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[CEDEC 2022]ゲームは大きな財産。ゲーム展示や開発資料の活用方法を,多様な見地から俯瞰する
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印刷2022/08/26 15:24

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[CEDEC 2022]ゲームは大きな財産。ゲーム展示や開発資料の活用方法を,多様な見地から俯瞰する

 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2022」の3日め,2022年8月25日に「ゲームとミュージアムのオモテウラ〜ゲーム資料をどう扱う?〜」と題したセッションが行われた。
 セッションには,大阪国際工科専門職大学准教授の尾鼻 崇氏,大阪樟蔭女子大学専任講師の小出治都子氏,NPO法人IGDA日本/サイバーズ株式会社副理事長/代表取締役社長の中林寿文氏,そして京都国際マンガミュージアム学芸室学芸室員の應矢泰紀氏の4人が登壇した。

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「CEDEC 2022」公式サイト

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 ゲームとミュージアムはあまり近い関係にあるとは思えないかもしれないが,世界初のビデオゲーム「Spacewar!」が登場してから約60年,現在では任天堂のファミリーコンピュータやスーパーファミコンなども博物館の収集展示対象になっており,最近では各メーカーがゲームの開発資料を保存する動きも多くなっているという。
 そこで本セッションでは,ゲームの保存やその活用法の動向,ゲーム資料を扱うための人材育成,ゲーム産業での企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)も含めた多様な知見,そして博物館から見たゲーム資料のありかたや扱い方といったキーワードに沿って,報告や情報共有が行われた。

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尾鼻氏のプロフィール
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 まず尾鼻氏より,文化庁が続けている調査活動について報告された。
 2015年から文化庁はゲームアーカイブ利活用のための調査活動を行っている。ゲームを保存するだけでは持続性のある活動にはならないとし,ゲーム資料の利活用を進めることで持続性を担保していくために先行事例を調査するという。また,問題発見や解決のためにパイロット展を実施することで,実践的な形での調査も進めている。
※詳細はゲームアーカイブ所蔵館連携にかかわる調査事業を参照してほしい。

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調査の一例として,主に2000年以降に開催された比較的大規模なビデオゲーム展示の調査結果が示された。やはり,中心は首都圏であるようだ
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調査をもとに開催してきた企画展示会の履歴
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 2011年に開催された展覧会「電子化された『遊び』の世界」では,テレビゲームの普及に至る1970年代〜80年代のおもちゃの変遷を展示し,2017年の「ゲーム展TEN」では,ゲームを展示するのではなく,これまでのゲーム展示の調査結果を踏まえつつ,キュレーターへのインタビューや展示を再現するジオラマなどを用いる形で紹介を行った。2019年にはバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)の協力のもと「ギャラクシアン→ギャラガ→ギャプラス展」を開催し,それぞれのゲーム開発資料を展示した。そして2021年と2022年には,「Ludo-MUSICA I / II」というゲーム音楽のオンライン展示を実施し,ゲームをオンライン展示する際の課題発見などを行った。

 またこの事業では,蓄積してきたデータを多くの人に役立ててもらいたいという考えのもと,これまでの博物館展示の展示作品やその状況,所蔵情報,ゲーム作品の受賞情報などに加え,CEDECの講演に関係する資料などを,文化庁が公開しているメディア芸術データベースに登録するという作業を進めている。
 これにより,どのゲームがどこに所蔵されているか,どう展示されたのか,どんな場所で評価されたのかといった情報に,ゲーム開発者,協力機関,ゲームユーザー,美術館,博物館などが容易にアクセスできる環境を担保したいという。

 なかでもゲームの非専門家が博物館,美術館などでゲームを扱う際のハードルの高さは大きな課題の1つと考えており,データベースの構築は,その解決にも役立つのではないかとのことだった。

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 尾鼻氏はこうした活動を通じて,日本が世界にアドバンテージを持つゲームという文化を世界に発信するための公的なミュージアムを作りたいとし,そのために活動を進めている段階だと述べた。


 続いて小出氏が報告を行い,現在,ゲーム企業のアーカイブ活動が盛んになってきている状況やゲーム展示の展望と課題,そこに関係する「学芸員」などを説明した。

小出氏は大学教員,学芸員教育の立場から報告を行った
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 現在,バンダイナムコエンターテインメントやスクウェア・エニックスを始め,多くの企業がアーカイブ活動を進めており,企業による博物館の建設予定もあるという。

企業博物館は,企業の制作物を始めとした資料展示から,地域との関係性を見出したものなど,内容は実に多彩だという
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 企業博物館の目的はさまざまで,娯楽性を重視したものも多く存在している。公立博物館(企業博物館以外の博物館)とは娯楽性との違いもあり,「娯楽」をどう捉えるかによって博物館の性質も大きく変わってくる。
 公立博物館ではミュージアムショップやワークショップの充実を「娯楽」として捉えており,展示を補強する学習の促進として考えられている一方,企業博物館は「娯楽」という言葉どおりエンターテイメント方向に寄っており,そうした展示が多く行われている。

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 続いて,企業博物館に「学芸員」と呼ばれる人はどれほどいるのか? というデータが提示された。1985年時点では約85%の企業博物館が「いない」としていたが,30年あまりが経過した2017年にはその数が約60%に減っていた。母数が異なるだろうから単純比較はできないものの,学芸員の数は増えているようだ。しかし変化はわずかで,半分以上の企業博物館に学芸員が存在していないことが分かる。

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 これに関連して,「企業博物館の開館後に資料収集や研究活動を行うか」という質問には,73%の企業博物館が「現在も資料収集活動を継続している」と回答したものの,そのうちの35%は「研究活動をしていない」とした。
 以上から,資料収集や研究活動は設立企業の従業員や外部研究者などが担っており,企業博物館に所属する学芸員がそうした活動をすることが難しい状況であることが分かったという。

 さて,そもそも日本の博物館はどれくらい存在するのだろうか。小出氏はその答えとして国内の博物館数のデータを提示した。それによると,2018年時点で約5700館であり,アメリカの約17500館には及ばないが,中国(3886館),イギリス(1743館),フランス(1218館)よりも多い。
 博物館は登録博物館,博物館相当施設,博物館類似施設の3種類に分けられるが,企業博物館は多くが博物館類似施設に分類されているという。

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 学芸員については,アメリカやイギリスなどでは,展示を専門とする「キュレーター」や管理する「レジストラー」,資料保存や修復を行う「コンサベーター」といった職務分化が進み,それぞれに人材育成が行われている。日本の学芸員は専門職員として規定されているものの,しっかりとは分けられてはおらず,業務は学芸員というひとくくりで行われ,1人がさまざまな作業に携わっていると小出氏は語った。

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 そうした現状を踏まえたうえで,日本のゲーム展示がどのように行われてきたのかという話題へ移っていった。
 小出氏によれば,2000年から2019年までに開催されたゲーム展示の数は約32展で,1年に1〜2展が行われている。これらは,ゲームソフトや基盤などの現物展示やプレイ可能な実機展示(プレイアブル展示)が多いが,ゲームに関する資料を博物館資料として保存している館は少なく,ほとんどの場合,どこかから資料を借りてくるといった状況だという。小出氏は,ゲームの歴史を紹介する展示には大きな意義があると考えている。

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 また,現在のゲーム展示は,実際に出展されたゲームを体験したことがある世代の存在で成り立っている部分が大きいとし,そうした世代がいなくなったあと,どうなるのかという点を課題として挙げた。
 さらに,ソフトや資料などの現物展示とプレイアブル展示が規格化することで,ゲーム展示が持つはずの広がりの可能性を阻害してしまう危険性があると述べ,博物館資料としてのゲーム資料の定義づけや,来館者に何を伝えるのかといった目的の明確化の重要性なども課題として挙げた。

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小出氏らが開催した展示では,ゲーム展示を規格化しないためにいろいろな展示方法を模索し,実行してきたという
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 以上の報告をまとめる形で小出氏は,キュレーションを重視する展示が増える必要性があるとした。そのためには人材育成も必要で,現在の日本の学芸員システムでは欧米のような職務分化が難しいため,他分野からのアプローチが重要だと述べた。
 また,現在の学芸員課程ではゲームに関わる分野の授業が難しいが,別のアプローチでゲームを考えることは可能であり,そうした視点から学芸員を養成できるのではないかと提案する。

 そして,企業博物館のゲーム展示が今後増えていくことを予測しつつ,企業博物館であることを活かした「娯楽」と「教育」のバランスを考えることが重要であると述べた。さらに,設立企業の資料が中心となる企業博物館とは別の,広義のゲーム文化については,企業博物館以外の博物館での展示が課題だとし,ゲーム展示の多様な可能性をゲーム企業と一緒に考えていきたいとまとめた。

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 続いては「ゲームジャムしてたら文化庁のデータベースにアーカイブされたはなし」というテーマで,中林氏の報告が行われた。

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 中林氏はまず,「ここまでのはなし」として,「Spacewar!」開発者によるデモンストレーションを体験したことなどから,ゲームはすでにアーカイブの対象として重要なものになっていることを再認識したと述べた。
 そのうえで,中林氏がIGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)で2011年に開催した「福島GameJam」(以下,FGJ)が,文化庁メディア芸術祭でエンターテインメント部門審査員会推薦作品に選出され,結果的にアーカイブされたことを紹介した。

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 産業復興支援を目的としたFGJは,プロのゲーム開発者と東北の学生が一緒にゲーム開発を行うことでノウハウ共有を図ったりするイベントで,福島を中心にオンラインで4か国14会場をつなぎ,531人が参加,30時間でゲームを制作したという。

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 そんなFGJが文化庁メディア芸術祭に推薦され,審査委員会推薦作品として選出されたわけだ。中林氏は推薦の打診を受けた際,復興支援に対して,ゲーム業界の人間としてできることをやろうという意識はあったものの,それがアート活動だという認識はまったくなかったという。
 しかし,FGJにとって少しでもポジティブな要因になるのであれば損はないと応募したところ,選出されたという流れのようだ。

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文化庁メディア芸術祭についても説明が行われた。文部科学省が8月24日に発表したとおり,文化庁メディア芸術祭は2021年度に募集した第25回の展示を2022年9月に実施するが,2022年度の募集は行わず,「歴史的な役割は終えた」(文化庁)として事実上,終了となった
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メディア芸術とは文部科学省と文化庁が定義した言葉で,マンガ,アニメ,ゲームといったものが含まれる
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 FGJが文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品に選出されたことで,メディア芸術祭の会期中,国立新美術館で「福島ゲームジャム in 文化庁メディア芸術祭」の開催が実現した。そのワークショップでゲーム開発から成果発表会まで行い,多くの人の目に触れたことが認知向上につながったという。

「福島ゲームジャム in 文化庁メディア芸術祭」は,来場者の見学も可能だった
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メディア芸術祭の巡回展にも招聘され,ビデオ上映やミニワークショップなどで普及活動を行った
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「福島ゲームジャム in 文化庁メディア芸術祭」や巡回展への招聘だけでなく,翌年の開催から推薦作品選出の告知や文化庁への後援依頼などが可能になった。教育機関などの協力が得やすくなったり,業界内の開催協力が増えたりするといった効果もあった
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 FGJは「文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品アーカイブ」に登録されており,また,文化庁メディア芸術祭で行った「福島ゲームジャム in 文化庁メディア芸術祭」は,「文化庁メディア芸術データベース」に登録されている。

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 まとめとして中林氏は,ゲーム作品や関連活動(ワークショップなども含む)もアートとして扱われ,アーカイブ対象にもなることを挙げ,こうした芸術祭や美術館等への出展はCSR活動にとって非常にポジティブな要素になるとした。そして,可能であれば積極的に行っていくべきだと話した。

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 4人めは京都国際マンガミュージアムの学芸室員である應矢氏で,博物館の学芸室員という立場から「ゲームミュージアムは作れるのか?」そして「どう作るのか?」についての報告を行った。

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小出氏が挙げた博物館施設のうち,京都国際マンガミュージアムは博物館類似施設に相当するとのこと
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 應矢氏はまず,博物館の仕事について,大きく分けて「収集」「保存」「公開」の3種類があると紹介し,中でも「公開」が最も難しいと話す。
 また,博物館には大きく分けて「常設展示」「企画展示」の2通りの展示が存在し,企画展示は常設展示とは異なり,さまざまな企画を考え,そのつど違った内容になる。

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 そしてここから,「ミュージアムでできるゲーム資料の利用活用方法について」というテーマを掲げ,挙げられた項目を順に説明していった。

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 まず,「作品紹介展示」は,ハードウェアやソフトウェアの特性や発明について紹介するものだ。ソフトウェアと共に発展してきたハードウェアは,ゲームと同様,実際の製品を展示することが望ましいという。
 「プレイ展示」にも上と共通する点が多いが,どのようなゲームなのかを知ってもらうためにも,実際のプレイ,もしくはプレイ現場を再現して展示することが最も有効だ。アーケードゲームならゲームセンター,コンシューマゲームなら自宅と,時代によってそれらがどうプレイされたのか,現場を再現して見せることも効果的だという。

 「歴史展示」はどのような展示でも共通して利用できる要素だ。基本的には年表の形で発売日などを表示するほか,ブームや社会現象を合わせて表記することで,時代背景や文化の変化などが読み取れ,過去を振り返るという意味でも良いとのこと。

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 「制作パート展示」は,京都国際マンガミュージアムで多く行われる展示の1つでもある。ゲーム制作時の企画書やキャラクターデザイン画などを見せるほか,現在ならサウンドや映像の視聴も可能ではないかと應矢氏は言う。こうした資料を展示することで,ゲーム制作に興味を持ってもらえるほか,ゲーム制作に多くの人々が関わっていることや制作時の苦悩や苦労,成功したときの楽しさなども知る機会になるとのこと。

 「他メディア展示」は,ゲームと関わるマンガ,アニメ,実写作品やそれらの劇場化作品などを紹介,展示するもの。ゲームをそれだけで考えるのではなく,他メディアと複合したものと考えることで,広がりを感じてもらえるのではないかという。

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 「問題定義展示」は,やや毛色の違う印象で,ゲームが社会にどのような影響を及ぼしたのか,また,一時話題となった健康への影響など,問題点を定義する展示だ。上記の「歴史展示」と重なる部分はあるが,問題に特化して,しっかり説明できる形で見せれば,意義ある展示になるのではないかと提案した。

 続く「問題定義展示2」は,先の「問題定義展示」とは視点が異なり,ゲーム資料の保存方法や保存場所の問題などを展示するという。マンガや音楽,アニメなど,ほかのメディアでも言えることだが,それぞれの資料をどこが,どのレベルで保管するのか,デジタルで保管するのかアナログ(紙など)なのか,それらをどのように活用するのかといった事柄を問題定義として来館者に訴えかけるような展示も可能ではないかと述べる。

 「制作現場展示」は,京都国際マンガミュージアムでもアニメ制作現場などを見せたことがあるという。企画時点から,会議の様子なども展示したとのことで,ゲームでも,現場の環境や賃金についての内容なども加え,制作現場がどのような状況なのかを知ってもらう機会になるとした。

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 「他国比較展示」は應矢氏が最もやってみたい展示の1つで,日本と他国のゲーム作品を比較するという内容だ。文化や宗教,法律などの違いで表現方法が異なるほか,国によっては禁止になるものや規制がかかる内容もあり,日本と他国を比較して展示することでそれらを知り,理解できる場になり得るということだ。

 「展示場紹介展示」について,應矢氏は小出氏と同様,企業博物館が今後,多くできると考えており,どこに行けばどのようなゲームミュージアムがあり,どのような資料があるのかといった情報をまとめた展示が可能なのではないかという。

 そして應矢氏が,上に紹介してきた展示に比べて最も難しいと考えているのが「プレイ展示」だ。理由としては,過去のソフトウェアを動せるハードウェアが存在しないことや,現在のディスプレイに出力できないといった技術的理由によるものとなる。

 應矢氏は,自らのゲーム体験として隠しキャラを出したことや裏技を試した思い出を語り,そういう体験までできるのが本当のゲームミュージアムではないだろうかと述べる。再現映像や写真などを見ただけでは本当の体験とはいえないが,展示ではプレイ時間に限界があることが問題だと話す。

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 そこで應矢氏が提案するのがメタバースだ。メタバースを活用したミュージアムを構築することで,来館しなくてもいつでもプレイ可能な空間が作り上げられるのではないかと考えており,簡単ではないことは十分に理解したうえで,技術が発展し,いつか実現可能になると信じているという。

 まとめとして應矢氏は,多くの会場でさまざまなゲーム展示を行うことで,いろいろな問題が浮上してくるが,それらの問題を洗い出し,ブラッシュアップを繰り返すことで,多様な展示が作り上げられるのではないかとしめくくった。

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 全員の発表終了後,残り時間でいくつかのテーマについてディスカッションが行われた。最初のテーマは「博物館でゲームを展示することに,どんなメリットがあるのか?」というもの。

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 中林氏は広告,宣伝を第一に挙げた後,アニメなどのIPとタイアップした展示のグッズ販売が人気を博している例があるとし,広告効果だけではなく,収益の得られるモデルとして運営できるのではないかという意見を出した。

 應矢氏は,京都国際マンガミュージアムでも実際に企業とコラボした経験を挙げ,中林氏と同様,収益は重要だと話す。限定商品には多くの人が興味を持つため,展示が一番ではあるとしつつ,持って帰れるものとしてのグッズの存在は大きいと話す。
 また,ある企業はファンサービスとして展示を行うこともあると述べ,10周年や20周年など,区切りのタイミングで作り手とファンがつながりを持つことには意味があるのではないかと話した。

 小出氏は,企業の歴史や企業がこれまで行ってきたことを新しい社員に教えることができ,社員育成に生かせるというメリットが挙げられるとした。
 そのほか,ゲームに関わりを持たなかったり,関わりが薄い層に対して,ゲームへの興味や購買意欲を高める効果が期待できるのではないかと話した。

 次のテーマは「ゲーム資料を扱うための課題とは?」というもの。
 尾鼻氏は,ゲーム資料を企業が博物館に渡した場合,博物館のキュレーターが整理することで博物館側の研究なども進むのではと話し,それは権利的に可能なのかと中林氏に投げかけた。中林氏は,共同研究という形ならおそらく可能だと答えたが,共同研究そのものが,ゲーム研究の下地となっていないため,そうなることを期待すると返した。

 「ゲーム資料をどのように展示をするのか?」というテーマについて應矢氏は,どんな目線で,どんな切り口で見せるのかを決め,膨大な資料の中からキュレーターが的確に抜粋することが大事だとした。「設定資料」や「音楽」といったカテゴリ分けでもいいが,クリエイター個人に注目し,そのクリエイターが関わった部分だけを抜粋することもできるのではと提案した。

 尾鼻氏は應矢氏に続けて,美術やマンガなど,作家が中心となった展示がマジョリティであるのに対して,現在のゲーム展示で作家性を出しているものは比較的少ないと述べた。そこがゲームの面白いところでもあるので,新たな切り口にもなるのではないかとした。

 そして尾鼻氏が「ギャラクシアン→ギャラガ→ギャプラス-ナムコ開発関連資料から見るアーケードゲームの制作過程-」を取り上げると小出氏は,開発者の視点を一般の人が知る機会になったことや,ゲーム開発者を目指す人達にとって刺激になったのではないかと,当時を振り返りった。
 さらに尾鼻氏は,開発者に届きにくいユーザーの生の声を聞き取る場としても,ゲーム博物館は成立するのではないかと話した。

 最後のテーマは,「ゲーム資料の扱い方について」だ。
 中林氏は,デジタルゲームは,技術革新に合わせて従来の作品が遊べなくなる,といったことを繰り返していると指摘し,そのうえで,対応するためにはアーカイブの収益モデルを確立する必要があり,そこを検討しなければアーカイブは成立しないのではないかと問題提起した。

 尾鼻氏は最後に,ゲーム企業の人達が考えている以上に(実際のソフトウェアやハードウェアを含めた)ゲーム資料には価値があると強調した。それらを残し,伝えられるようなものを我々からも提案していくとし,今後も協力関係を築いていきたいと述べてセッションをしめくくった。

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