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「『ファンコミュニティ』推しエコノミーの世界線」聴講レポート。中山淳雄氏による講義のあと,ゲーム業界のベテランがDAOなどをテーマに議論
3日目には,「中山淳雄のエンタメビジネス全史LIVE!〜『ファンコミュニティ』推しエコノミーの世界線〜」と題したセッションが行われたので,その様子を紹介する。
同セッションには,エンタメ社会学者の中山淳雄氏,スゴロックスCEOの西山泰弘氏,Puri Prince代表取締役の中山雅弘氏,SHAKE Entertainment代表取締役の椎野真光氏が登壇した。なお西山氏,中山(雅)氏,椎野氏の3名は元セガの社員で,97年入社の同期だという。
まずは「クリエイターエコノミー」の話題に。これはユーザーがユーザーに販売する市場であり,現在はグローバルで30兆円,日本で2兆円の規模となっている。年々成長しており,最近ではVTuberが急成長しているそうだ。
漫画【推しの子】は,アニメ化とYOASOBIによる主題歌「アイドル」をきっかけとして,爆発的に広がっていったという。これは「YOASOBIはすごい」で終わる話ではなく,「歌ってみた」「踊ってみた」などのUGC(ユーザー生成コンテンツ)が深く関連していると,中山淳雄氏は指摘する。
YOASOBIの曲が1億回以上再生される一方,約1000人のクリエイターによるUGCも合計で1億回近く再生されている。そして「バズ」という観点では,後者のほうが重要とのこと。
これは,【推しの子】もYOASOBIも知らない層へとリーチできるので,UGCをきっかけとして認知が進み,元動画の人気にもつながるからだ。
また,エンタメ行動を「クリエイター」「消費者」「編集者」の3種類に分類したとき,消費者と編集者の性質を持った「推し活ファン」など,2つの領域にまたがるものがZ世代には見られるそうだ。
中山淳雄氏は例として,“ファンの学生が自身の本を買ってくれない”ものの,“SNSでの拡散には熱心に協力してくれる”ことを挙げ,近年は非購買層の熱心なユーザーが出てきたことを指摘する。
セッションの後半はフリーディスカッションとなった。西山氏は,「ぷよぷよ」は長年ルールが変わらないので,大学のサークルや地域の集まりなど,ユーザー主導のファンコミュニティが生まれやすかったと話す。
中山(雅)氏は,声優オーディションを実施したとき「サクラ大戦」の主題歌を歌った人がいたが,関係者である同氏に配慮しての選曲ではなく,原作は知らないけど人気の曲だから歌っただけだったというエピソードを披露した。
それに対し西山氏は,最近の人気曲は,曲が好きだから歌っている人だけではなく,曲が流行っているから歌っている人もいるのではと付け加えた。
ここで,話題はWeb3に変わる。椎野氏がこの領域に参入した2021年は,DAO(Decentralized Autonomous Organization,※分散型自律組織)がゲームやコミュニティを変えると言われていたそうだ。それから時間が経ち,今では純粋なDAOではなく,インセンティブを渡して盛り上げてもらう,プロモーションの手段になっているものも多いとのこと。
中山(雅)氏もこれに同意し,新しいゲームではKOL(Key Opinion Leader)を抱え込み,盛り上がっているように見せることが重要になっていて,少し残念だと語った。
一方で,大手のKOLはお金をもらわないと動かないこともあり,盛り上げに必須の存在はあまりいないという印象があるそうだ。ファンコミュニティの理想は,BTSのARMYのようなファンの中で自然発生する動きだという。
椎野氏は,コミュニティ型のゲームの場合,コミュニティマネージャーを用意することが実質的に欠かせないと話す。海外から日本に来てヒットしたゲームは,コミュニティを放置せず,最初に手を入れているものが多いのだとか。
中山(雅)氏は,自身のようなオタクには「神」が多いと話す。今は神ともつながれる時代なので,Puri Princeでは神のいるコミュニティで,二次創作ができるようなサービスを作っていくとのこと。
椎野氏は,Puri Princeやスゴロックスと組んで,コミュニティ型のゲームを作ることに興味があるようで,「セガ時代の同期と再会できたので,このあと画策したい」と述べ,セッションを締めくくった。
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