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[TGS 2018]カプセルのような音響系,ロボットの操縦席のようなサイバー系,そして寝落ち上等の座椅子系。会場で見かけたゲーマー向けチェアを紹介してみる
Audio Heart
会場では「STAR WARS バトルフロント II」のプレイ動画を使ったデモを体験できたのだが,Dolby Atmos(ドルビーアトモス)に対応しているだけあって臨場感がすごい。たとえば,上空をTIEファイターが行き過ぎるときは頭上から音が降ってくる。また,周囲で鳴り響くブラスターの発射音は,敵味方の位置関係が分かるほどだ。プレイヤーの背後にダース・ベイダーが出現する場面では,あの呼吸音が背中越しに聞こえてきて,ビクっとした。
頭の周囲をぐるりとスピーカーが取り囲んでいるという感じだ |
VRS-1を後ろから見たところ。卵の内側には吸音材が貼られているため,後方への音漏れはかなり少ない |
椅子としての座り心地もいい。卵状のシェルによって周囲から遮断され,より画面に集中できるという効果もある。ゲーム以外に,ホームシアターとしての用途もあるように感じられた。FPSやバトルロワイヤル,VRコンテンツやホラーゲーム,自然を背景としたサバイバルものなど,没入感を重視するジャンルと相性が良さそうだ。
印象深かったのは,「椅子に座ったときは迫力ある音が楽しめるが,シェルの外に出ると音漏れが少なく静かである」というところ。もちろん,大きな音が鳴り響く東京ゲームショウ会場でのことなので,自宅で使うとなると印象は違うかもしれないが,本機を開発したAudio Heartの代表取締役,相澤 寛氏によると「(自宅で使ったときには)隣の部屋で寝ている家族が気づかないくらいには静か」だという。
スピーカーと耳の距離が近いため,ボリュームを絞っても十分な迫力が感じられることに加え,シェルのおかげで内部の音が漏れにくいのだという。価格が98万円(税別,運送・設置別)で,AVアンプとステレオアンプを別に用意しなければならないため,ポンと出せる人は少ないと思うが,相澤氏は価格が一回り下のモデルを計画中だという。
そんな相澤氏に,開発の裏話などを聞いてみた。
Audio Heart公式サイト
4Gamer:
よろしくお願いします。VRS-1を作ったきっかけを教えてください。
相澤 寛氏(以下,相澤氏):
もともとはゲーマー向けではなく,ホームシアター用として私自身が設計しました。エーロ・アールニオというデザイナーが60年ほど前に作った「ボールチェア」に座ったとき,「これにスピーカーを組み込めば良い音になるんじゃないか」と思ったことが直接のきっかけです。その後,3年ほど試行錯誤をして完成しました。
4Gamer:
開発に当たって苦労した点はどこですか。
相澤氏:
苦労したのは,ヘッドレストの高さ調整機構ですね。私は音響の専門家ですが,椅子については素人ですから(笑)。ヘッドレストの下にサブウーファを内蔵していますので,これに影響が及ばないように高さを調整でき,なおかつしっかり固定しなくてはならないため,調整機能を一から設計する必要がありました。音周りだと,スピーカーの共振も含めてフラットな低音を作るのが大変でした。
4Gamer:
音が外へ漏れてこないのに,中に入ってみると迫力があって驚きました。
相澤氏:
シェルと椅子が音を防ぐため,遮音性は高いですね。スピーカーと耳の距離が近いので,それほど大きな音が出ているわけでもないんです。中で映画館並みの迫力で音を楽しんでいても,外へはテレビを見ている程度の音しか漏れてきません。
シェルの中と外では20dBくらいの音量差がありますので,音量によっては夜中でも使えます。日本の住宅事情には最適だと思いますね。ただ,重低音はどうしても抜けてしまうので,アンプを調整する必要はあるかもしれませんが。
4Gamer:
臨場感もすごいですね。
相澤氏:
プロの音響クリエイターの人に試してもらう機会があったんですが,「サラウンド音が綺麗に回ってくれる」と絶賛してくれました。サラウンド音響を確認するためのモニタースピーカーとしても使えるだろうと。
4Gamer:
ゲーム会社で開発用に使うという需要もありそうです。
相澤氏:
そうですね。普通にAVルームを作った場合,サラウンドスピーカーを天井などに取り付けるんですが,そこから反射音が出て定位が崩れてしまうことがあります。しかし,VRS-1はシェルの内側に吸音材を仕込んでいますから,反射音が出ることがなく,正確に聞こえてくるんです。
4Gamer:
値段はおいくらですか。
相澤氏:
98万円です。ただ,直販で購入すればもう少し安くなります。また,10月からは68万円のモデルを販売します。こちらはサラウンドが7.1chになり,飲み物を置けるマグカップ受けなどのオプションを装着できるようにする予定です。
4Gamer:
レンタルなどの予定はありますか。
相澤氏:
そうしたお話ももらっていますので,現在検討中です。
4Gamer:
実際に試してみたい場合はどこへ行けばいいのでしょうか。
相澤氏:
常設のショールームはないんですが,千葉県の柏市にある弊社で試すことができます。また,2018年9月29日〜9月30日に六本木ヒルズで行われる「J-Wave 30周年記念 テクノロジーと音楽の祭典 」にも出展する予定です。
4Gamer:
では,最後に読者であるゲーマーに向けてコメントをお願いします。
相澤氏:
このVRS-1を使って,優れた音響のゲームを楽しんでください。後ろから来る敵が音だけで分かったりしますので,eスポーツでも最強のチェアになると思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
Cooler Master Technology
「Cooler Master Technology」公式サイト
続いて,Cooler Master Technology(以下,Cooler Master)ブースで注目を集めていたサイバーなゲーマー向けチェアを紹介しよう。アルファベットの「C」の字の内側にシートとアームレスト,そして可動式のテーブルが備え付けられており,まるでハイテク戦闘機の操縦席のようだ。
シートの座り心地がよいことに加え,目の前に大画面モニターが吊り下げられた状態となるため,操作に集中することができる。
面白いのが,チェア全体の角度を変えられる電動ギミックだ。左側アームレストの下に2つのボタンがあり,これを押せば好みの角度に調整できる。
たとえばフライトアクションの場合,ゲームに連動して角度が変わると臨場感がより高まりそうだが,残念ながらそうした機能はないそうだ。
気になるお値段だが,Cooler Master インドアセールス部APACブランチのReni Chiu氏によれば「このチェアは参考出品で,現時点では販売計画はありません。でも,もし一般販売があるなら40万円くらいになるんじゃないでしょうか」とのことだった。
AKRacing
「AK Racing」公式サイト
AKRacingブースでは,ゲーマー向けチェアを並べた広いエリアに人々が集まり,思い思いに座り心地を試していた。AKRacingといえば,レーシングカーの操縦席を思わせる,スポーティなデザインのチェアが有名だ。
現実のレーシングシートの分野でも実績があり,ヨーロッパやオーストリアなどのeスポーツ大会でも採用されているAKRacingのチェア。アームレストを好みの位置に合わせることで操作ミスを減らす「4Dアジャスタブルアームレスト」や,背もたれを180°倒せるリクライニング機能などが特徴だ。
東京ゲームショウ2018では,発売中の各種ゲーマー向けチェアに加えて,スエードや本革を使ったモデルや,「フォートナイト」とのコラボモデルなどが参考出品されていた。
本革モデルは従来製品よりやや落ち着いた色合いになっていて,オフィスでも使えそう。本革のゲーマー向けチェアは多くないと思うが,AKRacingの日本代理店であるテックウインドのプロダクトマネージャー,野嵜太郎氏によれば「本革ですと,手入れをする必要はありますが,年を経ることでの変化を楽しめる素材です」とのこと。
参考出品されていた本革モデル |
こちらも参考出品の「フォートナイト」コラボモデル |
ゲームタイトルとのコラボモデルはAK Racing初の試みで,背もたれやクッションにフォートナイトのロゴが入っており,eスポーツ大会でも映えそうだ。野嵜氏は,反応が大きければフォートナイトモデルの発売や,他タイトルとのコラボも前向きに検討したいと述べる。
個人的に印象深かったのが,すでに発売されているゲーマー向け座椅子「極坐(GYOKUZA)」だった(関連記事)。据え置き型のコンシューマ機で遊ぶ場合,テレビの前に直接あぐらをかく人も多いと思うが,長時間プレイしていると腰が痛くなる。極坐は座椅子でありながら背もたれがしっかりしており,腰への負担を軽減しつつゲームが楽しめるという印象だ。
また,ほかのモデルと同様,背もたれがかなりの角度リクライニングするため,Nintendo Switchやスマートフォンなどの携帯機とも相性がいいかもしれない。
eスポーツブームなどにより,さまざまなゲーマー向けグッズが登場しているが,安価なものではないため,椅子にまでこだわる人はまだ少ないかもしれない。とはいえ,椅子は身体のコンディションに直結するアイテムであり,質や機能の向上も著しいので,今後,改めて注目されることになるはずだ。
4Gamer「東京ゲームショウ2018」特設サイト
- 関連タイトル:
AKRacing
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