企画記事
インタビュー“撮られ方”講座! 写真を撮られる人&企業は(ゲーム業界のみならず)一度ご覧あそばせ
「俺,インタビューとか好きじゃないから」
「インタビューが初めてで,どうすればいいんでしょう?」
毎年,こうした業界人とは必ず出会う。人生初のインタビューについては,界隈の新陳代謝を表しているのでよいとして。
インタビューで話す内容にしろ,メディア側の出方も大いに影響する人と人とのやり取りなので,それもよいとして。
写真を,なんとなく撮ってもらってる人はいないかい?
インタビューには,企業プロモーションやメディア企画など種別がいろいろある。「その人のインタビューってだけで価値があるもの」は別として,その多くは参加者を見るのではなく“参加者を通じて,紹介したいものの魅力を届ける”のが目的となる。
このとき,会話力で勝負したい。インタビュー写真なんて誰も見ない。そう考えるのもまた,いさぎよしである。
ただし,あなたのスタンスがどうだろうと,被写体が不慣れだろうと,結果的にイイ写真が少なくて悩むのはこちらとて同じだろうと。
本当に困るのは,あなたたちが宣伝したいものの印象だ。
本稿は読者であり,業界人でもあり,インタビューの機会がある,さまざまな業界関係者に向けた“インタビュー写真の撮られ方”講座。
見られ方・撮られ方は作れる。
武器はちゃんと装備しておくべし。
撮られ方講座をはじめよう
先手のジャブの受け止め方は各自に委ねるとして,本稿は技術系カンファレンスなどと同じく,「インタビューの機会がある(かもしれない)各種業界人」に向けた,一般読者を置いてきぼりの企画である。
なお,インタビュー撮影というのは弊誌も含めて「ライター/編集者が撮影兼任」「カメラマンを用意」などケースバイケースだ。
そのため,場合によっては撮影担当者の能力・機材の問題により,撮られ方以前の写真しか生み出せないこともしばしある。
そこはこちらも申し訳なく思うが,人材は有限なのだ。
一方で,写真の良しあしは,そのほかの芸術品と同じく優劣をつけられるものではない。だが,それでも明確に,魅力的な写真の候補数には変動がある。仮にそのなかで至高の一枚を確保していたとしても,もっといいかもしれない写真が生み出される確率は異なる。
それこそゲームを作る人なら,これら「もっと」のジレンマをイヤというほど知っているだろう。それと同じである。
というわけで今回は,「これを知っとくとワンランク上の私を撮ってもらえる!」と思える,打率向上のためのテクニックを紹介する。
なお,下の写真のようなノリではないので,そこはご安心を。
その1「身だしなみ」
前提として我々は人間だ。人である以上,容姿などの見た目も人それぞれ。とはいえ,そこは俳優・声優・モデルなどの撮られる専門家が糧として磨いていくものなので,多くの人には関係ない。
そのうえで求められるのが,俗に言う“身だしなみ”と。
己が情報を媒介するマネキンであると覚悟する意識である。
言動などの人となりはさておき,身だしなみの代表格は「服装」だ。正直,服に正解はない。フォーマルなスーツ。カジュアルな私服。なんでもいい。オシャレであるか否かも問われない。
ただし「俺って服に頓着しないタイプだから」などと思うのはNG。その由来がシラフでも羞恥でも,当人のキャラクター性も込みで売りにいく戦略でもなければ,プラスに働くことはまずない。それがPRだ。
人の視線は気にせずに,見られ方は気にする。
素を出したければ素も作る。自分を隠して自分を作ろう。
■普段どおりのカジュアル。問題なし |
■ピチッとしたキレイめ。問題なし |
■「オシャレですね」と「おまえ正気か?」の判定が難しいとキワドイ |
服は「シワ・汚れ」「襟などを曲げずに着られているか」も気にしておこう。意識するのが恥ずかしい,などと考えても得はない。
壮大な冒険の前に,キャラクターメイクで細部を作り込むときと同じ意気で,カッコ&カワイイ自身を鏡の前で作ろう。
これは,あなたをアゲるためではない。
伝えたいものをサゲないためにだ。
身だしなみには髪型やヒゲ,化粧の有無もある。ただしこのあたりは個性の範疇のため,作り込みについてはお任せである。
だが「寝グセ」や「鼻毛」といった手落ちは,撮影の角度を大幅に制限させる。これらは加工して隠したり,画像化すると見えなくなったりするので致命傷ではないが,気にしよう。メディアの多くも,タレント以外の写真をレタッチすることはあまりないためだ。美意識は大切。
多くの人たちを悩ませる“清潔感”なるフワッとした概念は,加点よりも減点に目がいきがちだ。それがゲームのレビュー論などでもよく言われる日本人の性質であり,あなたたちが届ける対象でもある。
当日朝でも実施直前でもいい。鏡の前に立とう。そこで受験生や就活生や旅行者の忘れ物チェックのようにアラを見直そう。
口酸っぱく言う。これは美しい自分を見せつけるためではない。インタビューで伝えたいことにケチをつけないための攻略法だ。
その2「ロケーション」
取材場所は大事だ。といっても最重要ではなく,どちらかというと場を仲介する広報担当などが気にするべきポイントである。
大手企業なら,取材用の会議室などを決めていることが多い。不慣れな会社,あるいは中小企業だと場所も限られるだろうが,「どこがより映えるか」「キメ写真はここで撮る」などは勘案しておこう。
目につきやすさを向上させるのは広報戦略の基本である。
■カーテン閉め |
■カーテン開け |
■カーテン開け+観葉植物 |
■位置が悪いなら場所移動を検討 |
ただし,メーカー問わず“取材ならあそこで”とだけ消去法的に考えていると,背景のプラス要素を考えることがなくなる。
会社の備品の取り扱いを加味すると,そう簡単に物を動かせない事情もあるだろう。わざわざいじるのも面倒この上ないだろう。
それでもできる範囲で「照明」や「壁」を意識しよう。壁のシミなどは撮影段階で飛ぶことも多いが,気にしない理由にはならない。
お手軽なトッピングは観葉植物だが,押し売りする気はべつにない。ほかにインタビュー時に説明したい対象の「資料」や「グッズ」を紹介用,もしくは物撮り用に準備すると,手軽に見栄えを足しやすい。
それらがあるといい,ないからよくないという話でもない。写真の絵面は事前段階でもいろいろ作れるという話である。
その3「撮られ方」
ここまでが下地で,ここからが本番だ。以降は仮のインタビュー写真をとおして,収録時の初歩的な心構えを伝えていく。
なお,自分がカッコよく&カワイく見える表情・角度は,当人が回数を重ねるか,モデルのように研鑽するか,カメラマンが読み解くかしないと見えてこない。なので,こうした特効薬の話はしない。
それではまずは,基本的に問題のない映り方から。
■無表情 |
■笑顔 |
■伝統のろくろ |
■ジェスチャー類 |
プロモーションの最善策はいつの世も“笑顔”だ。前日から笑顔の練習をしておこう,とまでは言わないが,表情を意識しなさすぎるとこれまた最終的に,我々よりも「PRしたいもの」が困ってしまう。
ただ,表情は常に気を張っていろなんて話ではない。笑顔もその一瞬を撮影者が切り取るものであり,数が多いと助かるが,ずっと笑っている必要はない。変顔の写真にせよ,こちらのミスショットの部類だ。
悪い表情といったものもそれほどなく,写真の味付けとしては使い道がある。逆説的に,カワイイ参加者と怖いゲーム,そのまた逆などもユニークなフックにはなるので,PR戦略につなげることもできる。
そんななかで,多いと困る仕草がある。その最たるが「下を向きがち」であり,これがとくに写真候補数を減らしかねない。
■下を向きがちな姿勢 |
■ずっとPCや資料を見ている |
■手慰みに,無関係な物を握る |
■スマホを弄りすぎる |
これらは「やるな」という動きではない。インタビューの場であれば,同席者の誰しもがする動作の一種である。そのため,一般常識やマナーなどの分類からしてNGであるといったこともない。
むしろ,これらは取材側にすべき説教のほうが数多い。
そのうえでの課題は「しすぎる」ときだ。イイ顔が撮れる可能性は総合して,顔を下向きでいる時間が長ければ長いほど減る。
仮に実施時間が1時間としたとき,その間に撮影できるショット数は膨大にあるが,機会も膨大にあるかというとそうではない。
「人の顔を見て話す」ことを喜ぶのは,話者よりも撮影者なのだ。下向き顔は,モデル風の撮影でもないと使い道が限られる。
同じように,続く写真も「NGではないが,結果的に(誰かが)NGにする可能性もある写真例」である。
■手癖 |
■話すときの手癖 |
■座り方のクセ(1) |
■座り方のクセ(2) |
個々人が持つさまざまなクセは,その人の個性を表す動きになりうる。ゆえに,キャラクター性を付加するためにあってもいい。
けれど,これらもまた「しすぎる」とバランスに影響が出る。
インタビューというのは,する側もされる側も意外と疲れる。お茶や飲みの場とは違い,誰しも1時間と話していると疲れてくる。
そうした緊張由来の疲れを緩和するのが取材側の腕前,なんて見方もあるが。過半数で考えるなら「1時間で疲れる」と思っておこう。
その結果,「疲れから思わずやってしまう所作」が出てくる人もいる。それが上図の分類である。写真撮影が済んだ頃合いならまったく問題ないのだが,レンズが向いている間は気を付けよう。
ちなみにインタビューでの写真撮影は,その人が「話しているとき」も「話を聞いているとき」も行われる。
これを知っておくだけで,撮影チャンスも2倍になる。
今一度,参加者は表情や姿勢にずっと気を張っている必要はないが,気にしなさすぎだと撮れ高に影響する。最終的に使われる写真というのは,「表情・動きの組み合わせが最善に思えたもの」だ。
キリッとした表情をせずともよい。
満面の笑みを浮かべなくてもよい。
ただただ,撮影のための機会を増やす。
数打ちゃ当たるの,アタリ数を増やす。
つまり,どれだけ多くの機会を提供できるかがインタビュイーの腕前。どれだけ最善を引き出せるかがインタビュアーの腕前。一瞬のチャンスを切り取って記録するのがカメラマンの腕前,などと言える。
※インタビュイー=取材される人。インタビュアー=取材する人
その4「同席者がいるとき」
インタビューは単独のほか,同席者多数ということもある。そうしたとき,これまたよくあるのが下図のような写真である。
これも,できれば使いたくない1枚だ。しかし,このケースはときには“最初から最後までずっとそう”な場合もあり,複数人の状況写真を並べて「ギリギリ使えるのがこういうのだった」ということもある。
メディア側の仕立てによっては,個別写真さえ確保していれば集合写真は使わないパターンもある。そう割り切れるコンテンツであればいいが,参加者同士の仲のよさをプラスと捉えるなら注意しよう。
とくに「同席者が笑ったら一緒に笑う」「笑わずとも視線は向ける」。こうした雰囲気作りのために求められるノリとコミュニケーションの瞬発力は,むしろインタビュー以外の場でメリットになる。
正直,撮影対象が1人のときは前述してきた対策をせずとも,どうとでもなることが多い。しかし,同席者としての姿勢は注意のしようがない。ゆえに,本企画で一番伝えたかったのが上記である。
一例として,撮られる側のプロの場合,インタビューとは別撮りで,しゃべっている体の撮影「作り」もよくある。これは悪いやり方ではなく,撮られる側も会話より写りに意識をさける撮影法だ。
しかし,大多数の人は「しゃべってる体でお願いします」と言われて撮影をはじめられても,逆に緊張しないわけがない。
ゆえに,インタビューの時間がすぎていき,ほどよく慣れて,疲れてきて,レンズから意識が外れてくると結果的に自然体になる。
だから結局は自然体でいい。そう考えて,以上の注意事項を忘れるのもアリだ。そのほうが意識せずに済む人もいるだろう……が,そこで自然になりすぎず,ほんの少しだけ注意事項を思い出し,かすかに意識しよう。そして,よりイイ自分を見せようと,顔や指の神経を操ろう。
・作り → プロの業。普通は難しい
・自然体 → 結局これでいいよね,と思いつつ
・撮られ方の意識 → ちょっとだけ思い出そう
このサイクルをお守り代わりに,全身の力みをほどよく抜こう。
さすれば,ワンランク上の私になれる日は間近だ。
最後は,インタビューの冒頭・最後を飾る「キメ写真」についてだ。こちらは「笑顔」か「真面目」がスタンダードと言える。
キメ写真だけは,誰しもがバリバリの作りだ。話す労力はなくとも,被写体のノリや撮影者の腕前が大いに影響する。そのため出たとこ勝負ではあるのだが,ここであらためてロケーションに気を配ろう。
撮影時は,会社のロゴが飾られた入り口やフロア,インタビュー対象のコンテンツ類のPOPなどを並べて撮影するのがお約束だ。
そうした物品を用意できない会社もあるとしても,広報担当はより見栄えのいいセッティングがあるかどうか,これまた勘案してほしい。
決め写真の撮影は,場所が同じでも問題はない。けれど,オープニングとエンディングでトーンを変えたいなら場所替えは必須だ。
インタビュー撮られ方講座は以上である。おおよそ想像していたよりもクリティカルな技はなかっただろうが,そういうものだ。
インタビュー写真に求められるスタンスというのは究極的に。
・身だしなみ+表情+姿勢×相手と目や感情を合わせる=イイね!
こうした地味なポーズを体に叩き込むことである。しかも最優先は口を回すことのため,撮影にまで意識を回すのはとても難しい。
そう,難しいのだ。インタビューを受けている人たちは。世の中では私も含めて,まともにインタビューされたことのある人のほうが圧倒的に少ない。それだけに,インタビュイーの緊張感は私も存じない。がんばってください,と口に出さずに応援することしかできない。
それがパブリックな概念で,業界の常で,ゆえに参考にできるものもあまりないインタビューというもの。だからこそ本稿をしたためた。これが弊誌のみならず,ゲーム業界のインタビューの撮られ方における小さな助力になれていれば,それだけで心安らかである。
今日からお仕事がちょっと楽になるかも,と思えてきて!
ちなみに合間に使ってきた上図のような写真は,とりあえずの彩り目的で撮ったものである。ファッション誌でもないゲーム専門メディアでは,通常対応でこのように撮影することはまずない。
こんな風に撮ってほしい,と言い出せる人もそうはいないだろう。
だが,こうしたインタビュー写真に興味があるのなら,それもまた新たなしのぎとさせてもらう。ご入り用の際はぜひ4Gamerへ!
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