品はかなりあったし,PS4なら「Bloodborne(ブラッドボーン)が一番好き」と人生で豪語し続けると固く誓約を結んでいるくらいちゃんと忙しいゲームもやっていて……あっ,だからこういうタイトルの査収はノーカンで。

 つまりこうして,名作を挙げるだけで黄金世代の基準が傾くのが,この自分探しの恐ろしいところなのである。じゃあもういっそのこと名作すべて挙げろとなると,それはそれで戦争になるし心労だった。

 まあ,ぶっちゃけ,ここまできたらもう名作で選ぶとよいよ!



 ぶん投げたうえ,ザ クルーで一番好きなコンテンツも教えておこう。それはアメリカ大陸の外周を1周するスペシャルレースだ。
 これはたしか,リアルで3時間だったか4時間だったかかけて走るレースで,操作が普通にキツいうえ,こちらがどんなにNPCをぶっちぎってもAI操作ですぐに追いついてくるくせに,こちらがミスるとラップタイムを刻むようにして徐々に徐々に迫らないと追いつけないという鬼仕様がファンレター案件だったのだが,最後までがんばった夜中は印象深い。

 ただ,最後の最後でカーブをミスり,そこまでぶっちぎっていたNPCに1位を奪われ,数時間レースの果てに2位でゴールしたので,ユービーアイには人さし指と薬指の間にある行間を立てて読ませそうになった。

 などと,PS4だけ真面目にゲームのことを語っているが,大人になるとね,ゲームやってるだけじゃイベントなんざ起きねえのだ。
 これもまた,今だからこそのPSとの付き合い方である。それに考えてみろ。PS4はそろそろ,人によっては10年来の幼なじみだぞ?



■PlayStation 5

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 通称“PS5”。2020年11月12日発売。PSシリーズの最新機であり,PS4の数倍のスペック,SSDによるハード機能強化が施された旗艦。

 今年から本格的な生産体制も整い,長らく抽選販売だった入手方法も目に見えて緩和されてきたことで,今からマジで本気出す。

発売当初の小売価格:4万9980円(税抜。標準モデル)
世界累計の販売台数:3200万台以上(2022年12月31日時点)
※SIE「ビジネス経緯」(セルイン)調べ



★代表タイトル(一部)

・「バイオハザード ヴィレッジ」(2021年5月)
・「テイルズ オブ アライズ」(2021年9月)
・「バトルフィールド 2042」(2021年11月)
・「エルデンリング」(2022年2月)
・「グランツーリスモ7」(2022年3月)
・「The Last of Us Part I」(2022年9月)
・「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」(2022年11月)
・「ホグワーツ・レガシー」(2023年2月)




 PS5についてだが,ああ。今ポチった。

 ああ,そうだ。そのとおり。持ってない。

 まだ買ってないのだ。

 曲がりなりにもゲーム業界に従事する身として,この低い低いプロ意識は叱られても仕方ない。ほら,叱りたきゃ叱れよ。
 オレがバウンサーの吹っ飛び方ってのを教えてやるよッ……!

 戯れ言は置いといて,紹介特集としても手落ちだが,仕方ないだろう。私個人としてはまだ必要性を感じなかったのだから。PS5がなかろうと,マルチプラットフォームで生きられてしまったのだから。
 それでいて今ポチった理由は当然,時が来たから。この記事のためとかではなく,私にとってPS5が,来月からようやく必要になるから。

 2023年6月2日には「ストリートファイター6」,6月6日には「ディアブロ IV」,6月22日には「ファイナルファンタジーXVI」。いよいよPS5の大攻勢がはじまる。8月25日発売の「アーマード・コア6」もそうだ。
 AC5系列は操作が難しすぎて,AC2からACfaまで猿のようにそれしかしていなかった引き撃ち両手ライフルすら操るのが難しかったため,AC6がどの方向に行くのかは本当に気になる。ACMoAは当然,指だ。見た目の雰囲気は映像で予感できるとおりAC4あたりに見えるが,はてさて。

 といった,もはやただのゲームユーザーの立場になっているが,PSシリーズが与えてきたゲーム体験なんてのは昔も今もこういうものであり,誰だって仕事の皮を脱げばこんなもんだろう。

 PS5のことをまともに語れないのは,あらためて誠に大変恐縮だが,まだ黄金世代を決めるには未来がある。そう,PS5がその未来であり,その先に出てくるであろうPS6,PS7,PS8,PS9,PS10……どこまで人生で付き合えるのかは分からないが,少なくともPS5との付き合いは来月から本格的にはじまり,また新たな世代を紡いでいく。
 それが果たして,私の人生に大きな影響を与えてくれるのか。上記の購入予定タイトルたちが,ガイブレイブやバウンサーやエクバやザ クルーのように次のなにかを築いてくれるのか。買ったばかりのゲームを抱えて家に帰るまでの道を歩いているときくらいは,ワクワクする。




 そのうえでケジメとして,私なりの結論を書こう。
 私の黄金世代は「PS3」だった。
 ただしくは「PS3といたころ」だろうか。
 執筆前は考えていなかったが,書き終わったとき,そう思った。

 おそらく,この答えも名作基準で考えたらPS3じゃなくなる。
 「ヴァルキリープロファイル」だの「真・三國無双4 猛将伝」だの(PS3だけど)「戦場のヴァルキュリア」だの「DESTINY 2」だの,一騎当千で結論を崩してくる王家簒奪者がウヨウヨいるので,彼らのような名作がエントリーしてきたらそれだけで選定が不可能になる。さらに名作基準だと第三勢力のPSP / PS Vitaも入ってきて,もう無理である。

 ただ,人生におけるPSシリーズとの付き合いを考えると,PS3が自分にとっての黄金世代だった。それはほかの時期と比べると,グッジュグジュに腐りきっていて褒められるところが皆無などうしようもないほどの怠惰の季節だったし,全体的に真夜中の思い出がひも付いていることで自身の生態が透けて見えたし,なんだかなあと呆れるが。
 今の気持ちなら,PS3かなと思えたので,今はPS3でいい。

 できれば気を抜いて休暇を楽しみたい,ゴールデンウィーク。
 そこに投げかけられる,歴代PS“何番”が好きだったかの爆弾。

 こんな難問クイズに挑んでみるのもまた,自分なりのゲームだ。

PlayStation公式サイト

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