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クリエイターファーストの生成系AI×ブロックチェーンエコシステム。アニメチェーンが目指す未来とは
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印刷2024/07/10 11:00

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クリエイターファーストの生成系AI×ブロックチェーンエコシステム。アニメチェーンが目指す未来とは

 アニメチェーンファンデーションのファンダーでCEOである三瀬修平氏は,「IVS Crypto 2024 KYOTO」で登壇し,「アニメチェーンが目指すクリエイターファーストな生成系AI×ブロックチェーンのエコシステム」と題した講演を行った。本稿では,三瀬氏が語ったアニメチェーンの構想を紹介する。

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 三瀬氏は講演冒頭で,アニメチェーンのビジョンを「Magic Wand for Creators」と表現した。これは,AIの力を使ってクリエイターたちに魔法の杖を提供し,アニメをもっと世界に届けていくことを意味している。三瀬氏は,AIとブロックチェーンの融合が,責任ある画像生成の分野で重要になると強調した。

 アニメチェーンでは「Animechain.ai」というプロジェクトを進めており,3つの主要プロダクトを開発している。

1. アニメに特化したAI基盤モデル
2. AIを活用したアニメ制作ツール
3. 独自のブロックチェーン「ANIMA」


Animechain Foundation CEO&Founder
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 三瀬氏は,これらの技術を組み合わせることで,アニメ産業が抱える課題を解決し,新たな価値を創造できると説明した。

 アニメ産業が直面している主な課題として,人手不足,スタジオのライン待ちによる長い制作期間(人気作品の続編に3〜4年,場合によっては5年以上かかる),デジタル化の遅れ,AIの学習データに関する権利問題などを三瀬氏は挙げ,これらの課題に対し,Animechain.aiによって解決策を提案している。

 一つは,アニメ制作に特化したAI基盤モデルの開発だ。三瀬氏は,既存のAIモデル(Stable Diffusionなど)が日本のアニメ制作に最適化されていないことを指摘。Animechain.aiは,日本のアニメの長い歴史を踏まえた,高品質なアニメ風イラストや動画を生成できるAIモデルの開発を目指しているそうだ。

 さらに三瀬氏は,クリエイターの創造性を最大限に引き出すツールの重要性を強調した。Animechain.aiのツールは,従来の動画編集ソフトに近いUIを採用し,クリエイターが直感的に操作できるように設計されている。

 また三瀬氏は,ブロックチェーンによる権利管理と収益分配も提案した。AIモデルの来歴情報やクリエイターの貢献度をブロックチェーン上に記録すれば,公平な収益分配を実現できるのだという。

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 三瀬氏は,Animechain.aiの技術が実用化されることで,アニメ制作プロセスが大きく変わると予測している。それが顕著に表れるのがアニメの制作期間だ。現状,アニメ制作スタジオのライン待ちによって3〜4年かかっていたものが,AIのサポートによって数か月単位になる可能性もあるという。また,コンテンツの多様化もやりやすくなるため,広告,ゲーム,グッズなどを同時に制作できるようになる。

 広告やグッズ展開は,ありものの素材を使い回すことが多いが,広告専用のアニメを作ることや,グッズに合わせた絵素材を用意するといったことが容易になるそうだ。さらに,クリエイターが創造的な仕事に集中できるようになるため,待遇も改善される。これらの変革により,アニメ産業全体の成長が加速するという。

 また三瀬氏は,「オプトインデータファースト」の原則を掲げ,権利者の許諾を得たデータのみを使用することの重要性を強調した。AIモデルの開発に貢献したクリエイターやIPホルダーに適切な還元を行うことで,持続可能なエコシステムを構築する構想なのだという。海外では学習元が不明瞭なアニメ風生成AIサイトがいくつも見られるが,Animechain.aiではこの権利問題を解決することを重要視していることが見てとれる。

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 「日本には本当に愛すべきコンテンツIPがたくさんあります。こういったものがちゃんと還元を受けられる仕組みを作ることが,AIの持続的な成長のためにも重要です」と三瀬氏は述べ,クリエイターとIPホルダーの権利を尊重する姿勢を示した。

 Animechain.aiは,AIモデルの権利をトークン化する「AIRA(AI Rights Asset)」という概念を導入している。三瀬氏は,AIRAによって新しい投資の形が生まれると期待を寄せていた。

 「将来的には,銀行や証券会社の窓口でAIRAを売買できるようにしたい」と三瀬氏は語り,一般の人々がアニメIPに投資できる未来を描いた。また,ブロックチェーン技術はバックエンドで動作し,ユーザーが意識せずに利用できるようにすべきと指摘する。

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 Animechain.aiはいいことづくめのようだが,AIの利用に対する抵抗感や不安を払拭し,業界全体でAI技術を受け入れていく必要があったり,AI生成コンテンツの著作権や,AIの学習データに関する法的問題など,まだ明確な指針が定まっていなかったりと,課題もある。

 とくにAIの利用についてはネガティブな印象を持つ人達も一定数いることから,Animechain.aiに賛同しつつも,現状では表に名前を出せないパートナー企業もかなり多いそうだ。今回の講演では,許可を得たうえで,グリザイアシリーズなどで知られるフロントウィングラボが研究開発パートナーになっていることを発表した。これらのパートナーシップを通じて,実際の制作現場のニーズに合わせたツールの開発を進めていくという。

 また,2024年7月4日にAnimechain.aiのホワイトペーパーを公開(PDFファイル)したことを報告。今後はメインネットの立ち上げを予定しているが,業界標準の確立を待って慎重に進めていく方針を示した。

 講演の最後に,三瀬氏は人間とAIの関係性について「AIと向き合うことは,ある意味人間と向き合うことだと思います。人間にしかできない仕事は何か,人間としての価値は何かを考えることが重要です」と述べ,AIの導入が単なる効率化ではなく,人間の創造性や価値の再定義につながる可能性を示唆した。


 Animechain.ai構想は,日本のアニメ産業が直面する課題に対する革新的なソリューションを提供すると同時に,クリエイターの創造性を最大限に引き出すことを目指している。三瀬氏の語る未来像は,AIとブロックチェーン技術の融合により,アニメ制作の効率化だけでなく,新たな創造の可能性を開くものだろう。

 しかし,この壮大な構想の実現には,技術の進化だけでなく,業界全体の理解と協力,そして適切な法的・倫理的フレームワークの整備が不可欠だ。アニメチェーンの挑戦が,日本が誇るアニメ文化の新たな可能性を切り開き,グローバル市場でさらなる成功を収めることに期待したい。

「Animechain.ai」公式サイト

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