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[GDC 2022]開発時のテストを一部自動化する「GameDriver」は,今後の開発現場における重要なツールとなるか? キーマンに話を聞いた
このツールを手がけるのは,同名のデベロッパGameDriverだ。今回,CEOであるRobert Gutierrez氏と共同設立者のShane Evans氏に話をうかがってみると,今後のゲーム開発のキーにもなりそうなツールだったので,本稿にて紹介してみたい。
「GameDriver」は,2Dや3D,そしてVRゲーム環境におけるプレイテストの自動化を可能にするツールセットだ。ゲーム開発時のプレイテストにおいて,とくに反復的な作業の繰り返しとなる“クリックテスト”を,人間に変わって実行する。
プレハブ(オブジェクトの形状データや動作をまとめたもの)のクローンを含む,さまざまなオブジェクトが操作可能となる独自開発の「HierarchyPath」テクノロジーが特徴で,Play Modeで起動し,ロジックやフロー調整しながらのデバッグにも活用できるという。すでにUnityの正式認可を受けており,Unity Asset Store(リンク)での配信も行われている。
GameDriverについて,Gutierrez氏は「ボス戦の難度をチェックするために使うのではなく,ボスのところまで順当に連れて行ってくれるかを確認するためのもの」と,分かりやすい言葉で説明してくれた。
開発現場でのプレイテストでは,「指定された場所で特定の行動をすると隠し部屋への道が開く」「キーアイテムを拾うと松明が点灯し,次のシーンに移行する」といった,ゲーム中に何度もあるような場面のその一つ一つで,なぜ作動しなかったか,どのような状況下でバグが発生するかをチェックしログに記憶。そして修正していく。そういったテストを行うための人件費や時間といったコストはかなり大きいものとなるが,このツールが活用できれば,最大85%の開発時間を削減できると考えているそうだ。
Gutierrez氏とEvans氏にツールの開発に至るまでの経緯を聞くと,この話がなかなか興味深いものだった。まず,Evans氏は,元々はヒューレット・パッカード(HP)のバンクーバー支部で「LoadRunner」というローディングテスト専用ツールの開発責任者だったという。
そのEvans氏がHPのカリフォルニア本社へと異動した際,その後釜として推薦雇用されたのが,当時政府のIT管理部門に勤めていたGutierrez氏。彼らのつながりは,MMORPG「World of Warcraft」のローンチ当初までに遡り,ともに北米東海岸では最大のギルドを率いていた仲間だったそうだ。
やがてGutierrez氏自身もカリフォルニアへ異動。2010年代半ばには2人でゲーム開発を始めるが,そこでプレイテストの煩わしさにぶつかった。この作業に辟易し,自動化を行う効果的なソフトを探してはみたものの見つからない。GDC 2017に参加し,ゲーム開発に関わる人たちに話を聞いて回ってみたが答えは一緒。誰もそんなツールの存在は知らなかった。
業種は違えど彼らはテストツール開発の経験者。「ないのだったら作ればいい」と思い立ったことが,「GameDriver」開発の始まりになったというわけだ。当初は4人ほどのメンバーで開発を始め,現在は10人ほどの規模になっているという。
そうして「GameDriver」は,WindowsとMac向けのSDKとして2021年8月にリリースされ,公式サイトでは「無料トライアル版」「テスター版」「エンタープライズ版」という3つのオプションが用意されている。さらなるビジネス展開を行うべく,現在はマニュアルの翻訳を進め,コンシューマ機向けの公式開発ツールとしての認証を得るべく動いているとのこと。国内のデベロッパやゲーム開発者も,「GameDriver」というツールの今後をチェックしておくとよいだろう。
GameDriver公式サイト
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