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[SPIEL’16]キャプチャー・ザ・フラッグ戦を制せ。スポーツ系FPSのテイストを感じる「SHOOT」のレポートと,その意外な制作意図
そんな中,「フィギュアは使うが,どんなフィギュアでも構わない」という,ある意味で侠気あふれる作品「SHOOT card game」(以下「SHOOT」)が出展されていたので,その内容をレポートしたい。ちなみにデザイナーも超個性的な人物で,独自のデザインノウハウについての話も聞けたので,合わせて紹介しよう。
「SHOOT card game」公式サイト
4Gamer内「SPIEL’16」記事一覧
FPSにインスパイアされた作品
プレイヤーは,キャラクターの1人を担当するのだが,ゲームの目的はただ1つで,マップ中央(実は中央でなくてもいいのだが,なるべく中央がいいだろう)に置かれたフラッグを獲得し,リスポーン地点に戻ること。つまり,キャプチャー・ザ・フラッグ戦である。
ちなみに本作ではフィギュアを用いるが,上記のとおり使用するフィギュアはなんでもいいし,大きさも(良識の範囲内において)自由だ。
ゲームの手順は以下のようになる。
- カードを山札から1枚ドローし,そのカードが示す回数だけ移動
- 敵が射線上にいて,攻撃したいなら,攻撃する
この繰り返しとなる。
まずは移動だが,「SHOOT」では,とくにグリッドもない机の上を自由に移動し,移動距離は専用カードを使って測定する。カードの長辺をフィギュアの足元に当て,その距離だけ移動できるというわけだ(カードは曲げても構わない)。この移動を,そのターンで山札から引いたカードが示す移動回数だけ繰り返す。
こうした障害物を乗り越えて移動する場合,移動回数を1つ,完全に消費する。ただし,その障害物の高さが,使用しているフィギュアの半分以下であれば,とくに追加のコストなく移動可能だ。
つまり,大きなフィギュアはその大きさゆえに的になりやすいが,その一方で,移動は有利というわけだ。
いかにもスポーツ系FPS的なダメージとアイテム
移動が終わったらいよいよ射撃である。攻撃力は持っている武器によって異なり,武器の中には,距離によって与えるダメージが異なるものもある。
ダメージの判定は,移動時に使った山札と同じものを使用する。武器の威力と同じ枚数,山札からカードを引き,そこに示されている数値がダメージになるシステムだ。
問題は,自分が移動していると命中しにくい,という点。カードには,「移動中に命中したときの与ダメージ」と「移動せずに命中したときの与ダメージ」の2種類があり,デザイナーによれば移動中に射撃すると与ダメージはだいたい半減するという。
ダメージレートとしては,立ち止まって射撃する相手の攻撃を受けると,ほぼ即死という感じになっており,即死でなくても。ダメージが10を超えるとそのキャラクターは死亡する。死亡すると,持っていたアイテム(武器や,まきびしなどの特殊アイテム,フラッグ)はその場に落ち,プレイヤーはリスポーンする。
そのため戦闘では,遮蔽物の確保が非常に重要になるが,そもそも本作はキャプチャー・ザ・フラッグ戦であり,相手を撃ち倒しても直接,勝ちには結びつかないことにも注意したい。
マップ上にはやられたプレイヤーが落としたもの以外,減ったHPを回復できるヘルスパックなどのアイテムも落ちている。武器や特殊アイテムはカードによってランダムに供給されるので,超強力な武器を拾って一発逆転という可能性もあるわけだ。このあたりはガチなスポーツ系FPSというよりは,若干カジュアル寄りのルールになっている。
そのうえで,もし「この障害物の高さは,フィギュアの半分だ」「いや違う」といった揉め事が起こったときは,カードを1枚引き,そこに示された「Yes/No」で決定する。
ほかのゲームを見てばかりじゃダメだ
最後に,「SHOOT」を作ったゲームデザイナーのErik Atzen氏に話を聞いたので,以下に掲載しよう。ここまでスポーツ系FPSっぽいゲームを作ったからには,よほどのFPSプレイヤーに違いないと思ったのだが,本人はもっと個性的な人物だった。
4Gamer:
「SHOOT」はFPSを強く意識した作品ですが,普段はどんなタイトルをプレイしているんですか。
Erik Atzen氏(以下,Atzen氏):
私は,FPSのようなゲームを遊んだことがありません。というか,私はゲームを作るのは大好きですが,遊ぶのはそれほどでもなくて。ほかのゲームを遊ぶと,その影響を受けすぎて,自分が作ろうとしているゲームが混乱してしまうんです。
4Gamer:
それは驚きです。ではいったい,どういう意図で「SHOOT」をデザインしたんですか。
Atzen氏:
ゲームの内側に入って,自分がゲームの一部になってしまうような感覚のある作品が作りたかったんです。プレイヤーが持っている日用品を使ってマップを構成するというのも,それが目的ですね。また,ルールはなるべく少なくしました。ルールが多いと,どうしても没入感が得られにくくなるので。
4Gamer:
制作にはどれくらい時間がかかりましたか。
Atzen氏:
プロトタイプが完成するまで1年,ブラッシュアップに1年というところです。
4Gamer:
テストプレイはどうしたんですか。
Atzen氏:
テストプレイは自分でします。ゲームを遊ぶのが好きじゃないというより,ほかのゲームの影響を受けるのが嫌なだけなので,自分のゲームをテストするのは大丈夫です。
私は,アイデアの引き出しみたいなのをたくさん持っていて,それらをゲームにしたいと考えています。でも,あまりいろんなゲームを遊んで影響を受けしまうと,せっかくのアイデアが形にならないまま終わってしまうことがあり,それは絶対に避けたいですね。
実際,SPIELの会場に来るには来たけど,会場にあるゲームはどれ1つとして遊んでいません。
4Gamer:
徹底していますね。ところで「SHOOT」は言語依存性の低いゲームですので,マニュアルを多言語対応すれば世界中で販売できると思います。そのような計画はありますか。
Atzen氏:
今のところ,フランス,カナダ,アメリカ,そしてベルギーで売る予定です。もちろん,拡張セットを作る計画もありますよ。
4Gamer:
「SHOOT」以外でデザイン中のゲームはありますか。
Atzen氏:
サッカーゲームを作っていて,来年のSPIELには持ってこれそうです。1人対1人でプレイするもので,カードだけで遊べて短時間で勝負がつく,とても簡単で楽しいゲームです。今のところ,「Five Card Football」というタイトルをつけようと思っています。
4Gamer:
Atzen氏:
そうですね,私としては「ほかのゲームを見てばかりじゃあダメだ」と言いたいですね。例えば,今デザインしているサッカーゲームでは,「ボールを蹴るゲーム」として考えていた頃は,なんだかどうもしっくりこなかったんですが,それを「ボールを受け取るゲーム」として考え直したとき,全体像がスッキリとまとまりました。
こんな感じで,まずは自分のアイデアを,できるだけ多方向から見つめることが重要だと思います。解決法をほかのゲームに探しにいくんじゃなくて。
4Gamer:
どうもありがとうございました。
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