企画記事
RWC2008取材連動企画・ラグナロクオンラインであえてPvPを楽しむ[前編]
「PvPやGvGは一部愛好家のためのものでは?」と言われれば,現状そのとおりなのかもしれないが,果たしてPvPやGvGは,ROの普通のプレイから見てそれほど遠いものなのだろうか? また,普通にROをプレイしている人には,楽しめないコンテンツなのだろうか?
そんなことは決してないと思う。プレイの目標や課題が変わってくる以上,人によって好き嫌いはあるかもしれないが,PvPやGvGには独特の魅力と,聞けばちょっと感心するようなノウハウで成り立つ新鮮なプレイ局面が多々あって,それはもっと多くのROプレイヤーに知られてよいものだろう。そう,PvPやGvGは本気で取り組めば奥深く,実は戦闘に限らず,いろいろと興味深いものなのだ。
そうした,ふだんあまりスポットを浴びない部分に今回はあえて着目し,そこにおけるプレイのあらましを紹介してみたい。「ROにこんな楽しみ方があったんだ」「本気のGvGって,やりがいがありそう」といった風な感想を抱いていただけたなら幸いである。
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対人戦未経験の人に贈る,ギルド攻城戦の楽しみ方
以来現在まで,攻城戦システムは細かいバランス調整を行いながら継続されてきた。舞台となるのは「砦」と呼ばれる専用フィールドで,現在は20個の砦が各ワールドに存在している。攻城戦はいつでも好きなときに開始できるわけではなく,毎週日曜日の20時〜22時までと,実施タイミングが決まっている。
攻城戦開始後の砦マップ自体は誰でも出入り自由だが,攻城戦の勝利条件である「エンペリウム」を攻撃/破壊できるのは,ギルドスキル「正規ギルド承認」を持ったギルドのみ。このギルドスキルは,メンバーが獲得経験値の一部を上納することでレベルを上げられる。そのほかにもギルドメンバーの最大加入制限数を増やす「ギルド拡張」,ギルドマスターのみが使用可能な「緊急招集」など,ふだんあまり聞かないが,攻城戦には必須のスキルが用意されている。
次に,攻城戦時のみ適用される「シーズモード」(siege mode)について。対モンスターの戦闘とは異なり,攻城戦にはさまざまな機能制限がかけられていて,その状態はシーズモードと呼ばれる。具体的には,アイテム「アンティペインメント」,砦内部でのテレポートおよびアイテム「ハエの羽」,スキル「アイスウォール」などはすべて使用不可である。また,魔法の詠唱中断をなくす「フェンカード」は無効,ダメージ/HP回復量表示は無効となり,「アローシャワー」「ボウリングバッシュ」「カートレボリューション」といったノックバック効果のあるスキルは,ノックバック効果のみ無効化されている。また,攻城戦時の対人戦闘ではすべてのスキル攻撃にダメージ軽減がある。
二つのギルドタイプ
その一方は毎週日曜日の攻城戦に欠かさず参加し,砦をすでに所有している防衛側ギルド,あるいは砦の所有を視野に入れている,いわば本気攻めギルドだ。たいていの場合加入メンバー数上限である56名で構成され,また半分近くが2-2次職かつレベル90以上というキャラクター構成になっている。
他方はもっとのんびりしたギルドで,数ある楽しみ方の一つとして攻城戦に不定期に参加するタイプだ。開始時間と同時にダッシュでエンペリウムまで乗り込むことはあるが,長期にわたって防衛する意図や組織力を持たず,攻城戦というイベントにおける戦闘そのものを楽しむ。いわばギルド単位での遠足として,あるいは一時的にギルドを脱退し,気の合うメンバーのみでギルドを新たに組んで参加するといった,プレイヤー達である。
これらのうち,今回はまず本気で砦を獲得/所有せんとするギルドの典型的な組織構成と行動様式のあらましを解説する。
真剣勝負,ある攻城戦ギルドの組織編成
ここでは,一般プレイヤーにとって謎の存在である攻城戦ギルドが,どのように組織され,日頃どう運営されているかの一端を解説する。なお,今回はゲーム内で実際に攻城戦を行っているギルドに協力してもらい,メールインタビューという形で情報を提供してもらっているが,所属ワールド,ギルド,プレイヤーが特定されないよう,複数の回答からポピュラーと思われる行動様式を抽出し,再構成した架空の設定となっている。あらかじめご了承いただきたい。
ROでは,最大四つのギルドで同盟関係を築ける。同盟のメンバー同士であれば,互いに攻撃を受けることもない。砦の有無によって防衛のヘルプに参じたり,四つのギルドが総力を挙げて一つの砦を攻め落としたりといった局面が生じるため,相互協力が欠かせないのだ。
4人のギルドマスターは基本的に対等な立場だが,ギルドの規模,攻城戦への出席率,貢献度合いなどで,発言力には多少の差が出るもののようだ。
2.ギルドマスター
ギルドを組織し,メンバーの加入/脱退など全権限を持つマスター。主な仕事は「同盟ギルド会議」への出席,所属ギルドメンバーの出欠確認,自分のギルドが実際に攻める砦の優先順位決定などである。
大規模ギルドのマスターになると攻城戦中には緊急招集を使う機会が増えることもあって,当日は直接の指揮をとらないことも多い。ログイン率の高さと一定水準以上のプレイヤースキルはもちろんだが,人間関係の調整を求められることもあり,人柄やカリスマ性(?)が問われる。以前はギルドマスターになるのにキャラクターの職業は問われなかったが,最近では砦内部での行動力を考慮し,チェイサー,ソウルリンカー,チャンピオン,モンクを選ぶプレイヤーが増えているという。
3.司令官
攻城戦の当日,ギルドチャット,パーティチャット,IRC/ボイスチャットなどの通信手段を使って,各パーティリーダーや同盟ギルドメンバーに直接指令を出すポジション。偵察部隊から上がってきた情報などを基に,同盟所有の砦が攻められていれば敵ギルド名や規模(人数),緊急度合いなどを把握して指示を出し,逆に攻めの場合は次に落とす砦を指定する。砦内部の最短ルートや主なライバルギルドの実力など,攻城戦にまつわる基礎知識のほとんどを把握している必要がある。
4.戦闘部隊
その名のとおり,攻守共に最前線に出る実働部隊。さらに細かく,スタン耐性のある前衛パーティ(ナイト系,モンク系),スタン耐性の低い後衛パーティ(マジシャン系,アーチャー系,マーチャント系),ロキの叫びパーティ(ジプシー&クラウン),不死身のジークフリードパーティなどに細分化される。いずれのパーティにも,必ずプリーストが数名配置される。
ベースキャンプ待機組とひとくくりにしているが,その内訳は,
・ワープポータル係(プリースト,通称:ポタ子さん)
・ポタ子さん運用係
・支援/回復係(プリースト)
・修理係(ブラックスミス)
・補助係(プロフェッサー,バード)
となっている。ベースキャンプ組はキャラクターのレベルや装備が足りない,体調が悪い,自宅で仕事などの別作業をしている,あるいはPCのスペックが低くて攻城戦のラグに耐えられないといった理由で,最前線に出られないメンバーが担当するのが普通のようだ。
また,ベースキャンプはセーブポイントから可能な限り近く,一般プレイヤーの迷惑にならない場所が選ばれる。人の少ない街のカプラ前,セーブ可能な各町の宿屋の中などがそれに当たる。待機組の各人がどんな仕事を担っているのか説明しておこう。
・ポタ子さん
指定された砦へのワープポータルを出すのが仕事。事前に「攻める/守る予定の砦」を知らされるので,砦近辺の「メモ」を取っておくのは必須だ。状況が変わり,メモにない砦へのポータルを依頼された場合には,自分でメモを取りに飛ばねばならず,周辺マップに関する知識が最低限要求される。
戦闘部隊に一人でも多くのメンバーを回すため,ポタ子さんは外部から“雇用”するケースもある。もちろん事前に攻める砦の情報などを渡すため,信頼がおけ,かつ毎週末の攻城戦に出られるプレイヤーを専属で雇用する。費用だが,ブルージェムストーンは100%支給で,時間拘束の代償として,いくばくかのゼニーを渡すのが普通のようだ。
・ポタ子さん運用係
ワープポータルを出すポタ子さんに適切な指示を出す係。ギルドマスターからの連絡を受け取り,次に出すワープポータルの砦番号を伝えたり,ブルージェムストーンの支給を行ったりするのが主な仕事。ポタ子さんが取得したワープポータルのメモの順番も聞いておき,急遽別の砦のメモが必要になったときには,メモの取り直しを依頼し,上書きされて消えてしまうメモ地点も把握しておく。
激戦にならない限り忙しくないポジションのため,待機組全体を束ねるリーダーを兼任しており,指揮官やギルドマスターからの連絡を見逃さず,適切に処理するのも仕事のうち。
戦闘不能になって戻ってきたギルドメンバー,同盟ギルドメンバーのHP回復および,速度増加,ブレッシングなどの支援スキルを素早くかけ,前線復帰が可能な状態にする役割。当然職業はプリースト系限定だ。激戦時には数十人が一度に戻ってくることもあり,そこで支援漏れがないように,素早く的確な操作が要求される。
・修理係
ごく稀に起こる,装備を壊されてしまった場合に備えて待機しているブラックスミス系。ただし,NPCでも代用できるため,需要はそれほど高くない。
・補助係
ヒールや支援スキル,ワープポータルを連続使用していると,プリーストのSPがもたない(回復アイテムの使用はコストが高いため,あくまで緊急用である)。そのため補助的な役割として「ソウルチェンジ」が使えるプロフェッサーを配置。また,大勢にすばやくスキルをかけられるよう,「ブラギの詩」要員としてのバードやクラウン,MAX SP上昇とスキル使用時のSP消費量が減少する「サービスフォーユー」のための,ダンサーやジプシーも待機している。
6.偵察/囮係
攻城戦開始後,同盟ギルドが所持する砦や敵対ギルドの砦などを巡回し,現在の状況を逐一ギルドマスターか司令官へ報告するのが仕事。次に攻められそうな砦の推定や,そのタイミングで支援すべき同盟ギルドに関する判断材料を集める。
敵対ギルドもたいてい偵察を出しているので,お互いのギルドフラッグを見かけると,「いまウチが手薄になっているし,あのギルドの偵察係がいた。攻めてくるかも」といった情報も飛び交い,それを狙った陽動作戦なども行われる。
攻城戦ギルドの1週間の動き
攻城戦は大勢のプレイヤーが明確な目標の下に動員される活動であるため,編成面に負けず劣らず,運営面も緻密なのだ。
月曜日:同盟ギルドマスター同士のトップ会議。前回の反省点や,今後改善すべき点を話しあう
火曜日:とくになし。回復アイテムなどを購入するための費用稼ぎに当てることも
水曜日:とくになし。
木曜日:ギルド会議。この日までにギルドメンバーは今週の攻城戦の出欠を届け出る。大手ギルドになると欠席の理由も必ず添えて連絡するという。例えば連続3回無断で攻城戦を欠席した場合,ギルドから追放されるといった,厳しいルールを設けているところもある。
金曜日:出席メンバー確定,ポタ子さんを外部に依頼している場合はポタ子さん運用係が連絡を取る。そして,同盟ギルド全体のパーティ編成役(パーティ編成役は通常ギルドに一人いるが,同盟ギルド全体のパーティ編成を考えるときの中心にそのうち誰かが立つ。誰が務めるか決まっている場合もあれば,輪番の場合もあるようだ)がここで揃った出席プレイヤーの一覧を基に,実働部隊のパーティ編成を考え出す。
また不足しがちなプリースト,ジプシー,クラウンの,同盟ギルド間における融通を相談する。
土曜日:最終確認とギルドメンバーへの連絡。この時点で攻める砦はおおよそ決まっている。攻める場合は第2,第3候補まで決定しておき,当日の状況に合わせて最終判断が行われる。
日曜日:攻城戦当日。ギルド内,同盟間の連絡はほぼ100%のプレイヤーが,チャットツールのIRCを利用。ギルド,同盟ギルド,実働部隊,囮部隊など役割分担ごとにIRCチャンネルを開くギルドもある。理由は,IRC側にキーワードによる音声アラート機能などがあり,指令が確実かつ同じタイミングで伝えられるからだ。
なお,ゲーム内のギルドチャット,パーティチャットは,誤操作で作戦が漏れるおそれがあるので,補助的な扱いとなる。
2時間の攻城戦,本番はラスト1時間〜30分の戦いにあり
そこで一例として,砦獲得を目指し攻撃側に回ったギルドを想定して,その動き方を述べよう。
開始とともに砦に攻め込むのは,主にレース感覚を楽しむギルドだ。本気で砦を手に入れたいギルドは,開始から1時間近くを,同盟ギルドの防衛支援,敵対ギルドがどの程度動いているかをつかむための偵察活動に当てるのが普通である。事前偵察でどこの同盟が攻めているか情報が集約され,出陣のタイミングについては司令官に判断が委ねられる。
この偵察は始めから戦闘不能になる覚悟であり,シーズモードでは戦闘不能になると同時にセーブポイントへ強制送還されるため,スクリーンショットを撮るといった確認方法も必要になる。
防衛側は,スキルに頼らずとも基本攻撃力と攻撃スピードが高い前衛キャラクターを,エンペルームの入り口に配置。万が一防衛ラインを突破されたときに備えて,さらにウィザード,ハイウィザードによるストームガストの弾幕も準備している。
一つのマップに大量のプレイヤーキャラクターが詰め込まれることになる,エンペルームの最終決戦ともなると「敵はラグにあり」といえるほど処理が遅くなる。攻城戦を制するためには,高いプレイヤースキルと高性能な装備品のみならず,そこそこのスペックのPCも必要だ。例えばメインメモリが1GB未満という状態は,あまりおすすめできない。それだけでローディングタイムが長くなるからだ。自分がラグに陥れば回復アイテムの利用もままならないし,味方のプリーストがラグで止まっていれば,回復支援を受けられない。そうした状況で,自分のPCがさらなるビハインド要因を作ってしまうことは避けるべきだろう。
同盟ギルド同士は攻める砦がカブらないよう,なるべく事前に情報を提供しあうが,まったくの別勢力が同じ砦を目指して来た場合,防衛側ギルドの規模と強さや残り時間によって,共闘を申し込むか,同盟ギルド以外すべてを敵に回すのか,指揮官は即座に判断しなければならない。
攻城戦参加者の愛用装備
+9ヴァルキリーマント( レイドリックカード)
+9ヴァルキリーシールド(タラフロッグカード)
+4 羽のベレー
+10 ダブルボーンド/ダブルブラッディソード(スケルワーカーカード×2,ヒドラカード×2)
+6 マント(レイドリックカード)
以上,ごくごく断片的ではあるが,「ラグナロクオンライン」における攻城戦のあり方に関連する情報をお届けした。ほかのMMORPGにおけるレイドやPvPとも共通するが,大勢が参加するコンテンツだけに組織立った動きが求められ,そこにはパーティ単位での通常プレイなどでは味わえない魅力がある。
攻城戦は,大人数が参加するところに特徴があるMMORPGならではの魅力を,真に味わえるプレイ方法の一つと評して差し支えないだろう。いままで仲の良い何人かの仲間と組むプレイを中心にしてきた人も,これを機会として攻城戦に目を向けてみるとよいかもしれない。
[後編]では,もう少しライトに攻城戦を楽しんでいる人の様子と,個人単位でのPvPについて解説したい。
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