インタビュー
[G-Star 2012]韓国モバイルゲームの現状と今後について「Com2uS」のキーマン Heewon Kang氏に話を聞いた
G-Star 2011においては,B2Cに単独出展したモバイルゲームを専門メーカーはCom2uS一社だけだったのだが,今年は他社も続々と追従。さらに,これまでPCオンラインゲームを中心に扱ってきたメーカーの多くが,モバイルゲーム寄りの展開を見せていた。たった1年で,ゲームショウの景色がここまで変わってしまうとは本当に驚くばかりである。
今,韓国のモバイルゲーム業界では何が起こっているのか。昨年に引き続き,Com2uSのキーマン Heewon Kang氏に話を聞いてきたので,その内容をお届けしよう。
韓国ではスマートフォンの普及が著しく,“新しいもの好き”という国民性も相まって,モバイルゲームが急速に広まるのは必然であったとKang氏は語る。G-Star 2011の段階でその動きを先読みし,モバイルメーカーとして初めてB2Cエリアに単独出展した成果には,大いに満足しているご様子だ。
この流れに乗らずPCオンラインゲームにこだわり続けるメーカーは,相対的に競争力が低下しつつあるという。例えばNCsoftは,今回のG-Star 2012に出展を行なっていない。同社は「Guild Wars 2」「Blade&Soul」というPC向けの大型タイトルを立て続けにリリースしており,次のタイトルをお披露目できる段階ではないという事情もあるのだろうが,第三者からすれば確かに競争力が低下した印象を受ける。決してPCオンラインゲームの市場が縮小しているわけではないが,モバイルゲームの成長があまりにも著しいため,相対的に低いように見えるのだ。
スマートフォン市場の成長にはまだまだ陰りは見られず,それに伴いモバイルゲームで遊ぶ人はさらに増えていくとKang氏は見ている。しかしKang氏は,現在のカジュアルゲーム一辺倒の流れは少しずつ変わっていくと考えており,その理由を二つ挙げた。
一つは,新しくスマートフォンを手にした人は,最初はライト層が多いが,その中から次第にゲーム性の高いタイトルを求める人が増えてくるという点。
二つめは,これまでPCオンラインゲームを専門に扱ってきたメーカーが,現在躍起になってモバイルゲームに参入してきており,PCオンラインゲーム作りのノウハウがモバイルゲームに注入されることで,よりゲーム性の高いタイトルが登場するという点だ。
上記2つの要素により,需要と供給の両面において,今後はモバイルゲームの二極化が進んでいくとKang氏は考えているようだ。
とはいえ,長年モバイルゲームを扱っているCom2uSは,短時間のゲームプレイでプレイヤーを楽しませる独自のノウハウを持っており,カジュアルゲーム中心の路線に変更はないという。今後はスマートフォンのハイスペック化が進むが,それらの機能をフル活用したカジュアルゲームを制作する,というスタンスだ。最近は新たなモバイルゲームの専門メーカーが続々と登場しているが,Com2uSでは社員を500名(そのうち開発スタッフを350名)に増やして対抗していくとのことである。
次は「来年のG-Star 2013はどうなるのか」という点について聞いてみた。
モバイルメーカーの出展比率がこれより急激に増えるとは考えにくいが,これまでPCオンラインゲームを中心に手がけてきたメーカーが,モバイルゲームに次第にシフトするケースが増えていくのでは,とKang氏は予測している。
例えばG-Star 2012のB2Cで,PCオンラインゲームを専門に扱うメーカーでは,L&K Logic Koreaは,モバイルゲームへの参入を既に示唆している(関連記事)。今年はB2Cエリアに出展しなかったNCsoftも,タブレットに対応した「Lineage Eternal」で動きを見せるだろう。残る大手メーカーとなると,Blizzard EntertainmentやNintendo of Koreaくらいしか残っていないが,この2社は今のところ「我が道を進む」という印象だ。
Kang氏は韓国を代表するモバイルゲーム「AniPang」(iOS / Android)を挙げ,ヒットした最大の要因を,韓国のメッセンジャーアプリで最大シェアを握る「KakaoTalk」にバンドルしたことだと分析(関連記事)。このパターンは日本でも可能だと考え,今後は「LINE」用のゲームアプリに期待しているそうだ。実際,Com2uS日本支社は早ければ年内に,LINEにゲームアプリを提供するとのことである。
Com2uS Japan公式サイト
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