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有名IPには悪いイメージ……? 喜ばれるのは日本の「新しくて優秀なIP」―――ザンカイゲームス社長が語る,中国と日本のゲームのありよう
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印刷2017/09/29 11:45

インタビュー

有名IPには悪いイメージ……? 喜ばれるのは日本の「新しくて優秀なIP」―――ザンカイゲームス社長が語る,中国と日本のゲームのありよう

機上から見る上海郊外。東京都の約3倍の広さのエリアに,約2500万人が暮らす。やたらに混んでいる街だというイメージが強いが,なにしろ広いので,実は人口密度的にはさほどでもない
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2017年の7月27日から30日まで,上海で行われた「ChinaJoy 2017」の話題の中心は,昨年に引き続きスマホとVR。コンシューマも順当に台数を伸ばし,まさに花開こうかというタイミングではあるが,まだまだ(中国内では)マーケットとしては小さく,ChinaJoyで大きな存在感を示すほどではない。

昨年も書いたことだが,中国という国のゲームエンターテイメントの成長カーブは半端ない。例えばスマホゲームがメインである超大手「テンセント」の2017年1Qの売上は約7930億円で,純利益が約2315億円という規模感である。もう何がなにやら(年度ではなく四半期だ!)。
 中国は,すでに世界のモバイルゲームの市場規模の3分の1を持っていると言われており,しかもその拡大は,いまのところは留まるところを知らない。コンシューマ機もVRも,これからだ。やや成長曲線に鈍化が見られるとはいえ,類を見ない速度でまだまだ上がっていくのだろう。

そんなわけで昨年に引き続き,中国ゲームマーケットについて何人かと話をしてみよう。政府のお役人でもなく,プラットフォーマーでもなく,現場でゲームを開発して運営/経営している人達だ。彼らは肌感として,数字として,熱量として,マーケットに対峙しているのだから。

いまなお伸びていくモバイルゲームの会社達は,現状と未来をどのように見ているのだろうか。それを知りたくて,何社かの会社にインタビューの打診をしてみた。昨年とはちょっと毛色を変えて,日本ではまず知られていない,社長が若い会社をメインに“生の声”を聞いてみたので,そのインタビューの模様をお伝えしよう。


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 コンソール機が解禁になり,XiaomiやOppo,Huaweiなどの「中華御三家」の発展と共にスマホゲームが空前のブームになり,完全にゲームカルチャーが花開いた中国には,日本とは比較にならないほど多くのゲーム開発会社がある。古巣から独立したり,ファンドからお金を集めたりして,中国各地に散らばるそれらの開発会社は,みなそれぞれに強みを身に付け,明日の業界ナンバーワンを目指して日々新作の開発にいそしんでいる。
 今回のChinaJoyでは,若い社長が引っ張る会社を中心にインタビューをしてきたが,その中でも最も「いま中国でもっともホットなタイプ」の会社を最後に紹介しよう。

 ここまでのインタビューでも何度か触れてきたが,いま中国のゲーム業界を引っ張っている中心の世代は,30代前半。配給制だった中国が今の姿に変わるときに多感な時代を過ごし,小さいころからゲームに触れてきて,日本のアニメ/ゲームカルチャーの洗礼を浴びて育った世代だ。
 彼らは,そこらの日本人より日本の文化に詳しく,常に日本の最新情報を追いかけ,吸収したセンスに中国人としてのエッセンスを加え,世界でも通用する作品として仕上げてくる。一昔前の「中国のゲーム」から考えると格段の進歩を遂げており,もはや画面写真だけ見ると,日本が作ったのか,中国が作ったのか,分からないものさえ多い。
 ChinaJoyのインタビューの最後に,そんな「いまもっともホットなジェネレーション」の開発会社の中から,展开网络(Zhankaigames:ザンカイゲームス)を紹介しよう。

「Zhankaigames」公式サイト


馮 佶達(フォン・ジーダ)
ザンカイゲームス(Zhankaigames:上海展开网络科技有限公司)CEO兼プロデューサー。イギリスWarwick大学でコンピューターとビジネスを専攻。中国でe-Sports業界の先頭に立ち,2000年からWarcraft III情報サイト「偶遊在線」(ogame.net),中国で最も影響力のあるDota情報サイト「超級玩家」(sgamer.com)などを制作。2009年からウェブゲーム開発に着手し,2010年に開発した「星魂伝説」(x.qq.com)をテンセントにライセンスアウト。2009年,アメリカS2gamesから「Heroes of Newerth」の中国運営ライセンスを獲得。2015年4月ザンカイゲームスを設立し,「天命伝説」プロジェクトを立ち上げている。
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 ザンカイゲームスという会社そのものもさることながら,今日はまずあなた自身についてお聞きしたいと思っています。今までどんな経歴を歩んできて,どんな経緯でザンカイゲームスに関わっているんでしょうか。

ZhankaigamesCEO兼プロデューサー 馮 佶達(フォン・ジーダ)氏(以下,フォン氏):
 経歴は,たぶん4Gamerさんが今回インタビューしてるような,ほかの人達とはちょっと違っているかもしれません。
 まず2000年に,「Counter-Strike」と「Warcraft3」の情報を取りあつかうOgame.netというサイトを私の個人サイトとして作ったのが,ゲーム業界に関わるきっかけでした。その後,2003年にイギリスへ留学したんですが,その間にもOgame.netを引き続き運営したり,もう1人のパートナーと一緒にWCG(World Cyber Games)やESW(Esports-Gamers Warsow Cup)などの地域大会の運営に携わったりしていました。

4Gamer:
 個人サイトから始まったんですね。4Gamerみたいだ……。

フォン氏:
 4Gamerさんもそうなんですね。それで2006年には「Dota」の情報も取り扱うようになり,2007年には会社を立ち上げて,Ogame.netの名称をSgamerに変更して,正式に法人としてサービスを開始しました。でも2007,2008年ごろの中国では,ゲーム大会に対する認識や興味はまだ薄く,国内で大会を運営することはありませんでしたね。

4Gamer:
 いま「Counter-Strike」や「Warcraft3」,「Dota」といったタイトル名が挙がりましたが,ご自身でもプレイしてたんですか?

フォン氏:
 もちろんです。私自身もゲーム大会にたびたび参加していましたよ。2004年のWCGの武漢地域選抜大会では3位の成績もとりました。

4Gamer:
 おお,実力も伴っていた。

フォン氏:
 そのままの勢いで,2009年にはWebゲームの開発にも進出して,「星魂传说」という,将棋……というかSRPGみたいなゲームを作っていました。その作品は,2012年にはテンセントから独占配信という形でサービスされましたが,2014年に会社が上場したタイミングで私は会社を辞めて,上海に移りました。

4Gamer:
 そこまででも相当いろいろなことをしてますね……。

フォン氏:
 でもここからが本番です(笑)。
 上海に移ってから2015年に,スマホゲームの開発・運営を行うザンカイゲームスを設立しました。一番有名な作品は「天命伝説」というゲームで,リリース後3週間でApp StoreのセールスランキングTop10に入れました。
 最近は,武器屋を経営するゲームを開発中で,2017年10月に中国でリリースする予定です。

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「星魂传说」
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「天命伝説」は,今回のTGSで日本サービスが発表された

4Gamer:
 しかし2000年からゲーム業界に携わっているんですね……。4Gamerも2000年からスタートしたサイトなんですが,僕がやってることは基本的に17年間何も変わっていません。なんだろうこの差は(笑)。

フォン氏:
 自分でも思いますが,とても中国っぽいですよね(笑)。
 でもそうやって長い時間をかけて,いろいろなことを積み重ねて大きくなっていく……というのは日本の人ならではのことですし,中国にもいずれそういう姿勢が必要になってくると思います。

4Gamer:
 そんな中国っぽいフォンさんですが,もちろんきっと日本の文化は好きなんですよね。

フォン氏:
 もちろんです。小学校の時には,「ジョジョの奇妙な冒険」を読んでましたし,日本の漫画やアニメ,ゲームがずっと好きなんです。オンラインゲームももちろんで,2002年は「クロスゲート」にハマってました。

4Gamer:
 クロスゲート懐かしい! 中国で相当流行ってたみたいですね。

フォン氏:
 ずいぶんやり込みましたね。イギリスに留学していた時はゲームを遊ぶ時間があまりなかったんですけど,暇を見つけてはPlayStation 3やニンテンドーDSといったハードでゲームをやってました。「ゼルダ」シリーズとか「ニーア レプリカント」とか,いろいろプレイしてましたよ。

4Gamer:
 なんでもやってますね(笑)。しかもジョジョ! ちなみにお気に入りのキャラクターは誰ですか?

フォン氏:
 うーん……たくさんいますが,やっぱり第5部の主人公ジョルノ・ジョバァーナが好きですね。あなたは?

4Gamer:
 第5部なら気が合いそうですね(笑)。僕はやっぱりブチャラティかなぁ。


高校1年生のときにゲーム業界に片足を―――日本のゲームに追いつくために,もっと勉強しないといけないと思っています


4Gamer:
 しかしお話を聞いていると,過去に携わっていたのは,「Counter-Strike」「Warcraft3」「Dota」というように,どれもいわゆる「欧米のゲーム」で,仕事の中では日本が好きな部分があんまり出てきていないように感じます。その部分は,今のザンカイゲームスで大きく表に出てきているんでしょうか。

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フォン氏:
 そうですね。昔から,日本風のゲームをこっそり自分で作ってみたりはしていましたが,仕事として大きく前面に出しているのは最近の話かもしれません。
 でも2009年ごろからはずっと,日本のセンスに影響を受けたゲームを作ってきていますし,それはザンカイゲームスになっても同じですね。日本のゲームの新情報も,欠かさずチェックしてます。

4Gamer:
 いまふと思ったんですが,おいくつなんですか。

フォン氏:
 32歳です。

4Gamer:
 やっぱりそのぐらいの世代なんですね。今回インタビューしてる人は,ほぼ全員その世代です。やっぱり日本好きが多いですか?

フォン氏:
 そうですね。みんな日本の漫画とかアニメ,ゲームが大好きですよ。

4Gamer:
 ある意味「黄金世代」ですよね。今30代前半ぐらいの世代が中国のゲーム業界で一番ホットな人たちだと思ってるんですが,それは正しい認識でしょうか。

フォン氏:
 はい。おっしゃるとおり,今の中国のゲーム業界の中心は,30〜35歳の人たちです。

4Gamer:
 やっぱりそうなんですね。
 ……いやちょっと待ってください。いま気付いてしまいました。今32歳ということは,Ogame.netを立ち上げた当時は,15歳だった?

フォン氏:
 ええ,高校1年生でした。

4Gamer:
 僕が4Gamerを立ち上げた時には,まだ高校1年生だったんですね……。

(一同笑)

4Gamer:
 ところで日本もそうですが,中国のスマホゲームマーケットはとても競争が激しいと思うんです。その中で「ここは負けない」という強みはどこでしょうか。

フォン氏:
 グラフィックスのセンスだったり表現技術などは,ほかの開発会社よりも優れていると思います。ただ,日本のゲームと比べるとまだまだ足りない部分も多いので,もっと学ばなければいけないですね……。

4Gamer:
 日本のゲームと比べてみて,どこが弱いと感じてます?

フォン氏:
 細かい部分におけるグラフィックスの描き込みは弱いですね。日本はそこが本当にすごいです。あと「天命伝説」は,日本ファルコムさんの「空の軌跡」に強く影響を受けてるんですが,キャラクターの感情表現なども,“軌跡”に比べるとまだまだ足りないですね。

4Gamer:
 「空の軌跡」までやってるんですね。

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フォン氏:
 あれは素晴らしい作品ですよ。
 それでゲームを作る時は,世界観などの大きな部分を作ってから徐々に細かいところを作っていくわけです。プレイヤーのメソッドやパーツの部分には私達なりに注力したんですが,キャラクターの表現については足りないと思っています。今後「天命伝説」をバージョンアップする時や,新しいゲームを作る時にはそこに力を入れようと考えています。

4Gamer:
 うーん。でも僕から見ると,あなたのような中国の若いクリエイターが作ったゲームは,もう日本のレベルに追いついてると思うんですけど……。

フォン氏:
 ありがとうございます。でも,もっと頑張らないといけないと思ってます。

4Gamer:
 今回こうやってインタビューしてる人達は,みんな口を揃えて「まだ足りない」って言うんですが,それだけ中国の人たちに日本のゲームがリスペクトされているということなんでしょうか。

フォン氏:
 もちろんです。日本のゲームはやっぱりレベルが高いと思っていますし,追いつくためにもっと勉強しないといけません。

4Gamer:
 確かに5年くらい前までは,中国のゲームはちょっとセンスもイマイチでしたし,キャラクターの作り込みなんかも弱かったと思います。ただ,開発力は当時からものすごく高かったので,日本のセンスやゲーム性を元にして中国の技術力でゲームを作ればいい,と私は思っていたんです。

フォン氏:
 はい,理解できます。

4Gamer:
 しかしここ数年を見る限り,そういうものも中国に追いつかれつつあるので,日本人として日本のゲーム業界の立場の危機を感じてしまいます。

フォン氏:
 これは私個人の感覚なんですが,確かに数年前まで中国のマーケットには,PCゲームやWebゲームしかなかったと思います。Webゲームは2009年から2013年の間,中国で盛んに開発されていましたが,当時は日本と作品の行き来があまりなかったので,日本から見ると「中国のマーケットは,簡単なWebゲームを作るレベルしかない」と思われていたと思うんですね。

4Gamer:
 そういう部分があったことは否定できません。

フォン氏:
 ですよね。しかしスマホゲームの普及で,世界中のいろいろなゲームを誰でも遊べるようになったことで,ゲーム同士の比較や評価をしたりすることが容易になって,日本の作品を遊ぶことも簡単になって,中国国内の感覚のグローバル化が一気に進んだんだと思います。

4Gamer:
 閉じられた環境に一気に流れ込んできた情報を処理して咀嚼して吸収してるのがすごいです……。開発環境にしても,一気に最新のものになってますよね。

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フォン氏:
 中国のゲーム開発では,Webゲームの開発が盛んだった時から,主にUnityが使われてるんです。中国では,どこの会社でもUnityが完備されている状態で,中小の開発企業はそれを利用してすぐにスマホゲームの開発に移行できたわけです。こういったWebゲーム開発で積み上げた基礎があるからこそ,今スマホゲームで爆発的な進歩を遂げているのだと思います。

4Gamer:
 今まさにその質問をしようと思っていました。この2,3年で中国のスマホゲームが急激に発達した理由を聞こうと思ってたんですが,それが答えになる……のかな?

フォン氏:
 そういう下地が大きいのは確かだと思いますよ。あとこれはちょっと補足になるんですが,今ゲーム開発の主力層である中国の30代前後の人たちは,ニコニコ動画やpixivといったサイトで日本の表現方法のセンスを学んだことも大きいです。

4Gamer:
 pixiv,みんな見てるみたいですね。

フォン氏:
 あとこれはあまり良いことではないんですが,中国のゲームは,Webゲームを作っていた時の経験をスマホゲーム開発でそのまま使っているので,日本のゲームとは「企画力」の部分でかなり違うと思っています。今後はさらにハイクオリティなゲームを追求し,先ほど挙げたキャラクターの感情表現なども含め,細かい要素をもっと作り込んでいきたいですね。

4Gamer:
 企画の部分が随分違うということは,中国でも日本でも,どちらの国でも人気が出るゲームを作るのはちょっと難しいと考えている?

フォン氏:
 いや,そこは思ったよりは難しくはないと思っています。なぜなら,今ゲームを開発している我々世代は,繰り返しになりますが子供のころから日本のゲームやアニメ,漫画が大好きで,それを見て大きくなってきたんです。

4Gamer:
 そしてそれは今でも変わらない,と。

フォン氏:
 ええ。「Fate/Grand Order」など,日本の新しいゲームが出るとみんな絶対にプレイしますし,遊んでみて「この部分は面白いな」というポイントを,私たちもちゃんと感じ取ることができています。つまり我々は,中国のゲーム文化も理解していますし,日本のゲーム文化も分かっているので,中国でも日本でも人気なゲームを作ることは可能だと思います。

4Gamer:
 ザンカイゲームスのタイトルも,そういった考えのもとで作られているんでしょうか。

フォン氏:
 そうですね。「天命伝説」は日本のエッセンスを取り入れて作りましたし,スタッフも,日本のゲームやアニメが好きな人を集めています。スタッフたちと日本のゲームについてよく語っていますし,最近はみんなで昼休みに,Nintendo Switchの「スプラトゥーン2」を遊んでます(笑)。

4Gamer:
 正直なところ,僕たちぐらいの世代は昔の中国のゲームから見ているので「あぁ中国ね……」というイメージが抜けない人も多いと思うんです。

フォン氏:
 それはそうでしょうね。

4Gamer:
 そんな中,中国のゲームタイトルが日本のゲーム市場に進出しようと思った時に,今一番足りないものは何だと思いますか。両方のゲーム文化を知っているからこそ,聞いてみたいです。

フォン氏:
 やはり……キャラクターじゃないでしょうか。日本のゲームは,ガチャをユーザーに回してもらうことが主な収入源で,そのためキャラクターを売りにした展開がメインになっています。「崩壊3rd」の成功などを例に見ても,中国のゲームが日本市場でも受け入れられるためには,魅力的なキャラクターを作ることに重点を置かなければいけないと思います。

4Gamer:
 なるほど。なんだかそれもちょっとどうなんだろうという気もしつつ……。


「有名IP」はもはやイメージが悪い?―――日本のIPを中国に進出させたいなら,「新しい優秀なIP」を持ってくるべき


4Gamer:
 では逆に,日本のゲームが中国に進出したいと思った時には何が足りないと思いますか。

フォン氏:
 そこはいくつか重要なポイントがあると思います。1つめは,ローカライズを重視することです。「NieR:Automata」は,台湾と香港向けに繁体字版がリリースされましたが,この繁体字版が中国本土でリリースされた時は,大きなブームが巻き起こりました。英語よりは意味が分かりますしね。現在中国本土で使用されているのは簡体字ですが,こういった例を見ると,やはりローカライズは重要だと思います。

「NieR:Automata」
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4Gamer:
 日本と同様に,英語圏でないがゆえのポイントですね。

フォン氏:
 2つめは,求められているゲーム性の違いです。日本という国は基本的に,斬新なゲームシステムが求められがちだと思いますが,中国のユーザーは,遊び方が成熟していないのでそういうものは受け入れられないことが多く,シンプルなものが流行ることが多いです。「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」「白猫プロジェクト」といった,日本で受け入れられたゲームが中国であまりヒットしなかったのも,そういう背景があると思います。

4Gamer:
 日本ほどの人気はさすがに出ないだろうなぁ……とはなんとなく思ってましたが,まさかあれほどとは思いませんでした。

フォン氏:
 まぁタイトルがどうこうと言うよりも,ゲームサーバーの数も重要な違いとして挙げられると思いますよ。

4Gamer:
 それはインフラ的な話ですか?

フォン氏:
 いいえ(笑)。プレイヤー感情の問題です。
 日本のゲームはサーバーがとても少ないんですが,中国のゲームは,相当数のサーバーが用意されています。中国のユーザーはゲームに「達成感」を求めるので,サーバーが複数に分かれていれば,「ちょっとお金を出せばサーバー内のランキングTop10に入れるかもしれない」と思って,お金を払って夢中になるんです。

4Gamer:
 あー,なるほど……。

フォン氏:
 日本のようにサーバーがとても少ないと,お金を払ってもなかなか上位にランクインできないので,興味が薄れていくんだと思いますよ。

4Gamer:
 確かに中国のゲームは,すごい勢いでサーバーを増やしますよね。あれはそういう理由だったのか。

フォン氏:
 あと1つ日本の会社にアドバイスがあるとすれば,日本のIPを中国に進出させたいと思うなら,「新しい優秀なIP」を中国に持ってきたほうがいいと思います。

4Gamer:
 その理由は?

フォン氏:
 今までも,日本で有名なIPを使ったゲームが,委託を受けた中国の会社によっていくつも運営されてきました。しかし市場では,それらの会社がめちゃくちゃなやり方をして,そのIPのイメージを損ねていることもあって,プレイヤーはあまりいいイメージを持っていないんです。

4Gamer:
 ええとつまり,IPそのものが不人気なのではなく,イメージが悪い?

フォン氏:
 ええ。なにしろ中国は人口が多いので,もちろん日本の超有名IPのファンは多いと思いますよ。私自身もそうですし。ただ,中国のユーザーは日本の新しいアニメやゲームを常にチェックしているので,新しい優秀なIPを持ってきたほうがずっと人気が出ると思います。

bilibili動画は,日本の最新アニメのライセンスを正式に取得し,公式配信を行っている
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4Gamer:
 中国の若い人たちが日本のアニメやゲームの最新情報をずっと追いかけていることを,僕らは知らないんですよね。

フォン氏:
 ええ。中国のユーザーはずっと日本のゲームに注目しているんですが,発売されたゲームに中国語版がないことが多いんですよね。例えば今一番ホットなNintendo Switchは,リリースされているゲームの数もまだまだ少ないですが,中国語版があるゲームとなると,その中でもさらに限られてしまいます。そのあたりはとても残念に思っていますし,友達に紹介しようと思っても,中国語版がないから勧められないんですよね。

4Gamer:
 確かによっぽどのモチベーションがないと,ちょっとプレイしてくれそうにないですね。

フォン氏:
 8月末に発売される(編注:インタビューは7月下旬に行われている)「モンスターハンターXX Nintendo Switch Ver.」に期待しているユーザーも多いんですが,やはり中国語版がリリースされるかどうかで,プレイ人口は大きく変わると思います。言語の障壁は高いので,そこが最も大きな不安要素でしょうか。

4Gamer:
 でも中国では,日本語が堪能な熱心なプレイヤーがよくゲームの紹介をしてますよね。日本も似たような状況なので,どこでも同じなんだなぁ,と思って見てます。

フォン氏:
 そうですね。例えばbilibili動画では,日本のゲームをプレイする生配信が行われていることがあるんですが,そこでは日本語の分かるファンがコメント機能を使って,中国語字幕を入れていたりします。それを見てようやく「このゲーム面白いね」ということを理解している人もいるみたいですね。

4Gamer:
 日本でも欧米のゲームが入ってくる時に「日本語版じゃないから,興味はあるけどプレイできない」という人が大勢います。やはりそのあたりはどこでも同じなんですね。

フォン氏:
 早くメーカーさんが中国語版をたくさん作ってくれることに期待しています。ビジネスチャンスですよ(笑)。

4Gamer:
 30代前半の黄金世代の中でも,フォンさんは中国の状況も日本の状況もちゃんと見ていらっしゃるので,ザンカイゲームスがこの後作るゲームがとても楽しみです。ぜひ日本でもサービスしてくれることに期待しています。本日はどうもありがとうございました。

―――2017年7月28日収録
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