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[TGS 2018]DMM GAMESが完全に新しいゲーム・プラットフォームを設立へ。DMM GAMES事業戦略講演をレポート
講演ではDMM GAMESに関するさまざまな数字や指針,新しい技術的発展などが発表されたほか,新たに始まったDMM Ventureについても簡単な解説があった。以下,この講演をざっくりと紹介したい。
「DMM GAMES」公式サイト
モバイルアプリのPCの展開や「DMM GAMES 遊び放題」など,広がるプラットフォーム
最初に登壇したのは,企画営業本部 本部長の林 研一氏だ。林氏は2017年度のサービスとプロダクトの概況,そしてプラットフォーム概況の3点について解説を行った。
会員の性別は8対2で男性が8と,男性ユーザーが圧倒的に多い。「刀剣乱舞-ONLINE-」など,女性ユーザーが多いゲームもあるが,全体で見ると男性の支持が大きいプラットフォームと言えるだろう。なお会員の年齢層は20代と30代に集中しており,この点ついては,性別による差はほとんど見られない。
デバイス別の売上比率は,PCが64%となっており,2015年には70%だったことと比較して,「PCが徐々に減少しモバイルが伸びている」と言えるが,総体的には「PCが強い」という状況に変化はないとのこと。
なおPCブラウザに限定してARPPU(課金ユーザー1人あたりの平均収益)も公開されており,それは確実な増加を示している。課金率は20.7%と,2016年度の19.8%に比べて微増ないし横ばいといったところ。
DMM GAMESの集客力関連の数字については,事前登録者数が10万人を超えたゲームの本数が公開された。2017年度には18本が事前登録者数10万人を超えており,これは2017年度にリリースされたタイトルの28%に相当する。十分な集客力があると言って良さそうだ。
続いてはプロダクト概況。最初に示されたグラフでは,PCブラウザ向けタイトルの多さと,サードパーティの参入が多いことが顕著な特徴として読み取れる。
このうちサードパーティの参入が増大している原因として林氏は,「プラットフォームのオープン化に伴うグローバルでの成長」(中国語圏からの問い合わせが多いとのこと)をまず指摘したが,それより大きな理由として「スマートフォンアプリをPCで配信するルートが確立した」ことを挙げた。
この「スマートフォンアプリのPC配信」の鍵となるのが,DMM GAME PLAYERである。
スマートフォンアプリをPCで配信する場合,最も分かりやすいのはEXE化してダウンロード販売するというルートになる。しかしこのルートは,開発会社やパブリッシャによってはノウハウが不足していることがあり,ときとして「低くないハードル」になるという。
これに対しDMM GAME PLAYERではAndroidエミュレータである「Bluestacks」を正式導入。PCでのアプリ配信をより簡単なものとした。
BluestacksはSDKを組み込むのみ(例えば「Unity」で開発しているゲームなら,Unity専用のSDKを組み込む)で利用でき,EXE化に比べて必要となる工数が少ない。以前は挙動が重いといった問題も指摘されたが,専用のチューニングを施すことで挙動関係の問題は解消されているという(チューニングできる/できないがあるので,要相談とのこと)。
もちろんEXE化という選択肢が排除されたわけではないが,林氏は「AndroidアプリをPCで初めて配信するのであれば,エミュレータを使うのが良い」と語った。
スマートフォンアプリをPCで配信することには,さまざまなメリットがあり林氏は,とくに「Google PlayやApp Storeの規制に左右されない」「PCの大画面でプレイすることにより,IPの魅力を強く訴えられる」といった点を指摘した。
これは一定の金額を支払うと30日間にわたって「遊び放題」に含まれるゲームがプレイできるというサブスクリプションモデルだ。オプションは2つあり,980円の場合,全年齢対象のタイトルのみ,2980円だとR18ゲームも含まれる(当然ながら,全年齢ゲームとR18ゲームで,サービスの入り口は分かれている)。
DMM GAMESでは,このサブスクリプションモデルに,アプリプレイヤーによるゲームのサービスも加えていく予定だという。これによって買い切りタイプのスマホアプリを,遊び放題のメニューに入れることが可能になるわけだ。2019年1月には,それを実現するための専用SDKが実装される見込みとのこと。
「DMM GAMES 遊び放題」は,2017年8月にスタートしたが,初回の更新率が50〜60%と,高い継続率を示している。
DMM GAMESとしてはこの「遊び放題」をさらに拡充し,インディーズゲームはもちろん,グローバルな市場もターゲットに入れていきたいと考えている(Steamでリリースしているゲームを,「遊び放題」に加えることも可能だ)。
ちなみに「遊び放題」の収益は,ユーザーの支払った月額課金額を原資として,各ゲームの起動回数に応じて利益が分配されるそうだ。
このように,DMM GAMESでは
- エミュレータによる,マルチデバイス展開の工数低減
- 「遊び放題」を利用して,有料コンテンツの配信を可能に(遊び放題のための専用DRMやSDKなどの組み込みは,DMM側でサポート)
- R18ゲームについてもDMM GAMESのノウハウを活かした支援
といった形でプロダクトを展開していく予定であると林氏は語った。
最後は,プラットフォーム概況について。
「遊び放題」ではUbitusと協議を行い,クラウドゲーミングの導入も進めているという。また,現状では弱点となっているオンラインのマッチング機能についても仕様を検討中とのこと。
DMM GAMESは昨年度からプラットフォームの多言語化を通じてグローバライズを図っていたが,これについてはいったん白紙に戻し,完全に新しいプラットフォームをゼロから作り直すという。
この「ゲーム配信に特化したグローバルな新プラットフォーム」は,2019年5月のローンチが予定されており,デバイスはPCのみで,無料のブラウザゲームと有料のダウンロードゲームがコンテンツとなる。
林氏は最後に,現状について「昨年仕込んだものが順調に開花している状況」と評価し,「今後もパブリッシャとプラットフォームの両軸でDMM GAMESをスケールアップしていく」と今後の展望を示した。
「DMM GAMESらしさ」を継承するDMM GAMES Ventures
DMM GAMES Venturesは出資総額100億円で,ゲーム関係の投資ファンドとしては国内最大規模のものになる。その特徴は規模だけではなく,上島氏は特筆すべき点を4つにまとめて紹介した。
1つめは100%単独出資による,柔軟かつ迅速な対応である。「一般的には出資が難しいと判断されるような案件でも,DMM GAMESとのシナジーが見込めるならば出資する」「成長ステージにこだわらず,資金状況やリソース獲得状況を元に柔軟な契約を行う」などといった柔軟性に加えて,DMM GAMESがこれまで培ってきた素早い対応から「DMM GAMESらしさ」を打ち出していくという。
2つめはDMM GAMESのネットワークとノウハウを活かした事業支援となる。
オンラインゲームは品質競争の激化から開発コストが高騰しており,同時に人材の確保や品質の維持などが困難になりつつある。このためIPとしてはうまくいっていても,事業として行き詰まるケースが内外を問わずに見られると上島氏は指摘した。
これに対してDMM GAMES Venturesでは事業運営のノウハウや座組の知見などを提供し,状況に応じて国内外のビジネスパートナーを紹介するといった事業支援を行っていく。
3つめは国内外への積極的な投資で,DMM GAMES Venturesは日本国内にとどまらず,海外にも積極的に出資していく予定だという。この施策は結果としてDMM GAMESのグローバルな発展を加速させ,国内のゲーム会社が国際的な展開を行うにあたっても有利な状況を構築できるという。
4つめは,新規IP創出へのフォーカスである。長期にわたってユーザーに親しんでもらえるIPの創出は,ゲームをヒットさせる要素の1つであるとされるが,DMMでもこれについては同じ考え方だと上島氏は語る。
これを踏まえて新規IPの創出に積極的な会社には出資を行い,またDMMプラットフォームを利用した展開支援を合わせて行っていく。
講演の最後に上島氏は,「DMM GAMES Venturesの公式サイトは2日前にオープンしたばかりだが,日本語以外に英語や中国語もカバーしている。サイト経由で問い合わせをもらうことが可能なので,興味ある人はぜひアクセスしてほしい」と述べて,事業戦略説明を終えた。
「DMM GAMES」公式サイト
4Gamer「東京ゲームショウ2018」特設ページ
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