インタビュー
[TGS 2015]すべてはゲームに情熱を注ぐ人々のために──。Twitch国内サービスのディレクター・Victor Denchartphan氏に聞く,配信プラットフォームとゲーマーの“理想の関係”
ゲーム配信プラットフォームとしてのTwitchの特徴を述べるならば,格闘ゲームやFPS,「League of Legends」といった対戦ゲームの競技シーンと非常に親和性が高いという点が挙げられる。e-Sports隆盛の一端を担っているプラットフォームとして,もはや外すことはできないだろう。世界各地で開催されているゲームトーナメントの大多数がTwitchで中継されており,ゲーム観戦文化,ひいてはプロゲーミングシーンそのものの土壌を育ててきたプラットフォームであると言っても過言ではない。
また,Twitchは日本のアーケードを含む,各地のローカルな競技コミュニティを積極的に支援している企業でもある。昨今ではTwitchのサポートによって開催,あるいは配信が可能となった国内の大会もあるほどだ。
今回4Gamerは,日本におけるTwitchのディレクター・Victor Denchartphan氏にお話を聞く機会を得た。TwitchがTGS 2015に出展した理由から,ゲーマーやコミュニティとの良好な関係の築き方までを聞いているので,Twitchを利用して大会観戦をしたことがある人,実は興味があったという人は,ぜひチェックしてみてほしい。
関連記事:
すべてゲームに情熱を注ぐ人々のために──
Twitchのコミュニティ拡大戦略とは
4Gamer.net(以下,4Gamer:
本日はお忙しいところお時間をいただき,ありがとうございます。まずは簡単に,Denchartphanさん自身について教えていただけますか。
Victor Denchartphan氏(以下,Denchartphan氏):
4Gamer:
日本のコアゲーマーにとってTwitchはよく知られた存在ですが,中にはまだ詳しくない人もいるかと思います。なので今一度,日本の読者に向けてTwitchを紹介してください。
Denchartphan氏:
分かりました。
Twitchは,ゲームに情熱を注ぐ人々のためのゲーム配信プラットフォームです。カジュアルにプレイを楽しむ一般ユーザーから世界トップレベルのプロプレイヤーまでさまざまなゲーマー達が配信を行っていますし,ゲームトーナメントや今回のようなコンベンションの映像配信にも利用されています。
4Gamer:
端的に言って,どのようなビジネスモデルなのでしょうか。
Denchartphan氏:
まず,Twitchが抱えている視聴者の数は膨大ですから,広告主はカテゴリを越えて幅広いユーザーにリーチできるメリットがあります。
また,Twitchは配信者を支援するためのサブスクリプションモデル(※)を提供していまして,視聴者のスポンサードによって得た収益は,Twitchと配信者で分配される仕組みになっているんです。
※……大雑把にいうと有料会員登録。視聴者は好みのチャンネルに月額4.99ドルを支払うことで,チャット上でエモート(感情表現)アイコンが使えたり,過去の放送を自由に閲覧したりできるようになる
4Gamer:
そんなTwitchがTGS 2015への出展を決めた理由をうかがいたいのですが……その前に一つ。
2014年9月にTwitchがAmazonに買収されたことによる影響はありましたか。TGS 2015への出展も,Amazonブースへの併設という形で行われていますよね。
Denchartphan氏:
買収によってAmazonグループの一員にはなりましたが,意思決定はこれまでと変わらず,Twitch自身によって行われています。なので,今回の出展も我々の意思によるものですよ。
4Gamer:
では,買収による影響はほとんどない?
Denchartphan氏:
いやあ,良い影響はたくさんあります。たとえば,Amazonが保有する(ビジネスの)ネットワークはTwitchのそれよりも広範にわたっています。そのおかげで,我々がまだリーチできていない地域へも,容易に進出できるようになりました。
4Gamer:
それを聞いて安心しました。ではあらためて,TGS 2015に出展した理由を聞かせてください。
Denchartphan氏:
以前から日本進出を進めてはいましたが,今回ブース出展を決めた何よりのきっかけは,日本の方々のゲームへの情熱を知る機会があったからです。2015年7月に行われた「Evolution 2015」(関連記事。以下,EVO2015)の配信において,平均視聴時間が最も長かった地域は,なんと日本だったんですよ。
4Gamer:
EVO2015期間中,一番ディスプレイにかじりついていたのは日本人だったと。そういえば,EVO2015の配信における日本からのユニーク視聴者数が,2万5000人にのぼっていたことも報じられましたね(関連URL※英語)。
世界最大級の格闘ゲームイベント・EVO2015 |
Denchartphan氏:
それに,たとえば格闘ゲームやレースゲームの世界的なトッププレイヤーは,ほとんどが日本の方ですし,また数多くのゲームメーカーが日本にはあります。
さらには「LORD of VERMILION」シリーズのように,日本でしか展開していない人気タイトルもたくさんある。私達にとって日本は非常に特別な場所であり,だからこそ,より本格的に認知を広げていきたいと考えたのです。
4Gamer:
分かりました。ところで,日本の視聴者から人気のあるゲームタイトルは,格闘ゲームのほかには何があるんでしょうか。
Denchartphan氏:
「Minecraft」と「League of Legends」(以下,LoL)の配信は,日本の視聴者も多いですよ。
サンドボックスゲーム「Minecraft」 |
MOBA「League of Legends」 |
4Gamer:
Minecraftについてはなんとなく分かりますが,LoLもですか? もちろん私も「LoL Esports」(関連URL※英語)は楽しみにしていますが,そのような層は少数派だと思っていたので驚きました。
Denchartphan氏:
そこは,我々としても興味深く感じているところですね。
4Gamer:
Denchartphan氏:
いえ,パートナーシップやスポンサーシップではなく,そのままの意味で雇用契約を結んだ,というものです。もちろん,GamerBee氏の知名度や人気を生かして台湾におけるTwitchの知名度を拡大したい狙いもあります。
しかし繰り返し述べているように,我々はゲーマーの情熱を何より大切にしたい。その尊さを理解しているコミュニティの人々を雇用するのは,Twitchという会社にとっては自然なことなのです。
4Gamer:
ああ,Twitch Japanに入社したアユハ氏(関連URL)も,元々は日本における「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのコミュニティメンバーですよね。
Denchartphan氏:
はい。付け加えるなら,僕も元々は「ウルトラストリートファイターIV」(PC / PS4 / PS3 / Xbox 360 / アーケード)のプロプレイヤーでしたから。
4Gamer:
なんと,そうだったんですね!
……といったところで話を戻しますが,では,Twitchが特定のプレイヤーをスポンサードする可能性はあるのでしょうか。
Denchartphan氏:
そういった話は,もちろん社内では何度も議題に上ってきました。ただ,Twitchはあくまでもプラットフォームを提供する会社ですから,特定の個人をサポートしたり,我々がプロゲーミングチームを作るというのは,コミュニティとの正しい付き合い方ではないように思います。今後もやることはないでしょう。
4Gamer:
うーん,なるほど。
しかしTwitchは以前,アジア圏の強豪格闘ゲーマー達の渡航費をサポートしていたことがありますよね。たとえば,「Evolution 2014」の「鉄拳タッグトーナメント2」(PS3 / Xbox 360 / アーケード)部門(関連記事)で準優勝した弦選手,優勝を果たした韓国のJDCR選手からは,Twitchのサポートがあったと聞いています。
弦選手 |
JDCR選手 |
Denchartphan氏:
ああ,それは僕が日本のディレクターに就任する前に担当していた施策です。
とはいえ,これも特定の個人をサポートするための取り組みではなく,なかなか海外に行く機会のない強豪に活躍のチャンスを与えることで,各プレイヤーの属するコミュニティを拡大したいという狙いがありました。
4Gamer:
言われてみると,Twitchは昨今,ゲーム大会を積極的にスポンサードしている印象があります。ここ最近では,Twitchのサポートを受けている国内のトーナメントも増えてきていますよね。
Denchartphan氏:
そうです。情熱のあるコミュニティがイベントを開催したいと考えたときに,お金の問題で実現できないのは,とても悲しいことですから。
4Gamer:
つまりTwitchは,プレイヤーを育てるのではなくて,“プレイヤーが活躍できる場を育てる”ことにフォーカスしている?
Denchartphan氏:
その通り! これからも,コミュニティが拡大するうえで必要なサポートを惜しむつもりはありません。
4Gamer:
一つ気になっているのは,国内の競合であるニコニコ生放送についてです。
Twitchは高画質配信に対応していたり,配信自体の設定も遥かに簡単だと思うんですが,日本の配信プラットフォームとして考えると,ニコニコ生放送が主流であるように感じます。日本でTwitchを使う配信者がまだ少ない理由は,どのような点にあるとお考えですか。
Denchartphan氏:
まず,日本国内(の配信プラットフォーム)が競争状態にあるのは,非常に良いことだと捉えています。それぞれがより良いクオリティを目指す過程で,新たなテクノロジーがどんどん生まれてくることでしょう。現在Twitchは,世界で最も配信者と視聴者の数が多い配信プラットフォームとなりましたが,これまでにたくさんの競争をくぐり抜けてきたからこそ,今があるわけです。
その規模と比較すると,日本での配信者が少ないのは確かですが,それはTwitchが日本上陸を果たしてからまだ日が浅いことが理由だと考えています。今後はWebサイトを完全にローカライズし,日本の方にも分かりやすくしていきますので,ぜひ一度利用してみてください。
4Gamer:
最後に,日本からTwitchで配信している人達や,さまざまなトーナメントを視聴している人達にメッセージをお願いします。
Denchartphan氏:
KOREKARAMO YOROSHIKU ONEGAISHIMASU!(これからもよろしくお願いします!)
Twitch公式サイト
4Gamerの東京ゲームショウ2015特設ページ
- 関連タイトル:
リーグ・オブ・レジェンド
- 関連タイトル:
Minecraft
- 関連タイトル:
ウルトラストリートファイターIV
- 関連タイトル:
ウルトラストリートファイターIV
- 関連タイトル:
ウルトラストリートファイターIV
- 関連タイトル:
ウルトラストリートファイターIV
- 関連タイトル:
ウルトラストリートファイターIV
- この記事のURL:
キーワード
(C)Riot Games Inc. All rights reserved. League of Legends and Riot games Inc. are trademarks or registered trademarks of Riot Games, Inc.
(C)2009-2010 Mojang AB.
(C)CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.